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マネジメントバイアウトを使ったM&A手法|そのプロセスとメリット・デメリット


公開日:2021年11月30日  最終更新日:2022年11月17日

この記事では、マネジメントバイアウトについて詳しく説明します。マネジメントバイアウトは、柔軟で迅速な経営を行うことや、後継者問題を解決すること等を目的として行われます。

マネジメントバイアウトを適切な目的で活用することで、経営課題を直接的に解決できます。

マネジメントバイアウトとは

マネジメントバイアウトとは、経営陣自身が会社の株式や事業などを所有者から買収することで、経営者の決定権限を大きくして柔軟で迅速な経営を行うこと、事業承継により後継者問題を解決すること、会社を非上場化させること等を目的として行われます。

マネジメントバイアウトを適切な目的で活用することで、経営課題を直接的に解決することができます。

マネジメントバイアウトの定義

マネジメントバイアウト(Management Buyout, MBO)とは、経営者が既存株主から事業を買収する手法のうちのひとつを指します。

自己資金が十分にない場合は、買収対象企業の資産や将来のキャッシュフローを担保として投資ファンド等からの出資・金融機関からの借入などを行うことによって、資金を確保する手法がよく用いられます。

マネジメントバイアウトが注目される理由4つ

マネジメントバイアウトは、下記の4つの理由で注目されています。

・短期的収益に左右されない経営体制への需要増

・情報公開に関する負担の増加

・株式上場のメリットの減少

・短期志向株主増加による弊害

以下では、上記4つの理由の具体的な内容について、詳しく説明していきます。

1:短期的収益に左右されない経営体制への需要増

日本の企業の多くは、昨今の少子高齢化による市場の縮小によって苦戦を強いられています。

また同時に、IT関連技術の急速な発展に伴い、異業種への新規参入が相次いてでいることによって、日本市場全体が成熟化していることから、経営戦略の変更を強いられています。

これらの結果、主とする市場の変更やビジネスモデルの転換といった、中長期的な経営戦略の転換を図る企業が増加しており、マネジメントバイアウトを通じた非上場化によって、短期的収益に左右されない経営体制を構築する機運が高まっていると考えられます。

マネジメントバイアウトを通じて会社を非上場化すると、経営者及び少数株主の意思決定権限が強化されるため、柔軟かつ迅速な経営を実現することが可能です。

2:情報公開に関する負担の増加

近年では、株主の利益保護へ注目が集まっていることや、企業の不祥事が増加していることを受け、企業に対する透明性の高い情報公開への要求が厳しさを増しています。

また、東京・大阪証券取引所を傘下に置く日本取引所グループ(JPX)では、IFRS(国際財務報告基準)を適用している、または適用を決定している会社の一覧表を公開しており、上場企業の信用度を高める取組みを強化しています。

一方で、IFRSの基準に則った情報公開体制を整備するためには莫大なコストがかかり、後継者問題の顕在化などと相まって、企業の財務状況を圧迫する事態が起こっていると考えられます。

3:株式上場のメリットの減少

株式上場は、資本市場からの資金調達を可能とすることと同時に、会社の知名度や従業員のモチベーションの向上にも効果的です。

株式上場はこれまで、製造業を主力事業としている企業からは、設備投資資金の優れた調達手段として活用されてきましたが、大規模な設備投資資金を必要としない情報・通信業やサービス業を主力とするIT企業にとっては、メリットが低いでしょう。

また、近年ではクラウドファンディングやベンチャー投資を通じた資金調達が盛んにおこなわれるようになっており、資金調達手段が多様化していることも、株式上場のメリットが減少している要因の一つです。

さらに、インターネットメディアやSNSの発展等により、インターネット上でのPRを通した知名度の向上が従来よりも容易な時代となっているため、上記手段を用いて既に高い知名度を獲得している企業にとっては、株式公開のメリットが低いといえます。

4:短期志向株主増加による弊害

近年における日本政府の政策的な後押しやIT技術の発展等により、株式投資のハードルは徐々に下がっていると考えられています。それに伴い、株主および投資家の層が多様になっており、短期志向を持つ株主も増加しています。

中長期を見据えた企業の経営戦略は、短期志向の株主の賛同を十分に得ることが難しいため、短期志向の株主の存在が、中長期を見据えた企業経営の障壁となってしまうことも少なくありません。

短期的な収益のみに左右されない中長期的な経営戦略を描くためにも、経営者の意思決定権限を強化できるマネジメントバイアウトの需要が高まっていると考えられるでしょう。

マネジメントバイアウトのメリットとデメリット

マネジメントバイアウトを実施することで、株主構成をはじめとして企業の様々な要素に変化が起こり、それに伴って様々なメリットとデメリットが発生します。

以下では、マネジメントバイアウトの具体的なメリットとデメリットについて説明していきます。

マネジメントバイアウトのメリット3点

マネジメントバイアウトには、様々なメリットが考えられます。

マネジメントバイアウトを実施することで、経営者の保有率が上昇し、意思決定権限が強化されます。これにより、経営の効率化と迅速な意思決定の実現が期待されます。

また、株主構成が大きく変化する一方、会社組織自体に大きな変化はないため、事業や従業員の雇用を引き継ぎながら、会社のビジョンを実現するための思い切った経営戦略を実行できます。これらにより、従業員の一体感が醸成できるでしょう。

