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資金調達とは?具体的な方法・種類からメリット・デメリットまでわかりやすく解説!


公開日:2022年10月26日  最終更新日:2022年11月18日

会社の運転資金を得るためには「資金調達」が必要ですが、どのような方法・手法があるかわからないという方も多いのではないでしょうか。この記事では「デットファイナンス」「エクイティファイナンス」「アセットファイナンス」などの資金調達方法についてメリット、デメリットとあわせて分かりやすく解説します。

資金調達とは?どんなときに行う?

資金調達とは、会社を経営していくための運転資金を調達することです。資金の使い道・目的は開業、設備投資、新規事業の立ち上げ、企業の買収など様々な用途があります。

資金調達の方法はおもに「デットファイナンス」「エクイティファイナンス」「アセットファイナンス」の3つに分かれています。それぞれメリット・デメリットが違うので、目的やタイミングに応じた方法を選ぶとよいでしょう。

また上記3つ以外にも「クラウドファンディング」による資金調達や、各省庁の補助金・助成金制度を利用する方法もあります。様々な選択肢のなかから自社に合った資金調達方法を選びましょう。

資金調達方法は3つに分類される

3つの資金調達方法の分類について、それぞれの特徴をまとめます。

資金調達方法分類特徴資金調達手法
デットファイナンス
(Debt Finance)
会社の負債(デット)を増やすことで資金調達する方法。おもに銀行からの融資や社債発行など。返済義務がある。
・金融機関の融資
・自治体の融資
・ビジネスローンの利用
・社債の発行
エクイティファイナンス
(Equity Finance)
会社の株主資本(エクイティ)を増やすことで資金調達する方法。おもに株式発行。返済義務はない。・VCからの出資
・CVCからの出資
・個人投資家からの出資
・公募増資
アセットファイナンス
(Asset Finance)
会社の資産(アセット)を売却して現金化することで資金調達する方法。・ファクタリング
・手形割引
・固定資産の売却
・リースバック
・M&A・事業譲渡

それぞれの方法ごとに、調達できるまでの早さ、返済義務の有無などが異なります。

たとえばデットファイナンスのなかでも、銀行から融資を受ける場合には審査に数週間かかりますが、ビジネスローンなら比較的短い期間で利用できるうえ審査もやさしくなるのが特徴です。

また発行した株式を買ってもらうエクイティファイナンスは返済義務がないものの、経営の自由度が下がったり、一株あたりの価値が下がったりするリスクがあります。

このように資金調達とは、目的やタイミング、メリット・デメリットを比較したうえでどの方法を選ぶかを考えていく必要があるのです。それぞれの方法の詳細な説明については後述いたします。

ちなみに経済産業省が中小企業の資金調達についてまとめている資料によれば、9割以上の企業は「金融機関からの借入れ」によって資金調達しています。

参考:2022年版ものづくり白書(第3章 資金調達)|経済産業省

資金調達の目的・タイミング

資金調達をする理由をひとことで言えば会社の「運転資金」を集めるためです。ただ運転資金と言っても、実際には開業資金だったり設備投資資金だったり、様々な目的があります。おもに以下のようなタイミングで資金調達を検討する企業が多いでしょう。

  • 開業するとき
  • 設備投資するとき
  • 既存事業を拡大するとき
  • 新規事業を立ち上げるとき
  • 企業の買収、M&Aなどをするとき
  • 売掛金(後払いで受け取ることが決まっている代金)を早く運転資金に回したいとき

このように様々なタイミングで資金調達を検討する機会がありますが、大事なのは「事業があるから資金が必要となる」という事業ベースの考え方をすることです。

資金調達そのものを目的化してしまうと、ついつい「いくら調達できるか」という視点になってしまうことがあります。

しかし融資や借入の場合には返済義務もあるので「どのような事業で、どのくらいの資金が必要なのか」という点を明確にして、資金調達プランについて慎重に考えなくてはいけません。

また「調達できる金額によって事業内容を考える」という姿勢だと、出資や融資を得るのは難しくなってしまう可能性が高いです。投資家目線で考えると、事業ビジョンがしっかり定まっていない企業に投資してもリターンが得られない可能性が高いため、メリットがありません。

