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株式譲渡の価格の決め方とは?非上場企業の譲渡価格の決定方法を解説


公開日:2021年6月18日  最終更新日:2022年11月18日

株式譲渡をしたいけれど、実際にどうやって価格設定・交渉すればよいのかわからない、という方も多いのではないでしょうか。本記事では非上場企業の株式を譲渡する場合の価格設定・交渉のポイントについて解説します。

株式譲渡とは

M&A(Mergers and Acquisitions・企業の合併と買収)のスキームのうちの一つに「株式譲渡」があります。 保有する株式を譲渡し、その対価を得るというシンプルなスキームで、中小企業の経営者(兼オーナー)が交代する場合などに用いられます。

本記事では「株式譲渡」における譲渡価格の決定方法などについて解説していきます。

株式譲渡の定義

「株式譲渡」とは、株式会社の発行する株式を売買して、その会社の経営権を移動させることいいます。

上場企業(公開会社)の株式の場合、株式市場内での売却であれば保有株式を売却することが可能です。一方、まとまった株式比率を特定の者に譲渡する場合は、株式公開買付という形で会社法に則って手続きを踏む必要があります。また、非上場企業(非公開会社)の株式の場合は、株式譲渡につき株主総会または取締役会設置会社においては取締役会の承認が必要です。

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株式譲渡時の3タイプのアプローチ方法

株式譲渡をする場合、譲渡の対象となる株式の価値はどのように決まるのでしょうか。

株式は、その株式会社の企業としての価値を示すものです。 株式価値を判断する方法は、大きく分けて3つあります。それぞれ見ていきましょう。

1:マーケットアプローチ

1つ目は、マーケットアプローチです。 対象となる企業の同業他社の、市場における株式の株価(時価総額)と比較して株式価値を判断する方法です。

上場企業であれば株式市場における株価を参考にすることができます。しかし非上場企業の場合は株式が市場で売買されていないため、同業他社である上場企業を探し、その株価等を参考にすることになります。

2:インカムアプローチ

2つ目は、インカムアプローチです。 これは、対象となる企業の将来における利益予想やキャッシュフロー(現金の流れ)予想といった収益性を参考にして株式価値を判断する方法です。

データをもとに算定するという論理的でポピュラーな方法です。収益の将来性や固有の評価項目を価値判断に反映させることができる点で優れています。他方、データはあくまでも将来の予想であって、その判断から恣意性を排除することが難しいとされています。

参考記事:DCF法とは?DCF法による企業価値評価のメリット・デメリット|評価のポイント5選|M&A to Z

3:コストアプローチ

3つ目はコストアプローチです。ネットアセット・アプローチともいいます。 対象となる企業の貸借対照表における純資産を参考にして株式価値を判断する方法です。

純資産とは、貸借対照表の右側(貸方)に記載されているものです。株主から出資を受けた分と過去の事業活動により得られた営業利益の蓄積により構成されているものです。

非上場企業の株式譲渡の際の価格決定の方法6つ

ここからは、非上場企業の株式譲渡をする際に、どのように決定するのかについて詳しく解説していきます。価格決定の方法は主に6つあります。

1:簿価純資産法

簿価純資産法とは、コストアプローチのうち、会計上の帳簿価額を基礎として株式価値を評価する方法をいいます。

簿価の価額を根拠に計算するため、客観性に優れているといえます。他方、各資産の時価が簿価と乖離していることもあり、簿価純資産法による株式価値の評価をそのまま使うことは少ないようです。

出典:企業価値評価ガイドライン|日本公認会計士協会 |p.47 7.ネットアセット・アプローチにおける評価法(1)簿価純資産法

2:時価純資産法(修正簿価純資産法)

時価純資産法とは、貸借対照表における資産と負債を時価評価したうえで割り出した一株当たりの純資産額を株式価値として判断する方法をいいます。

貸借対照表に表れる資産等は基準日における過去のデータであるため、土地や有価証券といった主要な資産の含み損益を時価評価し直すことが多いです。簿価を時価評価に修正するという意味で、修正簿価純資産法と呼ばれることもあります。

