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株式譲渡の6つの手続き|必要な書類や注意事項4つも紹介


公開日:2021年5月28日  最終更新日:2022年11月17日

株式譲渡とは

会社の経営権を移転させる手法の1つが「株式譲渡」です。文字どおり対象会社の株式を保有する株主が買手に譲渡して、経営権を譲り渡すのが株式譲渡であり、企業及び株主にとっては大きな決断が必要となります。

株式譲渡は他のM&Aの手法と比較すると、手続きや税金の面で簡便だとされていますが、正しい手順を踏むことが前提です。そこで、株式譲渡の手続きの流れや必要な書類、注意点などを具体的に解説します。

参考記事:株式譲渡を行うメリット5つ|主な手続きや注意点もあわせて解説|M&A to Z

株式譲渡の6つの手続き

株式譲渡を円滑に進めるには、事前に手続きの流れを把握しておくことが不可欠です。会社によって手続きは異なりますが、会社の経営権を譲渡する株式譲渡は取締役会を開いて役員や株主の承認を得る必要があります。取締役会を設置していない会社は臨時株主総会を開きます。

また、正しい手順に沿って手続きを行わないと、思わぬ支障が出ることも少なくありません。そこで、円滑に株式譲渡を行うための手続きを説明します。

1:株式の譲渡制限を確認

株式譲渡の手続きを始めるには、自社における株式の譲渡制限の有無を確認することが不可欠です。株式を譲渡するには、取締役会の承認や株主総会の承認を必要とする譲渡制限が定められていることがあります。

譲渡制限の有無によって株式譲渡の手続きは異なることから、まずは会社の定款や登記簿謄本で譲渡制限がないかを確認しましょう。ちなみに株式譲渡の制限が定められている場合、定款に「当会社の株式を譲渡するには、株主総会の承認を受けなければならない」といった文言が記載されています。

2:株式譲渡承認請求をする

株式の譲渡制限がある場合、株式譲渡承認請求を行うことが必要です。株式譲渡承認請求とは、文字どおり、「保有する株式の譲渡について承認を得る行為」です。

株式譲渡承認請求を行う際は「株式譲渡承認請求書」を提出する必要があります。株式譲渡承認請求書には「譲渡する株式の種類・株数」「株式譲渡先の氏名または名称」「氏名や住所」等を明記します。

3:株主総会での承認を受ける

株式譲渡承認が請求されたら、取締役会設置会社では取締役会で、取締役会の非設置会社では株主総会で、承認の可否を決定します。定款で「承認機関を株主総会とする」定めがある場合、取締役会社設置会社であっても株主総会で可否を求めることが必要です。

なお、株式譲渡承認の請求は、株式譲渡後に株式取得者と一緒に行うことも可能です。

4:株式譲渡契約の締結

株式譲渡は譲渡人・譲受人の合意によって、株式を譲渡する取引行為です。したがって、株式譲渡については双方が合意したことを明らかにする株式譲渡契約書を交わします。

株式譲渡契約書には、譲渡日や譲渡対象株式の種類や株式数や譲渡価額を明記するのが一般的です。加えて株主名簿の名義書換え請求、その他譲渡にあたっての表明保証事項や前提事実などの合意事項を記載します。

5:株式譲渡の承認請求

次に、会社に株式譲渡の承認請求をします。

承認を拒否される場合は、譲渡承認請求時に会社又は会社が指定した第三者である指定買取人に株式の買取りを請求することが可能です。つまり、譲渡承認請求が拒否されても結果的には株式を売買することができます。ただし、会社を指定買取人とした場合でも、配当可能額がなければ売買は成立しません。

