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事業売却の相場は?|より高い評価を得て売却するためのポイント


公開日:2021年8月20日  最終更新日:2022年11月22日

事業売却を行う際は、相場となる「売却する資産の価値」を算出し、譲受企業と交渉して売却価格を決定します。そのため、相場の算出方法をチェックしておくことが重要です。ここでは、事業売却の相場の決め方4つと、高い評価を得て売却するためのポイントについて詳しくご紹介します。

事業売却とは

事業売却とは、事業の一部または全部を第三者に譲渡して対価を得るM&Aの手法の1つです。事業譲渡を活用したM&Aの目的には、不採算事業の売却による経営改善やリソースの確保、他の事業への資金投入などがあげられます。

事業売却と会社売却はどう違うの?

事業売却と会社売却のどちらも専門用語ではないため、両者に明確な違いはありません。この記事では、事業売却=事業譲渡、会社売却=株式譲渡として扱っています。

事業売却と会社売却の相違点はいくつかありますが、最大の違いは、事業売却では会社が売却主体となるのに対し、会社売却では株主(オーナー経営者)が売却主体となることです。

事業売却は、会社が売却主体となるため、譲渡対象事業の設備や権利、従業員、ノウハウなどを個別に移転します。一方、会社売却では、株主であるオーナー経営者が自らの所有する株式を譲渡するため、会社として個別の移転手続きを経る必要がないという違いがあります。

また、売却主体が異なることから、支払う税金についても違いが生じます。事業売却では会社が売却益を受け取るため、法人税と消費税がかかる一方、会社売却は株主である個人が売却益を受け取るため、所得税と住民税がかかります。

参考記事:
10倍以上も高く売れるの?会社売却と事業売却の違い
事業売却の価値を算定する5つの方法|メリットや高く売る方法も解説

事業売却における価格の決め方

事業売却における売却価格の算出方法には、いくつかの種類があります。それぞれの特徴と計算方法を詳しくご紹介します。

1:DCF法

DCF法(Discounted Cash Flow法)とは、売却する事業が将来的に生み出すキャッシュ・フローを割引率で割り引くことで事業価値を算出し、そこから非事業資産や有利子負債を加味して株式価値を算定する方法です(注:エンタープライズDCF法を前提としています)。事業が将来的に生み出すキャッシュ・フローを加味できるため、より妥当性の高い事業価値を算出できると考えられています。DCF法によって算定する各要素の計算式は次の通りです。

事業価値=事業が生み出すフリー・キャッシュ・フローの期待値を加重平均資本コスト(WACC)で割り引いた現在価値

事業が生み出すフリー・キャッシュ・フローは、貸借対照表や損益計算書、事業計画を参考に次の計算式で算出します。

フリー・キャッシュ・フロー=営業利益×(1-実効税率)+減価償却費-設備投資額-正味運転資本増加額

続いて、DCF法の計算に用いる加重平均資本コスト(WACC)の計算式を見ていきましょう。

加重平均資本コスト(WACC)=有利子負債総額÷(有利子負債総額+株式時価総額)×(1-実効税率)×負債コスト+株式時価総額÷(有利子負債総額+株式時価総額)×株主資本コスト

参考記事:
DCF法とは?DCF法による企業価値評価のメリット・デメリット|評価のポイント5選

2:マルチプル法(類似会社比較法)

マルチブル法(類似会社比較法)は、業種や規模、ビジネスモデルなどが類似している企業の株価と比較して、対象事業の価値を評価する方法です。

どの指標を用いて比較するかによって複数の手法がありますが、代表的なEV/EBITDA倍率を用いて事業価値を評価する際の流れは次のとおりです。

(1)比較対象となる企業を選定する

(2)類似企業の事業価値とEBITDA(税引前利益+支払利息+減価償却費)を入手する

(3)事業価値(EV)をEBITDAで割ってEV/EBITDA倍率を計算する

(4)対象会社のEBITDAに類似企業のEV/EBITDA倍率をかけて対象会社の事業価値を算出する

参考記事:
マルチプル法による企業価値算定で使う指標を解説|メリット・デメリットも紹介

3:純資産法

純資産法はコスト・アプローチとも呼ばれ、対象会社の貸借対照表の純資産価額を基準に売却事業を評価する方法です。簿価純資産法と時価純資産法があります。

・ 簿価純資産法

簿価純資産法は、貸借対照表の純資産帳簿価額を株式価値とする方法です。客観性に優れた手法である一方で、資産の時価が簿価と剥離しているケースが少なくないため、他の方法と組み合わせて評価することが一般的です。計算方法は次のとおりです。

株式価値=帳簿に計上されている資産の合計-負債の合計

・時価純資産法(修正簿価純資産法)

時価純資産法は、貸借対照表に計上された資産・負債を時価で評価し、資産から負債を差し引いて算出した時価純資産を株式価値とする方法です。なお、全ての資産と負債を時価で評価し直すことは現実的に難しいため、土地や有価証券などの含み損益のみ時価評価することが一般的です。