出典:企業価値評価ガイドライン|日本公認会計士協会 |p.47 7.ネットアセット・アプローチにおける評価法(2)時価純資産法

3:類似業種批準法

類似業種比準法とは、評価対象の株式会社と業種が類似している上場企業の市場における株式価値を参考にしての対象会社の株式価値を評価する方法をいいます。類似する上場会社の選定は、その属する業界など様々な要素を考慮して決定します。

一般に上場企業の株価は非上場企業より高いものと考えられ、非上場企業の株式価値の判断にあたっては一定の調整が必要となります。具体的には、まずは対象会社と業種が類似する企業を複数社選定し、対象会社の一株当たり利益や純資産などの財務数値を計算します。

そして、比較対象の財務数値と比較し、その指標の倍率を計算します。最後に選定した上場会社の市場株価に倍率を掛けて評価対象会社の株価を算出するというものです。

出典:企業価値評価ガイドライン|日本公認会計士協会 |P.44 1.類似業種比準方式とは? (2)類似上場会社

4:類似取引比準法

類似取引比準法とは、類似するM&A取引における株式の売買価格と、評価対象会社の財務数値に関する情報を参考にして対象となる株式会社の株式価値を評価する方法をいいます。

例えば、同じ業界内で他にも類似のM&A案件の実績が多数あり、その際に使われた指標が同じ業界内においては取引価格のベースとされるといった慣習として定着しているような場合には参考になります。

他方、M&Aに関するデータを収集しているような公的な組織が存在しておらず、一般的に利用できることは少ないと考えられます。また、そもそも類似する取引を選定することが難しく、評価の適正性が不透明である点にも留意が必要です。

参考:企業価値評価ガイドライン|日本公認会計士協会 |P.46 6.マーケット・アプローチにおける評価法 (3)類似取引法

5:配当割引モデル(配当還元法)

配当割引モデルとは、理論的な株式の価値は、その株式を一定期間保有し続けた場合において、将来支払われる配当の現在価値の合計値であるとする考え方を前提として株式価値を評価する方法をいいます。英語ではDDM(Dividend Discount Model)ともいいます。

現時点での適正な株価は、決算期毎に想定される1株あたり配当を、株主が要求する利回り(期待収益率)で現在価値に割り引いた値の合計によって導かれます。

このようにして算定される株式の値と、現時点の株価とを比較し判断します。配当の増減をどのように想定するかなど、仮定の条件設定によって様々な計算方法があります。

6:DCF法

DCF法とは、対象となる企業が将来生み出すであろう収益(キャッシュフロー)を、適切な割引率によって現在の企業価値に還元させてその株式価値を評価する方法をいいます。

「DCF」とはDiscounted Cash Flowの頭文字をとった略称です。M&Aの際によく採用される方法の一つです。

この方法によって、株式譲渡によるシナジー効果や、その後の経営改善効果などを企業価値に反映することができるという点で優れているといえます。

他方、あくまでも将来の予想ですのでその判断に恣意性を排除することが難しく詳細な分析をするのに時間を要する点には留意が必要です。

株式を高く売るための3つのポイント

ここまでは主な株価の評価方法についてみてきました。では、実際に株式譲渡を行う場合には、どのように譲渡価格を決定しているのでしょうか。

非上場企業の株式は、株式市場で売買されておらず市場価格が存在しないため、実際には売り手と買い手の交渉によってその価格を決定します。 そこで、株式を高く売りたい場合に実践すべき3つのポイントをご紹介します。

1:買い手同士で価格競争させる

買い手同士で購入価格の競争が起きると、金額が高くなっていく傾向があります。競業他社に買われたくない、金額提示で負けたくないという心理が働くためです。株式の買い手候補が複数いる場合には、入札方式をとるなどして競わせるのも高く売るポイントの一つです。

