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【オンラインイベントレポート】Synergy Lunch Fever #3 イートアンドに聞く「3%の本物の見つけ方」

2020/09/23
M&Aクラウドは2020年6月から、「M&Aクラウド」掲載中の買い手企業の皆様に登場いただくオンライントークセッション「Synergy Lunch Fever」をスタートしました。毎月1社、異なる掲載企業より経営者やM&A担当の皆様をゲストにお迎えし、全5回のリレートークを予定。お昼休みの時間を使い、参加者の皆様からの質問にも答えながら、買い手から見たM&Aの今とこれからについて、カジュアルなトークを展開していきます。

9月2日に開催した第3回のゲストは、イートアンド株式会社の文野会長と、M&A担当の経営戦略本部長、加藤取締役執行役員です。 同社は「大阪王将」など、餃子、ラーメンをはじめ18業態を展開し、アジア8か国にも進出。自社製造の「大阪王将 羽根つき餃子」など冷凍食品事業へも事業を拡大しています。
また、会長の文野氏は、過去放映されていた大人気テレビ番組「マネーの虎」に出演していた敏腕経営者として知られています。 今回のウェビナーでは、生存競争が激しい外食業界で安定した経営を続けるコツをはじめ、成功するM&Aの共通点、イケてる経営者の共通点についてなど、ざっくばらんに語っていただきました。

※マネーの虎・・・2001年から2004年まで日本テレビで放送されていたバラエティ番組。一般人起業家が事業計画をプレゼンテーションし、投資家たる審査員が出資の可否を決定するという内容で一躍ヒット番組となった。



ゲスト

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文野 直樹氏(イートアンド株式会社 代表取締役会長)

1980年父親が創業した大阪王将食品(株)(現 イートアンド(株))に入社。 1985年大阪王将食品(株)(現 イートアンド(株))の代表取締役社長に就任。 2011年6月にジャスダック市場へ、2012年11月に東京証券取引所市場第二部、そして2013年12月に東京証券取引所市場第一部へ指定。2017年6月代表取締役会長 就任。 2019年9月大阪王将創業50周年。2020年1月「外食アワード2019」外食事業者部門受賞。

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加藤 達也氏(イートアンド株式会社 取締役執行役員 経営戦略本部長)

大学卒業後、大手小売業㈱ダイエーにて経営企画に従事。その後、外資系コンサルティング会社を経て、B2C領域の小売/飲食/サービス業界におけるリーディングカンパニーである、㈱ドトールコーヒー、㈱テイクアンドギヴ・ニーズ、㈱三越伊勢丹にて、事業開発、M&A・アライアンスを推進。現在は、創業50周年を迎えたイートアンド㈱にて、次世代へ向けた成長戦略立案、組織事業再編やM&Aを担当。


モデレーター

前川 拓也

株式会社M&Aクラウド 代表取締役COO
ホクレン農業協同組合連合会に所属し、100億円規模の収支計画を組む業務を行う。退会後は生産調整されている農畜海産物を直接飲食店に届けるeコマース事業moremoreを2014年に立ち上げる。2年後に事業を売却。事業売却時に感じた不快感と父の会社を継がずに廃業させてしまった悩みを解決するためにM&Aクラウドを立ち上げる。

岡道 俊人

2003年に株式会社平和に入社。東京エリアの責任者として営業部門の統括を行う。 平和時代に経験したPGMホールディングスの大型買収を目の当たりにし、M&Aの世界に興味を持つ。 M&Aクラウドでは、営業部門の責任者として従事する。

イートアンド株式会社 文野 直樹氏(以下、文野氏)
イートアンド株式会社 加藤 達也氏(以下、加藤氏)
M&Aクラウド 前川 拓也(以下、前川)
M&Aクラウド 岡道 俊人(以下、岡道)

パート1 成功するM&Aのポイントは、「社会的課題や大義を持ったトップ」と「最初のインスピレーション」

岡道 7月に開催したウェビナーでは、イー・ガーディアン株式会社の高谷代表と溝辺CFOをお迎えし、Synergy Lunch Fever第2回目として、「成功するM&Aの共通点とは?」というテーマで
  • M&A成功のポイント
  • スタートアップのどこを評価するか?
  • 短期的シナジーと長期的シナジー
を中心にお話頂きました。

