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敵対的買収とは?M&A戦略における方法や考慮すべきリスクも紹介


公開日:2021年11月30日  最終更新日:2022年11月17日

敵対的買収は、買収企業の成長戦略を実現する1つの選択肢でもあります。ただし、敵対的な特性がゆえに様々なリスクが伴う場合があります。

そこで本記事では敵対的買収の手法から、敵対的買収によって得られるメリットとそれに伴うデメリットやリスクを解説します。

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敵対的買収とは

買収には友好的な買収と敵対的な買収の2種類があります。敵対的買収は、被買収企業の経営陣の同意なくして、買収を仕掛けられます。買収の方法は主に公開買付け(TOB)にて行われ、買収企業は被買収企業のー経営権の獲得を目指します。

ここでは敵対的買収とは具体的にどういうものなのか、そのメリット・デメリットとあわせてご紹介します。

敵対的買収の定義

ここでいう敵対的とは、経営者の意思に反してという意味になります。つまり、敵対的買収とは、買収者が、被買収企業の経営陣の意思に反して買収を仕掛けることをいいます。

必ずしも被買収企業の議決権を100%取得する必要はなく、過半数を取得すれば株主総会の普通決議で、取締役選任を可決させることができます。また、対象会社の株主総会で特別決議事項を可決させるためには3分の2まで取得する必要があります。

したがって経営権をコントロールするのに必要な議決権の割合として、過半数、3分の2、100%という3つの段階があり、経営のコントロールのレベルに応じて取得する割合を定めます。

出典:e-Gov 法令検索 会社法(平成十七年法律第八十六号)第三百九条

友好的買収と敵対的買収はどう違う?

敵対的買収とは、被買収企業の経営陣の同意を得ていないで行う買収のことでしたが、逆に友好的買収とは、被買収企業の経営陣から買収することについて合意を得ている買収のことをいいます。

敵対的買収は、上場会社であれば主に公開買付けによって行われることとなりますが、これに対して友好的買収は、双方の合意に基づく買収なので、被買収企業の同意なく行うことができる公開買付けによる株式の取得のみならず、合併や会社分割、株式移転、株式交換等によることもできます。

友好的買収の場合は、買収の手続きを円滑に進めることができます。一方で、敵対的買収の場合は、被買収会社が買収を阻止しようと対抗措置を講じてくることがありますので、その分、時間と費用を要することがあります。

敵対的買収の方法

敵対的買収の方法は、上場会社であれば主に公開買付けという手段を用いて行われます。

公開買付けとは、TOB(Take Over Bit)ともいわれ、買付者が、不特定多数人に対して買付期間や買付の数量、価格を提示し、買付けの申込みや売付けの申込みの勧誘を行い、市場外で株券等の買付けをおこなうことをいいます。

被買収企業の議決権の過半数を取得すれば、普通決議事項であれば買収企業単体で可決させることができるので取締役選任を通じて、経営を支配することができます。

特別決議の可決ラインまで確保したい場合は、3分の2までの取得、完全に経営をコントロールしたい場合は、100%の取得を目指すことになります。

出典:e-Gov 法令検索 会社法(平成十七年法律第八十六号)第三百九条

敵対的買収の目的3つと考慮すべきリスク

買収は、被買収企業の経営権を取得し、被買収企業の経営資源やノウハウを獲得することで買収企業とのシナジー効果を期待することができます。敵対的買収でも友好的買収と同じく、自社の企業規模を拡大したい等といった大きな目的があります。

しかしながら、敵対的というその性質上、敵対的買収を実施した場合、友好的買収の場合と比べて、あまり買収効果を望めない場合があるといったリスクもあります。

ここでは、その敵対的買収における主な目的やリスクについて解説します。

買収の3つ目的

敵対的になってでも買収する主な目的は、自社の成長戦略の手段として会社の規模を大きくすることにあります。そして、そのために被買収企業の経営権を取得し、自社にない経営資源やノウハウを買うことになります。

そこで、ここでは主に買収の目的である自社の企業規模の拡大や、シナジー効果によるコスト削減やシェアの拡大、経営資源の入手の3つについて詳しく解説をしていきます。

1:自社の企業規模の拡大

会社を成長させるためには、企業規模を大きくしていく必要があります。しかし、すべて自社で完結しようとしても時間も費用も限られて実現が難しいです。

そこで買収を活用して、買収に成功すれば被買収企業が有していた事業への進出が可能となったり、新しい顧客を獲得でき自社の規模拡大が可能となります。

2:シナジー効果によるコスト削減やシェアの拡大

シナジー効果とは、買収企業と被買収企業といった異なる会社同士や事業部門が協働し合うことで、相乗効果を得られることをいいます。単体で発揮する力よりも、買収によってその効果が上回ることが期待されるものです。

