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事業譲渡とは?事業譲渡の活用シーンと、売り手企業にとっての負担・デメリット


公開日:2021年5月28日  最終更新日:2023年1月23日

事業譲渡とは?

事業譲渡とは、会社の事業の全部または一部を第三者に譲渡することです。

工場設備や商品などだけでなく、ブランドやノウハウなどの無形資産も譲渡することができます。また、どの事業を譲渡するかも、売り手企業と買い手企業が自由に決めることができます。

この自由度の高さから、事業譲渡を活用することで、売り手企業は不採算事業を売却して、より力を入れたい分野に投資するなどといった、事業の選択と集中が可能になります。

他のM&A手法との違い

M&Aとは「Mergers and Acquisitions」(合併と買収)の略で、事業譲渡もこれに含まれます。 事業を譲渡するM&A手法としては、株式譲渡と会社分割が挙げられますが、譲渡する対象や譲渡の範囲が異なります。

株式譲渡との違い

株式譲渡とは、株式を譲り渡すことをいいます。株式の過半数が譲渡された場合は、買い手に経営権が移転します。

事業譲渡では事業を切り出して一部のみ譲渡することもできますが、株式譲渡は会社全体を譲渡することです。そのため、株式譲渡では、契約関係がそのまま引き継がれる点では手間がかかりませんが、負債や債務も引き継がれることとなるため注意が必要です。

また、事業譲渡では売り手側の企業が対価を得ますが、株式譲渡では株主(経営者個人も含む)が対価を得ます。

会社分割との違い

会社分割とは、その事業に関して有する権利・義務の全部又は一部を分割して他の会社に承継させることをいいます。この「権利・義務」は事業の一部でも全部でも構いません。事業譲渡は名前のとおり売買行為なのに対し、会社分割は組織再編行為にあたります。

会社分割はグループ企業内でよく見られるM&Aで、会社内の事業を整理したり、事業を独立させたりするために行われます。

また、事業譲渡では事業や資産、権利などを個別に選択して契約を結ぶ必要がありますが、会社分割ではそれらが包括的に引き継がれます。

事業譲渡の活用シーン

事業譲渡は、合併と異なり売り手企業の法人格を存続させながら、そして株式譲渡と異なり売り手企業の経営権を従来の株主の手元に残しながら、事業の一部のみを譲渡できるのが特徴です。

このような特徴から、事業譲渡は以下のような場合に活用されています。

1:事業の選択と集中の手段

事業譲渡では、売り手企業を法人として存続させたまま、事業の一部を選択して譲渡することができます。

つまり、 複数所有する事業のうち、赤字の事業のみを切り離すことも可能で、譲渡によって得た資金を元に残った事業を成長させるために投資するといった「事業の選択と集中」のための手段としても利用できます。

なお、事業譲渡ですべての事業を譲渡する場合でも、売り手企業の法人格は継続可能です。したがって、事業譲渡ですべての事業を譲渡した後に新規事業を始める場合も、同じ法人格を引き続き使用でき、新会社設立の手続きは不要です。

2:後継者問題の解決

後継者不在の企業でも、事業譲渡によって買い手企業に事業を存続してもらうことで、事業に関わる従業員や取引先への影響を最小限に留めることが可能です。なお、雇用契約や取引基本契約は、買い手企業が改めて締結し直す必要があります。

事業譲渡の4つのデメリット

事業譲渡をしようとする企業(売り手企業)にとって、以下の4項目は大きな負担になります。事業譲渡を活用する際のデメリットとも言えます。

1:従業員への説明が必要になる

事業譲渡するにあたって、従業員が買い手側の企業と雇用契約を結び直す必要があります。

売り手企業と買い手企業で事業譲渡に合意しても、従業員が買い手企業の下でで働くことに納得しないことも考えられます。もし、事業の中心となっている従業員が買い手企業との雇用契約を拒否してしまえば、事業の価値が下がってしまい事業譲渡自体が頓挫する可能性もあります。

従業員が、買い手企業でも安心して働き続けられるように、今までと何が変わるのか、何が変わらないのかを丁寧に説明することが求められます。

2:取引先への説明が必要になる

譲渡する事業の取引先への対応が必要となることも、事業譲渡のデメリットです。 

事業譲渡では、契約関係は当然には買い手企業に引き継がれません。そのため買い手企業が売り手企業の既存取引先と取引を希望する場合には、事業譲渡について説明し、取引先と改めて取引基本契約を締結し直さねばならないケースもあります。

3:譲渡益に課税される

株式譲渡と比較した場合の事業譲渡のデメリットとして、企業の譲渡益に課税されることが挙げられます。

事業譲渡では、株主ではなく会社が譲渡対価を受領するため、譲渡益に対して法人税が課税されます。なお、譲渡取引が課税対象取引に該当する場合には、会社は当該譲渡によって得られた額に対して消費税を納付する義務を負う点にも留意しましょう。

消費税は、製品の販売やサービスの提供などの取引に対して課される税です。課税対象取引には、事業者が国内において対価を得て行う資産の譲渡等が含まれます。法人税法上の譲渡益がマイナスであっても、消費税は課税される場合があります。

例えば、帳簿価額100百万円の課税資産を80百万円で譲渡した場合、法人税法上の譲渡益はマイナス20万円(=譲渡損)となりますが、消費税法上は80百万円に対して10%の消費税が課税されるため、税込で88百万円の対価を収受することとなります。

法人税とは、会社の1年間の事業活動によって生じた所得に対して生じる税です。事業譲渡の売り手は企業であるため、事業譲渡で利益(譲渡益)が発生すれば法人税の課税対象となる所得を構成します。なお、事業譲渡の譲渡益は、売却金額から、譲渡した資産の税務上の帳簿価額を差し引いて算出します。

出典:消費税のしくみ|国税庁

4:株主総会の特別決議が必要になる

売り手企業は、事業の全部の譲渡をする場合や事業の重要な一部を譲渡する場合には、原則、株主総会の特別決議を得る必要があります。 特別決議を得るには、原則、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、その出席株主の3分の2以上の多数の賛成を得る必要があり、普通決議に比べ決議要件が厳しいため、決議を得るハードルは相応に高くなっています。

ただし、一部例外もあります。たとえば、事業譲渡により譲渡する資産の帳簿価額が、売り手側企業の総資産の20%以下の場合などは、株主総会は必要ありません(簡易手続)。

また、買い手会企業が売り手企業の議決権の10分の9以上を有するなどの理由で特別支配会社である場合も、株主総会決議は不要です(略式手続)。

事業譲渡の活用シーンとデメリットまとめ

事業譲渡は、従業員をはじめとするステークホルダーへの説明や株主総会特別決議による承認など、実行までに乗り越えるべき壁は少なくありませんが、事業の選択と集中から事業承継まで広く活用可能です。

株式譲渡や会社分割など、他のM&A手法のメリット・デメリットとも比較衡量しながら、自社の課題に最適な解決手段を選択しましょう。

 

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