新素材の研究開発において重要な「精密蒸留」の技術を軸に、クライアントであるメーカー各社の素材開発を支えてきました。現在、以下の2事業を行っています。
●受託蒸留事業
さまざまな化学物質について、お客様のご要望に応じた精度での精製を行う事業です。当社の主要顧客である化学素材業界においては、新しい素材を開発する際、その精製技術をセットで磨いていくことが、高付加価値化につながります。物質の純度が高くなれば、自動車や医療など、品質条件の厳しい分野への応用が可能になるためです。たとえば、リチウムイオン電池なども、使われている素材の純度が高いものほど、宇宙航空用などより高度な分野に用いることができます。
当社では蒸留(液体を蒸発させた後に再び凝縮させ、沸点の異なる成分を分離・濃縮する操作)の技術を用いて、顧客の開発した物質に合う精製レシピを、研究段階から一緒につくります。また、小規模生産の段階においては、顧客に代わって受託で製造を行うこともあります。さらに大規模生産に移行する際には、顧客企業への生産技術の提供、プラントの設計などを行い、全面的にサポート。蒸留技術を軸に、多様なサービスでお客様のものづくりを支援しています。
●プラント事業
受託蒸留事業で培った知見を生かし、製造プラントの構築支援を請け負う事業も行っています。新素材開発が進み、大規模生産に移行するのに合わせて新規プラント設計を依頼される場合のほか、既存プラントの更新・置き換え需要に対応するケースもあります。
当社では、本機の設計前に、実験設備でのテストを行い、実運転で発生しがちなトラブルを未然に回避しています。プラント専業メーカーでも、シミュレーションによる計算値に基づいた設計を行っている会社が多い中、実験設備から得られる生データに基づいて、本機の仕様を決定できる点は、大きな強みとなっています。
このように、精密蒸留技術を軸として、研究開発から生産、プラント設計まで一貫してカバーしている会社は、国内ではほかにありません。約70年の歴史の中で、化成品の高純度精製を行ってきた実績は3,000品目以上に上ります。設備は24時間連続稼働しているため、スピード開発のニーズにも応えることができます。
こうした強みを武器に、当社の顧客企業は、大手総合化学メーカーを中心に、鉄鋼、繊維、機械、光学、医薬品、食品、酒類メーカーにも広がっています。素材にかかわる自社研究を行っているほとんどの会社が当社の顧客と言っても過言ではありません。
当社の主戦場である分離精製の分野では、すでに関連技術が成熟の域に達しており、たとえばIT業界におけるインターネットの登場に匹敵するような、革新的な新技術は生まれにくい状況です。既存の技術や製法の組み合わせ方を工夫し、いかに生産性を高められるかが、今の業界各社の注力ポイントとなっています。
こうした中、当社では今後、強みである精密蒸留技術を深掘りするとともに、蒸留以外の分離精製(ろ過、吸着、遠心分離、結晶化など)の分野においても知見を獲得し、対応できる案件の幅を拡大させていきたいと考えています。
海外の案件獲得にも注力していきます。契約書などをあらかじめ用意しておき、受注後すぐに受託製造を始める「製造即応サービス」と、標準化されたサービスメニューを利便性よく提供する「受託蒸留のパッケージ化」の2サービスを予定しており、特に韓国・中国・台湾等のアジア圏について、集中的に市場開拓を進める計画です。
また、今後大きな伸びしろを見込んでいるのがプラント事業です。同事業は売上高構成比で現在1割ほどですが、将来的には主力である受託蒸留事業と並ぶ水準にまで成長させていく計画です。
上記のような展望の下、中期経営計画では、2023年9月期までに連結売上高12.5億円、連結営業利益2億円を目標に掲げています。