TOBとは何か。わかりやすく解説|TOBの意味・目的・概要・手続き、株価への影響も紹介
公開日:2021年10月8日 最終更新日:2022年11月18日
TOBは、不特定かつ多数の株主に対し、公告により株式の買付けの勧誘を行い、証券取引所の市場外で株式の買付けを行うことをいいます。対象会社の株主をはじめ多くの関係者の利益に影響を及ぼすため、必要な情報の開示等透明性と公平性の確保が重要です。手続きを理解し、適正に実行することが求められます。
目次
TOBとは?
TOBとは、英語のTake Over Bidの略で、株式公開買付けと訳されます。不特定かつ多数の株主に対し、公告により株式の買付けの勧誘を行い、証券取引所の市場外で株式の買付けを行うことをいいます。
TOBの対象は主に上場会社ですが、非上場でも、有価証券報告書を提出しなければならない会社に対して行われることがあります。
買付け対象となった株式を発行する対象会社の賛同を得て行うものを友好的TOB、反対された状態で行うものを敵対的TOBといいます。
敵対的TOBでは、TOBが成功する可能性は低くなります。しかし、2020年の外食大手・コロワイドが大戸屋HDへの敵対的TOBを成立させた事例もあります。
TOBは株式だけではなく新株予約権や新株予約権付社債も対象になりますが、この記事ではわかりやすくするため株式の買付のみに触れます。
参照:株式会社大戸屋ホールディングス株式(証券コード : 2705)に対する公開買付けの開始に関するお知らせ|株式会社コロワイド
TOBのメリット
証券取引所の市場取引では、株式の価格は取引時間中であれば常に変動します。また希望する数量が売りに出されるとは限らず、いつ目標の数量を購入することができるかは不確定です。
一方、TOBでは、指定する価格で希望する数量を短い期間で買い付けることができます。応募数量が希望数量に満たない場合は、買付けしないこともできます。
TOBでは、株主がTOBに応じる動機付けのため、市場価格よりも数十%ほど高い価格を設定することが通常ですが、計画通りに進めることができるメリットがあります。
TOBを行う目的
TOBの目的は、簡単にいうと企業の買収、言い換えると経営権を獲得することです。経営権の獲得とは、株式会社の最高意思決定機関である株主総会において、自らの意思で決議することができるということです。
ただし、決議への影響力には株式を所有する割合に応じて差があります。買付け後に対象会社にて達成しようとする事項、事業展開を想定した上で買付ける株式数を決めることになります。
所有割合による差は次の通りです。
- 所有割合が1/3以上では、経営の重要な決定事項に拒否権を持ちます。
- 所有割合が1/2以上では、取締役の選任などの基本事項の決定権を持ちます。
- 所有割合が2/3以上では、重要な決定事項の決定権を持ちます。
- 所有割合が100%では、全ての決定権を持ちます。
公開買付(TOB)制度の概要
企業にとって他社の経営権を獲得することは事業の拡大、再編等に有効な手段です。しかし、そのための株式の買付けにおいては、一部の株主を優遇する等の不公正な取引が行われる危険性があります。
TOBは、買付者に大量の株式を買付しやすくするというメリットを与える一方で、買付者の適正な情報開示等を義務づけて透明性・公正性を確保し、株主をはじめとする多くの投資家の利益を保護するための制度です。
投資家への情報開示
TOBの実施が公表されると、対象となる株式の株価はTOBの買付価格に合わせて上昇します。
株主は「TOBに応募する」「証券取引所の市場で売却する」「保有し続ける」という選択肢がありますが、選択により利益が大きく変わる可能性があります。
一方、買付者が上場会社である場合、買付者の株価もTOBが成功するか否か、TOB成功後の事業展開等の予測により、変化します。
そのため、金融商品取引法は、株主や投資家が的確な投資判断を行うことができるよう、買付者と対象会社に対してわかりやすく情報を提供・開示することを義務づけています。
公開買付期間
TOBでは、買付期間を設定することになります。TOBの開始にあたり、投資家への情報開示として公開買付開始の公告を行いますが、一般的にはその公告日から20営業日以上、60営業日以内で、買付者が買付期間を決定することになります。
公平な売却機会の確保
