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株主名簿とは?必要な場面や記載内容・管理方法について解説


公開日:2021年8月31日  最終更新日:2022年11月18日

株式会社は株主名簿を作成する必要があります。株主名簿には、株主に関する基本事項が記載されているので、会社と株主の権利関係を把握するためのベースとなります。

また、資金調達の場面においても株主名簿が参考情報になりますので適切に管理する必要があります。本記事では株主名簿の記載内容や管理方法について詳しく解説していきます。

株主名簿とは

会社法上、株式会社は株主名簿を作ることが義務づけられています(会社法第121条)。そこで、本記事では作成が義務付けられている株主名簿の基本を紹介します。

株主名簿の定義

株主名簿とは、株主を把握するため、株主の基本情報をまとめた書類のことを指します。非上場の会社や1人の会社であっても作らなければなりません。

仮に株主名簿作成義務に違反して作成しなかった場合、100万円以下の過料の制裁が課されることがある(会社法第121条)ため、注意が必要です。

会社は株主名簿管理人(会社に代わって株主名簿の作成等株主名簿に関する事務を行う者)に管理業務を委託することができます。

費用はかかりますが、株主が増えれば株主名簿の更新頻度が上がり、業務を委託することで事務負担を軽減することができるため、本業に専念できます。

株主名簿が必要な場面

株主名簿は会社の設立時のみならず、その後もさまざまな場面で必要になります。ここでは税務署への届出手続きと、株主の特定が必要な場合の2つの場面についてわかりやすく解説します。

税務署への届出時

会社設立時に作成した株主名簿が最初に必要となる場面は、税務署への届出手続きです。作成した株主名簿を法人設立届出書の添付書類として提出する必要があります。

会社設立日から2か月以内に法人設立届出書を提出しなければなりません。そのため、提出するスケジュールには気をつける必要があります。

株主の特定が必要な場合

株主名簿を作成していないと、株主総会を開催する場合の招集通知の発送先や権利行使をする株主の情報を確認することができません。株主総会を招集するには、株主に招集通知を送付しなければならないため、誰が株主であるかを知る必要があります。

また、株主が権利を行使する場合、たとえば、株主提案権を行使した場合は、行使できる要件を満たしているのか確認が必要です。なお、会社は基準日を権利確定日として権利を行使することができる者を定めることができます。

株主名簿の作成や管理には事務負担が伴い、特に中小企業であればその負担はより一層大きいものです。しかし、株主の権利に関わる重要な帳簿になるので、適切に管理する必要があります。

株主名簿への記載内容について

インターネット上で検索すれば株主名簿のテンプレートやフォーマット、ひな形のエクセルを入手することができます。

株主名簿の作り方や書き方に決まった様式や書式、レイアウトはありません。しかし、株主名簿に必ず記載又は記録(以下、記録は省略)しなければならない形式的な記載事項があります(法定記載事項)。

ここでは、その株主名簿記載事項の株主の氏名又は名称及び住所、株式の取得年月日、株主が持つ株式種類と数、株券番号についてわかりやすく解説します。

1:株主氏名・名称

株主名簿には株主の氏名又は名称を記載しなければなりません。株主が個人である場合は氏名、法人である場合は名称を記載します。

法人が株主になる例としてあげられるのは一般の事業会社のほか、ベンチャーキャピタルなどの投資会社(ファンド)等があります。

株主の氏名又は名称の利用目的は複数ありますが、たとえば株主総会の開催にあたって議決権行使書面を交付する場合、その書面に記載することが挙げられます。

また、株主が株主権を行使した場合に、行使者と株主名簿の氏名又は名称が一致しているか照合するためにも利用します。

2:株主の居住地

株主名簿には株主の住所を記載しなければなりません。株主が個人の場合は、連絡が取れる住所、一般企業やベンチャーキャピタルなどの法人が株主になっている場合は、本社等の所在地を記載します。

株主総会の招集通知等の各種の通知や催告は、株主名簿に記載した当該株主の住所に発送すれば会社側の義務は果たされたことになるため、仮に住所変更されて新しい住所が不明でも記載された住所に発送すれば問題ありません。

3:株式の取得年月日

株主名簿には、株主が株式を取得した日付を記載しなければなりませんが、ここで注意することは、どのタイミングを取得日として扱うかです。株式会社を設立した場合は、その会社の設立登記した日を記載します。

新株発行によって割当てられた場合は払込を完了した期日、又は払込期間の定めがある場合には出資の履行が完了した日で、株式の譲渡によって当該株式を取得した場合は、株式取得者が会社に対して名義書換請求を行い、会社がそれを受理した日が取得日です。

