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医療法人のM&Aとは|知っておくべき特徴とスキームや行う際の注意点

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公開日:2021年12月17日  最終更新日:2021年12月17日

近年では、医療法人における後継者不在問題や医療費・病床削減等の課題を、M&Aを実施することで解決するケースが多くなっており、医療法人同士のM&Aは、今後より一層増加していくと考えられます。本記事を通して医療法人のM&Aについての理解を深めましょう。

医療法人のM&Aとは

近年では、医療法人の中でもM&Aを実施するケースが多くなっています。

医療法人では、後継者不在問題や医療費・病床削減の流れがより顕著になっており、M&Aを用いてこれらの課題に対処することが活発化しています。

また、現行の制度上では営利企業が医療法人の経営に乗り出すのは困難ですが、医療法人同士のM&Aは、今後より一層増加していくと考えられるでしょう。さらに、医療サービスにおけるイノベーションの促進を目的とした、異業種との資本業務提携も加速することが考えられます。

医療法人の意義

医療法人とは、医療法の規定に基づき設立される法人のことを指します。

病院、医師及び歯科医師が常時勤務する診療所、介護老人保健施設を開設することを目的として設立されます。

出典:医療法人の基礎知識① ~医療法人の類型~|厚生労働省

医療法人のM&Aのメリット

医療法人のM&Aを行うことで、買い手側は多くのメリットを得られます。

例えば、M&Aを行って、一括で経営資源を取得することにより、短期間で抜本的な経営課題の解決を図ることができるでしょう。

より具体的には、下記のようなメリットが考えられます。

  • 強み・弱みの相互補完による医療サービスの向上
  • 経営資源の共有や購買の共通化による経営の効率化
  • 医師・看護師などの専門職人材の確保
  • 法人設立・医療施設開設に必要な許認可手続きの省略
  • 病床のキャパシティの拡大
  • 後継者不在問題の解決

「病院・医療」関係の法人における後継者不在率は2020年には73.6%に上っており、全業種における後継者不在率の平均値である65.1%と比較して高水準となっています。このように医療法人で進行する後継者不在問題を解決するためには、M&Aが有効な手段となりえるでしょう。

また、医療法人の病床数は、各自治体の計画に基づいた配置がなされることになっており、病床数が上限に達している地域では病床のキャパシティを拡大することが難しいため、M&Aが病床拡大の有効な手段となりえます。

出典:全国企業「後継者不在率」動向調査(2020 年)|株式会社帝国データバンク

医療法人の概要

医療法人は通常の営利企業とは異なる特徴を持っており、M&Aを実施する場合においても、医療法人の特徴を正確に把握しておくことが重要となってきます。

以下では、医療法人の特徴や注意点、種類などについて詳しく説明していきます。

医療法人の特徴と注意点

医療法人は、医療法に基づいて設立される法人であるため、会社法に基づいて設立される営利企業とは異なる性質を持っており、M&Aを行うにあたっても様々な差異が生じます。

医療法人のM&Aにおいては、後述する持分あり医療法人と持分なし医療法人の区別が特に重要となります。

また、医療法人の設立にあたっては、都道府県知事の認可を取得することが必須であることや、医療法人は「非営利性」を確保しなければならないことが、医療法で規定されていることなども重要なポイントとなってきます。

医療法人の種類

医療法人には様々な種類があります。医療法人の種類によって、M&Aの実施時に考慮しなければならないポイントも変化します。

以下では、医療法人の種類について詳しく説明していきます。

医療法人の医療法上の定義

医療法上では、病院、医師、歯科医師が常時勤務する診療所、介護老人保健施設または介護医療院を開設しようとする社団または財団は、法人とすることができると規定されています。