前回のハイライトについては今回のウェビナーでも色々聞いていきたいのですが、まずは「成功するM&Aのポイント」について、文野さん、お願いいたします。
文野氏 経営ですから、全てはトップ、その社長ですよね。
トップのやりたいこと、社会的課題や大義に対して、どこまでしっかりと取り組めるか。 もちろんお金儲けは必要だし、個人の成長も必要なんですが。 でも、ただ単にお金を儲けていきたいということではなくて、社会の課題を解決していきながらお金を儲けていきたい、会社を成長させていきたい、そしてそこについてくる従業員全員を幸せにしていきたいという、本当の経営に対する思い。

それがないと、一瞬成長しても続かないし、大きな成功もないと思います。 そういう意味では、経営者の育成や、きちんと勉強している経営者を取り込まないといけないと思っています。 学生時代は遊んでいてもいいけど、社会に出てからは本当に勉強しないとだめでしょう。 加藤氏 M&Aの成功というと、お金の面とか、その時の「今の状態」を指していると思います。 ですが、私は「もう少し先の成長」を見ることが大事だと考えていて。

そのためには、経営者の、どんな事業をやりたいのかという強い想いが明確で、会社や組織にきちんと伝えられるかどうか、そこが成功のポイントになる思います。M&Aでは、その価値観が違う会社が一緒になるので。 私が気を付けているのは、最初の面談の時のインスピレーションです。最初の段階で合う、合わないは大事にしていますね。 最初にアレっ?と思うと、最終的にデューデリジェンスを進めて一緒になったとしても、「やっぱりこうじゃなかった」ということがおきがちで、うまくシナジーが進まないと思いますね。 岡道 イー・ガーディアンの高谷さんも同じことをおっしゃってました。90%くらいは会ったときのインスピレーションで決まると。 文野さんはどうですか? 文野氏 これは本当にそうだと思いますよ。 やっぱりインスピレーションや想い、分かりやすく言うと情熱。情熱が伝わってくる人っていますよね。 だけど、情熱が全く伝わってこない、自分のことばっかり言ってくる、そんな経営者の方もいらっしゃる。そう言ったら失礼ですが。 言っていることとやっていることが違う人って、3日も付き合えば分かります。 やっぱり言行一致って難しい。でも、言行一致してる人だけが成功していますから。 岡道 ということは、2回目の面談は、余程良いなと思うところじゃないと進まないですか? 文野氏 2回目の面談に進むのは本当に3%ですね。 世の中に97:3の法則がどこにでも当てはまって。 97%、ほとんどがダメなんだけれども、3%だけは本物がいますから。 その97:3の3を見つけるために、僕たちも情報の幅を広げて、色々な方と情報交換やお付き合いをしていく必要があると思っています。

スタートアップに重要なのは「情熱」と「鮮明な完成イメージ」

岡道 次は、 「スタートアップ企業のどんなところを評価しますか?」 という質問です。キャッシュフローや人、サービスの完成度の中で、どこが一番重要だと思いますか? 文野氏 僕はやっぱり、情熱、そして人ですね。 スタートアップの場合は人様のお金をお借りしているわけですから、寝食忘れて働くという情熱。 そして、トップ自らがドブ板営業をしていくような、そういう人ですね。

加えて、完成イメージが鮮明になっていることです。努力はしているけど、どこにいきたいのか分からない会社もありますから。 でも、スタートアップの人達とお話させて頂くと、こちらも燃え上がります。そういう人たちと仕事をしていると、楽しくて仕方がないですね。 前川 スタートアップベンチャーは、ミッションやビジョンはありますが、実際に会社を動かさなきゃいけないから売上も大切で。
僕はM&Aクラウドで経営の立場ですが、目先の売上を取りにいくのか、中長期的なミッションやビジョンを目指していくのか、そのバランスが難しいと思っています。 岡道 加藤さん、何かアドバイスを頂けますか? 加藤氏 スタートアップはバイタリティのある方が多いですが、一方資金面での苦労もあると思います。 だからこそ、スタートアップと大手企業をつなぐ、M&Aクラウドの役割がすごく重要になると思いますね。スタートアップと大手企業が、お互いを補完し合うことができますし。 社会の中にM&Aクラウドのような機能ができたことは、とても大事なことだと思います。

