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CAPMとは?用語の意味や資本コストの算出方法をわかりやすく解説


公開日:2021年11月30日  最終更新日:2022年11月17日

この記事では、CAPMの計算方法や使用方法などについて、具体的な計算式を交えながら、わかりやすく説明しています。CAPMを正しく理解することで、資金調達・資本提携・M&Aなど、様々なビジネスの場において役立てることができます。

CAPMとは

CAPM(Capital Asset Pricing Model)とは、個別株式が持つリスク(β値)から、当該株式に投資をしている投資家がどの程度の収益率を期待するのかを関係づけたフレームワークです。

日本語では「資本資産価格モデル」と訳されます。

この記事では、CAPMの計算方法や使用方法などについて、わかりやすく説明します。

CAPMが必要なケース

CAPMは、企業価値評価にのいて割引率として使用されるWACCの構成要素である株主資本コストの算定基礎として利用されています。

以下では、企業価値評価の流れと、その中でCAPMがどのように用いられるのかについて、わかりやすく説明します。

企業価値評価の全体像

企業価値を評価する際には様々な方法がありますが、一般的にはインカム・アプローチ、マーケット・アプローチ、ネットアセット・アプローチの3つに大きく分類されます。

インカム・アプローチとは、評価対象会社から期待されるキャッシュ・フローに基づいて対象企業の価値を評価するアプローチです。

マーケット・アプローチとは、同業他社や類似取引事例などと比較することによって相対的に対象企業の価値を評価するアプローチです。

ネットアセット・アプローチとは、主として対象会社の貸借対照表上の純資産に着目して企業の価値を評価するアプローチです。

以下では、特にインカム・アプローチに着目し、その中でCAPMがどのように用いられるのかを詳しく説明します。

インカム・アプローチの考え方

インカム・アプローチでは、対象会社が将来に生み出すと期待されるキャッシュ・フローに基づいて、企業価値を算定します。

以下では、実務においてよく利用される代表的なインカム・アプローチであるDCF法(ディスカウント・キャッシュ・フロー法)について説明します。

DCF法では、下記の手順にて企業価値を算定します。

DCF法での企業価値算定の手順

  • 将来キャッシュ・フローの計算
  • 割引率の計算
  • 継続価値の計算
  • 割引現在価値の計算

1: 将来フリー・キャッシュ・フローの計算

まずは、一定の予測期間内における、対象会社のフリー・キャッシュ・フローを計算します。

なお、フリー・キャッシュ・フローは企業に帰属するフリー・キャッシュ・フロー(FCFF : Free Cash Flow to Firm)と株主に帰属するフリー・キャッシュ・フロー(FCFE : Free Cash Flow to Equity)に分類されますが、ここでは前者のFCFFを前提に説明します。

企業価値算定の対象となる会社の特徴によっても左右されますが、実務においては、3年~5年程度を予測期間として、フリー・キャッシュ・フローを計算することが多いです。フリー・キャッシュ・フローの計算式は下記の通りです。

FCF=営業利益×(1―税率)+減価償却費―設備投資―運転資本

2: 割引率の計算

割引率とは、将来に受け取るキャッシュ・フローを現在の価値に換算する際に用いられる利率を指します。

割引率には、WACC(Weighted Average Cost of Capital)と呼ばれる加重平均資本コストが用いられることが多いです。

このWACCを計算する際に、CAPMが用いられます。WACCやCAPMの具体的な計算方法は、後述します。

3: 継続価値の計算

継続価値とは、予測期間以降の期間(継続期間)のキャッシュ・フローを、割引率で割り引いた合計値のことを指します。

予測期間以降は、会社のキャッシュ・フローが一定の成長率で永久に成長するという前提のもと、キャッシュ・フローを計算します。

継続価値の計算式は以下のとおりです。実務上、永久成長率は対象会社の所在国のインフレ率等を用いることが一般的です。

継続価値=最終年度のFCF÷(割引率―永久成長率)