そして、上記の特徴を持つ法人を医療法人といいます。

社団医療法人と財団医療法人

以下では、医療法人のうち、社団法人と財団法人の特徴や相違点について詳しく説明していきます。

社団とは、一定の人々が資本を拠出して設立・運営する法人を指します。一方、財団とは寄附された資本を基に設立・運営する法人を指します。

つまり、設立のための原資の集め方の違いにより、社団医療法人と財団医療法人に分類されるのです。

社団法人と財団法人の詳しい説明は、以下の通りです。

■社団医療法人

社団医療法人では、設立時の出資者や基金拠出者が社員となります。

出資者は、持分比率に応じた払い戻しを受ける権利を保有していて、基金拠出者は拠出金の返還を受ける権利を保有しています。

社団医療法人には、社員総会と呼ばれる、株式会社における株主総会に相当する最高意思決定機関があります。社員総会においては1人1票の議決権を行使でき、役員の選任や解任、新たな社員の加入の決議等を行います。

医療法では、社員数についての規定は存在しませんが、社団医療法人の設立には3人以上の社員を必要としている自治体が多いです。

社団医療法人の役員は、理事と監事から構成されます。原則として理事は3名以上、監事は1名以上を選任する必要があります。

理事全員により理事会が組織され、理事のうち医師・歯科医医師である人のなかから理事長が選ばれます。

法人が社員となることは可能ですが、医療法人では非営利性を確保しなければならないため、営利法人が社員となることはできません。

医療法人において非営利性を確保する観点から、医療法人と関係を持つ営利法人の役員がその医療法人の理事・監事に就任することは原則として認められておらず、法人が役員となることはできません。

■財団医療法人

財団医療法人は寄附された資本によって設立・運営されるもので、社団医療法人にある様な持分出資・基金拠出という概念はありません。

医療従事者、医療機関経営における有識者、医療を受ける者、その他必要と認められる者の中から、社団医療法人における社員に相当する役割を担う評議員が選出されます。評議員の選出にあたっては、理事を上回る人数の評議員を選出する必要があります。

また、財団医療法人では、社団医療法人と同様の役員構成が取られます。

現在、財団医療法人の数は少なく、社団医療法人が医療法人の大半を占めています。

出典:社団医療法人の定款例|厚生労働省

持分あり医療法人と持分なし医療法人

以下では、医療法人のうち、持分あり医療法人と持分なし医療法人の特徴や相違点について詳しく説明していきます。

これまで、社団医療法人は定款に出資持分の定めを置き、持分の出資によって資本を調達することが一般的でした。

このような社団医療法人を、持分あり医療法人と呼びます。

2007年に制定された医療法改正により、持分あり医療法人の新設は禁止され、持分なし社会医療法人を対象とした基金制度が新設されることになりました。この法改正に伴い、2007年3月31日以前に設立された医療法人は、「経過措置型医療法人」と呼ばれるようになりました。

持分あり医療法人と持分なし医療法人の詳しい説明は下記の通りです。

■持分あり医療法人(社団)

持分あり医療法人への出資を通して社員となった人は、退社した際や医療法人が解散した際に、持分比率に応じた払い戻しを請求する権利を持ちます。

払い戻しが請求されると、医療法人は一度に資金流出が起こることになるため、経営が不安定化する要因となります。

地域医療の安定化と医療法人の非営利性徹底を目的として、2007年に医療法改正が行われた結果、持分あり医療法人を新設することができなくなりました。それまでに開設されていた持分あり医療法人は、当面は存続可能とされ、持分なし医療法人への移行は各医療法人の判断に任されています。国は持分なし医療法人への移行を促進するための免税・融資等の政策を打ち出しています。

また、出資額を超える払い戻しは行わない旨を定款に記載している社団医療法人は、出資額限度法人と呼ばれています。この出資額限度法人も、2007年の医療法改正により新設ができなくなりました。

■持分なし医療法人(基金拠出型社団医療法人)

持分なし医療法人とは、資本の拠出ではなく基金の拠出によって活動原資を調達する医療法人を指します。

医療法改正で持分制度が廃止されたのに伴い、基金拠出の制度が新たに設けられ、持分なし医療法人が設立できるようになりました。

基金を拠出した人は社員総会での決議を通して、基金への拠出額の返還を受けることができます。ただし、医療法人の純資産額が基金総額を超過していなければ、返還を受けることができず、純資産額が超過している場合にも、超過額の範囲内でのみ返還が受けられます。