イケてる起業家は「身の丈」に合った言動ができる

岡道 スタートアップに紐づく質問で、「イケてる起業家の共通点はありますか?マネーの虎にご出演されているときから、文野さんの考えは変わりましたか?」 を質問させてください。 文野氏 大事なのは「身の丈」です。 多少の絵空事や大風呂敷って言うのは良いんですが、それは身の丈に合った風呂敷だから。身の丈に外れた大ボラを吹くような人って、やっぱり軽いんですよ。 当たり前のことですが、身の丈感と自己責任感があって、言葉の責任の重さを感じながら話ができる、そういう起業家さんがイケてると思います。マネーの虎のときでも何人かいらっしゃいました。

例えばなんですが、ラーメン屋さんて、流行ったらビックリするくらい儲かるんですよ。それでベンツ乗ったりフェラーリ乗ったり、そんなええかっこしいは良くないよね。 そのお金があるんだったら、もう1店舗出店した方が従業員のためになると思うんです。 加藤氏 私も同じですね。 以前一緒に仕事をさせて頂いた中で特に素晴らしいと思ったのは、派手ではなくすごくバイタリティがあるんですけど、控えめで懐が深くて、人の話をすごく聞いてくださった方です。

そういう方達の共通点としては、自分のことをよく分かっていらっしゃる。自分のことがよく分かっていて、さらに、外に出していくエネルギーやバイタリティに溢れている。そういう方が、起業家としてはすごいと思います。

パート2 移り替わりの激しい飲食業界で、安定した経営を続けるには

前川 僕が一番気になっているのが、飲食業界ってすごく移り変わりが激しいということです。 僕の家の周りにも色々な飲食店がありますが、1.2年で撤退してまた新しいお店が入ったり、流行り廃りがとても激しい業界だと思うんですが。 その中でも、御社がずっと続けていらっしゃって50年もの歴史があるというところに、どういう秘訣があるのかなと。 文野氏 このコロナ禍で飲食業界全体が大打撃を受けていますが、でも実はそれは時期が早まっただけのことで。ここ3・4年は、日本の外食産業の未来は本当にあるのか?という話だったんです。 人手不足もあるし、ランチの値段にしても本当に値上げができないという状況の中で、たった数%の利益に対して、上場会社も個人店もそこに参入してくるという状態になっていました。

前川さんがおっしゃったように、流行り廃りのサイクルがあまりにも早くて、ほとんどの方が儲けずに撤退していくという、仕事や商売として成り立っていないお店があまりにも多いんですよ。 そんな中で今回コロナ禍があって、倒産や廃業を含めての判断をする、一つのきっかけになったのではないかと思っています。

やれデザインだとか盛り付けだとか、サービスをかっこよくするだとか、胃袋以外のところを工夫していたお店はやはり継続が難しくなったように思います。 逆に、我々もそうなんですが、地域密着で名物商品がしっかりとあって、店内で職人が鍋を振ってスクラッチで料理している。そんな当たり前のことを当たり前のようにきちっとしているお店が、比較的に残っているように感じますね。 前川 基本ですよね。胃袋を掴むという基本が出来ているところだけが、残っていくんですよね。

飲食で勝ち続けるキーワードは「胃袋直撃」と「脳みそからよだれ」

岡道 「飲食で勝ち続けるためにはどうしたら良いですか?」 というストレートな質問もきています。やはり胃袋でしょうか? 文野氏 胃袋直撃ですね。あと脳みそからよだれ。この2つはキーワードです。 そして、難しい料理じゃなくて良いから、目の前でスクラッチで料理していく、体験型であるということ。 あともうひとつは、名物料理をちゃんと名物料理に仕上げること。 これを守っていたら、飲食はつぶれないと思っています。

それ以外に余計なことを考えると、1年は入るかもしれないけれど、その後はお客さん入らないです。 どういう風にその地域の胃袋をおさめるか、食のルーティンに填めるかということを考えていると、飲食なんて正直、頭の良い大学を出てないなくても、できます。 岡道 「飲食業界のM&Aの動向を知りたいです」 という質問もあります。 文野氏 ドラスティックに、色々と起きると思います。例えば大戸屋さんとコロワイドさんとのことも新聞に載ってますが。 あとは、僕たちは既にそういう体制になっていますが、外食とeコマースとの境目もなくなっていくと思います。 だから、外食とeコマースの合併やジョインは多く出てくると思いますね。でも、それはそれで正解だと思います。

