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合同会社の売却はなぜ難しい?その手法とメリット・デメリットを解説

かんたんM&A力診断
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公開日:2022年1月28日  最終更新日:2022年5月18日

近年、日本では合同会社の設立件数が増加しています。一方で、合同会社は売却が困難であり、M&Aの件数は停滞しています。合同会社の売却にお困りの経営者の方は多いのではないでしょうか。本記事では合同会社の売却方法や、売却が困難な理由について解説しています。

合同会社の売却について

合同会社は、2006年に施行された会社法によって定められた会社形態の一つです。株式会社よりも設立コストが安い点や利益配分の自由度が高い等の特徴があり、近年は設立数が増加しています。

一方で、株式会社と比較して売却が困難と考えられています。設立数とは異なりM&Aの件数は停滞しており、売却に困っている経営者の方も多いのではないでしょうか。

本記事では、合同会社の売却を検討されている経営者の方へ向けて、合同会社の売却方法や売却が難しい理由について解説していきます。

出典:会社法の施行に伴う会社登記についてのQ&A|法務省

合同会社の定義

合同会社とは、2006年5月1日施行の会社法により新しく設けられた会社形態の1つです。出資者した全ての社員に会社の決定権が認められており、出資した金額を上限として債務弁済の責任を負います。

会社法設立時に米国のLLC(Limited Liability Company)をモデルとして創設されたため、日本版LLCと呼ばれることもあります。米国では株式会社と同じくらい一般的に普及しており、大手企業であるAppleやGoogleの日本法人は合同会社として設立されています。

合同会社と株式会社の相違点

日本において会社は、会社法により持分会社と株式会社に分類されます。さらに持分会社は合名会社、合資会社、合同会社の3つの形態に分類されます。ここでは主に合同会社と株式会社との違いについて説明します。

株式会社と合同会社はどちらも社員の責任が有限責任ですが、所有と経営が分離しているかどうかが異なります。所有と経営が分離している株式会社では、出資者は株主であり、経営は取締役が行います。

一方で所有と経営が一致している合同会社では、出資者を「社員」と呼び、社員が経営も行います。

合同会社は所有と経営が一致しているため、出資者と経営者の意見が割れにくく、一般的には機動的な意思決定が可能と言われています。また、組織運営に必要な手続きも少なくて済む点も特徴です。

合同会社の売却の難易度が高い理由

合同会社の売却は、株式会社と比較して実施が困難と言われています。主な理由として、持分譲渡に社員全員の同意が必要な点や事業売却の場合にも半数の社員の同意が必要な点、合同会社から株式会社に組織変更する手続きが煩雑な点等が挙げられます。

株式会社においては、株主総会で過半数以上の賛成があれば普通決議を、三分の二以上の賛成があれば特別決議を通すことが可能です。合同会社においては全社員の同意を得る必要があるため、大きなハードルであることが分かります。

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

持分譲渡に社員全員の同意が必要

合同会社においては重要事項の決定には社員全員の同意が必要です。したがって、持分を譲渡する際にも社員全員の同意を得る必要があります。

また、合同会社では持分の多寡に関わらず社員それぞれが一票の議決権を持ちます。過半数以上の株式を保有すれば経営のコントロールが可能な株式会社とは異なり、合同会社では複数の社員が存在する場合の経営権掌握が難しい点も注意が必要です。

事業譲渡の場合にも半数の社員の同意が必要

合同会社を売却する際の現実的な手法と考えられているのが事業譲渡です。しかし、事業譲渡を行う場合でも社員の半数の同意が必要です。

また事業譲渡の場合、その事業に必要な資産や契約内容も含めて譲渡することとなるため、契約先や債権者の同意を取ることが必須です。引き継ぐ資産や負債、契約の選別も必要となるため、買い手側のデューデリジェンスもより慎重に行われます。

