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TOB(株式公開買付け)とは?種類や事例、TOBをする企業・される企業のメリットなどを解説


公開日:2021年3月19日  最終更新日:2022年11月22日

TOBとは?TOBの種類と事例を紹介

TOB(Take Over Bit)とは「株式公開買付け」のことで、買付者が買付けの期間や価格、株数等を公告した上で、証券取引所を通さずに、大量の株式を買付ける方法のことです。一般的なTOBは、対象となる会社の経営権、株主の議決権の取得を目的として行われます。

TOBには友好的TOBと敵対的TOBがあり、それぞれに手法や目的が異なります。

友好的TOBの意味と事例

友好的TOBは、株式の買収を対象企業の経営陣が了承した上で行われるTOBのことを指します。

日本国内で行われるTOBは、グループ企業の完全子会社化をなど目的として行われる友好的TOBが多くなっています。

例えば、2020年にはNTTによるNTTドコモの完全子会社化が、買付総額4.3兆円・国内過去最高額のTOBとして話題になりました。NTTによると、NTTドコモの完全子会社化は、業績が伸び悩む同社の競争力をグループ一体で強化することが目的でした。

NTT以外にも、2020年は大型の友好的TOBが多く実施されました。ソニーがソニーフィナンシャルホールディングスを完全子会社化したほか、伊藤忠商事はファミリーマートに対するTOBを実施しています。

敵対的TOBの意味と事例

敵対的TOBとは、対象企業や大株主に対し、事前の通知や合意なしに仕掛けるTOBのことを指します。敵対的TOBは、買付側がシナジーを見込んでいるが対象企業が買収に同意しない場合の経営権獲得や関係性強化の手段として、あるいはアクティビストファンドが発言権を強めるための手段などとして利用されることがあります。ただし、友好的TOBと比べると、その数はわずかに過ぎないのが実態です。

シナジーを見込んだ近時の敵対的TOBとしては、2019年に旅行業大手のエイチ・アイ・エスがホテル事業を営むユニゾホールディングスに仕掛けた例があります。

また、アクティビストファンドによる敵対的TOBとしては、2007年に米・スティールパートナーズがブルドックソースに仕掛けた事例などが挙げられます。

敵対的TOBを仕掛けられた企業には買収防衛策で対抗する手段があり、スティールパートナーズとブルドックソースの事例では、毒薬条項(ポイズンピル)と呼ばれる買収防衛策を活用したブルドックソース側が防衛に成功しました。

MBOとTOBの違い

TOBは「株式公開買付け」のことで、買付けの「方法」を指します。一方、MBO(Management Buyout)は「現経営陣による自社の買収」のことで、買付けをする「主体」と買付けの「対象」を指す語です。両者は「MBOのためにTOBという手段を使うことがある」という関係性です。

TOBによる買付けが行われるMBOとして、上場企業など有価証券報告書の提出義務がある企業の経営陣が既存株主から株式を買い付けて経営権を取得するケースが挙げられます。 

MBOは非上場会社でも事業承継や事業譲渡のために行われることがありますが、TOBによる買付けが義務づけられるのは上場企業など有価証券報告書の提出義務がある企業の経営陣によるものに限られています。

上場会社のMBOは、多くの株主の利害に関係するため、厳格な手続きによって買付け過程の透明性が担保されている(のちほど詳しく解説します)TOBによることが求められるのです。

TOBする企業(買付け側)のメリット(効用)

TOBは一定の条件を満たすことで義務として強制される買付方法ではあるものの、買付側にとっては以下のようなメリット(効用)が見込まれます。

1:買付金額を想定しやすくなる

証券取引所を通して株式取得を行う場合、自身の大量注文が原因となって株価の急上昇を招き(マーケットインパクト)、想定していた以上の費用をかけて買付けを行わなければならない可能性が高まります。

これに対し、TOBは市場外で一定の価格で株式の買付けを行うため、株式取得にかかる費用が始めからほぼ確定することができます。

ただし、競合他社による介入で自社よりも高いTOB価格が提示されたり、対象会社の買収防衛策が発動すれば、必ずしも想定通りの価格で買付ができるわけではありません。

2:募集株式数が集まらない場合は買付けを行わずに済む

TOBによる買付けの場合、募集する株式に上限と下限を設定することができ、募集した株式数が上限を超えたり、逆に下限に達しなかったりした場合には、その株式を取得しないという選択ができます。