デットファイナンス(負債を増やす)の資金調達方法

デットファイナンス(Debt Finance)は「負債を増やす」という資金調達方法です。

おもな手法は以下のとおり。

  • 金融機関の融資
  • 自治体の融資
  • ビジネスローンの利用
  • 社債の発行

【メリット】

  • 資金調達候補先が豊富
  • 利息による節税効果が期待できる
  • レバレッジ効果が期待できる

【デメリット】

  • 利息を含む返済義務が発生する
  • 自己資本比率が下がるため、信用力が低下する可能性がある

方法1.金融機関の融資

銀行などの金融機関から借入する・融資を受ける手法は、デットファイナンスのなかでもっとも代表的です。企業が銀行を仲介して預金者からお金を借りるという構造から、「間接金融」と呼ばれることもあります。

融資の種類について代表的な例をいくつか挙げて紹介します。

融資の種類特徴
日本政策金融公庫の融資中小企業や個人企業などでもっとも利用しやすい方法。民間金融機関よりも低金利で、返済期間が長いのが特徴。審査期間は2~3週間程度。
信用保証付き融資全国信用保証協会連合会が保証人となって銀行融資を受ける方法。審査期間は4~6週間以上が目安。
プロパー融資全国信用保証協会連合会の保証を利用せずに、事業者が銀行から直接借入する方法。限度額がないのがメリットだが、審査が厳しい。審査期間は2~3週間程度。

日本政策金融公庫は「政府系金融機関」の1つで、日本政府が出資をしている金融機関です。創業融資の通過率は約50%と言われており、ほかの金融機関と比べると融資が受けやすいため、初めて融資を受ける際にはまず日本政策金融公庫に問い合わせるとよいでしょう。

ほかの日本政策金融機関には「商工組合中央金庫」「国際協力銀行」「日本政策投資銀行」「沖縄振興開発金融公庫」があります。政府系金融機関は「経済・産業の発展」や「国民生活の安定」がおもな目的です。民間金融機関の場合には融資による利益を目的としているという点で違いがあります。

民間金融機関から融資を受ける場合には、「全国信用保証協会連合会」の保証を利用するかどうかによって方法が変わります。

信用保証付き融資の場合、万一事業者が返済不可能になったとしても全国信用保証協会連合会が8割を返済してくれるかたちになるので、創業間もない会社やプロパー融資を受けられない会社でも資金調達しやすいのがメリットです。ただしデメリットとして審査期間に1~2ヶ月以上かかることが挙げられます。

全国信用保証協会連合会の保証を利用しないプロパー融資の場合、限度額がないのでまとまった事業資金を調達することができます。しかし保証がないぶん審査が厳しいのが特徴です。一定の実績が求められるので、創業間もない会社だと利用が難しいでしょう。

【銀行以外の金融機関(ノンバンク)】

上記ではおもに銀行からの借入・融資について解説しましたが、ノンバンクからの融資を受けることも可能です。ノンバンクとは銀行以外の金融機関のことで、「消費者金融」「クレジットカード会社」「信販会社」「リース会社」などが該当します。

無担保・無保証人でも審査を通過できる可能性があること、また融資まで短期間で済ませられることがおもなメリットです。逆にデメリットとしては銀行融資よりも限度額は低く、高金利になりやすいことが挙げられます。

参考:融資制度を探す|日本政策金融公庫

参考:初めての融資と信用保証|全国信用保証協会連合会

方法2.自治体の制度融資

自治体、信用保証協会、金融機関によって実施されている融資を「制度融資」といいます。厳密に言えば前述した「信用保証付き融資」のうちの1つです。しかし「都道府県制度」「市区町村制度」によっておもに中小企業支援を目的として行われる点が異なります。

例えば東京都産業労働局の場合は、制度融資を「都内の中小企業者が金融機関から融資を受けやすくするための制度」と定義しています。事業資金だけでなく、創業資金、設備資金、経済安定化、企業再生支援、DX産業育成支援など様々な目的に応じた制度を提供しているのが特徴です。

制度融資において自治体は、事業者が支払う信用保証料の補助、金融機関の貸付資金を一部預託するという役割を担います。それによって利用者の金利負担を軽減できるのがメリットです。

