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合弁会社とは?3つのメリット・デメリット|注意すべきポイントを解説


公開日:2021年7月29日  最終更新日:2022年11月18日

企業間の共同出資の形態の一つとして、合弁会社があります。パートナー企業間のシナジー効果を適切に評価することで、互いの強みを活かして弱みを補完しあうことができます。合弁会社のメリット・デメリットと設立に関する注意点を紹介します。

合弁会社とは

合弁会社とは、複数の企業が共同で事業を行う合弁事業(JV・Joint Venture)を手掛けることを目的とし、複数の企業が各自出資金を負担して共同の株主として設立・運営する会社を言います。

M&Aを検討する際、その1つとしてこの合弁会社という形態も有力な選択肢となります。

本記事では、合弁会社と他の会社との違いや、そのメリット・デメリットについて、注意点とあわせてわかりやすく解説します。

合弁会社と他の法人形態との違い

会社法では、株式会社、合同会社、合資会社といった会社の種類が定められています。合弁会社はこれらの会社の種類を分類するものではなく、会社の設立・運営方法の呼称です。

また、合弁と似た用語で「合併」というものがあります。「合併」とは、複数の法人そのものを1つに統合するものです。

合弁会社の3つのメリット

合弁会社の設立には、様々な手続きが必要です。それにもかかわらず、近年、合弁会社の形態による共同出資の例が多くみられます。合弁事業のために合弁会社を設立するか、他の形態の設立や出資をするかを検討するためには、合弁会社のメリットとデメリットを理解する必要があります。

1:新規分野、海外進出が容易になる

事業の海外展開をしようとする場合、国の法規制によっては、外資による設立が制限される場合があります。また、現地の法律やカルチャー、ノウハウを一から収集して設立するには、時間と投資額が多くかかってしまいます。

たとえば、中国では2020年1月1日に、外資による投資の新たな基本法である、外商投資法が施行されました。このような現地の法規制について、よく知らなければ現地法人を設立するのは難しいでしょう。日本国内での新規分野への進出においても、法規制やノウハウという点で同様の問題があります。

現地企業や当該分野におけるノウハウを持つ企業と協力して合弁会社を設立することで、新規分野や海外への進出が容易になります。

出典:2020年施行の外商投資法、2024年12月末までに企業は組織構造の確認と変更を(中国)|JETRO 日本貿易振興機構

2:合弁参加企業の相互の強みを活用できる

2つめのメリットとして、「提携先の持つ強みを活用できる」という点があります。

1社が単独で新規事業を立ち上げるには、ヒト・モノ・カネといったリソースを揃えるために多大な投資が必要になる場合が多くあります。

これに対し、複数企業が合弁会社を設立する場合、相手企業が持つブランド、技術力や知財、経験、ノウハウを活用することができます。

3:設立コストや損失リスクを軽減できる

3つめのメリットとして、合弁会社は「コストとリスクを限定できる」という点があげられます。

複数企業が合併して1つの法人となる場合や、1社が多額の投資をする場合と比較して、複数企業が出資額を分担し合うことで、各企業が負担する設立コストを抑えることができます。

また、新規事業が失敗してしまった場合も、出資金を他社と分担して抑えているため、損失リスクも限定されます。

合弁会社の3つのデメリット

合弁会社には「参加企業の方針が不一致であった場合の対処が難しい」「自社のノウハウが他社に流失する可能性」「適切なパートナーかの判断が難しい」といったデメリットが想定されます。

そのため、メリットだけではなくデメリットも考慮したうえで合、弁会社を設立しなければなりません。

1:参加企業の方針不一致の場合の対処が難しい

経営方針の異なる複数企業が共同出資をする場合、合弁会社の経営方針をめぐり、対立してしまうことがあります。

企業間で出資比率に差をつけても、親会社・子会社のような支配関係や関連会社といった、特別な関係のない企業間では、話し合いが平行線に終わってしまい、意思決定が遅れたり、対立状態となってしまう場合もあります。

2:自社の技術やノウハウの流出する恐れがある

合弁会社を設立することで、提携先の強みを共有できる反面、自社の技術や知識が提携先の企業に流失する恐れも考えられます。

自社の技術をシェアする場合には、そのようなリスクを防止するために、法的なリスクマネジメントを含め知的財産権を守る整備体制が必要です。

3:適切なパートナーか、判断が難しい場合がある

提携先となるパートナーの選定を誤ると、そのパートナーが社会的信用を失うような場合、自社にも悪影響が及ぶ恐れがあります。

特に自社には全くの新規分野や海外進出の際は、パートナーの正確な情報を収集することが、困難な場合も少なくありません。

合弁会社を設立するには

合弁会社を設立するにあたり、まずは提携先となる企業(パートナー)選びが重要になってくるでしょう。提携先となる企業が同じ目標やビジョンを持っているのかを確認したうえで基本契約書を締結していくように進めていくのがよいと言えます。