さまざまな場面によって、いつから取得したのか取り扱いが異なりますので注意が必要です。

4:株主が持つ株式種類と数

株主名簿には、株主の持株数を記載しなければなりません。各株主に支払う配当金の総額や株主総会における各株主の議決権の個数を確認する目的等で必要な情報です。

また、種類株式を発行する会社の場合は株式の種類と、種類ごとの数を記載しなければなりません。種類株式を発行する会社とは、株式の内容について異なる2つ以上の種類の株式を発行する会社をいいます。

5:株券番号

株券の発行会社は、株券の番号を記載しなければなりません。しかし、現行の会社法では、株券の不発行が原則です。

例外的に、株券を発行する旨を定款で定めた場合のみ、株券を発行しますのでその場合に株券の番号を記載すれば足ります。

6:株式が信託財産になった場合

株式が信託財産に属するときは、会社法 第154条の2の定めに従って株式会社に対し、その旨を株主名簿に記載することが対抗要件になります。

仮に信託財産に属する旨を株主名簿に記載しなかった場合、当該株式が信託財産に属することを株式会社その他第三者に対抗することができなくなります。

対抗力を備えるため記載の請求があった場合、会社は誤りなく信託財産に属する旨を記載する必要があります。

7:株式に質権が設定された場合

質権設定の方法にも、株主名簿や株券への記載の有無に応じて、略式質と登録質があります。略式質は株券の交付により当事者間で効力を生じる質権で、会社や第三者に質権設定を主張するための対抗要件は株券の占有です

ただし、先に触れたように、現在では株券不発行会社が増えているため、実際に活用されることは少ないと言えます。

登録質は、当事者間の質権設定の合意後に、会社および第三者への対抗要件として、質権設定者である株主の了承のもと株主名簿に質権者の氏名又は名称及び住所を記載するものです。株券不発行会社の株式に質権を設定する場合は、必ず登録質を利用することになります。

登記変更申請に必要な株主リスト

登記申請・変更届にあたっては添付書面として株主リストの提出が必要になる場合があります。

提出が必要になる場合とは、登記すべき事項に株主総会決議を要する場合等があり、たとえば、株主総会で新たに役員が選任され、役員登記をする場合がこれに該当します。株主リストの提出を求める理由は、商業登記の悪用防止や犯罪、違法行為防止のためです。

この株主リストにはすべての株主を記載する必要はなく、議決権数の上位10名の株主を記載する等、株主名簿とは必要事項が違います。株主リストは、株主名簿の名称と似ていますが全くの別物です。

参考:「株主リスト」が登記の添付書面となりました|法務省

株主名簿の管理について

株主名簿には、株主の個人情報管理や株主権利保護などの重要な役割があります。そのため、株主名簿を作成したらそれを継続的に管理し、保管していかなければなりません。ここでは株主名簿の管理・保管方法について解説します。

1:株主名簿は会社の本店で保管

株主名簿を作成したら、それを本店に備え置き、株主等からの閲覧・謄写等の請求に供される必要がありますが、株主名簿には個人情報が含まれているので、誰でも閲覧できるように公開してはいけません。

また、株主名簿に関する事務を株主名簿管理人に委託している場合は、会社法125条により株主名簿管理人の営業所に備え置かなければなりません。保存期間はなく、永久的に必要です。

株主は、株主名簿記載事項を記載した書面(株主名簿記載事項証明書)を交付するよう会社に請求することができます。

その主な目的は、株式の売却時に売却の相手方に当該株式の持ち株数を証明することです。請求があった会社は、その書面に代表者が署名捺印をするか、記名押印したうえで交付することになります。

2:記載内容に変更があった場合

株主名簿の記載内容に変更がある例として、住所変更や株式を譲渡した場合等があります。特に注意が必要なのは、後者の株式を譲渡した場合です。

株式を譲渡した場合、譲受人の氏名又は名称及び住所に書き換えなければ、たとえ株式譲渡が有効であっても、会社その他の第三者にその譲渡の効力を対抗することができません。

名義書換がされていない場合、会社は原則として株主名簿に記載されている者を株主として扱えば足ります。仮に譲渡する前の過去の株主に招集通知を発送しても会社は義務を果たしたことになります。

3:株主名簿の閲覧謄写請求

株主は自分以外にどんな株主がいるか見たい場合、会社の営業時間内であれば、いつでも株主名簿を閲覧または謄写(写し)請求し、他の株主の情報を入手することができます。

その際、請求者は、請求の理由を明らかにしなければなりません。また、当該会社の親会社の社員も、裁判所の許可を得ることで請求することができます。この閲覧権は単独株主権です。

閲覧請求があった場合、会社は原則、その請求を拒むことができませんが、会社法で定められた拒絶事由に該当する場合、これを拒むことができます。請求の理由等と照らし合わせながら拒絶事由の該当性を調査する必要があります。

まとめ

株主名簿は、資金調達の場面でも重要です。例えば、銀行から借り入れをするにしても、どのような株主がその会社の株式を保有しているのかチェックの対象になります。

株主権の保護のみならず、資金調達の観点からも株主名簿を適切に管理することが大切です

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