持分譲渡等による会社全体の売却よりも難易度は低いものの、手続きは煩雑ですので注意しましょう。

出典:合併・事業譲渡等マニュアル|厚生労働省 

合同会社から株式会社に組織変更する手続きが煩雑

合同会社における持ち分の譲渡が難しいのであれば、株式会社に変更して株式譲渡を行えばよいのではないか、という考え方も可能です。しかし、合同会社から株式会社への変更も手続きが非常に困難です。

まず、合同会社を株式会社に変更するには社員全員の同意が必要です。さらに、債権者への公告も必要なため、合同会社のまま売却するのと同等以上の時間と手間がかかってしまいます。

合同会社を売却する方法

ここからは、合同会社を売却する方法について説明します。代表的な方法として、「事業譲渡」「合同会社のまま持分譲渡」「株式会社へ変更した後に株式譲渡」「吸収合併」の4つが挙げられます。

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

事業譲渡による方法

合同会社を売却する代表的な手法として、事業譲渡すなわち事業売却が挙げられます。事業売却とは、会社の事業の一部または全部を譲渡する手法です。会社全体を売却する持分譲渡と比較すると、実施が容易な手法です。

事業譲渡の際に必要な手続きですが、「事業譲渡契約書の作成」「社員の過半数の同意を得る」「事業譲渡契約書の締結」「資産・負債の移転手続きの実施」等が挙げられます。事業譲渡契約書の内容は株式会社における事業売却と同様です。

個別の資産や契約の承継手続きはそれぞれ異なります。弁護士や税理士と相談しながら進めていくのが良いでしょう。

合同会社のまま持分譲渡する方法

事業譲渡よりも実施困難ではありますが、合同会社のまま持分譲渡することによる売却も可能です。持分は一部分でも全部でも譲渡が可能です。株式会社における株式譲渡と同様の効果があります。

持分譲渡の際に必要な手続きは「持分譲渡契約書の作成」「持分を譲渡することの社員全員の承認」「登記手続き」等が挙げられます。業務執行社員や代表社員が変更する際に、登記手続きが必要となります。

出典:法務局 Taro-3-2記載例(業務執行社員持分全部移転の退社・入社)

株式会社に組織変更した後に株式譲渡する方法

合同会社の売却方法として、一度株式会社に組織変更した後に株式譲渡を行う方法があります。買い手が買収後に株式会社への組織変更を予定しているケースでは、買い手にとってメリットのある手法となります。

合同会社から株式会社への変更手続きには、「組織変更計画の作成」「全社員の同意」「官報公告」「債権者への個別催告」「組織変更後の代表取締役の選任」「登記手続き」等が挙げられます。必要な手続きが多く、スケジューリングも困難です。

株式会社へ組織変更した後は、通常の株式譲渡と同じ手続きを進めることになります。

吸収合併による方法

合同会社の売却を吸収合併によって行うことも可能です。吸収合併とは、2つの法人のいずれか一方の法人格を消滅させ、消滅会社の権利義務等の全てを存続会社が引き継ぐスキームです。

合同会社が消滅会社になるケースと存続会社になるケースはいずれも実現可能であり、合同会社と株式会社の吸収合併も可能です。M&Aにおいては買い手が存続会社、売り手が消滅会社となり、買い手が売り手に対価を渡す形になります。

吸収合併における必要な手続きは「合併契約書の作成」「全社員の同意」「合併契約書の締結」「官報公告」「債権者への個別催告」「登記手続き」等が挙げられます。合併の手続きは会社法で厳格に定められているため、弁護士に相談しつつ進めるのが良いでしょう。

合同会社の事業譲渡のメリットとデメリット

合同会社の売却方法について紹介してきましたが、その中でも実現が比較的容易なのが事業譲渡です。ここからは事業譲渡のメリットとデメリットについて、さらに詳しく見ていきましょう。

メリット4つ

合同会社の売却時に事業譲渡を選択するメリットは、「持分譲渡と比較した実行容易性」「売却事業を選択できる点」「従業員の雇用維持が可能な点」「会社の存続が可能な点」等が考えられます。

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

1.持分譲渡と比較した実行容易性

事業譲渡は持分譲渡と比べて実行が容易であると言えます。持分譲渡では全社員の同意が必要ですが、事業譲渡の場合は社員の過半数の同意で済みます。社員の同意が取れるかどうかでスキームを選択することも可能です。