6:株主の名義変更

譲渡契約書が締結され、譲渡承認の決議を得た後でも、株主名簿の名義の書き換えをしなければ譲渡を会社に対抗できません。

株式譲渡を円滑に進めるためにも、株式譲渡契約書には売主が株主名簿書き換えに協力する旨を明記しておきましょう。

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株式譲渡の手続きで必要となる主な書類7つ

株式譲渡には手続きの段階によって、さまざまな書類が必要となります。書類によっては複数名で作成するものや、確認に時間を要するものも少なくありません。

したがって、円滑に株式譲渡を進めるには必要な書類を事前に把握し、手続きと同時並行で書類を整えることが大切です。そこで、株式譲渡の手続きで必要となる主な書類のポイントについて解説します。

1:株式譲渡契約書

株式譲渡の成立を確認する大切な書類が株式譲渡契約書です。株式譲渡契約書の内容は、買い手による企業内調査などを基に決定します。

株式譲渡契約書の内容には、「譲渡承認手続方法」「名義の書き換え」「譲渡代金の支払方法」「契約解除条項」「表明保証」があります。なお、契約内容に違反すれば損害賠償に発展することから、株式譲渡契約書には損害賠償に関する事項も記載されます。

2:株式譲渡承認請求書

株式譲渡承認請求書は、株式譲渡を行う会社が株式譲渡制限を定めている場合、必要となる書類です。譲渡する株式の譲渡人から会社に提出してもらいます。

株式譲渡承認請求書には、譲渡対象株式の種類や株式数、譲渡相手を記載する法律上の義務があります。

株式譲渡承認請求書が提出された場合、会社は取締役会又は株主総会で譲渡の可否を決定し、その結果を通知しなければなりません。

3:株主名簿

株主名簿には株主の氏名と住所をはじめ、株式の種類や株数などが記載されています。先にも触れたとおり、株主名簿の名義の書き換えをしなければ譲渡を会社に対抗できません。会社は、真実の株主ではなく、株主名簿に記載させれている名義人に株主としての権利行使を認めれば足りるため、株式譲渡の買い手にとって、株主名簿の書き換えは重要な事項です。

なお、株主名簿が正しく管理されていない場合、企業は罰金を科せられることもあります。

4:株主名簿記載事項書換請求書

株主名簿記載事項書換請求書は、売り手側株主と買い手側株主から共同で会社に提出し、株主名簿の書き換えを会社に依頼する書類です。

株式名義書換請求書の様式は法令等では定められていません。一般的には株主名簿の更新に必要な、売り手側株主と買い手側株主の住所・氏名のほか譲渡株式の種類や株数を記載します。

5:株主総会招集通知

株主総会招集通知は、株主総会をもって株式譲渡の承認を決議する際に必要な書類です。株式譲渡において株主総会を招集するのは、取締役会非設置会社となります。

ただし、取締役会設置会社でも、定款に定めがある場合には株主総会を開催しなくてはなりません。

6:株主総会議事録

株主総会を開催した場合、その内容を記すのが株主総会議事録です。具体的には、株主総会の開催日時や参加者、議論の内容を要約したものです。株主総会を開いた際、必ず作成するように会社法で定められています。

7:株主名簿記載事項証明書

株主名簿記載事項証明書は、文字どおり会社の株主であることを証明する書類です。具体的には株主の氏名をはじめ、住所や株式の保有数・種類などの当該株主にかかる株主名簿記載事項が明記されています。

新たな株主にとって、株主名簿記載事項証明書は株を譲渡されたことを証明できるものになります。なお、株式名簿記載事項証明書を確認するには、株式名簿記載事項証明書交付請求書を提出することが必要となる場合があります。

株式譲渡の手続きで注意すべき4つのこと

株式譲渡を円滑に進めるには、注意すべきポイントを事前に理解しておくことが不可欠です。株式譲渡は、非常に複雑な手順を踏んで契約が締結されます。手続き上のミスが起きやすいといえるでしょう。

