ミッション・ビジョン
何をやっているのか?
1935年、現代表の私、柴 泰宏の祖父にあたる五郎が東京・中野で営業を始めた柴田屋酒店は、2023年で創業89年を迎えます。創業当初は、一般家庭向けに酒類を販売するいわゆる「町の酒屋さん」でしたが、現在では、飲食店向けの卸業を軸とした事業を展開。お取引先様は首都圏の約3,000軒を数え、お酒を食事とともに提供するこだわりをもった個店がその多くを占めます。
卸業における当社の特長の一つは、ワインの取り扱いです。一般的に業務用販売では、生ビールやリキュールなどの売上比率が高いのですが、当社の場合、ワインの比率が4割程度に上ります。
また、2001年から他社との差別化としてワインに力を入れ始め、現在では社員約200人のうち、ソムリエの資格保持者が50人以上。品質管理においても、倉庫はもちろん、運搬車両もすべて保冷機能付きとし、選りすぐった商品を最高の状態でお届けしています。
卸を本業としながら、自社で輸入を幅広く手掛けていることも、当社のユニークな点です。ワインやクラフトビール、クラフトジンなど、海外の良品を多数そろえており、飲食店様の中でも、特に個性的な品揃えを志向するお客様にご愛顧いただいています。
89年に及ぶ歴史の中で、当社は常に市場環境の変化を先読みし、時に大胆に舵を切ることで生き残りを図ってきました。約20年前、酒類販売の規制緩和を見越して、一般家庭から飲食店へと販売先を変えたことも大きな決断でしたが、2013年には和食の世界的な普及を追い風に、海外進出をスタート。タイを皮切りに、イタリア、韓国、アメリカにも現地法人を設立し、日本酒をはじめとする国産商品を現地の飲食店様に販売しています。
何を目指しているのか?
2004年に酒類販売の規制緩和が施行され、コンビニエンスストアやスーパーなどで手軽にお酒が買えるようになったのに加え、ECの普及も進んだ昨今では、かつての“酒屋さん”のポジションはもはや失われました。では、これからの時代、市場に必要とされ続けていくのは、どのような業態だろうか――この問いへの答えを模索する中で、私たちがたどり着いたのが“世界SAKE-YA”構想です。
“SAKE-YA”がカバーするのは、お酒の流通のみに留まりません。川上は原料の製造から、川下は一般消費者への提供まで、お酒を軸にしたバリューチェーン全般が含まれます。全機能を社内で完結させたいということではなく、社外のパートナーとも連携しながら、すみずみまで柴田屋のこだわりの行き届いたバリューチェーンを構築していきたいと考えています。
たとえば川上方面では、2018年のM&Aにより、ビール醸造所を店舗内に備えたブリューパブ「ビール工房」を都内で8店舗(当時)展開する株式会社麦酒企画を仲間に迎え、グループ内に製造機能を獲得しました。その後「ZERO LABO」という、マイクロブルワリーより小規模な醸造所を本社1階に設立し、クラフトビールや日本酒(免許上はその他醸造酒)を開始、「SAKEの6次産業化(1次産業×2次産業×3次産業を融合させた業態)」に向けたトライアルを進めてきました。さらに現在は、ビールの副原料であるホップの自社生産に取り組み始めています。消費者に「うちの農園で育てたホップを使った、できたてのビール」を直接お勧めすることができたら、それはお客様にとっても特別感のある一杯となるでしょう。
一方川下方面では、2011年に中野の本社ビル1Fにワインバーを出店。お客様と直接コミュニケーションを図り、SAKEに合う食事も提供するお店として、アンテナショップのような役割を果たしてきました。
2020年秋には、醸造、小売、飲食サービスの3機能を備えた新たなアンテナショップをオープンし、ここから私たちの考える“SAKE-YA”を広く発信していく計画です。
柴田屋酒店のミッションは、「人と人をSAKEで繋ぎ、世界中を笑顔にする」ことです。価格競争の消耗戦に巻き込まれることなく、世界中を笑顔にできる商品を届けていくには、コアビジネスである卸業に加えて、川上と川下の双方に進出していくことが不可欠であると考えています。
グローバル展開も、まだまだこれから本格化していきます。お取引先の広がりに合わせて拠点も増やしていきたいですし、現状では日本からのお酒の輸入に伴う関税が大きくかかっていることから、いずれは現地で生産できる体制も整えたい。お酒だけでなく、お酒に合う和食に関しても、たとえば店の手作り味噌、お客様のその日の献立に合わせて調合する七味唐辛子など、柴田屋オリジナルの商品を提供して、和食の素晴らしさを知るファンを各地に増やしていけたらと、さまざまな夢を描いています。