デメリットとしては融資までに2~3ヶ月ほどの期間を要することが挙げられます。また自治体や制度によっては、制度融資に申込むと中小企業診断士などの専門家と面談する必要があるなど、手続きが多少面倒なケースも。

申込みの流れや窓口、制度の内容などは各自治体によっても千差万別です。詳しい内容は問い合わせて確認する必要があります。

参考:制度融資一覧|東京都産業労働局

方法3.ビジネスローンの利用

ビジネスローンは民間銀行や消費者金融が提供しているサービスです。

広義で捉えれば金融機関による融資の1つではありますが、とくに「消費者金融が取り扱う事業用ローン」「銀行が取り扱う無担保・少額の事業用ローン」がビジネスローンと呼び分けられます。

ビジネスローンの特徴を銀行融資と比較してまとめてみました。

 

ビジネスローン

銀行融資

限度額

500万~1,000万円程度

5,000万~1億円程度

金利

2~15%

2~3%

審査の期間

最短即日

2~3週間以上

審査の難易度

低い

普通

保証人・担保

不必要

必要

これらの特徴をまとめると、ビジネスローンをおすすめできるのは「少額だけ借りたい、かつ早く融資を受けたい事業者」「銀行融資の審査を通れなかった事業者」などが挙げられます。

ビジネスローンの審査は比較的やさしく、保証人や担保も必要ないうえ、最短即日での融資となるなど利用のしやすさがメリットだからです。

ただし便利な半面、金利が高くなりがちなので、長期的に利用し続けるのは向いていません。

方法4.社債の発行

社債とは事業会社がみずから発行する債券のことです。投資家などが債券を購入するというかたちで「債券を発行した会社(発行体)にお金を貸し付けた」とみなすことができます。

似ているかたちの資金調達方法として株式発行による出資がありますが、社債の場合はあくまで「借入」です。そのため満期までに元本を投資家に返済しなくてはいけない、また利率に応じて利息が発生するという点で仕組みが異なります。

社債は誰を対象として債券を発行するかによって、「公募債」と「私募債」の2種類に分かれます。

社債の種類特徴
公募債証券会社を通して、社債を購入する投資家を「公募」によって募る。不特定多数から社債を購入してもらえることで多額の資金調達ができる。デメリットは有価証券届出書の提出などの手続きが複雑で、資金調達まで1ヶ月程度の時間がかかること。
私募債少数の投資家が企業から直接債券を購入する。調達金額は小規模になりやすいが、手続きが簡略化されていてハードルが低い。金融機関の投資家のみを対象としているものは「プロ私募債」、対象となる投資家に限定がなく人数制限があるものは「少人数私募債」という。

メリット・デメリットを簡単にまとめると「多額の資金調達がしやすいが、手続きのハードルが高い」のが公募債、「少額の資金調達になりやすいが、ハードルが低く実施しやすい」のが私募債です。

また社債の役割に応じて、以下のような種類分けもあります。一般的に「社債」と言うときは「普通社債」のことです。

社債の種類特徴
普通社債中長期的な資金調達を目的とした社債のこと。
転換社債購入した債券を株式に転換できる社債のこと。
ワラント債債券を購入すると、新株発行時に株式を購入する権利が得られる社債のこと。
劣後債経営破綻などが起きたときに、元本と利息を返済する優先度が低い(後回しにできる)社債のこと。

社債の中には、電力会社が発行する「電力債」や、銀行が発行する「銀行債」などと呼ばれる債券もあります。

エクイティファイナンス(資本を増やす)

エクイティファイナンス(Equity Finance)とは、おもに株式発行・交付によって出資してもらうことで資金調達する方法です。金融機関などの第三者をとおさないため、直接金融の一種という分類になります。

おもな具体的手法は以下のとおりです。

  • VC(ベンチャーキャピタル)からの出資
  • CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)、事業会社からの出資
  • 個人投資家からの出資
  • 公募増資