コロナ禍の飲食経営は「エリア」が重要

文野氏 今回のコロナでは、ほとんどの飲食がダメージを受けていますが、よく見てみると特定のエリアの飲食が大きなダメージを受けている。 すなわち、逆にそれほどダメージを受けていないエリアの飲食もちゃんと存在しているということです。

例えば、渋谷や新宿や池袋に通っていた方々の帰着駅のエリア。 こういうエリアでは渋谷や新宿や池袋なんかに出ない分、売り上げも高くなる傾向にあります。コロナが逆作用になっています。 だから、エリアの住み分けと、コロナの影響を本当に分けながら考えていければ、チャンスだと思いますよ。

一方で、ダメージを受けたエリアはここ数年の働き方改革もあって、もう以前のように完全に元には戻るのは難しいでしょうね。 岡道 次は「今コロナの影響を受けている赤字企業の買収や出資は検討できますでしょうか?」 という質問です。文野さんいかがでしょうか。 文野氏 それはできますよ。
赤字になったという理由が、コロナや先ほど言ったエリアということであれば、エリアが悪いわけで、そのコンテンツが悪いわけではないですから。それは全く問題ないです。 加藤氏 全く問題ないです。
「今」赤字であるということよりも、次の成長やシナジーの可能性の方が大事だと思うので。 前川 コロナ前後でM&Aの考え方や、見るべきポイントは変わっていますか? 加藤氏 私は変わっていないですね。
飲食業の場合は、企業価値の算定を直近でやると低くなってしまうんです。 会社の価値が毀損してしまっている状態なので、逆に買い手側としては今はチャンスだと感じています。 前川 今コロナの状況でも、97:3の3%の会社と出会えれば積極的にいきますか? 文野氏 もちろんです。 岡道 次に、事前質問で多かったのが「外食産業へのコロナの影響と、感染予防面および経営上の対策で、他社と差別化して何か取り組んでいますでしょうか?」 ですが、いかがでしょうか。 文野氏 起きたコロナに対して店舗でどうやって防御していくかというのは、一般的な外食がしていること以外に何もないですね。客席を間引きしたりなどです。 そんなことよりも、スクラップアンドビルドが外食のそもそもの戦略だということを、もう一度しっかり考えてみる。

何度も言いますが、コロナのダメージはエリアによるんです。そのダメージがひどいエリアで頑張っていても、将来は見出しづらい。 だから僕たちは、そんなエリアからはさっさと抜けて、スクラップアンドビルドを活発にするなら今でしょ、ということを戦略の軸にしています。

僕たちの外食事業も影響を受けており、数字も厳しい状況だといえます。でも仕方ないじゃないですか?誰のせいでもないです。 そんなことよりも、早くそこから抜け出すのが一番大事ですね。

長く続けている飲食店には「のれん」がある

前川 飲食店を買う場合、「味」も大事だと思います。 文野さんや加藤さんがこっそり行って、お客さんとして食べて帰ることはありますか? 文野氏 もちろん現場の確認が全てですから、しますね。 僕たちが思う外食の評価基準は「長く続けている会社さん」ということが大前提。 流行っている店とかトレンドの店は候補対象には入れていません。流行っているお店というのは、いわゆる水商売なんですよ。水は上から下にしか流れない、すなわち逆らえない、不安定な商売なんです。そういう、余儀なくされる水商売は絶対嫌ですね。

一方でつぶれない会社というのは、その地域に溶け込んでいて、その地域の人たちの食のルーティンに填まっている店。そういうのれんは実はたくさんあって、そこに興味があります。

地域に定着しているドミナントののれんは、世代が変わっても受け継がれるもの。35年や40年続いていて、45年目につぶれることはそうないと思っています。 つぶれるとしたら廃業でしょう。でも廃業をするのは勿体ないので、そんなのれんを見つけていきたいと思っています。

お互いが補完し合ってシナジーを産み、のれんを海外に広げていきたい

岡道 次に「シナジーはどういった点で捉えてますか?その際の成長ストーリーはどのように描いてますか?」 という質問です。 文野氏 シナジーは、補完していくということもあるし、多くありすぎて難しいかな。 でも、お互いが成長しあって、10年後にうまい酒を飲みながら良かったねと笑いあえるイメージができるパートナーなら、成長ストーリーは自動的に描けると思います 加藤氏 難しいですね、組み合わせとか補完関係とか色々ありますが。 ビジネス的にはビジネスモデルを見て、どこが補完関係になるのかとか、どこにスケールメリットが出るのかという点は見ます。