4:割引現在価値の計算

予測期間のフリー・キャッシュ・フローを割引率(WACC)で割り引き、継続価値を足し合わせることで、割引現在価値が計算され、これが事業価値となります。なお、この事業価値に非事業用資産の価値を合計したものが企業価値、企業価値から有利子負債を控除したものが株主価値と呼ばれます。

予測期間の最終年をnとした時の割引現在価値の計算式は以下の通りです。

割引現在価値=(1年目のFCF)/(1+割引率)+(2年目のFCF)/(1+割引率)²+(3年目のFCF)/(1+割引率)³+…+(n年目のFCF)/(1+割引率)ⁿ+継続価値

CAPMを使用したWACCの算定方法

DCF法で使用する割引率として、WACC(Weighted Average Cost of Capital)と呼ばれる加重平均資本コストが用いられると説明しました。以下では、WACCの内容と算定方法について説明します。

WACCとは、資本コストの代表的な計算方法で、株式による資金調達によりかかる株主資本コストと、借入による資金調達にかかる負債コストを加重平均したものです。WACCの計算式は以下のとおりです。

WACC=株主資本コスト×((株主資本÷(株主資本+負債))+負債コスト×(1-実効税率)×((負債÷株主資本+負債))

続いて、WACCを算出する際に必要となる、株主資本コストと負債コストの計算方法を解説していきます。

株主資本コストの計算

株主資本コストはCAPMに基づく計算式で算出することができます。CAPMとは、Capital Asset Pricing Modelの略称であり、日本語では「資本資産価格モデル」と訳されます。株主資本コストの計算式は以下のとおりです。

株主資本コスト=リスクフリーレート+β×マーケットリスクプレミアム+固有のリスクプレミアム

リスクフリーレートとは、理論的にリスクがゼロか、極小の無リスク資産(リスクフリー商品)から得ることのできるリターンのことです。実務上では、10年物の国債利回り等をリスクフリーレートとして使用することが多いです。

βとは、個別株式のリターンのボラティリティと市場全体のポートフォリオのリターンのボラティリティの関係性を表した係数です。例えばTOPIXに対する対象会社のβが1.5であった場合、TOPIXが1%変動した際に、対象会社の株式は1.5%変動することになります。上場企業のβはブルームバーグなどにより公開されており、未上場企業のβを算出する際には、類似した上場企業のβを使用することが多いです。

マーケットリスクプレミアムとは、リスクを負担する代わりに要求する、無リスク資産に対する有リスク資産の超過リターンのことです。計算例として、TOPIXの期待利回りから10年国債利回りを差し引いて算出することができます。

マーケットリスクプレミアムは、市場ポートフォリオの期待リターンから、リスクフリーレートを引いたものです。

負債コストの計算

負債コストには、金融機関などから借入を行う際の利率が用いられることが多いです。 金利1%で銀行から借入を行っている場合の税引前負債コストは1%となります。

負債には、金利費用の分だけ税金が控除されることによる節税効果があります。そのため、WACCは資本コストと負債コストの単純な加重平均にはならず、WACCを算出する際には、負債コストに対して(1-実効税率)を乗じることで、節税効果を織り込む必要があります。

WACCを算出する際の注意点

WACCを算出する際には、βの算出方法、計算に含める株主資本・負債の範囲について注意する必要があります。以下では、2つの注意点について説明します。

βの算出方法

βは、株式市場全体の変動と個別銘柄の株価の変動を対比して算出されるため、株価の変動が視覚化されにくい未上場企業のβを算出するのは難しいです。

そのため、未上場企業のβには、類似した上場企業のβを代替として使用することが多いです。

この時に選択する類似企業によって対象企業のβが大きく変化してしまうため、できる限り実態に即したβを算出するために、業種・業界・事業内容・会社規模・海外売上高比率など、様々な観点から類似企業を選択する必要があります。

また、対象会社に特殊な事情がある場合、類似企業のβをそのまま用いるのではなく、個別のリスクプレミアムを加味する必要があります。

まとめ

この記事では、CAPMの計算方法や使用方法などについて紹介しました。

CAPMを正しく理解することで、資金調達・資本提携・M&Aなど、様々なビジネスの場において役立てることができます。

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