「夢に向かうきっかけになった」M&Aというお見合いを通して、リトルツリー社が掴んだ未来
買い手:株式会社ニュートン・サンザグループ
公開日:
2017年10月、都内を中心に【癒し】と【寛ぎ】をテーマにしたリゾート複合エンターテインメント施設「パセラ」を運営するニュートングループにM&Aを通して仲間入りしたあんしんリトルツリー株式会社。
オリジナルの木製遊具でキッズコーナーのレンタル事業を運営されています。 代表の吉髙 江さんは家具デザイナーとして活躍した後、独立して同社を設立されました。
M&Aと一口に言っても、きっかけやメリット、具体的に変化する点は会社によって様々。そこで今回はM&Aの経緯や実際に大変だったこと、M&A前後の変化について、吉髙さんにお伺いします。
プロフィール
コンサルタントからの紹介がきっかけ
ーーどのような経緯でM&Aを考えられたのですか?
14年間、オーダー家具やインテリア設計などを並行し、再生できる木にこだわったキッズスペースをレンタルするサービス「リトルツリー」を運営してきました。私自身がトラックで遊具やおもちゃを運び、外回りでメンテナンスをこなすというくらいの規模ですが、子供達が笑顔で安心安全に使い続けられるおもちゃを手仕事で届けるという想いを持って事業推進してまいりました。
ただ、小さな会社なのでなかなか事業成長に繋がらず、悔しい想いも感じていた面もあります。そんなときに、コンサルタントの方から話を持ちかけてくれたのがきっかけです。
ーー提案されたときは前向きに検討されていたんですか?
正直、最初は「だまされているんじゃない?」とも思っていました。何社か興味を持ってくれている会社があると言われたのですが、会社に興味を持ってくれていると言われても怪しんでいて(笑)。
コンサルタントの人が直接会いにきてくれて、具体的な話を聞いてから前向きに検討しはじめましたね。12社ほどの候補の中から、実際には3社とお会いしました。
ーーその中でニュートングループとのM&Aを決められた理由は何ですか?
まず、社長と役員の方あわせて4名の方が来てくださった熱量に驚きました。実はパセラのことはニュートングループのみなさまにお会いするまで知らなくて.......。
お話するうちに、リアルビジネスをしている会社だという点も弊社と感覚が一致する点があると感じました。お話を聞いて、店舗を持って、毎日現金を動かして着実に事業を伸ばされているところを本当に尊敬しましたね。
物を作る仕事をしていたので、具体的に事業を進めていく上で一緒に設計ができるかという部分は重視しました。
M&Aは会社と会社の大きなお見合い
ーー具体的には、候補の他の会社とどのような違いがあったのですか?
お会いした時に現状の課題を話したのですが、改善策を真剣に考えてくれるかという点での違いがありました。情報のシェアでなく、きちんと”これからのこと”を一緒に考えてくれたのが印象に残っています。
支援してくれる部分がお金や机上の話だけになってしまうと、将来的に一緒に事業を伸ばしていくのは難しいと思います。自分はM&Aに対して「大きなお見合い」だと認識していたので、お互いイーブンで話せる相手を探していましたし、良い相手がいなければ、苦しくても自社でやり続けようという気持ちがありました。
ーー実際にはどれくらいの期間でM&Aが進めれらたのですか?
実際には、はじめてお会いしてから2カ月半くらいの中でお話を進めさせていただきました。4度ほどお会いし、その後に合意のご連絡を電話でいただくことができました。
グループ代表の荻野社長と話す機会や、「トップ同士では聞きたかったことが聞ききれなかっただろうから」と別席を設けていただいて、各担当の方と面談する機会もいただけたのはとても有り難かったです。
ーー面談を進めていく中で意識していたことはありますか?
お互いにわかりあって、明日から一緒に暮らそうよ!という事と同じなので、自社の中でなにを大切にしているのかを伝えることは注意しました。
また相手の話を聞く上で、前回と同じことを聞かれていないか、という部分にも注意しましたね。繰り返し同じことを聞かれるということは、こちらに不備があるか、信頼されていないということが考えられるので。
組織の姿に夢をもらった
ーーどのような点が変わったと感じていますか?
