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株式譲渡を行うメリット5つ|主な手続きや注意点もあわせて解説


公開日:2021年4月23日  最終更新日:2022年11月22日

株式譲渡とは

株式譲渡とは、売り手企業の株主が、買い手側に保有株を売却して会社の経営権を引き継ぐことを指します。主な株式譲渡の目的は、会社の規模拡大、組織再編成、事業拡大などさまざまです。日本では中小企業のM&A手法として主に利用されています。

株式譲渡は手続きが簡素な分、取引後にトラブルになるデメリットもあるためしっかりと詳細を明確にしておくなど、工夫も必要です。

事業譲渡と株式譲渡の違い

株式譲渡とは保有株式を買い手側企業に譲渡することです。株をすべて譲渡する場合もあれば、一部のみ譲渡するという方法もあります。

一方、事業譲渡は、売り手側の事業の一部もしくはすべての事業を買い手側に売却することをさします。

事業譲渡の場合、会社の経営権は売り手側に残ったまま、一部の事業のみを切り出して譲渡することが可能です。そのため、現在の会社の独立性を保ったまま事業再編ができるというメリットがあります。

会社合併と株式譲渡の違い

株式譲渡では、株を保有していた売り手側が買い手側に株を売却することで、事業の引き継ぎが完了します。完了後、会社の経営権は買い手側に移りますが、会社が消滅するわけではありません。

一方、2社以上の会社を1つに統合する会社合併では、合併後に残る会社は、消滅する会社の資産、負債、権利義務すべてを引き継ぐことになります。

会社合併には、既存の会社にその他の会社が吸収される吸収合併と、新たな会社に既存の会社のすべてを引き継ぐ新設合併という2種類があります。

株式譲渡を行うメリット5つ

株式譲渡には、事業譲渡や会社合併とは違ったメリットがいくつかあります。売り手側にも買い手側にもメリットがあるため、どちらの立場でもメリットを理解して取り引きを行う必要があります。

1:手続きが簡単

株式譲渡は、他のM&A手法に比べ、必要な法的手続きが少ないという特徴があります。

原則として、買い手と売り手株主が株式譲渡契約を締結し、買い手からの株式の対価の支払いと株式名簿の書き換えが済めば、手続きが完了します。株式譲渡に関して、取引先や従業員、債権者から個別に同意を得る必要はありません。

なお、中小企業の多くは株式に譲渡制限がかけられており、売却対象となる会社の取締役会等による譲渡承認決議が必要となる点には注意が必要です。

原則、会社の資産や負債を個別に引き継ぐ手続きもないため、手続きにかかる時間を短縮でき、コストも抑えられます。

2:従業員の雇用を引き継ぐことができる

株式譲渡では株の保有者が変わるだけなので、従業員の雇用もそのまま継続されます。

現在、日本の雇用に関する法律では譲渡後に簡単に従業員を解雇することはできません。また、株式譲渡契約書に「引き継ぎ後に従業員の雇用条件を変更しない」旨の条項を盛り込むことで、売り手企業の株主は、よりいっそう安心して従業員の雇用を引き継ぐことが可能です。

3:対価として現金を選択できる

株式譲渡を行った場合、売り手側は対価として現金を選択することができます。対価を現金で受け取って、事業を手放したあとの生活資金や、新事業の立ち上げ資金を確保することも可能です。

4:会社がさらに発展する可能性がある

買い手側の企業に優れた人材や技術、ブランド力があれば、株式譲渡で経営権が移動した会社はそのリソースを活かしてさらに大きく発展する可能性がうまれます。

これまでの会社では補えなかったものを、強化したり成長させたりすることが可能になるのです。

5:廃業コストを抑えられる

近年、後継者不足で事業を承継できず会社を清算(廃業)するケースも増えていますが、承継者は、株式譲渡により会社を引き継ぐことになるため、会社を清算する必要がなくなります。

会社を清算(廃業)する場合、多額のコストがかかってきます。特に、多くの従業員を抱えた大きな企業ほどコストがかかります。この点、株式譲渡による事業承継が実現すれば、従業員の雇用を守ることができるうえ、廃業コストを抑えることも可能になるため、売り手企業に多大なメリットが生まれます。

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株式譲渡の主な手続き6つ

株式譲渡は、会社の経営権を売り手から買い手に譲渡する行為です。

基本的に、売り手側と買い手側が合意することで譲渡が可能になりますが、手続き上、注意すべきことがあります。ここからは、株式譲渡の手続き方法と注意点について、解説していきます。

1:株式譲渡の承認請求をする

株式譲渡の承認請求とは、株式を譲渡するために売り手側が会社に承認請求を行うことです。非上場会社の多くは、定款で株式の譲渡を制限しています。そのような場合、株式譲渡の効力を会社に主張するためには、譲渡について会社の承認を得なければなりません。