【メリット】

  • 調達した資金の返済義務が発生しない
  • 財務基盤が安定する
  • VCや個人投資家から経営についてのアドバイスをもらえることもある

【デメリット】

  • 会社の経営権を握られる可能性がある
  • 配当金を支払う義務が発生する

方法1.VC(ベンチャーキャピタル)から出資を受ける

VC(ベンチャーキャピタル)とは、未上場のベンチャー企業に出資する投資会社・投資ファンドのことです。出資した会社が上場して株式を公開したとき、またはM&Aで株式譲渡するときに、持ち株を売却することで利益を得ます。

VC側の視点から見れば、すべての会社が上場、M&Aまで至るわけではないので、出資した金額を回収できないこともあるハイリスク・ハイリターンなビジネスです。

そのため出資を受ける会社側としては、将来性のある魅力的な事業であること、上場やM&Aをゴールとした具体的な戦略を描いていること、などを明確に伝えられるかどうかを意識しておく必要があります。

多くの企業に出資しているVCであれば、その分ビジネスの立ち上げ・経営について詳しい人材も揃っています。VCの知識や経験を活かすことで、事業拡大していくにあたって有利になるでしょう。

方法2.CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)、事業会社から出資を受ける

CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)とは、投資を本業とはしていない事業会社による出資・支援組織のことです。事業会社内にスタートアップ投資の部隊もいることもあります。

VCの場合はあらゆる事業分野に出資しますが、CVCはあくまで自社の事業と関連性が高いベンチャー企業に出資します。出資することで良好な協業関係を築き、自社事業とのシナジー効果(相乗効果)を得ることが目的です。

CVC側から見れば、自社でゼロから研究・開発を進めるよりもリスクやコストが低いというメリットを得られます。またベンチャーならではの独自な発想力や技術力によって、新製品・新市場の開拓につながるかもしれないという狙いも。

一方でCVCから出資を受ける事業者から見ても、自社事業と関連性が高い大手企業との良好な関係が築けることはメリットと言えるでしょう。資金調達できたときの実績は信用にもつながります。

関連記事:どのCVCが出資・買収に積極的?各CVCの出資・買収実績と出資先スタートアップの特徴 | M&A to Z

方法3.個人投資家から出資を受ける

VCなどの組織に属していない個人投資家から出資してもらう方法です。とくにスタートアップ企業・ベンチャー企業に投資する個人投資家を「エンジェル投資家」と呼びます。

個人投資家・エンジェル投資家が出資する目的はVCと同じで、出資した企業が上場またはM&Aしたときに株式を売却することでリターンを得ること(もしくは配当金を得ること)。

個人投資家やエンジェル投資家の多くは、過去に起業などによる成功体験がある人なので、ビジネス・経営に対して有益な助言をしてもらえる可能性が高いのがメリットです。

また個人で投資しているため出資までの意思決定が早く、資金調達がスムーズに進行することもメリットとして挙げられます。

一方でデメリットとしては、数億円規模の投資ができるVCやCVCと比べると少額になりやすいこと、投資家と良好なコミュニケーションを築くためのコストがかかること、などが挙げられるでしょう。

方法4.公募増資

ここまで紹介してきたVC・CVC・個人投資家(エンジェル投資家)による出資は「第三者割当増資」と言って、特定の第三者を対象として新株を発行する方法でした。

一方ここで解説する「公募増資」とは、投資家・株主を広く募集して、不特定多数の企業または投資家から出資してもらう方法です。

株式が市場で取引されている上場企業の場合は、公募増資によって資金調達をすることが多くなります。

公募増資で投資家を募ることにより多数の投資家に注目してもらえることで、第三者割当増資よりも多額の資金を調達しやすいことがおもなメリットです。

一方のデメリットとしては株主配当のコストが上がること、新規株主が増えて議決権の希薄化が進むリスクがあること、などが挙げられます。

アセットファイナンス(資産の現金化)

アセットファイナンス(Asset Finance)とは、自社の資産(アセット)を売却する、または資産を担保にして資金調達する方法のこと。

具体的には土地などの不動産を売却したり、売掛金(すでに発生した取引でこれから回収する売上代金)を先に現金化したりする方法が代表的です。おもに下記のような手法がアセットファイナンスに含まれます。