出典:医療法人の基礎知識|厚生労働省

特定医療法人と社会医療法人

以下では医療法人のうち、特定医療法人と社会医療法人の特徴や相違点について詳しく説明していきます。

特定医療法人は、租税特別措置法第67条の2によって規定されている医療法人の類型です。法人税軽減などの優遇措置を受けることができます。

社会医療法人は医療法第42条の2によって規定されている医療法人の類型です。通常の医療に加え、救急医療や災害時の医療、へき地医療、周産期医療等といった、これまで公的病院が担ってきた公益性の高い医療を行うことができます。

一定の範囲内で収益業務を営むことや、法人債を発行することが可能です。また、一定の税制優遇措置を受けることも可能となります。

医療法人のM&Aの6つのスキーム

医療法人のM&Aは、大きく分けて以下の6つのスキームでの実施が考えられます。

  •  持分譲渡で経営権を取得
  •  社員・評議員の過半数を取得することで経営権取得
  •  新設合併・吸収合併
  •  新設分割・吸収分割
  •  事業譲渡
  •  資本・業務提携

以下では、上記6つのスキームの具体的な内容について説明していきます。

1:持分譲渡で経営権を取得

持分譲渡で経営権を取得する方法について説明していきます。

売り手である医療法人の社員の持分を買い手側が買い取る手法であり、持分ありの社団医療法人をM&Aで買収する際にのみ用いることができます。

医療法人の社員のうち過半数を買い手側が占めることができれば、社員総会での決議を通して役員を全て入れ換えることで、経営権を取得することができます。

定款の変更、役員の除名、解散の決議は、社員総会への総社員の3分の2以上の出席と出席者の3分の2以上の賛成が必要です。医療法人の法人名を変更する場合は、合わせて定款を変更する必要があるため、医療法人の法人名を変更するためには、3分の2以上の議決権を得る必要があります。

経営権の取得に際して定款を変更するためには、都道府県知事から認可を取得しなければなりません。また、法人名や理事長を変更する際には、登記を行う必要があります。

出典:第4章 各法人類型別の移行手続について|厚生労働省

2:社員・評議員の過半数を取得することで経営権取得

社員・評議員の過半数を取得することで経営権を取得する方法について説明していきます。

売り手側である医療法人の社員・評議員に代わって、買い手側の人間が社員・評議員に就任することで過半数の議決権を得て経営権を取得する手法であり、持分なし社団医療法人と財団医療法人で用いられます。

また、経営権の取得に際して、持分譲渡の場合と同様の認可・変更登記手続きが必要となります。

3:新設合併・吸収合併

新設合併・吸収合併について説明していきます。

複数の医療法人を1つの法人に合併する手法であり、合併の方法によって吸収合併と新設合併に分類されます(医療法第57条~59条の5)。どの種類の医療法人でも用いることができる手法です。

吸収合併ではどちらか一方の法人が存続し、他方の法人が解散手続きを経ることなく消滅し、前者の法人と合併します。

新設合併では2つ以上の法人が合併することで新しい法人設立をします。

4:新設分割・吸収分割

新設分割・吸収分割について説明していきます。

医療法人が一部の事業を分割し、そこに含まれる全ての権利義務を他の医療法人や新設医療法人に承継する手法です(医療法第60条~第62条)。医療法上、「そこに含まれる全て又は一部の権利義務」とされていますので、一部の権利譲渡も含まれることになります。

医療法人全体ではなく、一部の事業のみを売買でき、柔軟な取引が行えることがメリットです。

例えば、複数の病院を経営している法人が、一部の病院のみを他の医療法人に譲渡する場合等に用いられます。

売買対象となる事業を既存の医療法人に引き継ぐ方法を吸収分割と呼び、売買対象となる事業を新設法人に引き継ぐ方法を新設分割と呼びます。

5:事業譲渡

事業譲渡について説明していきます。

医療法人が保有する事業うち、一部または全部を譲渡する手法です。

分割や合併では事業に属する権利義務が一括して承継先の法人に承継されるのに対し、事業譲渡では事業に属する権利義務を譲渡先の法人に対して個別に譲渡することができます。