年買法

純資産法の派生的な手法として、年買法があります。年買法は、時価純資産法によって算出した時価純資産額に営業利益の3~5年分の金額を加えたものを株式価値とする方法です。株式価値に収益力を反映させられることから直感的でわかりやすいため、実務で用いられるケースもあります。

しかしながら、年数に合理的な根拠がないこと、減価償却費の取扱いが合理的でないこと、税金を考慮していないことなどの欠点も多くあるため、年買法により算出された企業価値が合理的と言えるかどうかについては議論の余地があります。

売り手が買い手にアピールすべきポイント4選

事業価値が高くなればなるほどに、売却価格も上がります。重要なのは、譲受企業にとって価値が高い事業に育て上げると共に、強みをアピールすることです。

また、自社の利益だけを考えるのではなく、譲受企業とのシナジー効果や将来生み出す利益などを加味して、お互い協力し合うような意識でM&Aを進めることが大切です。

その他、従業員が譲受企業に譲渡される場合、明るい未来は待っているのか、不当解雇される心配はないかなどを経営者として考えることも重要です。

健全なM&Aを実現するためのアピールポイントを4つ厳選してご紹介します。

1:専門的な知識や技術を持つ人材

譲受企業にとって価値が高い人材が在籍していると、売却価格が上がります。数年では身に付かない経験や知識、技術、ノウハウを持ち、譲渡企業で結果を出している人材は、多くの企業が求めています。

2:取引企業や顧客

事業の取引先や顧客が譲受企業にとって価値が高い場合、売却価格が上がる可能性があります

特に、大企業との取引があり、大口顧客を抱える事業には高値がつくでしょう。大企業は取引額が高いだけではなく、取引企業の社会的信用性の向上にも繋がるため、多くの買い手候補が求める条件です。

3:市場シェア

市場シェアを多く占めている事業は、売却価格が上がります。なお、市場シェアが小さくても、特定の地域や世代、商品などで大きなシェアを占めていれば、そこに価値を感じられる譲受企業に高く売却できるでしょう。赤字事業でも、市場シェアが大きければ相場を超える額で売却できる可能性もあります。

4:特許や技術

譲受企業が模倣できないような技術や特許がある場合、売却価格が上がる可能性があります。特許や技術の取得を目的に、売り手候補を探す企業も少なくありません。特許や技術1つで譲受企業の収益が大きく上がる場合もあります。

参考記事:
嫌われる売り手企業の条件。買い手企業はどのような観点で売り手企業をみているのか?

納得いく売却交渉ための4つのポイント

納得できる価格で事業売却するには、次のポイントを押さえる必要があります。

1:自社の事業を高く評価してくれる買い手と交渉する

売却価格は買い手との交渉を通じて決定するため、事業に大きな魅力を感じてくれる買い手候補と交渉を進めることでより魅力的な売却価格を引き出せる可能性があります

買い手候補は、シナジー効果の有無や発現の可能性、自社にとって必要な人材の有無、高い価値がある設備や特許、技術の有無などに注目します。自社の魅力を十分にアピールした上で、高額で譲受してくれる買い手候補をピックアップしましょう。

より多くの買い手と交渉するために、買い手の買収ニーズを事前に確認できるM&Aプラットフォームを利用するのがおすすめです。

2:経営基盤を安定させる

経営基盤が安定した企業は、買い手候補に安心感を与えられます。経営基盤を安定させるために、法務や財務の健全化を目指しましょう。訴訟問題の解決や未払い残業代の精算、バックオフィスの業務フローの整備など、経営基盤を安定させるための施策は様々です。

3:収益性・成長性の高さを訴求する

買い手候補が重視する点は様々ですが、対象事業の収益性や成長性は特に重要な要素です。収益性が低く、今後の改善も見込めない事業を満足のいく価格で売却するのは簡単ではありません。コスト削減を実行しつつ、新規事業など成長性をアピールできる施策を実施してみてください。

ただし、一時的に売上を増やしても買い手候補には響きません。自社の強みをアピールして、収益性以外の魅力に気づいてもらうことが重要です。

4:信頼できるパートナーと手を組む

事業の売却価格を少しでも上げたい場合は、信頼できるM&Aプラットフォームに登録し、より多くの買い手候補を見つけましょう

また、M&Aアドバイザーや税理士、公認会計士、弁護士などの専門家と手を組み、自社ができる最大限の準備と強みのアピールを行うことが重要です。

まとめ

事業の売却価格は、評価方法や着眼点によって大きく変動します。また、譲受企業にとって高い価値がある事業は、売却価格が高くなります

譲渡企業としては、一時的に収益を上げて高く売るのではなく、譲受企業にとって価値がある事業に育て上げたり経営基盤を安定させたりすることが大切です。

まずは、M&Aプラットフォームに登録したり、専門家に相談してみましょう。

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