手続き上のミスを防ぐには、あらかじめ注意すべきポイントを理解しておくことが大切です。ここでは株式譲渡の手続きを進める上で注意すべきポイントを解説します。

1:売買価格の決定が難航する場合がある

会社が株式譲渡承認請求を拒否した場合、一部の場合を除き、指定買取人が当該株式を買い上げることになります。

しかし、非上場企業の場合などは、適正な価格の算出が困難な場合があります。株式譲渡を行う場合、M&Aの専門家への相談も検討するとよいでしょう。

2:株券発行会社の場合、株券の交付が必要である

会社法施行によって、株式を発行しない株券不発行会社が認められることになりましたが、株券発行会社が株式譲渡を行う場合、株券の交付が必須です。株券発行会社では、株券が未発券・未交付であると株式譲渡が成立しません。株式を譲渡する会社が株券発行会社であるか否かは定款又は登記簿謄本を確認します。

なお、株券不発行会社であれば、株券を交付しなくとも同意があれば株式譲渡は成立します。

3:株式譲渡制限が定められている場合がある

株式譲渡を進める場合、最初に確認するのが株式譲渡制限が定められているか否かです。

非上場の中小企業の大半は株式譲渡制限を定めています。株式譲渡制限が定められている場合、取締役会又は株主総会での承認が必要となることから、事前に定款または登記簿謄本で株式譲渡制限の有無を確認しておきましょう。

4:株式譲渡は課税対象になる

株式譲渡で発生した利益は課税対象になることを理解しておきましょう。売り手が個人の場合だと所得税や住民税などが発生し、法人の場合だと法人税が発生します。

なお、非上場株式を無償もしくは時価よりも極端に低い価格で譲渡する場合、税金の種類などが変わることがあるので注意が必要です。税金に関するトラブルを防ぐためにも、株式譲渡を行う場合は税の専門家に相談するのが無難だといえます。

株式譲渡するときに知っておきたい税金のこと

株式譲渡で利益を得た場合は、税金の支払いが必要です。譲渡益に適用される税率や計算方法について詳しくご紹介します。

譲渡益に適用される税率について

株式譲渡で得た譲渡益に課せられる税金は、法人株主と個人株主で異なります。

法人が株式を譲渡して利益を得た際は、譲渡益に対して法人税等が課税されます。法人税等には、法人税と地方法人税、法人住民税 、法人事業税が含まれ、それらを加味した実効税率はおおよそ30~35%前後です。

一方、個人株主が株式を譲渡した際に得た利益に対しては、所得税がかかります。非上場株式の場合にかかる税率は20.315%(所得税15%×復興特別所得税102.1%+住民税5%)です。

株式を譲渡したときは確定申告が必要になる

個人が株式を譲渡したときは、確定申告が必要です。まずは、税金計算に必要な譲渡所得の計算式をご紹介します。

譲渡代金 – (取得額 + 譲渡経費)

上記のうち、譲渡経費はアドバイザリー会社や仲介会社などに支払った手数料のことです。

取得額は、株式を最初に取得した際にかかった費用のことです。もし株式の取得価額が不明な場合には、個人株主のケースのみ譲渡代金の5%を取得額として計上できます。

個人株主の場合は、クロージング日が属する年の翌年2月16日~3月15日の間に確定申告をします。課税方式は申告分離課税で、他の非公開株式の株式を譲渡して損失が生じている場合は通算できます。

譲渡損については、他の一般株式などの譲渡益と相殺できます。ただし、その後は他の所得との損益通算はできません。

株式譲渡を考えるなら検討すべき4つの問題

株主譲渡を成功させるには、4つの問題を解消する必要があります。それぞれの問題について詳しくご紹介します。

1:後継者の指名・育成に関する問題

帝国データバンクによると、後継者不在率は2019年で65.2%です。また日本政策金融公庫によると、廃業を予定している企業(60歳以上の経営者)のうち、廃業理由を「後継者難」とする企業は約3割に迫っています。後継者は従業員や親族などから選定することが一般的ですが、経営者の適正がある人物が見つかるとは限りません。

また後継者になることを本人が望まないケースもあります。さらに後継者が見つかったとしても、育成の途中で本人のモチベーションが低下したり、現経営者の急病で未熟なまま経営者に就任したりするリスクがあるのです。

