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PEファンドによるM&A、過去5年間の買収額ランキング上位5件を考察


公開日:2019年6月6日  最終更新日:2023年1月23日

PEファンドとは

PE(Private Equity)ファンドとは日本語では未公開株式ファンド(プライベート・エクイティ)と訳されますが、仕組みとしては、成長の余地はあるもののその能力等を活かしきれていない企業や経営不振に陥った企業へ投資を実行し、経営支援等をすることで企業価値を高め、EXIT(IPO、他社への売却等)によるリターン獲得を目指すファンドのことをいいます。

投資対象となる企業は、大企業の子会社や同族系企業が多く、それらの企業の株式を引き受けるという形をとり、投資を実行します。「ベンチャーキャピタル」や「バイアウトファンド」もこの業界に含まれています。

【参考資料】
日本における プライベート・エクイティ
第四次産業革命に向けた リスクマネー供給に関する研究会

PEファンドの運用総額は、リーマンショック時に一気に低迷したものの、以降は徐々に増加し、2017年にはリーマンショック以前の金額を上回りました。

今回は、2014/4/1-2019/5/1の5年間で行われたPEファンドによる日系企業の買収金額TOP5やランキングからは漏れたが興味深い案件に焦点をあて、買収の背景や買収後の動向などについてをまとめました。

また、今回紹介した以外の案件についても、資料へのリンクが文末にあるので是非ダウンロードしてみてください。


5位 コールバーグ・クラビス・ロバーツ(以下KKR)による 日立工機株式会社の買収

【発表日】 2017/1/13
【取得価格】 147,073(百万円)

【対象企業概要】
工機ホールディングス株式会社は、1948年に創業した大手電動工具メーカーで電動工具や遠心ポンプの製造販売をメイン事業としています。元々は日立工機株式会社という社名で日立グループに属していましたが、2017年3月に買収されたことで現在の名前になりました。2017年時点で電動工具の国内シェアは2位、世界シェアは7位と世界中で人気のブランドです。

【買収背景】
日立グループは2016年頃からグループ再編に取り組んでおり、当時、日立工機株式会社は経常利益率が2%前後と日立グループの平均よりも大幅に低かった為、売却の対象となった可能性が高いです。
また、買い手のKKRは、 工機ホールディングスの海外でのブランド力と自ら持つ豊富な海外ネットワークを活用してさらなる海外展開を後押しし、収益を拡大を後押しする狙いがあると考えられます。

【買収後の動向】
買収後、社名を「工機ホールディングス」、ブランド名は「HiKOKI(ハイコーキ)」に変更。

【参考資料】
KKRによる日立工機株式会社の公開買付けが成立




4位 ベインキャピタルによるADKホールディングスの買収

【発表日】  2017/10/2
【取得価格】 152,342(百万円)

【対象企業概要】
株式会社ADKホールディングスは1999年1月、旭通信社と第一企画が合併して発足した総合広告代理店で、国内において電通、博報堂に続く、第3位の規模です。

【買収背景】
インターネットの浸透で業界環境が大きく変化しているため、一旦、非上場化し、長期戦略を立てるために筆頭株主であるWPPグループとの資本・業務提携の解消するためにファンド側へ買収を打診したと考えられます。
これに対して、ベインキャピタル側は  経営支援を行いつつ、規模の拡大などを進めることで、将来の再上場の際にキャピタルゲインを得る目的があると考えられます。

【買収後の動向】
2017年に約20年にわたって資本・業務提携関係にあった世界最大の広告代理店グループのWPPグループ(イギリス)との資本・業務提携を解消。
2018年3月にベインキャピタル主導で上場廃止となる。
2018年11月21日に持株会社体制に移行することを発表。
2019年1月にADKホールディングスを純粋持株会社とし、企業グループとして再編。

【参考】
ベインキャピタルと ADK、公開買付けの成立を発表

 

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3位 コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)による 日立国際電気の買収

【発表日】  2017/11/24
【取得価格】  155,447(百万円)

【対象企業概要】
株式会社日立国際電気は2000年10月1日に国際電気・日立電子・八木アンテナの3社が、合併して誕生した電気機器メーカーです。主に、無線通信システム、放送映像システムをメイン事業としています。

【買収背景】
日立工機株式会社同様、日立グループのグループ再編の一環であると考えられます。
また、買い手のKKRは、  独自のネットワークを活用し、無線・通信事業と成膜プロセスソリューション事業をそれぞれ価値付けをし、分割での売却を考えて買収したと思われます。

【買収後の動向】
2018年3月 東京証券取引所上場廃止
2018年6月 成膜プロセスソリューション事業を親会社の株式会社KOKUSAI ELECTRICが継承。

【参考】
KKR、株式会社日立国際電気の公開買付けを完了




2位 ブラックストーン・グループによる GEリアルエステートの日本部門(日本GE)の買収

【発表日】  2014/11/21
【取得価格】  190,000(百万円)