自分が短期的目標を話すと、「では、3年後や10年後はどう思いますか?」と問いかけ、さらに「考えてみました!」と答えが出てくるようなやりとりができるので、非常に助かっています。
組織として分析するスピートやアイデア出し、実行力からチェックと、明らかにPDCAが回りやすいようになったと感じています。
ーー組織的な行動が加速された、ということですか?
そうですね。事業が衰退しない、こけないようにする仕組みは、近くで見せていただいて、とても参考になります。グループの方も弊社のイベントを手伝ってくださったりと、ファミリーとして迎えてくれるのは嬉しいです。
ーー実際にグループ入りして、まずどんなことをされたんですか?
まず、顧客離れを食い止めることをしました。やろうと思っていることを現状報告し、一緒に取り組むようになったことでより良い事業になることを、共同で伝えていくのが良いのではないか、ということになりました。リトルツリーを利用してくださっている企業へパセラの優待チケットを送り、働いている従業員の方に使ってもらうということもしましたね。そういった具体的な支援でも、リアルビジネスでのパートナーとしてよかったと思います。
ーー前から働かれている従業員の方は戸惑われませんでしたか?
私からの要望として、従業員7名をみんなで連れていきたいとニュートングループの皆様に伝えて承諾していただいていました。そして、実際にグループ入りするという日に、全員を集めて今回の経緯を話しました。
今回の経緯やこれからのことを話し、反応的には実際「仕事のなにが変わるの?」「実感がない」というようなものが多かったですね。安心してもらえるよう、しっかり時間をとって本音で話したので、特に問題はありませんでした。
ーーニュートングループ側の組織は吉髙さんから見てどうでしたか?
社長の意見がしっかりとグループ全体に浸透していることに感動しました。パセラにも行ったのですが「顧客満足度を高めるのにとにかく妥協しない」「食べることに対して楽しくする」という代表の真意がアルバイトにもしっかり伝わっているんです。
私たち6〜7人でもずれてしまうのに、それを守れている組織には憧れを感じましたね。弊社でも従業員が誇りだ、自慢だと言ってもらいたいという夢を持つきっかけにもなりました。
ーーM&Aを通して見えた夢があったのですね。
はい。手前では、費用の心配をせずに、クリエイターの支援をできるようになり、やりたいことができるようになりました。さらに10年間に自分の中で貯めていた物流やBtoCへの展開も実現できる、と実感できたので夢を語れるようになりました。
「うまがあう、ということ。片思いでは難しい」
▲ニュートングループでリトルツリーの窓口を担当している中澤さん
ーーM&Aで大変だったことはありましたか?
検討期間中は、やはり普段通りの事業の運営とM&Aでの打ち合わせを同時並行していかないといけなかったのが、体力的にも精神的にも大変でした。私の場合は、外回りなども多くしていたので、隙間時間を見つけてメールの返信を電話で返すこともしていましたね。
電話の内容をメールに書き起こしてくれるなど、柔軟に対応してくださった担当の中澤さんには本当に感謝しています。
ーーニュートングループの方々と吉髙さんの信頼関係を強く感じました。お話を聞かせていただいてありがとうございます。最後に、これから会社の売却を考える人に向けて一言お願いします。
M&Aは、うまがあう、ということが大事だと思います。どちらかの片思いでは、難しいので短い期間のうちにお互いのことを本音で理解し会えると良いのではないでしょうか。
売却する側は、もちろん自分の会社よりも事業規模が大きい会社と話を進めていく形になると思うのですが、相手がいくら大きな組織でも条件はイーブン。お見合いだと思って一生のパートナーを見<つけて欲しいと思います。
(ライター: すずきせきこ)
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本ページに掲載している情報には、M&Aが成立するに至る経緯に加え、インタビュー時点での将来展望に関する記述が含まれています。こうした記述は、リスクや不確実性を内包するものであり、環境の変化などにより実際の結果と異なる可能性があることにご留意ください。