承認請求は、譲渡しようとする株主は会社法138条1項に定める事項を、株式を取得しようとする者は同2項に定められた事項を会社に通知して行います。法的に決められた書式はありませんが、「株式譲渡承認請求書」などの名称の書類を提出するのが一般的とされています。

2:株主へ招集通知を送る

承認請求を受け取った会社は、定款で別段の定めがある場合を除き、取締役会設置会社では取締役会、それ以外の会社では株主総会において、当該譲渡を承認するか否かを決定しなければなりません。

株主総会は、株主に出席の機会と準備の期間を与えるため、原則、開催の2週間前まで(非公開会社では原則1週間前まで)に招集通知を株主に発送して通知する必要があります。

3:株式譲渡の承認決議を行う

株主総会では、株式の譲渡を承認するかどうかの決議を行います。決議の結果は、株主総会議事録に記録することが義務付けられています。

なお、譲渡制限付き株式でも、譲渡当事者間での譲渡は有効であり、承認を得なければ会社に対して譲渡を対抗できないにすぎません。したがって、当事者間での株式譲渡後に株式取得者から会社に対し譲渡の承認を請求することも可能です(会社法137条)。

4:株式譲渡契約を締結する

株式譲渡には、売り手側と買い手側双方の譲渡に関する合意が必要になります。これは取引に当たるため、問題なく取引するために一般的には譲渡契約書を作成します。この契約書を交わすことで契約締結となります。

株式譲渡契約書には、法的に決められた書式はありません。契約書には、株式譲渡の合意文、譲渡対価、譲渡日、クロージング日など多くの記載項目がありますが、取引の内容によって記載事項も変わってくるので、ひな形(雛形)を使って作成した際には注意が必要です。

5:株主名簿を書き換える

株券不発行の会社の場合、株主譲渡契約が締結され譲渡が完了すると、株式の持ち主、つまり株主が変わるため株式名簿を書き換える必要があります。この際、株式の売り手側と買い手側が共同して、会社側に株主名簿の書き換え請求を行います。

この段階で株式譲渡の承認を受けていないと、名簿の書き換えを拒否される可能性があるので注意が必要です。

6:証明書を交付する

株券不発行の会社において、株式譲渡契約が締結され株主名簿の書き換えが行われる場合、買い手側つまり新たな株主の請求に基づいて「株主名簿記載事項証明書」が交付されます。これは、株主名簿に自分の名前が記載されているかどうかを知るためのものです。

証明書には請求した人のみ記載されるため、新たな株主が単独で行えます。記載事項は、株主の氏名、住所、株式の取得日、株式の数です。

株式譲渡手続きの注意点

株式譲渡の手続きを進めるにあたって、確認しておくべき点がいくつかあります。この確認事項の内容によって、手続きの仕方や作成書類にも違いが出てきますので大切なポイントになります。

譲渡制限について

株式は原則として自由に譲渡可能です。

しかし自由に株式を譲渡できてしまうと、望まない株主が会社の経営権を持つことになるなど、権限が複雑化してしまう可能性があります。

その防止策として、現在、非上場のほぼすべての会社が発行株式に譲渡制限を設けており、株式を譲渡する際には取締役会や株主総会で承認を得なくてはなりません。

譲渡承認の注意点

株式譲渡において、売り手側と買い手側の間で株式譲渡契約が締結された後には「株式譲渡承認請求」を行います。

先にも触れたように、承認請求は、譲渡しようとする株主は会社法138条1項に定める事項を、株式を取得しようとする者は同2項に定められた事項を会社に通知して行います。

譲渡不承認の注意点

株式譲渡承認請求を受けた会社は、取締役会の決議によって譲渡を承認をするかを決定します。取締役会の非設置会社の場合には、株主総会の普通決議によって譲渡の可否を決定します。

会社が譲渡承認の可否を決定をしたときは、請求をした株主に対して結果を通知しなければなりません。承認請求の日から2週間以内に通知をしなかった場合は、譲渡承認を決定したものとみなされるため、注意が必要です。

株券の発行方法について

株券発行会社では、株式譲渡の際に株券の受け渡し手続きをおこなう必要があります。

株券発行会社は、株券を発行してはじめて株式譲渡が行えます。そのため、売り手側と買い手側の合意だけで株式譲渡は行えず、会社に株券を発行してもらいその株券を受け渡すことで株式譲渡手続き完了となります。

一方株券不発行の会社では、株式の売り手側と買い手側の合意があれば株式譲渡が可能です。契約締結後は、双方共同で会社に請求をおこない、株主名簿の書き換えを実施します。

株式譲渡について知ろう

株式譲渡は、日本の中小企業のM&Aとして広く使われている手法であり、事業譲渡や会社合併にはない多くのメリットがあります。ただし、株式譲渡は手続きが簡素な分、トラブルの起こらないようしっかり知識を身に着け準備しておくことが大切です。

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