シナジーにはいくつか種類があり、売上シナジー、コスト削減シナジー等があります。売上シナジーは、営業ノウハウの融合や、会社の信用力の活用、商品・サービスの拡充等によって創出され、また、コスト削減シナジーは、仕入れコストの削減や販売コストの削減、物流コストの削減等によってもたらされます。

参考記事:シナジー効果とは?3つの分類と効果を得る方法、注意点を解説!

3:経営資源の入手

被買収企業には、経営の資源となるヒト、モノ、カネ、があります。被買収企業の従業員や知的財産、ノウハウ、お金です。買収が成功すればこれら経営資源を入手することができます。これらを上手に使えば、さらに成長を見込むことができます。

ただし、被買収企業が人的資本を中心に企業価値が形成されている場合、敵対的買収を仕掛けると、買収後に優秀な人材が流出するおそれもありますので、そのような会社を買収する場合には慎重な検討が必要になります。

考慮すべき3つのリスク

敵対的な買収は、成功することで大きなメリットがある一方で、その敵対的という特性がゆえに、友好的買収と異なってリスクが伴うことがあります。そして、被買収企業の従業員のみならず、取引先や顧客との関係性にまで影響がでる可能性があります。

そこで、ここでは敵対的買収において考慮するべきリスク、シナジー効果を享受できない可能性、ブランドイメージの低下、被買収企業の買収防衛策発動の可能性について解説をします。

1:シナジー効果を享受できない可能性

買収に成功したとしても、特に敵対的な買収の結果、被買収企業の従業員の協力がうまく得られなかったり、退職者が増える等して、想定したレベルのシナジー効果を享受できない可能性があります。

これは友好的な買収と比較して生じやすいデメリットではありますが、被買収企業の従業員との密なコミュニケーションを図ったり、詳細な事業計画を提示する等して改善することが可能ではあります。

2:ブランドイメージの低下

敵対的な買収は、買収企業が被買収企業のブランドイメージを壊してしまう可能性があります。敵対的な買収の結果、取引先や顧客の被買収企業に対するブランドのイメージが低下し、取引が減少したり、取引そのものがなくなる可能性があります。

また、被買収企業における優秀な人材が流出したり、従業員との関係性が構築できなかったりして、会社内部の組織体制が不安視され、ブランドイメージが低下するリスクがあります。

ただし、これも友好的な買収と比較して生じやすいデメリットではありますが、慎重なブランディング戦略によりマネージする等対策をとれば対応することは可能です。

3:被買収企業の買収防衛策発動の可能性

被買収企業は、買収企業の敵対的買収に対して買収防衛策を発動し、買収を阻止してこようとする可能性があります。

仮に、被買収企業がポイズンピルを発動した場合、買収者は持分比率が低下し買収が失敗する可能性があります。買収に失敗しても、買収のために雇ったアドバイザーに多額の費用を払う必要があったりします。

そのため被買収企業の動向に細心の注意を払い、対応策を練っておくことが必要です。敵対的買収における主な買収防衛策については後程解説いたします。

敵対的買収に対する主な買収防衛策5つ

敵対的買収を仕掛けると被買収企業が敵対的買収を阻止しようと対抗策を講じてくることがあります。どのような対抗策があるのか事前に知っておくことでとるべき戦略も異なってきます。

そこで、ここでは主な買収防衛策である、ポイズンピル、ゴールデンパラシュート、ホワイトナイト、焦土作戦、パックマン・ディフェンスの5つについて解説します

1:ポイズンピル

ポイズンピルとは、事前警告型ライツプランともいわれており、買収者以外の株主が行使することができる差別的行使条件付き新株予約権無償割当てを行い、買収者以外の株主が新株予約権を行使することで、買収者の持株比率を下げる方法をいいます。

買収者がある一定の水準まで株式を買い付けた場合に買収防衛策を発動する条件が定められています。

2:ゴールデンパラシュート

ゴールデンパラシュートとは、買収の結果役員が解任された場合に多額の退職金を支払う契約を締結し、被買収企業から多額の現金を流出させる可能性を生じさせること、すなわち、被買収企業の企業価値を棄損させる可能性を高めることで、買収意欲を低下させる狙いがあります。

