close
close
使い方 プロのM&Aアドバイザーにお気軽に相談いただけます。 menu

吸収合併のメリットと主な手順|新設合併との違いも解説


公開日:2021年8月13日  最終更新日:2022年11月18日

吸収合併とはM&A(Merger And Acquisition・企業の合併と買収)の手法の一つです。合併する二社のうち一方の法人格を残し、もう一方の法人格を消滅させます。新設合併とよく比較されますが、合併の手段として選ばれることが多いのは吸収合併です。この記事では吸収合併の特徴や、実際の手続きについて解説していきます。

吸収合併

吸収合併とはM&Aの手法の一つです。株式譲渡や事業譲渡などと並び、実際によく採用される手法の一つとなっています。二つの会社の合併により、経営の相乗効果が早期に期待できることが特徴です。

新設合併との違い

吸収合併とよく比較されるM&Aスキームの一つに、「新設合併」があります。

吸収合併では、合併する一方の会社が法人格を残し、もう一方の会社の法人格が消滅します。対して新設合併では、合併する二つの法人格がどちらも消滅し、新たな法人を設立します。

手続きの煩雑さやコストが高くなるといった理由から、実際の合併では吸収合併の手法が採用されることが多いです。

参考記事:
合併と買収の違いは?合併・買収に使う各手法の特徴と、メリット・デメリットを解説

吸収合併に期待できる効果(メリット)

吸収合併を行うことで、売り手はブランド力の向上が期待できるほか、吸収する企業(存続会社)や新設される企業(新設会社)に債務を引き継げるといったメリットがあります。

ここからは吸収合併の具体的なメリットについてより詳しく説明していきます。合併による統合効果についてはもちろん、財務的なメリットや統合の際の実務的なメリットについても触れていきます。

1:シナジー効果を期待できる

メリットの一つ目として、合併によるシナジー効果を期待できる点が挙げられます。

例えば競合同士の合併で、それぞれのノウハウや強みが融合でき、また市場内でライバルが減るといったメリットが考えられます。また、企業の大規模化によるスケールメリットや、コスト削減なども同時に期待できます。

販促や仕入れ、製造などの業務について吸収合併で改善するためには、合併候補となる会社について事前に調査しておくことが大切です。

2:ブランド力や信頼性が得られることも

吸収合併によってブランド力のある会社と合併する場合、自社のブランド力がさらに高まり、会社としての信頼性が得られます。

会社のブランド力や信頼性が高まれば、企業価値の向上はもちろん、事業を始める際の資金調達がしやすくなったり、優秀な人材を集めやすくなったりする効果が期待できます。

3:財務状況が改善される場合もある

合併相手によっては財務状況の改善が期待できる点もメリットです。

吸収合併の場合、権利や義務などが包括的に承継されるため、債務や不要な資源なども吸収してもらうことになります。

つまり、合併相手によっては売り手側の財務状況が改善され、事業承継などの際に後継者への負担を減らすことも可能です。

吸収合併の主な流れ

ここからは吸収合併の流れについて説明していきます。新設合併と比較すると必要な手続きは少ないものの、それでも約二ヶ月程度の期間がかかります。余裕を持ったスケジュール調整のほか、手続きの抜け漏れがないようにすることが重要です。

具体的なステップを七つに分けて見ていきます。

1:吸収合併契約を結ぶ

吸収合併の手続きを進める上で、まずは当時会社間で吸収合併契約を結びます。

具体的に定める事項として、「存続会社と消滅会社の商号、住所」「存続会社が消滅会社に対して支払う対価について」「効力発生日」などが挙げられます。

2:書類を準備する

続いて、存続会社と消滅会社ともに一定の事項を記載した書類を本店に準備する必要があります。株主や債権者に必要な情報を提供する必要があるためです。

記載事項の一例ですが、売り手側の消滅会社は「合併契約の内容」「合併の際に受け取る対価についての記載」「計算書類等に関する記載」「効力発生日以降の存続会社の債務履行の見込みについての記載」などを記載する必要があります。

一方で、買い手側の存続会社も同様に「合併契約の内容」「合併の際に支払う対価についての記載」「計算書類等に関する記載」「効力発生日以降の債務履行の見込みについて」などを記載しなければなりません。

3:官報で公告をする

存続会社と消滅会社は合併をする旨等の一定の事項を、効力発生日の前日の一か月間以上前までに、官報で公告します。

さらに、知れたる債権者に対して個別に催告しなければなりません。債権者の保護が目的となっており、債権者は合併に対して異議を申し立てることが可能です。

4:株主に通知する

続いて、存続会社と消滅会社は株主への事前通知を行う必要があります。

具体的には、合併の効力発生日の20日前までに、吸収合併をする旨並びに存続会社の商号および住所を、すべての株主に通知する必要があります。株主に買取請求の機会を保障するためです。

株主総会を開催する際はその招集通知も行わなくてはいけません。ちなみに、株主への事前通知と株主総会の招集通知は合わせて行うことも可能です。

合併に反対する株主は、会社に対して「公正な価格」で自身が保有する株式を買い取ってもらうよう請求することができます。

5:株主総会決議を行う

存続会社、消滅会社ともに株主総会での特別決議が必要になります。こちらは効力発生日の前日までに行わなければなりません。

消滅会社が種類株式発行会社ある場合は、種類株主総会の決議が必要になる場合もあります。

6:登記申請を行う

存続会社の変更登記と消滅会社の解散登記を同時に行う必要があります。いずれも効力発生日から二週間以内に行わなければなりません。

7:合併に関する書類を備置する

存続会社は会社法801条の定めにしたがい、承継した吸収合併消滅会社の権利義務その他の吸収合併に関する事項についての書類の備置を行う必要があります。

書類は、効力発生日から6ヶ月間は会社の本店に備え置く必要があります。

吸収合併が従業員に与える影響

吸収合併した後は既存の会社組織の再編が必要となるため、現場の従業員の勤務体系や労働条件の変更して統一することが一般的です。

消滅会社の労働条件は存続会社にそのまま引き継がれますが、一定の期間を経て両社の給料体系や退職金、就業時間などの労働条件を統一していきます。この統一の過程では調整額が給付されるケースなどもあります。

役職やポストについても、再配置が行われることがあります。消滅会社に在籍していた時点で結んだ雇用契約に沿っていれば、勤務形態の変更について個別に労働者に説明する必要がなく、人材の再配置が可能です。

社会保険や雇用保険、有給休暇日数なども基本的には存続会社に引き継がれます。一方で、福利厚生については、内容によってはそのまま引き継ぐことが難しいケースも考えられます。労働者や労働組合の合意なく労働条件の変更はできず、労働者にとって不利益な変更がある場合には、個別の労働者に書面で合意してもらう必要があります。社員が不利益を被らないよう、補填措置が取られることも多くあります。

まとめ

吸収合併は、当事会社にとってはシナジー効果などが期待できる一方、現場の従業員の働き方への影響も大きくなるため、従業員との調整が必要になるケースもあります。

M&Aの手段として吸収合併を検討する際は、その基本的な特性を理解した上で、専門家に相談することがおすすめです。

M&Aのマッチングプラットフォーム「M&Aクラウド」では、買収をしたい企業が、欲しい企業・事業の要件を記事として公開中です。

買い手企業を手軽に探すことができるほか、M&Aアドバイザーに自社にとって適切なM&Aのありかたを無料相談することも可能です。お気軽にご相談ください。

M&Aに関するご相談

textsms

ご相談はこちらから

remove close
keyboard_arrow_up