例えば、対象会社の発行済株式数の過半数を抑えたい場合、下限を51%に設定すれば、それを下回った応募しか集まらなかった場合に買付を行わないことができます。

このように募集株式数の下限・上限をうまく調節することで、「市場で対象会社の株式を買い進めたにも関わらず、意図する株式数を集められなかった」というような失敗を避けることができます。

TOBされる企業のメリット(効用)

TOBによらないM&A(企業の合併と買収)についても同じことが言えますが、自社より大きい企業に買収される場合、買い手企業の経営基盤や潤沢な資金によって、売り手企業の経営状況が改善される可能性があります。さらに、買い手企業の資金や生産体制、営業力などを活用することで、新たな事業拡大のチャンスも出てきます。

なお、TOBが実施される際には、買付け者の申請手続きに対して意見表明書を提出する義務があります(TOBの手続きについては後ほど詳しく解説します)。買付け者に対して自社の方針をあらかじめ表明できる機会が法的に確保されていることは、TOBの効用(メリット)といえるかもしれません。

一定規模を超える買付けはTOBでの実施が義務に

一定規模の株式等の買取りにおいて、取引の情報を適切に開示して株式の公平な取引機会を設けるため、法律によりTOBが義務付けられるのが「義務的公開買付け」です。ここでは、義務的公開買付けとなる代表的な要件について解説します。

3分の1ルール

買付け後の株式等所有割合が3分の1を超える場合には、TOBによる買付けが義務付けられます(3分の1ルール)。同ルールは、株式等所有割合が3分の1超に達するまでの買付け方法の違いにより、3つのパターンが存在します。

パターン1:60日間で10名以内の株主からの買付け

証券取引所外での取引を行った結果、株式等所有割合が3分の1超に達する場合、60日間で10名以内の株主から買付けを行った場合は、3分の1ルールが適用されTOBが義務付けられます。

パターン2:立会外取引など特定売買での買付け

立会時間外取引のために東京証券取引所が提供する電子取引ネットワークシステム「ToSTNeT」などで行われる立会外取引をはじめとした証券取引所内での「特定売買」で株式等所有割合が3分の1超に達する場合も、3分の1ルールの適用対象です。

パターン3:急速な買付け

さらに証券取引所内・外での「急速な買付け」により株式等所有割合が3分の1超に達する場合も、3分の1ルールの適用対象になります。「急速な買付け」とは、対象企業の発行済株式の10%超を3ヶ月の間で買付けした場合で、そのうち証券取引所外または特定売買で5%超の株式取得を行い、結果として株式等所有割合が1/3を超えた場合を指します。

5%ルール

証券取引所外での買付けで、買付者が保有する株式の割合が対象企業の発行済株式全体の5%を超えた場合、TOBが義務付けられます。

ただし、著しく少数の者から買付けを行う場合(TOBの買付けを行う相手方の人数と、TOB実施日前の60日以内に証券市場外にて買付けを行った相手方の人数を合わせた人数が合計10人以下の場合)は、TOBを行う義務はありません。

上記2つのルール以外にも義務的公開買付が適用されるルールはいくつか存在します。また、適用除外も存在しており、義務的公開買付に該当するか否かの判断には高度な専門性が必要です。

TOBの手続きの概要

TOBの手続きは、以下のようになっています。TOBは会社支配権等に影響をおよぼす可能性があるため、買付け過程の透明性・公正性を高める目的の手続きが多くなっています。

公開買付開始公告と公開買付届出書の提出

まずは、買付者が公開買付開始公告を行い、内閣総理大臣から委任を受けた関東財務局長へ公開買付届出書を提出します。公告は、電子公告または日刊新聞紙への掲載によって行います。

意見表明報告書の提出

対象会社は公開買付に関する意見表明報告書を提出します。意見表明報告書は、公告が行われてから10営業日以内に、関東財務局長に提出しなければいけません。

公開買付説明書の交付

買付者は公益または投資家保護のために必要かつ適当とされる事項を記載した公開買付説明書を売り付けを行おうとする株主に交付します。

公開買付報告書の提出

また、公開買付期日最終日の翌日に、応募株式等の数、その他内閣府令で定める事項を公告または公表したうえで、同じ内容を記載した公開買付報告書を関東財務局長に提出する必要があります。同報告書の提出をもってTOBの手続きが完了します。

再び注目を集めるTOBについて理解を深めよう

2019年、国内企業のM&A数は過去最高を更新しました(レコフ調べ)。2020年にはNTTが過去最高の買付総額となるNTTドコモのTOBを実施するなど、近時、TOBを伴う買収は活況を呈しています。

M&Aに関する情報を今後も正確に把握するためには、TOBに対する理解を深める必要がありそうです。

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