  • ファクタリング
  • 手形割引
  • 固定資産の売却
  • リースバック
  • M&A・事業譲渡

【メリット】

  • 利息や配当金の支払いが不要
  • 比較的スムーズに資金調達しやすい
  • 保有資産を貸借対照表から切り離すことが可能になる

【デメリット】

  • 資産や事業が必要
  • 長期的な利益が減少する可能性がある

方法1.ファクタリング

ファクタリングとは売掛金を現金化する資金調達方法です。「売掛金」は得意先に対して継続的に販売している商品・サービスのうち、取引後にまだ入金されていない売上代金のことを意味します。

つまりファクタリングは「これから回収する予定の売上を早く現金化する」という手法のことです。

売掛金の回収までに時間が空いてしまうと、その分の金額を資金として活用したくても、回収時期まで待たなくてはいけません。それをすぐに現金化することで、資金の運用サイクルを早めることができるのがファクタリングのメリットです。

一方のデメリットとしては、売掛金の売買に手数料がかかるため満額受け取ることはできないこと、また悪徳なファクタリング業者が存在することが挙げられます。

手数料については、なるべく適切な金額設定の事業者と取引するように注意しましょう。悪徳業者の見分け方については、金融庁が注意喚起しています。

たとえば契約書に「債券譲渡契約」と記載されていない場合には、ファクタリングを装った悪質な貸付(ヤミ金)の可能性もあるので注意してください。

参考:ファクタリングに関する注意喚起|金融庁

方法2.手形割引

手形割引もまた、売掛金を現金化する資金調達方法です。売掛先との決済手段として約束手形を利用している場合は、その約束手形を銀行に買い取ってもらうことで早期資金化が可能となります。

ファクタリングとのおもな違いは以下のとおりです。

  • 債務不履行となった場合は銀行に弁済する必要がある
  • ファクタリングと比べると資金調達までのスピードが遅い
  • ファクタリングより金利が安い

たとえば売掛先の企業が倒産するなどして手形が不渡りとなった場合、手形割引を依頼した事業者が弁済する必要があります。

ファクタリング会社の場合は不渡りになるケースも想定して手数料を設定しているので、万が一手形が不渡りになって支払い不可能となっても弁済不要であることがほとんどです。

そのぶん手形割引のほうが金利は安くなっています。

方法3.固定資産の売却

事業継続と直接的に関係のない固定資産を売却する資金調達方法も、アセットファイナンスの代表的な例です。

売却できる可能性のある固定資産の一例をまとめます。

  • 社宅・保養所などの設備
  • 土地などの不動産
  • 役員車・営業者などの車両
  • 特許権・商標権など無形の固定資産

そもそも「固定資産」の区分は1年を超えて保有・使用するもののことで、土地や社宅などはわかりやすい例です。売却することで建物や設備の維持管理費を削減することにつながるというメリットもあります。

また有形の固定資産以外に特許権・商標権などの無形固定資産もあるので、それらを売却することも選択肢のうちの1つです。

方法4.リースバック

リースバックもまた、不動産の売却による資金調達です。ただし売却したあともその不動産を借り続けるという点が異なります。

社宅や工場など「売却できる固定資産ではあるけれど、使えなくなると困る」という不動産がある場合、1度リース会社に売却します。売却したあともリース会社に賃料を払うことで不動産を使い続けるというのがリースバックです。

不動産の所有権がなくなること、また賃料が発生することはデメリットと言えます。

しかし使途が自由なまとまった資金が得られて、事業も問題なく継続できることはメリットです。また固定資産税や修繕費などのコストを削減することにもつながります。

将来的に買い戻しすることも可能なので、不動産を所有している企業なら検討しておきたい資金調達方法の1つです。

方法5.M&A・事業譲渡

会社全体、または会社の一部(事業部門や子会社)を売却すること(カーブアウト)で資金調達をする方法もあります。

M&Aは希望の買い手が見つかりづらいというデメリットがありますが、M&Aマッチングプラットフォーム「M&Aクラウド」では、会社、事業を買いたい企業がM&Aのビジョンや希望する買収先の条件を記事にして紹介しています。条件検索もできるので、希望に沿った売却先を見つけることができるでしょう。

またアドバイザーに直接相談することで、会社売却や資金調達に関する最新のトレンドや業界別のインサイトを知ることができ、希望の条件通りに譲渡出来るようにサポートが充実しています。まずはお気軽に無料でご相談ください。