【対象企業概要】
日本GEは1998年にGEジャパン・ホールディングスとして設立された、米ゼネラル・エレクトリック(GE)の日本法人です。買収される前は、不動産や金融をメインに事業を行っていました。

【買収背景】
米GEは当時、不動産および、金融業界からの撤退を考えており、リアルエステートの日本部門の買収は事業撤退の第一歩であると考えられます。
ブラックストーン・グループ側としては、  世界有数の不動産ファンドとしてのノウハウを生かして、日本の不動産価値の拡大を図る狙いがあると考えています。

【買収後の動向】
2015年GEリアルエステートが全不動産約3.69兆円分をブラックストーン・グループに一括売却。
中国の安邦保険集団に売却(売却比率は不明)

【参考】
ブラックストーンがGEキャピタルの日本住宅事業を買収

 

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番外編

1位発表の前にここでランク外ではありますが、PEファンドが行った買収案件で興味深い2つの買収案件について述べたいと思います。


番外編1 ポラリス・キャピタル・グループによる BAKEの買収

【発表日】 2017年07月31日

【対象企業概要】
BAKEは2013/4 に設立された洋菓子の製造販売を手がける企業です。主力商品はチーズタルトで、主に首都圏の駅ナカや駅近くに出店しており、お店がガラス張りになっているのが特徴です。

【興味深い点】
2017年当時、BAKEは創業3年目、いわゆるベンチャー企業でした。1年目から順調に売り上げを伸ばしていたものの、まだまだ成長途中であり、実際に海外展開も始めたばかりでした。

事業継承や事業再生を得意とする  PEファンドがこのようなスタートアップ時のベンチャー企業に対して出資を行うというのはかなり稀なこと(通常であればVCなどが出資者のメイン)で、何年後かのIPOにて資金回収を念頭においての買収だと思われますが、ポラリス側の大胆な行動を評価しました。

買収後は、社長は会長に退き、ポラリス側から社長が派遣され、積極的な海外展開を行っています。IPOを含め、今後の動向が気になる買収案件です。

【関連】
本ディールについては、以下の記事でも考察しています。
PEファンドのポラリス・キャピタル・グループ、スイーツ店を展開するBAKEを子会社化
2017年度編集部が気になったM&A-中小ベンチャー・スタートアップ編-
国内スタートアップM&A総まとめ-過去5年の売却価格TOP10-

 

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番外編2 ベインキャピタルによる大江戸温泉物語の買収

【対象企業概要】
大江戸温泉物語大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ株式会社)は2001年に温浴施設・テーマパークの経営を目的に設立された会社で、2003年にお台場 大江戸温泉物語の開業を皮切りに、現在までに全国に30店舗以上の旅館を展開している。また旅館の事業再生にも定評があり、代表的な再生事例としてホテルニュー塩原(旧塩原東京ホテル)などがある。

【興味深い点】
大江戸温泉物語はベインキャピタルによる買収の後、大江戸温泉リート投資法人という投資法人を設立し、もともと力のあった旅館の事業再生を加速させている。

ベインキャピタルの力も借りつつ、インバウンド需要などに合わせて旅館の改革に力を入れており、特に  衰退している地方旅館の再生に取り組んだ社会的価を高評価。

また、海外展開に力のあるベインキャピタル が積極的な海外展開よりも、国内の事業の拡大に力を注いでいることもとても興味深い。

 

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1位 KKRによるカルソニックカンセイ株式会社(現マレリ株式会社)の買収

【発表日】  2017/2/21
【取得価格】  498,261(百万円)

【対象企業概要】
カルソニックカンセイ株式会社(現マレリ株式会社は自動車部品メーカーで、1938年に日本ラヂヱーター製造株式會社として創立。のちの1988年にカルソニック株式会社と社名を変更した後、2000年に株式会社カンセイと合併し、現在の社名となりました。現在は自動車サプライヤーとしては世界第7位の売上高です。また買収前は日産自動車の連結子会社でした。

【買収背景】
親会社である日産自動車は2016年10月に三菱自動車の株式を34%取得し筆頭株主となっており、今回の買収で得た利益はその資金に充てようと考えていたと思われます。

また、KKR側としても、今後の自動車業界はEVが主流になると考え、2010年に初の量販型EVを発売した日産の下で、  EV関連部品の実績を積んできたカルソニックカンセイを買収し、独立させることによって、独立メーカーとして成長させる目的があると思われます。

【買収後の動向】
2017年3月日産グループから離脱ののち、2017年5月東京証券取引所第1部の上場廃止。
2019年5月、カルソニックカンセイ株式会社の持ち株会社であるCKホールティングス株式会社がフィアット・クライスラー・オートモービルからマニエッティ・マレリの買収を完了する。
2019年10月、カルソニックカンセイ株式会社はマレリ株式会社に社名変更。

【参考】
KKR、カルソニックカンセイ株式会社の公開買付けを完了

 

 





最後に、その他企業のPEファンドによるM&Aまとめを知りたい方は、M&Aクラウドに会員登録すれば、PEファンドによるM&Aまとめ(2014-2019)をダウンロードできます。

 

 

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