また、信頼できる経営陣に事業を継承することで後継者問題も解決できることも、マネジメントバイアウトのメリットの1つです。

以下では、上述したマネジメントバイアウトのメリットについて、さらに詳しく説明していきます。

1:経営の効率化と迅速な意思決定の実現

マネジメントバイアウトを実施すると、経営者の保有率が上昇し、意思決定権限が強化されます。

その結果、より柔軟かつ迅速な経営が可能となり、自社の中核となる事業に経営資源を集中的に投下することにより、経営の効率化や業績向上を目指すことができます。

2:従業員の一体感が達成可能

マネジメントバイアウトでは、経営者が会社の株式を取得して株主構成が変化するだけです。そのため、会社組織自体には何ら変化がなく、人材を含めた経営資源がそのまま引き継がれるため、会社を構成する事業や従業員の雇用はそのまま変化せずに継続します。

その他の投資家等から自社の経営に関与されることなく、会社のビジョンを実現するための思い切った経営戦略を基に会社経営を行うことができ、従業員のモチベーションが上がることで、会社組織としての一体感や連帯感を醸成されることが期待できます。

3:事業承継による後継者問題解決

マネジメントバイアウトを実施することで、会社の後継者が見つからない場合などに、信頼のおける経営陣に事業を継承することができます。そのため、マネジメントバイアウトは事業承継のための有効な手段として活用されるケースもあります。

また、マネジメントバイアウトの実施により、会社の内部事情や経営方針等を深く理解している人物が後継者となることで、事業の承継がスムーズに進むというメリットもあります。

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マネジメントバイアウトのデメリット3点

マネジメントバイアウトには、上述したようなメリットが考えられる一方で、デメリットも考えられます。

買い手となる経営者はできるだけ安値で株式を買い取りたく、売り手である既存株主はできるだけ高値で株式を売りたいというインセンティブが働くため、両社の間で利益相反が起こり、対立に発展する可能性があります。

株式の買い取りには多額の資金を要するため、マネジメントバイアウトを実施する際には、追加での資金調達を行うことが多いです。もし買収後の企業経営が思うように軌道に乗らなかった場合、財務的なリスクを被る可能性が高くなってしまうでしょう。

また、株式買収後の株主が経営者のみになることで、経営体質が固定化され、必要な経営改革が行われなくなるリスクがあることも、マネジメントバイアウトのデメリットの1つです。

以下では、上述したマネジメントバイアウトのデメリットについて、さらに詳しく説明していきます。

1:既存株主と敵対するリスク

マネジメントバイアウトを実施する際には、経営者は株式をできるだけ安値で買い取りたいと考える一方、既存株主はできるだけ高値で売却したいと考えるため、両社の間で利益相反が発生してしまい、既存株主との対立が生じる可能性があります。

また、既存株主が納得する値段が株式につかないために、既存株主が買い取りに応じず、経営者が株式を買い取ることが難しい場合があります。

2:MBO実施の資金調達に伴うリスク

中小企業の経営者がマネジメントバイアウトを実施する場合などには、株式の買収に必要な資金を保有していない場合があります。

その場合、金融機関や投資ファンド等から融資や出資を受けて、資金を調達する必要があります。買収対象企業と新会社が合併した後には、調達した資金はそのまま合併後の企業の債務として貸借対照表に計上されます。

このように、マネジメントバイアウトを実施した結果、対象企業が大きな財務的リスクを負ってしまう可能性もあります。

3:経営体質が固定化するリスク

メリットの項目でも紹介した通り、マネジメントバイアウトを実施した後の株主構成は、原則として経営陣と投資ファンド等の少数株主のみになります。そのため、その他の投資家等から自社の経営に関与される可能性はなくなります。

しかし、上記の通り、マネジメントバイアウトを実施した後でも、これまでと経営層が変化せず経営体質も変化しないため、業績が悪化している等により経営戦略を転換する必要がある場合でも、抜本的なアクションがとれないといったリスクがあります。

また、経営体質が変化しないのにも関わらず、対象会社が追加で借入を行い、債務負担が増加することになるため、債務超過に陥るリスクも高くなります。

マネジメントバイアウトの3つのプロセス

マネジメントバイアウトを実施するにあたっては、まず初めに、買収対象企業の企業価値を算定して、適正な買収価格を検討します。

その後、SPCと呼ばれる新会社を設立した上で、買収対象企業を買収し、SPCと買収対象企業を合併させます。

なお、株式の買い取りには多額の資金を要する場合が多いため、自己資金のみで買収を完了させられない場合には、新たに資金調達を行うことで買収資金を準備する必要があります。