その他の資金調達方法

ここまで紹介した「デットファイナンス」「エクイティファイナンス」「アセットファイナンス」とそれぞれの具体的手法以外にも、様々な資金調達方法があります。

ここでは「自己資金」「クラウドファンディング」「補助金・助成金」という代表的な例を見ていきましょう。

方法1.自己資金を利用する

「資金調達」の1つとして紹介すると違和感があるかもしれませんが、「自己資金」を用意しておくのは大切です。自己資金とは読んで字のごとく「自己が所有する資金」のことを意味します。

じつは金融機関で融資を受けるときにも自己資金の金額に応じて上限が決まっていたり、自己資金がゼロだと融資を受けにくかったりすることがあるので注意が必要です。

この場合に自己資金として認められるのは「預金通帳で確認できるお金」や「資産を売却して得た資金」など。

逆に自己資金として認められないのは「預金通帳には入れず手元で保管しているお金」や「人から借りたお金」などがあります。

当たり前ですが自己資金には返済義務もなく使途も自由なので、デメリットはありません。もし事業を起こそうと考えている場合は、コツコツと自己資金をためていき、入念に準備を進めるのがおすすめです。

方法2.クラウドファンディングを利用する

近年新しい資金調達方法として「クラウドファンディング」が定着してきました。インターネット上で不特定多数の出資者を募り、目標額以上になるまで少額ずつ資金調達する方法です。

支援という形で出資してもらい、出資者には返礼品(リターン品)を送るという仕組みになっています。

特定のプロダクトが返礼品となっている場合は「購入型クラウドファンディング」、ボランティアや社会貢献の一環として行う場合は「寄付型クラウドファンディング」というように、いくつか種類があります。

返礼品として株式を取り扱う「株式型クラウドファンディング」や、個人的な融資を募る「融資型(貸付型)」なども可能です。

おもなメリットとしては「プロモーション効果」が挙げられます。プロダクトなどの開発段階から支援者の興味を引くことが可能で、なおかつ支援者の反応を見ながら試作を重ねていくことが可能です。

また従来は資金調達が難しかったプロダクトやサービスでも、興味を持った支援者が多く集まれば資金を集めることが可能になります。

一方でデメリットとして挙げられるのは、クラウドファンディングが頓挫してしまった場合にもデータが残り続けてしまう可能性があること、また長期的な資金調達となることなどです。

方法3.補助金・助成金を利用する

資金調達方法のひとつとして、政府や地方自治体が用意している補助金・助成金を利用することも可能です。制度融資などとは異なり、原則的に返済義務がないことが最大のメリットと言えます。

補助金・助成金を利用するためには申請だけでなく、支援目的に合っていること、募集要項に沿っているかどうかの審査をクリアすること、などの条件を満たすことが求められます。

補助金・助成金には様々な種類がありますが、中小企業庁が用意している「IT導入補助金」「事業承継・引継ぎ助成金」や、厚生労働省が用意している「働き方改革推進支援助成金」「人材確保等支援助成金」などが代表的です。

そのほか各地域の自治体が独自に補助金・助成金を用意して、創業や資金繰りの支援を目的とした取り組みをおこなっています。

募集時期や条件はそれぞれの補助金・助成金によって異なるため、情報をチェックしなくてはいけない点に注意しましょう。

参考:補助金等公募案内|中小企業庁

参考:各種助成金・奨励金等の制度|厚生労働省

事業形態や業績によって利用すべき資金調達方法は異なる

ここまで様々な資金調達方法を紹介してきましたが、どの資金調達方法を選ぶべきなのかは事業形態や業績によっても変わってきます。いくつかのパターン別におすすめの資金調達方法を解説するのでぜひ参考にしてみてください。

起業するタイミングでの資金調達

起業直後のタイミングでは、VC(ベンチャーキャピタル)や個人投資家からの出資を受けるのは難しいかもしれません。

おすすめは「自己資金」「政府系金融機関の融資」「補助金・助成金」「クラウドファンディング」などです。

まず自己資金についてですが、東京商工会議所の「創業・スタートアップ実態調査」によれば実際にもっとも多い開業費の調達方法が「自己資金」でした。融資や補助金・助成金を併用するとしても、自己資金をある程度貯めておくことが大切です。