3:ホワイトナイト

ホワイトナイトとは、直訳ですと、白馬の騎士となりますが、買収防衛策の世界では友好的な買収者を指します。敵対的な買収を仕掛けられた被買収企業は、敵対的買収者よりも先にホワイトナイトに株式を取得してもらうことで、買収を防ぐ方法となります。

ホワイトナイトには、友好的な関係のある事業会社であったり、プライベートエクイティファンドがなることが多く、敵対的買収が仕掛けられた後に講じる策ですが、敵対的な買収者ではなく友好的な第三者の傘下になることを選択することになります。

4:焦土作戦

焦土作戦とは、敵対的買収者が狙っている会社の資産や事業を被買収企業から切り離す方法をいいます。会社の資産や事業を売却することで買収者の買収意欲を削ぐ効果を期待して行われる対抗策になります。

ただし、資産や事業を適正な価格で売却すれば会社は対価を取得するため、焦土作戦に買収者の買収意欲を削ぐ効果を期待できるかは疑問が投げかけられています。

また、焦土作戦が成功したとしても、資産や事業を売却すると会社の価値低下を誘引する可能性があるため、役員は株主等から責任追及がされるリスクがあります。

5:パックマン・ディフェンス

パックマン・ディフェンスとは、被買収者が逆に敵対的買収者に対して買収を仕掛け、買収会社の株式25%以上を取得する方法をいいます。

被買収者が買収者の株式を25%以上を取得すると、会社法上、買収会社は被買収会社の株主総会で議決権を行使することが制限されるため、取締役を送り込むことが実質的にできなくなります。つまり、被買収者は、買収者の議決権を25%取得すれば防衛が成功となります。

ただし、買収会社が上場会社であることが必要であったり、多額の買収資金が必要になったります。

出典:企業買収防衛策 みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社

敵対的買収の標的になりやすい企業の特徴3つ

敵対的買収の標的になりやすい会社は、株価が割安である会社はもちろんのこと、価値のある資産を保有している会社もその対象になりやすいです。そこで、ここでは、敵対的買収の標的になりやすい企業の特徴3つについて解説します。

1:総資産額に対して株価が割安で持ち株比率が低い

総資産額に対して株価が割安で持ち株比率は低い場合、敵対的買収の対象になりやすいです。また、純資産額に対する株価水準を、株価純資産倍率といい、PBR(Price Book-value Ratio)と表したりすることがあります。PBRは、株価が1株当たり純資産の何倍まで買われているかを示す指標となります。

PBRが1倍ということは、会社の解散価値と株価が等しいという意味になります。PBRの値が小さいほど割安になります。つまり、PBRが相対的に低い場合で持株比率が低いと、買収者が買収資金を集めやすく、買収される可能性が相対的に高いということになります。

2:特許や独自コンテンツを所有している

特許や独自のコンテンツを所有している場合も狙われやすくなる1つの要素になります。

資産はほとんど持たずに人的資本によって企業価値が支えられているような会社を敵対的買収によって取得する場合、買収後における人材の流出を招き企業価値を毀損する可能性があることから敵対的買収の対象にはなりにくかったりします。

一方で、被買収企業が特許や独自コンテンツを所有している場合、買収企業にとってみれば、研究や開発期間を経ることなく新たにその分野に参入することができますので、買収企業にとっては大きな武器となるためとても魅力的に映ります。

3:買収防衛策を導入していない

買収防衛策を導入していない会社であれば、被買収会社は敵対的買収が仕掛けられたタイミングで対抗措置を講じるため、買収者は先手を取ることができます。

被買収者の事後的な対抗策として代表的なものには、ポイズンピルがあります。ポイズンピルは、敵対的な買収を予防するという意味で事前に導入しているケースが多いですが、買収が仕掛けられた後に事後的に導入することも可能です。

買収者は、まずは敵対的買収を仕掛ける対象先が買収防衛策を導入していないか確認することが重要になります。

まとめ

買収を実施することで、新規事業の参入や企業規模を拡大することが短期間で可能になります。敵対的買収においても同様であり、敵対的買収は、買収会社の成長戦略を実現する1つの手段になります。

ただし、敵対的買収は、被買収企業の経営陣の同意なく公開買付け等によって被買収企業の株式を取得します。仮に敵対的買収が成功したとしても、その特性がゆえに、買収後に想定していたストーリー通りにはならない可能性があります。

敵対的買収によって実現できるメリットと、それに伴うデメリットやリスクをしっかりと把握したうえで検討することが重要になります。

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