マネジメントバイアウトを成功させるためには、適切なプロセスを着実に実行することが重要です。

以下では、上述したマネジメントバイアウトのプロセスについて、さらに詳しく説明していきます。

1:企業価値の算定

企業価値とは、対象企業全体の価値のことを指し、M&Aやマネジメントバイアウトの実施に向けて対象企業の買取価格を算出する際に活用されます。マネジメントバイアウトを実施する際には、適正価格より高値で株式を買収することがないように、適切に買収対象会社の企業価値を算定する必要があります。

そのため、対象企業の業績や財務状況、時価総額等の指標を参考に、買収者である経営者の恣意的意思を排除した上で、客観性が担保された適性価値を算出する必要があります。

企業価値の算出方法には、インカムアプローチ、コストアプローチ、マーケットアプローチ等があります。コストアプローチとは貸借対照表の純資産に着目した手法であり、インカムアプローチとは将来に生み出すであろう利益やキャッシュフローに着目した手法であり、マーケットアプローチとは類似企業や株式市場における株価に着目した手法です。対象企業の特徴等によって最適な算出手法を選定し、企業価値を算出します。

2:新会社設立と買収・合併

マネジメントバイアウトを実施する際には、取得した株式の受け皿とするために、新会社を設立する必要があります。

新会社においては、事業承継後の理想的な株主構成となるように、経営陣の自己資金と資金調達元である金融機関や投資ファンドからの借入金の比率を決め、対象会社の買収に必要な資金を集約します。新会社は集約させた資金を用いて現株主から自社株を買い取ります。

買収が完了した後に、買収対象企業と新会社を合併させることで、マネジメントバイアウトが完了します。

3:資金準備

マネジメントバイアウトを実施する際には、既存株主から大量の株式を買い取るため、多額の資金が必要となります。そのため、経営者の自己資金のみで買収を完了させることは難しく、様々な方法で資金調達を行い、買収に必要となる資金を補填することが多いです。

買収資金を補填するための資金調達には、「金融機関・投資ファンドとの協力」「ビジネスローンの活用」「クラウドファンディングの活用」「助成金」「補助金」「ファクタリング」「個人投資家からの支援」「小規模私募債の発行」などが考えられます。

実行における注意点

マネジメントバイアウトには、上記に挙げた様なメリットが考えられる一方、買取価格のプロセス上、既存株主との間で利益相反が起こりやすいというデメリットがあります。

マネジメントバイアウトを実施する際には、経営者は株式をできるだけ安値で買い取りたいと考える一方、既存株主はできるだけ高値で売却したいと考えるため、両社の間で利益相反が発生してしまい、既存株主との対立が生じる可能性があります。

そのため、買収者である経営者の恣意的な見解を排除し、客観的なデータに基づいて既存株主が買収に応じる価格を設定した上することが重要です。

また、マネジメントバイアウトを行う際には、金融機関からの融資を受けることが多いです。新会社と買収対象会社の合併後、銀行から受けた融資はそのまま新会社の債務となり、既存の債権者や経営方針にも大きな影響を与えるため、マネジメントバイアウトを実施する前に、必要な資金調達の金額や買収後の債務割合を計画しておく必要があります。

マネジメントバイアウトの具体的なスキーム例

実際にマネジメントバイアウトを行う際の、具体的なスキーム例を紹介します。マネジメントバイアウトは、大きくは下記の1~5の流れにて行われます。

1. MBO対象企業の受け皿となる『SPC』を設立

2. SPCがMBOに必要な資金を調達

3. SPCがMBO対象企業の株式を得る

4. MBO企業を子会社化する

5. SPCとMBO企業を合併

以下では、上記の1~5の流れについて、詳しく説明していきます。

1:MBO対象企業の受け皿となる『SPC』を設立

まずは、マネジメントバイアウト対象企業の受け皿となるSPCを設立します。SPCとは、Special Purpose Companyの略称であり、特別目的会社とも言います。マネジメントバイアウトを実施する際には、買収資金の調達や株式の買い取り、買収対象企業との合併を行う主体としてSPCが設立されます。

2:SPCがMBOに必要な資金を調達

SPCの設立後、SPCが自らマネジメントバイアウトに必要な資金を調達します。信金の調達においては、金融機関・投資ファンドからの融資・出資やビジネスローン、クラウドファンディングなどが活用されます。

3:SPCがMBO対象企業の株式を得る

調達した資金と自己資本を原資として、SPCが買収対象企業の株式を取得します。買収対象企業の株式のほとんどをSPCが取得することが一般的です。

4:MBO企業を子会社化する

3にてSPCが買収対象企業の株式を取得した結果として、SPCが親会社、買収対象企業が子会社となります。

5:SPCとMBO企業を合併

親会社であるSPCと子会社である買収対象企業を合併させ、1つの新会社とします。企業の合併が完了すれば、マネジメントバイアウトが完了します。

まとめ

この記事では、マネジメントバイアウトについて詳しく説明しました。マネジメントバイアウトは、経営者の決定権限を大きくして柔軟で迅速な経営を行うことや、事業承継により後継者問題を解決すること等を目的として行われます。

このように、マネジメントバイアウトを適切な目的で活用することで、経営課題を直接的に解決することができます。

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