日本政策金融公庫の「新創業融資制度」であれば、融資金額の1割程度の自己資金は用意しておくとよいでしょう。

東京都中小企業振興公社の「創業助成金」のように、創業予定または創業後数年以内を対象とした補助金・助成金が用意されていることもあります。融資と違って返済不要なので積極的にチェックしてみましょう。

すでに明確なプロダクトやプロジェクトが用意できている場合は、「クラウドファンディング」を利用するのも1つの手です。

参考:「創業・スタートアップ実態調査」報告書の公表について|東京商工会議所

参考:創業助成金(東京都中小企業振興公社)|東京都産業労働局

中小企業の資金調達

非上場会社などの中小企業であれば、「日本政策金融公庫の融資」「ビジネスローン」「VC・投資家からの出資」などが利用しやすいでしょう。

日本政策金融公庫は「経済・産業の発展」「国民生活の安定」をおもな目的としているため、低金利かつ返済期間が長いのが特徴です。あまりリスクを取れない中小企業にとって利用しやすい融資制度になっています。

もし融資の審査に落ちてしまう場合は、ビジネスローンも選択肢に入るでしょう。金利は高く設定されていますが、審査がやさしくすぐに資金調達できる方法なので、調達したい金額が少額であればおすすめです。

上場やM&Aを本格的に目指しているのであれば、VC(ベンチャーキャピタル)や投資家に出資してもらうのもよいでしょう。資金調達をしつつ、経営についてのアドバイスを貰えるなど、事業を進めていくうえでもメリットがあります。

経営難のタイミングでの資金調達

経営難のタイミングで運転資金を得たいとき、民間企業から融資を受けるのは難しいでしょう。とくに赤字補てんのための資金調達だとみなされた場合は融資が受けられない可能性が高いです。

そのため基本的には「アセットファイナンス」「補助金・助成金」「政府系金融機関からの融資」などがおすすめです。

会社が保有する資産を売却する「アセットファイナンス」であれば、業績不振であっても資金を得られます。とくにファクタリングであれば売掛金をすぐに現金化できるので、早急な対応が可能です。

また政府や自治体の「補助金・助成金」を利用するのもひとつの手段となります。たとえば「IT導入補助金」は、導入するサービスによって生産性向上が見込めることがおもな条件となっている補助金です。赤字であれば採択しない、という方針ではないため補助金を利用できる可能性はあります。

「政府系金融機関からの融資」では、たとえば日本政策金融公庫の「経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)」が代表的な例です。社会的または経済的な外的要因によって一時的に売上減少している事業を対象としているので、当てはまる場合はチェックしておきましょう。

参考:IT導入補助金|中小機構

参考:経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)|日本政策金融公庫

M&A(買収)を目的とした資金調達

M&A(買収)を目的として資金調達するときには、多額の資金が必要となります。そのため「公募増資」「金融機関からの融資」など、上限額の大きい資金調達方法を選ぶとよいでしょう。

「公募増資」では上場企業であれば世間一般から広く株主を募ることができるので、多額の資金調達に向いています。ただし非上場の中小企業にとっては手続きに労力がかかるため、実施されることはまれです。

「金融機関からの融資」では、日本政策金融公庫の「事業承継・集約・活性化支援資金」があります。こちらは事業の譲渡、株式の譲渡、合併などを目的とした融資です。自社に適用可能かどうかはチェックする必要がありますが、M&Aのための資金調達という目的に沿った制度となっています。

またLBO(レバレッジド・バイアウト)を活用して融資を受けるという手段もあります。LBOとは、譲受企業が譲渡企業の資産や将来的なキャッシュフローを担保として資金調達する買収方法のこと。自己資金が少なくてもM&Aに必要な資金を用意できます。

ちなみにLBOに似ている言葉に「MBO」や「EBO」がありますが、MBOは経営陣みずから株主から自社株式を買い取る方法のこと、EBOは同じように自社株式を従業員が買い取る方法のことです。どちらも株式を買うための資金調達は別途行う必要があります。

関連記事:バイアウト手法3種の特徴とメリット・デメリット|成功のポイントは5つ

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