このような後継者問題を解決できる方法の1つが株式譲渡です。 株式譲渡で他社に経営権を承継させると、基本的には経営者は交代になります。そのため、後継者不足が原因で廃業する事態を免れることができます。

出典:全国・後継者不在企業動向調査(2019年)|帝国データバンク

2:税務上の問題

税務上の時価と取引価額に差がある場合、税務上の問題が生じます。譲渡側・譲受側それぞれ個人・法人に分けてご紹介します。

(1)譲渡側が個人

譲渡側が個人で、時価を上回る取引価額で株式譲渡した場合は、その差額に対して所得税が課されます。なお時価を著しく下回る取引価額で株式譲渡した場合は、みなし譲渡に該当し、時価で譲渡したものとして譲渡益を計算する場合があります。

(2)譲受側が個人

個人が株式を譲受した場合、原則として課税関係は生じません。ただし時価を著しく下回る取引価額で株式を譲り受けた場合は、みなし贈与(譲渡側が個人の場合)または低額譲渡として取り扱われ、時価と取得価額との差額に対して贈与税又は所得税が課税されることがあります。

(3)譲渡側が法人

法人が時価を上回る取引価額で株式を譲渡した場合、譲受側が個人・法人いずれの場合もその差額は譲渡益として課税所得を構成します。なお時価を下回る取引価額で株式を譲渡した場合は、譲渡価額と時価との差額が寄付金として取り扱われます。

(4)譲受側が法人

法人が株式を取得した場合、原則として課税関係は生じません。なお法人が時価を上回る価額で株式を取得した場合、時価と取得価額の差額は賞与、給与、退職金の支払い(譲受側が役員等の個人場合)、あるいは寄付金(譲受側が法人の場合)として扱われます。反対に時価を下回る取引価額で株式を譲受した場合は、時価と取得価額の差額は受贈益(譲渡側が個人・法人を問わない)として課税されます。

3:債務保証の問題

多くの中小企業は、経営者個人が法人の借入金の連帯保証人になっています。これを個人保証といい、株式譲渡の際に問題になる場合があります。 株式譲渡の際は、譲受先に連帯保証や担保の提供が切り替わることが一般的です。

ただし自動で切り替わるわけではなく、譲受企業との交渉が必要なため、条件交渉のテーマの1つとしておくことが大切です。

譲受側が承諾した場合は、「譲受側が譲渡側の連帯保証および担保提供の解除に責任を持つ」といった条項を設けてください。

4:取締役会の問題

株式譲渡において、譲渡制限株式を譲渡する際は、会社の承認を得る必要があります。 原則として、取締役会を設置している場合は取締役会の承認、取締役会を設置していない場合は株主総会の承認が必要です。ただし、代表取締役や取締役などの承認を必要とすることも可能です。

これらの承認を得ない限り、株式譲渡をしても効力は生じません。取締役会の承認が必要な場合、複数人の取締役の中で意見が割れ、株式譲渡ができなくなる場合があります。そのようなリスクを回避するため、株式譲渡を検討する場合には関係者ときちんと協議し、理解を得るようにしましょう。

非上場株式を譲渡するときの注意点

非上場企業が株式譲渡する場合は、譲受側と譲渡側の株主間での取引となります。 譲渡側の株主が多数存在する場合、譲受側は多くの株主との間で手続きを実行する必要があるため、経営権を得るのに必要な株式数を取得することが難しくなる恐れがあります。

現実的に株式譲渡が可能かどうかを踏まえ、株式譲渡を検討しましょう。

株式譲渡の方法を理解してスムーズに手続きしよう

株式譲渡は会社の経営力をアップさせ、新たな未来を拓く上でも有効な手法です。ただし、手続きが非常に煩瑣であることから、事前にしっかりと株式譲渡の方法を理解し準備しておくことが大切になります。

とりわけ、大半の非上場企業では株式譲渡に制限を設けていることから、取締役会又は株主総会の承認が必要です。その際、株式の売買価格の決定では交渉が難航することも考えられるため、M&Aの専門家に相談しておくと良いでしょう。

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