当社の設立は2011年。当時、モバイル・PCゲームの需要が急拡大し、制作会社がクリエイター探しに苦戦していた一方、クリエイター側からは「なかなか仕事を得られない」という声もしばしば聞かれ、両者をうまく結び付けたいと考えたことが起業のきっかけです。随時発生する制作ニーズと各案件の条件に適したクリエイターをスムーズにつなぐ仕組みを構築することにより、より多くのクリエイターが望む仕事で生きていける環境をつくりたい――その思いを胸に、「創ることで生きる人を増やす」をミッションに掲げ、企業の中核となるクリエイターのクラウドソーシング事業を立ち上げました。
現在では、登録クリエイター数は4万人を超え、全国各地のクリエイターと当社内のアートディレクターが連携しながら、クリエイティブの受注制作を行っています。メインの制作物は、ゲーム向けイラストおよび3DCGで、売上の約7割に上ります。イラスト制作では、ゲームの他にも絵本やマンガ、電車内CMの素材やエキナカ広告、グッズ関連の案件なども手がけています。
クラウドソーシング事業以外では、プロジェクト管理ツールの開発・販売を行うSaaS事業や、テレビCM、プロモーションムービーなど、実写中心の映像制作も行っています。皆さんもおそらくご覧になったことがあるような、知名度の高いクライアントの案件も含まれます。
さらに、2018年には、登録クリエイター4万人の働く場を広げるべく、クリエイターに特化した人材派遣・紹介事業もスタート。常に現状に満足することなく、新たな挑戦を続けています。
クラウドソーシングによるクリエイティブ制作を円滑に進めるため、当社ではさまざまな仕組みづくりを進めてきました。その1つは分業制。線画、彩色、背景など、作業工程ごとに得意とするクリエイターをアサインする仕組みです。マンガやアニメ制作の世界で昔から導入されていた仕組みをゲームイラスト制作にも当てはめることにより、制作進行が停滞しにくく、クリエイターにとっては時間を有効活用しやすい業務フローを可能にしました。
分業制の導入と並行して、私たちが注力してきたのが、プロジェクト管理です。分業化によって増えたクリエイターとのコミュニケーションや進捗管理を効率的に行うため、案件別、クリエイター別のスケジュールや進捗を見える化し、一括管理できるシステムを自社開発しました。
制作現場で活用しながら改良を重ねたこのシステムは、業界で好評をいただき、2015年には「Save Point」と名付けて商品化。ゲーム開発会社を中心に、300を超えるプロジェクトと150社を超える企業に導入されています。
こうした活動により、当社は働き方改革への貢献に努める企業として、社会的な評価をいただいています。2017年には、イラスト制作のイノベーションを評価され、一般社団法人at Will Workの「Work Story Award 2017」に選ばれたほか、厚生労働省「輝くテレワーク賞」特別奨励賞も受賞しています。
設立以来、手掛ける事業は多様化してきましたが、それらすべての根底には、当社の経営理念である「創ることで生きる人を増やす」というメッセージが流れています。この基本姿勢は今後も堅持しつつ、次のステージでは、新たなマーケットの創出に注力したいと考えています。
1つの方向性は、新規領域の開拓です。この一環として、マンガやアニメ等の原作に基づいたゲーム、いわゆるIP関連の制作に、取り組み始めました。原作の世界観やキャラクターの姿形を踏襲することが求められるため、ゲーム制作の中でもシビアなジャンルですが、この領域独自のノウハウを蓄積していくことにより、拡大を続けるIPビジネス市場の需要取り込みを図っていきます。
また、受注制作以外に、クリエイターの作った作品を直接販路に乗せていく事業も、伸ばしていきたいと考えています。自社で運営している小説投稿サイトから生まれた作品の書籍出版を始めているほか、新たなジャンルやチャネルの開拓も積極的に検討しています。
さらに、新規マーケット開拓のもう1つの取り組みとして、海外展開も加速していきます。当社が得意とする日本的なテイストが刺さる、中国・韓国・台湾・東南アジアを対象に、顧客開拓とクリエイター発掘の両面で推進していきます。
アジア展開はまだ始めたばかりですが、2018年夏の中国最大のゲームイベント「チャイナジョイ」に出展し、想定以上の反響を得るなど、ニーズの高さを実感しています。商習慣には多少の違いもありますが、ゲーム制作業界は国を超えた文化を共有している面もあり、さほどのギャップは感じません。各エリアの事情に柔軟に対応しつつ、当社のビジネスモデルを展開・進化させ、海外でも「創ることで生きる人を増やす」ことを目指していきます。