また、事業譲渡であれば買い手にとっても持ち分を得るわけではないため、リスクが減ります。持分譲渡の場合は簿外債務を請け負うリスク等も考えられるため、会計処理や税務処理を事前に確認する必要があります。

2.売却事業を選択可能であること

会社が営む全事業を一括して譲渡する持分譲渡と比較して、譲渡する事業を選択できる事業譲渡は状況に応じたカスタマイズが可能です。

売り手と買い手の双方にとって、今後の事業戦略に応じて必要な事業だけを売買できる点は大きなメリットと言えるでしょう。また、事業譲渡においては譲渡する資産や負債はもちろん、従業員や契約なども個別に譲渡するかどうか選択することが可能です。

買い手にとっては、不要な資産や負債を引き受ける必要が無いだけでなく、簿外負債のリスクもありません。売却側の管理体制も考慮しつつ、買い手側が事業譲渡を希望するケースもあります。

3.従業員の雇用の維持が可能

事業譲渡では事業と一緒に従業員の雇用契約も買い手に引き継ぐことが可能です。持分譲渡では買い手に経営権が渡るため、雇用の維持は買い手の経営判断に一任されることになります。

事業譲渡によって、売却事業に関連する部署をそのまま切り出して売却すれば、従業員にとっても環境は仕事内容が大きく変わらず、離職リスクも下げられます。

4.会社の存続が可能

事業譲渡は会社自体を売却するのではありません。特定の事業のみ切り出して譲渡する方法であり、会社は存続が可能です。譲渡代金を元手に、財務の健全化や新事業の立ち上げを図ることが可能です。

デメリット2つ

合同会社の売却時に事業譲渡を選択するデメリットは、「資産や権利義務を個別に移転させる必要がある点」「売却後に負債が残る可能性がある点」等が挙げられます。

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

1.資産や権利義務は個別に移転させる必要あり

事業譲渡で合同会社を売却する場合、個別に様々な資産や権利義務を移転する必要があります。経営権そのものを譲渡する持分譲渡と異なるため、注意が必要です。譲渡対象資産に不動産が含まれている場合は登記が必要なケースもあります。

移転させる資産や負債が多岐に渡る場合は事業譲渡が難しいケースも考えられます。買い手側は事前のデューデリジェンスで必要な資産や契約が何かを十分に検討し、それぞれの引継ぎ方法を考えなければいけません。

万が一重要な資産や契約の引継ぎができなくなってしまうと、売却後のビジネスに支障が出てしまいます。事業譲渡契約書にリスクを低減できるような条件を盛り込むなど、弁護士と相談しながら工夫する必要があるでしょう。

2.売却後に負債が残る可能性あり

事業譲渡で合同会社を売却する場合、売却後に負債が残る場合があるため、注意深く対応、計画しなければいけません。持分譲渡によって会社の持ち分を全て渡す場合は、資産や負債を包括的に全て引き継ぎますが、事業譲渡では個別に引き継ぐため注意が必要です。

手元に残った負債を譲渡金額で清算できるケースは問題ありませんが、債務超過になってしまうケースも考えられます。事業譲渡後に支払う税金等も含めて、事前に十分な検討が必要です。

まとめ

合同会社の売却方法と、そのメリットとデメリットについて説明しました。株式会社と同様に合同会社も売却は可能ですが、手続きが煩雑になるケースが多く注意が必要です。

売却におけるスキームはいくつか紹介しましたが、中でも事業譲渡は全社員の同意を得る必要が無く、比較的実現が容易です。合同会社の売却を検討する際は、事業譲渡と持分譲渡、株式会社への組織変更との違いを十分に検討した上で、最適なスキームを選択しましょう。

また、いずれのスキームを選択した場合でも、手続きが煩雑になったり交渉が難航するケース等は考えられます。弁護士や税理士、M&Aアドバイザー等の専門家に相談しながら、慎重に売却を進めていきましょう。

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