対象の株式を保有する株主の公平な売却機会を確保するために、買付者に対して次の事項が課されています。
- TOB期間中は原則TOB以外の方法で対象の株式を買い付けることができない
- 買付価格の引下げや買付予定数の減少等の買付条件の変更することができない
- 応募株式数が買付予定数を上回る場合で、応募株式の全部を買い付けないときは、按分比例による
TOBの手続き
TOBの手続は、公開買付開始の公告による情報開示、株式の売却の募集によって開始されます。対象会社の意見表明等を経て、買付期間が終了すると買付数量等が確定されて、株式の買付代金の決済が行われて、TOBが終了します。
実際は、買付期間中に対象会社が買収防衛策を講じたり、競合者が対抗してTOBを開始したりする等が生じて、買付条件の変更、TOBの撤回等の検討を迫られることもあります。
①公開買付開始の公告・公開買付届出書の提出
TOBを行うにあたっては、まずTOBの目的、買付価格、買付予定株式数、買付期間等を公告しなければなりません。そして、公告と同日に上記の項目を含む所定事項を記載した公開買付届出書を提出しなければなりません。
ここでの公告とは、金融庁が管理するEDINETへの掲載(電子公告)か、日刊新聞紙への掲載のいずれかとなります。
②意見表明報告書の提出・回答
対象会社は、公開買付開始の公告日から10営業日以内に、当該TOBに対して賛成、反対、中立の立場をわかりやすく表明した意見とその根拠及び理由、その他所定事項を記載した意見表明報告書を内閣総理大臣に提出しなければなりません。
意見表明報告書には、買付者に対する質問も記載することができます。
ここでの内閣総理大臣への提出とは、実務上は金融庁のEDINETを通じて電子提出することです。
③TOBの結果公表
買付者は、買付期間の最終日の翌営業日に、応募があった株式数、その他所定事項を公告する、又は公表しなければなりません。そして、公告又は公表と同日に公告又は公表の内容等を記載した公開買付報告書を提出しなければなりません。
ここでの公表とは、日刊新聞紙を発行する新聞社、NHKや放送事業者等に公開することです。
④公開買付撤回届出書の開示
買付者は、公開買付開始公告をした後は、原則撤回することはできません。
ただし、公開買付開始公告及び公開買付届出書において、対象会社やその子会社が重要な財産を処分する等の公開買付の目的の達成に重大な支障となる事情が生じたときは撤回をすることがある旨の条件を付した場合は、撤回することができます。
TOBに関する規制
株主にとって、経営に大きな影響を与える者の変更は、自らの利益にとって重要な事項です。そのため、議決権の割合が大きく変えるような株式を取得する場合は、公開買付を行うこととし、わかりやすく適切に情報開示がされるようにしています。
5%ルール
証券取引所の市場外で買付けを行う場合において、買付後に、所有する株式の所有割合が5%を超える場合は、TOBによらなければならないというルールです。
ただし、5%を超える場合であっても、60日間で10人以下から買い付ける場合はTOBを行う義務はありません。
3分の1ルール
買付による株式の所有割合が3分の1を超える場合にTOBによらなければならないというルールです。これは3つのパターンに分かれます。
- 証券取引所の市場外において、60日間で10人以内から株式を買い付けた結果3分の1を超える場合
- 証券取引所の市場内におけるToSTNeT取引、J-NET取引等(特定売買)にて株式を買い付けた結果3分の1を超える場合
- 3ヶ月間で10%を買い付けた結果3分の1を超える場合
ただし、10%のうち5%を証券取引所の市場外又は特定売買で買い付けた場合に限ります。
まとめ
2020年に実施されたTOBは60件です。そのうち、友好的TOBが55件、敵対的TOBが5件であり、圧倒的に友好的TOBが多くなっています。
TOBは、TOB後に対象会社とのシナジーを出して、企業価値を高めることが目的です。TOBが成功したとしても、対象会社の経営陣、従業員が反発が強い状態では、価値を下げる可能性も高くなります。友好的TOBとすることが成功への近道です。
TOBでは、目的、TOB後の事業展開を明確にして、それらを対象会社の関係者や投資家にわかりやすく説明し、理解を得て進めていくことが重要となります。
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