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事業承継税制の基礎知識15選|事業承継税制の活用時に留意すべきポイント


公開日:2021年5月21日  最終更新日:2022年11月22日

目次

事業承継税制とは

事業承継税制とは、事業を後継者に引き継ぐ事業承継について、一定の要件の下、贈与税・相続税の全額が猶予される等、事業承継を促進する措置です。

中小企業庁が所管し、創設後、数度に渡り税制改正が行われ、平成30年度には非上場株式にかかる贈与税・相続税が全額猶予される特別措置が定められました。

出典:事業承継税制(贈与税・相続税の納税猶予及び免除制度)について|中小企業庁

事業承継税制(贈与)の申請手続き6つ

事業承継税制の特例措置の認定を受けるための申請手続きを6つご説明します。

出典:経営承継円滑化法 申請マニュアル|中小企業庁 

手続き1:特例承継計画を作成する

事業承継税制の特例措置によって贈与税や相続税の適用を受けるために、「特例承継計画」を作成します。

中小企業庁が所管する事業承継税制における特例措置の 特例承継計画は、会社の資本金や従業員、会社の後継者や承継までの経営の課題抽出と解決策、承継後5年間の事業計画などを記載します。

出典:特例承継計画(様式21)|中小企業庁

手続き2:特例承継計画を提出する

事業承継税制の特例措置を受ける場合は、特例承継計画は都道府県知事に提出します。

平成30年4月1日から令和5年3月31日までに特例承継計画を作成し、都道府県知事に提出します。

株式承継の前に、特例承継計画を提出する事ができない場合でも、令和5年3月31日までの贈与税については、贈与後に都道府県知事に認定の申請を行う際に、特例承認計画を提出する事もできます。

出典:特例承継計画(特例認定の申請にあたり必ず提出が必要です)|中小企業庁

手続き3:代表者を交代する

最大3名までの特例後継者を指定します。

事業承継税制の特例措置を受けるための特例承継計画に、特例代表者から株式を承継する予定の後継者を最大3名まで指定し、特例後継者として記載します。

特例承継者として記載した者でなければ、事業承継税制の認定を受ける事ができません。また、特例後継者を変更したい場合は、「変更確認申請書」により変更申請を行う事ができます。

出典: 法人版事業承継税制(特例措置)の前提となる認定に関する申請手続関係書類|中小企業庁 

手続き4:株式の贈与を受ける

特例代表者から、特例承継者へ株式が贈与されます。

事業承継税制における特例措置では、平成30年から令和9年に贈与をした場合が贈与税納税全額猶予の適用期間となります。

この期間内に計画的に贈与実行する事ができます。

出典:事業承継税制(一般措置)の前提となる認定|中小企業庁

手続き5:認定申請を行う

事業承継計画書を都道府県の担当窓口に提出し、申請を行います。各都道府県の担当窓口の名称は異なります。

例えば、東京都は産業労働局商工部経営支援課となり、神奈川県では産業労働局中小企業部中小企業支援課等となります。

各都道府県の担当窓口の詳細については、中小企業庁のホームページに一覧表があります。

手続き6:事業継続要件を維持する

事業承継税制の特例措置による都道府県からの認定を受けた場合でも取消事由があり、注意が必要です。

中小企業庁は、取消事由として25項目を設定しています。

例えば、後継者(受贈者)が死亡した場合や、雇⽤の平均8割維持要件を満たさなくなった場合、上場会社・⾵俗営業会社に該当した場合などが挙げられます。

事業継続5年“以内”の取消理由5つ

事業を承継するための準備期間として、事業継続5年間の期間があります。

この期間に、事業承継税制における特例措置の取消事由に該当した場合、認定を取り消されるので注意しましょう。

取消理由1:後継者が代表権を失った(やむを得ない理由を除く)

特例承継者である後継者が代表権を失った場合、事業承継税制における特例措置の取消事由に該当します。

例えば、後継者の健康問題や突然の死去等が考えられます。

特例承継者については、3名まで記載が可能ですので、経営陣や従業員のみならず、「事業引継ぎ支援センター」でマッチングを受けるなども検討材料となります。

取消理由2:一族の議決権が50%以下になった

事業承継税制における特例措置では、後継者とその同族が、総株主等議決権数の50%以上を保有する事を要件としています。

なぜなら、議決権の過半数を有していない者は、会社を支配する事ができず、次期代表者である後継者にはなる事ができないからです。

取消理由3:一族の中で後継者が筆頭株主ではなくなった

事業承継税制における特例措置では、後継者一族の中で筆頭株主である事を要件としています。

筆頭株主でない場合、その場合の筆頭株主よりも会社への支配力が劣っていると見なされます。

取消理由4:対象の株式を売却した(一部でも)

事業承継税制における特例措置認定の対象となった株式を一部でも売却した場合は、取消事由となります。

この株式を売却・譲渡した場合、原則としてその日から2か月を経過する日までに納税猶予税の全額を利子税と合わせて納付しなければなりません。
 

取消理由5:会社を解散(廃業)した

事業承継税制における特例措置認定の対象の会社を解散(廃業)した場合は、取消事由となります。

しかし、経営環境の変化などで事業が立ち行かなくなった場合なども想定されます。

その場合は、セーフティーネットとして特例があり、該当額を再計算し、差額が免除されます。

事業継承5年“以降”の取消理由2つ

事業継承5年“以降”も取消事由があります。

最初の5年間は、厳しい取消事由が設けられている一方、5年を経過する事で緩和されますが、株式の処分や減資などの取消事由は存続します。

取消理由1:対象の株式を売却した(売却した分のみ)

