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株式移転とは?4つのメリットと株式移転の主な手続きを紹介


公開日:2021年5月27日  最終更新日:2022年11月18日

株式移転とは

株式移転とは、会社法が予定している会社の組織再編方法のひとつで、既存の株式会社が親会社を設立して傘下に入ります。設立する親会社は1社に限られますが、子会社は1社に限られません。

一般的には、持株会社を設立する際の組織再編において多く用いられます。この株式移転と株式交換の最も大きな違いは、新設する会社に株式を取得させるか、既存の会社に株式を取得させるか、という点です。

株式移転を行う目的

株式移転は、系列会社をまとめて「〇〇ホールディングス」のような持ち株会社を設立する方法として選択されることが多い組織再編の形態です。

グループ全体で経営統合を図るために、各社の上場は廃止して持ち株会社に株を移し、持ち株会社の株のみを公開している企業も増えています。

異なる文化を持つ企業の統合をより穏便に行うために、株式移転をする場合もあります。

株式移転と株式交換の違い

株式交換も会社間の親子関係を構築することができる組織再編です。 株式移転と株式交換は組織再編の方法として似ていますが、決定的に異なるのは、新設会社を親会社とするか、既存会社を親会社とするかという点です。

株式交換では、子会社としたい会社の株式を、親会社となる既存会社の株式または金銭等の資産と交換し、完全親会社になります。

株式移転では子会社株式の代わりに親会社株を交付するため、親会社は株式会社に限られています。一方、株式交換においては、合同会社でも親会社になることができます。

参考:株式交換の主な手続き7つ|メリットとデメリットや株式交換の事例、株式移転との違いも解説|M&A to z

株式移転の4つのメリット

組織再編の方法には、合併や分割、株式交換や株式移転など複数の方法がありますが、株式移転という組織再編の方法を選ぶメリットとは何でしょうか。

ここでは、組織再編の方法として株式移転を選択するメリットを紹介します。

メリット1:組織の統合が不要

組織再編として合併を選択した場合、複数の会社で構築されてきた組織内の仕組みを各会社で残す場合もあれば、統一する場合もあります。会社分割の場合も、吸収分割であれば、分割された事業は当該事業を承継した会社の中で今までと異なるルールの中で業務を遂行することが求められることがあります。

株式移転では、会社間に親子関係が発生することになりますが、各会社はそれぞれ独立したままなので、組織内のシステムやルールは株式移転以前と変わりません。このように組織としての統合が不要な場合においては、組織再編後もスムーズに業務を遂行できるでしょう。

メリット2:統合(買収)する際の資金が不要

株式移転という手法を使えば、対象会社の株を取得するための対価は自社株で済むので、実質的な資金は不要です。そのため、財務上大きな負担を生じさせることなく、組織の統合・再編を実現することができます。

メリット3:慎重なオペレーション統合が可能

すでに存在する複数の株式会社を、株式移転によって完全子会社として持ち株会社を創設する、いわゆる共同株式移転の場合は、親会社と子会社の関係が構築されるので、株式移転の効力発生とともに経営が統合されます。しかしながら、 各社独立しているため、社内ルールや社内システムなどは従来通り使い続けることが可能です。

子会社が複数ある場合も、各子会社は独立したルールやシステムで運営されます。グループ会社の統合を図りたい場合でも、経営統合を迅速に行った後、時間をかけて社内システムや業務ルールを統合していくことができるので組織再編による混乱を抑えやすくなります。

メリット4:子会社の法人格が維持される

株式移転では、株式移転後も子会社は別法人として存続するため、株式移転後も法人格を維持できるため既存のステークホルダーとのトラブルが起こりにくい点がメリットです。

他の組織再編手法、例えば吸収合併では解散する消滅会社が発生します。消滅会社の権利義務は存続会社に引き継がれるものの、存続会社の状況によっては、一部従業員のモチベーション低下や債権者とのトラブルなどが発生することも考えられます。

この点、子会社の法人格が存続する株式移転は、リスクの低い組織再編手法と言えます。

株式移転の2つのデメリット

株式移転を検討する際には、デメリットも把握しておく必要があります。

デメリット1:事務的な手続きに手間と労力が必要

株式移転は、組織再編として予定されている様々な手続きが必要になります。具体的な手続き内容は、株式移転計画の作成、株主総会の決議、債権者保護手続き、株式・新株予約権買取請求手続きなどです。