でもそれが、その後の成長ストーリーにどう結びつくかというのは、本当に難しくて。 2つが組み合わさったときに新しいことが見えるというのが、一番WinWinの関係かなと思います。 前川 飲食店が飲食店をM&Aをする場合は、掛け算というよりも足し算のシナジーという意味合いが強いと思うんですが。 今だと、人が足りないから飲食店を買う感じなのか。 それとも、先ほどのれんと言う話があったので、のれんを買うという意味合いなのか、どちらでしょうか。 文野氏 うちの場合はのれんです。
僕たちの業界は千三つのように上手くいくもの、いかないもの、あるいは上手くいってもすぐダメになるものなど色々ありますが、やはり信用できるのはのれんなんです。 僕たちは外食に関しては海外展開も軸の一つに考えていて、アジア、特に中国。 そこに対して、ストーリーがあってドミナントで、物語があるのれんを、たくさんコンテンツとして持ちたいと思っていて。このエリアではこののれん、このエリアではこののれん、こういう戦略をイメージしています。

外食の方と組む場合は、せっかく育てた、あるいは親から継いだのれんを、国内はさることながら、海外に一緒に出て、もっと大きくしましょうと考えています。 そのときに、ひとつよりも、たくさんののれんがあった方が可能性は膨らむだろうと思っているんです。

パート3 イー・ガーディアン株式会社からのトークリレー「冷凍食品業界へ進出のきっかけ」「M&Aの投資回収への考え方」

岡道 前回のイー・ガーディアンの高谷さんと溝辺さんからお二人に質問を頂いております。 「冷凍食品の餃子やチャーハンなど色々出されていると思いますが、冷凍食品に進出するきっかけは何だったのでしょうか」 を、お聞きしたいとのことです。 文野氏 僕は親から餃子専門店を受け継いで、そこからレストランビジネスを展開して成長しました。 そのレストランビジネスを通じて成長していく中で、本当に感じたのは「流行り廃り」です。外食はいつまでも流行り廃りから抜けきれない、どこまでいってもある。 しかも外食の場合、センスの部分などは経営者の層が若ければ若いほど有利に働く部分があります。お客さんと経営者との年齢が近い方が強い。

僕が30代でお客さんと同じような年齢の時に色々な業態を作ったときは、びっくりするくらい成功しました。出すブランド出すのれん全てが成功して「何これは」と思っていた時期があるくらいです。

ところが、僕が40代になったときに流行っていたのは、30代の経営者の店でした。 そこで、飲食を何十年もしていったら、競争力がなくなると気付いて。人の管理や店のマネジメントよりも、このブランドを使って装置産業に入ろうと思いました。 装置として、もう少し外食の裏側にあること、そして餃子の王将さんのやらないことをやろうと考えた時に、冷凍食品だったんです。 冷凍食品はM&Aもやらずに業務提携もやらずに全部自分たちで考えていったんですよ。 岡道 冷凍という形で、コロナ禍でも売上も落とさずにということですね。そこはイー・ガーディアンの高谷さんもすごいなと仰っていました。 文野氏 コロナ禍の中ですが、冷凍食品のお陰で乗り切れている感じです。

投資回収の判断は、最終的に「想い」に収束される

岡道 次に溝辺さんから、投資回収についての質問です。
「例えば投資回収期間で、何年間で回収するものじゃないと投資しないのか。内部収益率みたいなものを使って、それを超過すればM&Aしようとなるのか。それとも全然別の考え方をされるのでしょうか」 投資回収について、加藤さんいかがでしょうか。 加藤氏 当然ファイナンスですから、考えないといけない問題です。 例えば、EBITDAや投資回収5年くらいを軸にどうかとか、ディスカウントキャッシュフロー法や類似比較法など、色々あります。 そしてその会社のブランド力やのれんの価値。これは形のないものなので明確にするのは難しいんですが。