事業のうちの一部を対象として売買できるメリットがある一方、権利義務の数に比例して移転の手続きが繁雑になるというデメリットがあります。

また、事業譲渡により病院や診療所を相手法人に移転する場合、売り手となる法人が廃止した病院・診療所を買い手側が再度開設することになるため、新規に許認可を申請する必要があります。

6:資本・業務提携

資本・業務提携について説明していきます。

業務提携とは、複数の法人が経営資源を出しあって協力体制を築く手法を指し、特に一方の法人が他方の法人に出資することで協力体制を構築する手法は資本・業務提携と呼ばれ、広義のM&Aとしてとらえられます。

営利企業が医療法人を買収する場合には、買収対象を自社に取り込むことは許されないことから、資本・業務提携を通して実質的に経営権を取得するケースが多いです。

医療法人のM&Aの注意点

医療法人のM&Aを行う際には、医療法人の種類によって用いられる手法が異なる点や、非営利性を確保する必要がある点など、企業のM&Aとは異なる点に注意する必要があります。

以下では、医療法人のM&Aを行う際の注意点について詳しく説明していきます。

医療法人の種類によって異なる行政手続きが必要

医療法人のM&Aを実施する際には、監督省庁の許認可を得なければなりません。また、医療法人の種類によって監督省庁が異なるため、M&Aを実施する際に必要な手続きも、医療法人の種類によって異なります。

医療法人のM&Aを実施する際に必要となる許認可には、下記の様なものがあります。

  • 都道府県:定款変更や役員変更
  • 保健所:開設届
  • 厚生局:保険診療を行うための開設届、施設基準の届出
  • 支払い基金:診療報酬の振込み先
  • 法務局:法人名や理事長、所在地の変更等についての登記

医療法人のM&Aを実施する際には、医療法人ごとに異なる様々な手続きを正しく実施するための、専門的な知識が必要となります。

必ず非営利性を確保しなければならない

医療法人においては必ず非営利性を確保しなければならないため、医療法人のM&Aにおいて買い手になれるのは、医療法人に限定されます。

また、持分あり医療法人と取引している営利法人は、取引対象である医療法人の社員になることはできず、議決権も保有できません。

また、医療法人の理事長に就けるのは原則として医師か歯科医師のみであり、医師以外が理事長になるためには、個別に相談をして都道府県知事の認可を得る必要があります。

ただし非営利性が確保されている場合に限り、営利法人が医療法人へ出資することや、持分の買い取りを行うことは可能です。

医療法人のM&Aの相場

医療法人の価値の算定にあたっては「時価純資産額+営業権(のれん代)」という計算式が用いられます。

時価純資産は、医療法人の保有する資産から負債を差し引くことで求めます。

のれん代とは無形固定資産の一種であり、医療法人においては有名な医師の在籍、難しい手術の症例件数、立地条件、評判、信頼、顧客関係などといった定性的な価値がのれんとして認識されます。

医療法人の価値の算定に当たっては上記の計算式を用いた計算の他にも、過去の取引事例を元に求めるマーケットアプローチや、将来の価値から現在の企業価値を求めるインカムアプローチといった手法も用いることができます。

一般的な企業の価値の算定とは異なり、医療法人の価値を算定する代表的な評価方法は存在しません。正確性を高めるためには複数の手法を用いて価値を算定する必要があります。

まとめ

近年では、医療法人における後継者不在問題や医療費・病床削減等の課題を、M&Aを実施することで解決するケースが多くなっており、医療法人同士のM&Aは今後、より一層増加していくと考えられます。

医療法人のM&Aは特殊であり、通常の企業のM&Aとは異なる点が多く存在するため、本記事を通して医療法人のM&Aについての理解を深めましょう。

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