2:会社の価値を理解する相手を選ぶ

会社の価値を理解し、高く評価してくれる相手を探すことが価格決定においても重要です。対象となる会社に魅力を感じているのであれば、「高くても買いたい」という心理になります。買い手のニーズがどういうところにあるかを把握し、ニーズに合わせて会社の価値をアピールして交渉しましょう。

3:会社の正確な情報を詳しく開示する

株式譲渡を行う際は、自社の方針や状況をなるべく詳しく、また正確な情報を開示することで、よりよい交渉相手を見つけるというのも重要です。

買い手からすると、株式を買った場合の利益をあらかじめ正確に見積もることができるかどうかが重要だからです。また、株価を決めるのに十分な判断材料がないとなると、買い手はリスクを避けるためには安く買おうとすることも予想されます。

自社の事業分野が将来的には伸びていくと予想されることや、同業他社とは差別化できる強みがあることなど、買い手にとって魅力を感じる点やメリットをなるべく正確に説明して交渉しましょう。

株式譲渡の価格設定における3つの留意点

ここまでは株式を高く売る方法についてご紹介してきました。 最後に、株式譲渡価格の設定に際して気をつけるべき3つのポイントについてご説明します。

1:安すぎる価格で譲渡しない

まず、安すぎる価格設定は避けましょう。 非上場企業の株式には市場価格がないとはいえ、適正な価格で取引すべきであり、あまりに安い価格設定で譲渡してしまうと、適性価格との差額部分が「贈与」や「寄付」とみなされる可能性があります。

そうなると、贈与や寄付とみなされる部分が課税対象となってしまいますのでご留意ください。

2:専門家に査定を依頼する

株式譲渡の価格について、なるべく適正な価格を算出したいのであれば、やはり公認会計士や税理士といった専門家に査定を依頼する方法があります。

株式譲渡をすすめる前に、企業価値評価を出してもらうとよいでしょう。実際の交渉においても、専門家による適正価格は信頼性の高い交渉材料として使えるでしょう。

3:ファイナンシャル・アドバイザー(FA)に依頼する

これまでみてきたように、株式譲渡の際に参考となる株価の算定やそれに基づく交渉など、あらかじめ計画をたてて入念に事前準備を行わなければなりません。また、専門的な知識も必要になってきます。

そこで、株式譲渡にあたっては、円滑な進行と譲渡益の最大化に貢献してくれるファイナンシャル・アドバイザー(FA)に依頼するのがおすすめです。

ファイナンシャル・アドバイザー(FA)は、株式譲渡も含めたM&Aの売り手・買い手の一方に専属して、クライアントの利益を最大化すべく企業価値の算定・契約条件の交渉と取り決めからデューデリジェンス(DD)クロージングに至るまで、一貫してサポートを行います。

FAに依頼すれば、専門的な知識によるアドバイスを受けながら、自社にとって適切なスキームを選択し、難しい手続もスムーズに進めることが可能になるでしょう。

参考記事:M&Aのデューデリジェンスとは?7種のDDで売り手企業に求められる準備と注意点|M&A to Z

参考記事:M&Aによる会社売却の主な流れ|成功させるポイントや注意点も|M&A to Z

株式譲渡の価格決定は専門家を入れてスムーズに取引しよう

本記事では株式譲渡の際の価格評価方法と、価格決定時のポイントについて解説してきました。譲渡価格は株式譲渡において非常に重要な取引条件であり、決定プロセスにおいては専門的な知識も必要となります。

株式譲渡後も株式会社は事業を継続していくため、株式譲渡時の企業価値判断はその後の事業にも少なからず影響を与えるといえます。

このように重要で難しい株式譲渡の手続については、専門家やファイナンシャル・アドバイザー(FA)を活用してすすめるのが良いのではないでしょうか。

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