合併や株式交換では、さらに親会社側でも同様の手続きが必要ですが、株式移転では親会社を設立する手続きも行います。

上記の手続きを行うには、少なくとも1ヶ月以上の期間が必要となるため、スケジュール策定を綿密に行ってから進めることが望まれます。

デメリット2:株式会社以外は株式移転できない

会社法の定めにより、株式移転によって完全親会社となる会社は、株式会社であることが必要です。完全子会社となる会社も、株式会社である必要があります。

株式移転では、子会社となる会社の「株式」を株主から親会社が取得し、代わりに親会社の「株式」を子会社の株主だった者に交付します。親会社、子会社とも「株式」を発行する会社でないと、仕組みとして成り立たないことになります。

例えば、合同会社は持分会社なので株式を発行していないため、株式移転では親会社にも子会社にもなることができません。

なお特例有限会社は株式を発行しているものの、そのままでは株式移転の対象とはならず、株式会社へ変更してはじめて株移転が可能になします。

株式移転の主な手続き

株式移転は、会社法の組織再編として予定されている手順にのっとって進める必要があります。ここでは、会社移転を実行する7つの手順について紹介します。事務処理の内容だけでなく、手順に費やす期間にも注意を向ける必要があります。

1:株式移転計画の準備・作成

株式移転では「株式移転計画」を作成します。親会社は株式移転によって設立されることになるので、親会社の設立に関する事項も「株式移転計画」に盛り込みます。

子会社の株主に対して、株式と交換して交付する株式や金銭等の金額・内容・算定方法などについても「株式移転計画」に記載します。

2:事前開示書類の備置

株式移転計画の策定が完了したら、関連する書類を子会社となる会社に備え置く必要があります。事前開示書類は、以下のいずれか早い日から6か月の間、備置する必要があります。

・株式移転の承認に関する株主総会の2週間前の日

・反対株主の株式買取請求に関する通知または公告のいずれか早い日

・新株予約権買取請求に関する通知または公告のいずれか早い日

・債権者異議手続の公告または催告のいずれか早い日

3:株主総会での株式移転計画の承認決議

株式移転は、株主総会で承認を受けることで有効となります。組織再編に関する承認決議は、特別決議が必要とされているため、「株主総会に出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成」が必要です。

4:債権者保護の手続き・株券などの提供公告

株式移転に際して、株券発行会社の場合は株券提供公告が必要になります。組織再編では原則として、組織再編に反対する株主が株式の買取請求を行うことができ、債権者に対しては債権者保護手続きが必要になります。

株式移転に関しては、債権者保護手続きが必要になるのは、新株予約権付社債を承継する場合に限られています。

5:株式移転の効力発生

株式移転計画の作成、事前開示(備え置き)、株主総会による株式移転計画の承認決議、株券提供公告、債権者保護手続きなど、ここまでの手順が完了したら、株式移転の登記を行います。

株式移転では、株式移転に関する登記申請日が効力発生日になります。株式移転では親会社が子会社の新株予約権付社債を承継するとき以外、子会社側の登記は不要です。

なお、事前に反対の意思を表明した株主等は、当事会社に対して公正な価格で買取りを請求することができ、その請求可能期間は通知又は公告の日から20日以内となります。また、子会社となる会社等は、株主総会の決議の日から2週間以内に、新株予約権の新株予約者に対し、新設合併する旨や設立会社の商号・住所などを通知又は公告しなければなりません。

6:新株発行・設立・変更の登記申請

株式移転の登記は、完全親会社の設立登記と完全子会社の変更登記を同時に行わなければなりません。つまり実務上、両方の登記を登記申請書に連番で記載し、親会社の管轄法務局に申請するということです。

株式移転親会社の登記は会社設立登記となるので、登記申請には株式移転計画書に加え、役員の就任承諾書や印鑑証明書、定款などの書類が必要です。

7:両会社の事後開示書類の備置・開示

株式移転では、効力発生日から6か月間は、法令で定められた株式移転に関する事項を記載した書面を、本店に備え置かなければなりません。

事後開示は、株式移転完全親会社でも株式移転完全子会社でも必要な手続きです。事後開示手続きまで行うことで、株式移転に関する手順が完了となります。

株式移転の特徴をおさえ、事業再編の選択肢に

共同株式移転は、多額の資金を必要とせず既存の株式会社と経営統合できる有効な組織再編方法です。債権者保護手続きを必要とするケースも少ないことから、ほかの組織再編よりも手順を簡易化できる可能性もあります。

既存会社を子会社化する再編方法として、デメリットとメリットを把握した上で、株主移転で効果的な事業再編に取り組みましょう。

 

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