ただ、そういった様々な指標がある中で、最後の統合比率や買うことを決めるのは、実は「エイッ」という部分が大きいと思っています。 最終的には、相手の経営者や一緒にやっていくという気持ち、そして我々の想い。そういうところに収束されると思います。 前川 今の飲食店だと、EBITDA5倍が基準となっているのでしょうか? 加藤氏 そうですね。ブランドがあると7とか8とか、あくまでも目安ですね。 前川 「のれんがあるということは、歴史が古いという意味合いもあると思います。そうすると、設備や内装などが古く修繕が必要なケースもあると思いますが、その場合バリュエーションに影響が出ますか?」 という質問がきています。 加藤氏 修繕費などは見ます。
修繕が必要な部分があれば、それも将来の企業価値に大きなところなので。 前川 加藤さんの方で見積りをして金額を出して、そこから引き算でバリュエーションを出す形でしょうか? 加藤氏 そうですね。
一般的な金額の出し方からその会社の独自の労務的なポイントや修繕費などを足し引きして、バリュエーションを見ていきます。

イートアンドグループに入るメリットは「販売網や事業領域、そして発想の枠の広がり」

岡道 「イートアンドクループにジョインしたときのメリットを教えてください」 という質問ですが、文野さんいかがでしょうか。 文野氏 イートアンド、プラスアンドという名前の通りで。 僕たちは外食、冷食、中食、メーカーとして、海外も含めて、会社や関連業態をいくつか持っていますので、販売の仕方や横広がり、事業ドメインは、確実にうちの会社に入ったら広がりますよ。

そして発想を広げるような会話やディスカッションも毎日のようにしているので、発想も広がります。 外食、冷食、中食、色々な会社の人が同じホールディングスに集って、それぞれの話をそれぞれの立場からしていく中で、気付きもたくさんあります。 加藤氏 それは私も感じますね。
私はずっと店舗ビジネスが長いんですが、そういう視点からの発想と、メーカーの人の視点の発想はやっぱりちょっと違うんです。経営会議でも、違う視点から出る意見はなるほど、と思います。 自分の発想の枠が広がるというのは、すごく感じています。 岡道 次に「イートアンドさんが出資や買収を検討するとしたら、最短どのくらいでクロージングできますか?」 という質問です。 前川 飲食で多いのは、売り手さんと買い手さんが初期にコミュニケーションを取ってから、だいたい3~4ヶ月というイメージですね。 加藤氏 そうですね、3ヶ月くらいは手続きで必要です。

次回ゲストへの質問リレー:「働き方のジレンマ」「ブロックチェーンの未来」、「社名に込めた思い」

岡道 次回の9月16日のゲストは、株式会社イノベーションの代表取締役の富田様、株式会社ウィルズの代表取締役CEOの杉本様です。 お二人から、富田様、杉本様にご質問をお願いいたします。 文野氏 働き方の提案や合理化・効率化を提案されているイノベーションさんには、このコロナ禍での在宅勤務の総論と各論のジレンマを、どのような形で成功性を持たせるのか質問したいです。僕たちも在宅勤務に関して総論は賛成ですが、各論を見ると不公平やデコボコ感があると感じているので。 ブロックチェーンを活用した株主の管理をされているウィルズさんには、ブロックチェーンの未来はどうなっていくのかを、伺いたいです。 加藤氏 私は、富田さんがイノベーションという社名に込められた想いを伺いたいですね。 また、今まで色々なイノベーションをされてきたと思いますが、その経験から得られた、組織作りをする上でのイノベーションで大切なことについても伺いたいです。 社名つながりで、杉本さんのウィルズという社名も、どのような想いで付けられたのかも気になります。

リクルートご出身ということで、リクルートの考え方にある「WIll Can Must」をよく聞きますが、そこから社名を付けられたのかを伺いたいです。 岡道 最後にお二人からひとことお願いします。 加藤氏 弊社は10月1日からホールディングス体制が整いました。
その目的のひとつにM&Aやアライアンスを積極的にやっていきたいという意思を込めているので、ご縁がある会社さんと一緒にやっていきたいと考えています。 M&Aクラウドさんを通じてお話があればと思いますので、宜しくお願いいたします。 文野氏 この時代、ホールディングス体制を取って、寄ってたかって勝ち抜いていくことも大事になってきたと感じています。 僕たちはこれから食のマーケットについて、アジアの、特に2時間圏内の時差のないところにエリアを広げていこうと思っています。 そういう形で、陣地を広げていくということを一緒にできる人と組みたいと考えていますので、ぜひ宜しくお願いいたします。 岡道 文野さん、加藤さん、本日はありがとうございました。



なお、今回のオンライントークセッションのフル動画を以下からご確認いただけます。

動画はこちらから


第5回のイベント(株式会社ユーザベース、10/21開催)についてはこちらかお申込みいただけます。

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