事業継続期間の5年を過ぎても、後継者が納税猶予の対象の株式を売却した場合は、その売却分が認定の取消事由となります。

認定が取り消された場合には、猶予された税額の全額と利子税を加えて納付しなければなりません。

取消理由2:会社を解散(廃業)した

事業継続期間の5年以降でも、会社を解散(廃業)した場合は認定の取消事由となります。

その他にも、会社が一定の会社分割、または組織変更を行ったときや、会社が試算保有型会社、若しくは資産運用型会社となったとき、主たる事業活動による収入額がゼロとなったとき、会社の資本金や準備金の額を減少したとき、会社が合併により消滅したときなども取消事由となります。

免除となる理由2つ

一定の要件を満たせば、取消事由を免除される場合があります。

事業承継税制における特例措置の特例計画に記載の特例後継人に対象の株式が贈与されなければ本来、取消事由となります。しかし、事業存続期間中の死亡等も想定されるため、後継者の後継者へ対象の株式が移転した場合、取消事由の免除となりえます。

取消免除の理由1:後継者が死亡した

後継者が死亡した場合であっても、後継者の後継者に、事業承継税制における特例措置で認定された株式が贈与された場合は、取消事由を免除されます。

本来であれば、特例事業計画における特例後継人である後継者が、事業承継税制における特例措置で認定された株式を贈与されなければ、取消事由となります。

しかし、この後継者が事業継続期間中に死亡する場合もあるため、前述の内容を取消猶予の要件としています。

出典:猶予税額が免除される場合|一般社団法人東京法人会連合会

取消免除の理由2:次の後継者に納税猶予の適用対象となる贈与をした

次の後継者に適用対象となる贈与をした場合は「免除対象贈与」となります。

「免除対象贈与」とは、事業承継税制における特例猶予の認定を受けている株式が、後継者に贈与されていて、後継者の後継者がその株式を贈与され、納税猶予を受ける場合をいいます。

出典:猶予税額が免除される場合|一般社団法人東京法人会連合会

事業承継税制の留意点5つ

これまでの記事に加えて、その他の事項として留意点を5つまとめます。

まず、制度の改正い伴い、簡易になったとは言われるものの、証拠書類などの収集など専門的な知識を要する為、そのための事務コストも必要となります。

そして、取消事由に由来するものとなりますが、猶予取消となった場合の負担も多く会社経営にはリスクとなります。

その他、本来は猶予を適用除外されている資産管理会社の特例についても紹介します。

留意点1:制度が複雑で手続きが煩瑣である

事業承継税制における特例措置の認定を受ける場合、手続きが煩雑な事がデメリットの一つです。

事務負担について、改正により以前に比べると少しづつ軽減されているといわれていますが、まだまだ負担は重い状況です。

特に、資産保有型会社、資産運用型会社に該当しない事を証明するための関連書類を準備しなければなりません。

また、従業員数を証明する書類をそろえるのも手間がかかります。

さらに、 都道府県によって、求められる書類の種類や量、チェックの厳しさなどにばらつきがあり、場合によっては、かなり多くの添付書類の提出が義務付けられる事もあります。

留意点2:常に取消のリスクが残る

常に、猶予の取消事由により税と利子税を全額納付しなければならないリスクが残ります。

前述の取消事由とならないように常に安定した運用が求められます。代表的な取消事由として、その会社が資産保有型会社というものに該当すると、取消となり、後継者個人が、猶予されていた税額の全額を、利子税とともに支払わなければなりません。

また、従業員の一定の確保等については、たまたま退職が重なる場合や、景気により特例計画書通りの財務に移行するとは限らないなど、一定のリスクを伴います。

留意点3:適用期限がある

事業承継税制における特例措置は、適用期間が設けられています。

特例事業計画を作成し、平成30年4月から令和5年3月までに都道府県知事に申請し認定を受けなければなりません。

また、対象となる贈与ができる期限は、令和9年12月までとなっています。

留意点4:猶予打切り時には課税対象となる

取消事由により、猶予打切りとなった場合、税金を納付しなければなりません。

その場合、該当する納税猶予額税額に合わせて、利子税も支払わなければなりません。但し、経営承継期間経過後であれば、経営承継期間中の利子税は差し引く事ができます。

留意点5:資産管理会社も適用対象がある

資産管理会社でも一定の要件を満たせば、事業承継税制における特例措置の認定を受ける事ができます。

資産管理会社とは、贈与や相続による事業承継を行った日が属する年度の、直前の事業年度から、申告書提出期限までの帳簿上の残高に占める「特定資産」の保有割合が著しく高い会社の事です。

これらの会社への税の猶予は事業承継税制の趣旨に相応しくないため、原則として適用除外となります。

資産管理会社には資産保有型会社と資産運用型会社があり、総資産の総額に対する該当する「特定資産」の保有割合を前者では70%、後者では75%としています。

しかし 「固定施設を所有または賃借している」、「常勤の従業員が5名以上在籍している」、「事業活動を3年以上継続して行っている」という3つの要件を満たしていれば、適用の対象となります。

事業承継税制の申請手続きについて理解を深めよう

事業承継税制は、後継者が株式を相続や贈与で引き継いだ際に、相続税や贈与税の納付に猶予が与えられ、将来的には免除される制度です。

そのため 納税額のために資金調達をする必要がなくなる他、期間限定の特例であるため、それを口実に代替わりを促しやすいというメリットもあります。

しかし事業承継税制は、「特例承継計画」の作成や、定期的な「継続届出書」の提出などが必要なため、モニタリングコスト等もかかります。

事業承継税制について正しい知識を身につけ、特例制度を上手に活用できるようにしましょう。

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