合弁会社設立のための具体的な手順について説明します。

1:情報収集・分析

デメリットであげたような、パートナーによりもたらされるリスクを回避するため、事前にパートナーとなる企業の情報を慎重に調査し、収集した情報を分析します。

合弁会社の失敗例の多くは、このパートナーとなる企業に関するリサーチ不足があげられています。

2:基本契約書の締結

合弁会社を設立する際、パートナー企業との間で正式な合弁契約書を締結する前に、設立する合弁会社の戦略やビジョンといった基本事項をよく確認します。

想定されるリスク、目標やビジョンの現実性、問題点への対処法を確認し、合弁会社設立のスケジュールを話し合い、基本方針の合意に至った際に締結されるのが、一般的に基本合意とも呼ばれる基本契約書です。

合弁会社の設立に向けて、相手方の持つ知的財産(知財)やライセンス、ノウハウ、企業戦略といった、重要情報のやり取りが発生するため、相互の機密保持条項が必要です。

技術提携の検討をするために必要であればライセンス条項を盛り込む必要もあるでしょう。

3:パートナーと主要条件の確認と合意

基本合意の締結後、具体的にパートナー企業間で各自がどれだけの比率を出資するか(出資比率)、設立される法人の形態、取締役の選定、株式の種類、そして不採算事業の撤退条件等の主要条件を交渉し、合意します。

出資比率と撤退条件については、後ほど詳しく解説します。

4:契約書の締結

パートナー企業間で主要条件について合意した後、いよいよ合弁契約(合弁会社設立契約、ジョイントベンチャー設立契約とも呼ばれます)を締結します。

合弁契約には、会社の目的や株式の保有比率、取締役会の役員など、合弁会社設立のために必要な内容やパートナー企業間の権利や責任・役割について記載されます。

5:合弁会社の設立

提携先の企業と間で事前に定められた条件通りに新会社を設立し経営をしていきます。その後、新会社の経営状況を見て追加出資するのかなどの経営戦略を見直し、都度経営判断をしていきます。

合弁会社設立の2つのポイント

合弁会社の設立手続きにおいて触れた中で、「出資比率」と「撤退条件」という重要な2つのポイントがあります。この章では、この2点についてもう少し詳しくご紹介していきます。

1:法人形態と出資比率

合弁会社は株式会社でなければいけないわけではありません。

事業の規模や社員の責任の違いを踏まえ、どのような形態の法人を設立するかについて、パートナー企業と話し合う必要があります。

その際、合弁会社以外にも、既存会社の株式の一部譲渡という方法もあるので、広い選択肢の中から自社とパートナー企業とが共同出資するのにふさわしい形態を検討します。

また、合弁会社における出資比率は、設立時にはパートナー企業間で、均等な比率(2社間であれば50:50)とする例が多いようです。

ただ、デメリットでもあげたように、パートナー企業との間で対立が生じてしまった場合、出資比率が均等であると意思決定がなかなかできないという問題点があります。そこで、出資比率を51:49にするなど、どちらかの企業が多めに出資することもあります。

2:撤退条件

合弁会社設立後、不採算事業が生じたり、設立後に需要がなくなってしまったり、あるいはパートナー企業間での対立が解消されない場合もあります。

そういった場合に合弁会社を解散し、提携関係を解消することができるよう、合弁契約に撤退条件を含めます。

具体的には、一定期間において業績が見込めない場合や合弁契約に関する違反が生じた場合などの解散事由が必要です。

また、知財・ライセンスの帰属、顧客対応等、解散の前後において合弁会社で必要となる対応と、それに関する両社の権利義務や責任も含めます。

合弁会社として成功するために

合弁会社の設立にはデメリットもあります。ただし、合弁会社の設立手続きに関する注意点に留意して十分に準備すれば、デメリットを最小化することも可能でしょう。

合弁会社のメリット・デメリットをよく理解し、情報収集と分析を行い、自社にとってより良いパートナー企業を見つけましょう。そして、パートナー企業と十分な議論を尽くし、両社にとって最適な形態の合弁会社となるよう、会社間のシナジーを適切に評価しましょう。

もし準備段階で不明点がある場合は、弁護士、公認会計士、M&Aアドバイザー等の専門家を活用するのもよいでしょう。

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