リンク・セオリー・ジャパン生みの親佐々木力氏の功績
公開日:2018年3月1日 最終更新日:2023年1月23日
アメリカで生まれたブランド「Theory」を日本のマーケットに届けたリンク・セオリー・ジャパン創業者佐々木力氏。実はファーストリテイリングのグローバル事業を牽引した人物でもありました。2011年に逝去するまで、「起業、上場、買収、売却」を経験した稀有な起業家の足跡にフォーカスを当て、どのように会社を発展・再編させてきたか、一代で約200億円と言われる資産を築いた佐々木氏について紹介します。
目次
リンク・インターナショナル設立までの歩み
佐々木氏は岐阜県で生まれ大学卒業後、名古屋の繊維商社タキヒョー株式会社に入社。2年目の25歳でニューヨーク勤務、3年間勤務の後に香港でWHK Holdings Company Limitedの社長に就任、その後総合アパレル大手のワールドから出資を受け同社の香港駐在取締役及びワールドの最年少役員に就任(当時35歳)しました。佐々木氏はリンク・インターナショナルの設立までのビジネスキャリア、通算21年間を海外で過ごしました。この佐々木氏のグローバルなキャリアが後のアメリカで生まれたブランド「Theory」を、日本のマーケットに根付かせることができた背景にあると考えられます。
リンク・インターナショナルの設立
1997年佐々木力氏の友人であったアンドリュー・ローゼンがエル・タハリーとアメリカNYで設立したのが「Theory」でした。セオリーは革新的でコンテンポラリーなスタイルを提供するファッションブランドとして生まれました。1998年、佐々木氏は株式会社リンク・インターナショナルを設立、翌年セオリーブランドの輸入が始まり日本のマーケットにセオリーは進出しました。2000年には米国のセオリーグループとライセンス契約を締結。佐々木氏はリンク・インターナショナル創設にあたり、大手アパレル出身の畑誠氏(現リンク・セオリー・ジャパン社長)、メガバンク出身のCFO大西秀亜氏(現在は転職し経営コンサルタント)とのチームワークで同社を大きく成長させていきました。
リンク・インターナショナルの米セオリー本社買収
佐々木氏は上場を目指していましたが、米セオリー社にロイヤリティーを支払っていることが懸念材料となっていました。そのためファーストリテイリングの柳井氏に今までと逆の立場になるための買収を相談、その結果2003年にファーストリテイリングと資本提携することで米セオリー社の買収に成功し経営権を取得、2005年6月マザーズに時価総額535億9500万円で上場を果たしました。
またセオリー買収に際して国内事業を2代目となるリンク・インターナショナルに移管。初代のリンク・インターナショナルはリンク・セオリー・ホールディングスとして持株会社化しました。佐々木氏はリンク・セオリー・ホールディングスの代表取締役社長に就任すると同時にFast Retailing USAの取締役会長兼CEOに就任しました。
ファーストリテイリングによるリンク・セオリー・ホールディングス完全子会社化
2009年7月、ファーストリテイリングがリンク・セオリー・ホールディングスをTOBにより完全子会社化、佐々木氏はファーストリテイリングに入社。佐々木氏はリンク・セオリー・ホールディングスの代表取締役会長、Fast Retailing USAの取締役会長兼CEO、さらにファーストリテイリングのグループ上席執行役員にも就任しました。また11月1日付で柳井氏の長男の柳井一海氏がゴールドマンサックスの投資銀行部門を経て、アメリカ、リンク・セオリーの会長に就きました。これには後継者としてではなく、経営感覚を養うために一社員から異動させたと考えられています。
リンク・セオリー・ジャパンの設立
翌年、ファーストリテイリングがセオリー事業の再編を発表。2010年6月1日付で二代目リンク・インターナショナルが存続会社となり、リンク・セオリー・ホールディングスと小売店舗の運営を行っていたリンク・セールスコーポレーションを吸収合併する買収が発表されました。この合併により、被合併会社のリンク・セオリー・ホールディングスとリンク・セールスコーポレーションは解散となり、商号変更によってリンク・インターナショナル(二代目)はリンク・セオリー・ジャパンとなりファーストリテイリングの100%子会社となりました。
2011年8月9日スキルス性胃がんにより佐々木力は亡くなりました。当時200億円あると言われていた資産は元妻との間の3人の子供(長男は人気K-POPアイドルBIGBANGの日本へのプロモーションを手がけ、昨年4月覚醒剤取締法違反で逮捕された佐々木現氏)、事実婚状態であった萬田久子氏との息子、部下で元モデルの愛人との娘、の計5人の子供達に相続されました。また佐々木氏の後任にCOOであった畑誠氏がリンク・セオリー・ジャパンのCEOに就任しています。
2009年に佐々木氏がファーストリテイリングに入社してからは顕著にセオリー含むグローバルブランド事業の売上が伸びています。また2011年佐々木氏が亡くなった後も急成長を続けており、ファーストリテイリングのユニクロ事業に継ぐ柱として、今後のセオリー事業も期待されています。
ライター:豊福ジャン (M&Aクラウドリサーチャー)