持分法適用会社とは?連結子会社との違いと持分法の判定条件・会計処理を解説
公開日:2022年1月31日 最終更新日:2022年11月18日
持分法適用会社について、どのように利用したらよいかわからないと感じている方も多いでしょう。しかし、持分法適用会社は、よく比較される連結子会社よりも会計処理が簡便などのメリットを有しています。この記事では、持分法適用会社について説明していきます。
目次
持分法適用会社とは
持分法適用会社とは、連結財務諸表上、持分法の適用対象となる関連会社のことを指します。
持分法は、原則として、関連会社及び議決権所有比率が20%以上かつ50%以下の非連結子会社に適応されます。しかし、持分法の適応によって、連結財務諸表に重要な影響を与えない場合は、持分法の適応会社に勘定しないことも認められています。
連結子会社と持分法適用会社の違い
持分法適用会社と似た名称を持つ制度に連結子会社があります。
連結子会社は、議決権所有比率が50%を超える、または40%超で要件を満たした子会社を指します。
連結子会社とは、連結の範囲に含まれる子会社を指します。子会社とは、その会社の財務及び営業又は事業の方針を決定する機関(株主総会その他これに準ずる機関)が支配されている企業のことをいいます(連結会計基準第6項)。
原則として子会社は全て連結の範囲に含まれます。しかし、支配が一時的であると認められる場合や、連結することにより利害関係社の判断を著しく誤らせるおそれがある企業については連結の範囲に含めないことができます(連結財務諸表に関する会計基準第14項)。
この場合、親会社は子会社の経営を自社の経営方針に沿うものにすることができるため、子会社の勘定科目を親会社と合算する連結会計が適用されます。
持分法適用会社は、前項で記載した通り、原則的に議決権所有比率が20%以上50%以下の会社であるが、経営上重要性が高い会社を指します。これに対して、持分法適用会社とは、関連会社及び議決権所有比率が20%以上かつ50%以下の非連結子会社をいいます。
持分法適用の対象となる場合、投資会社の持分に応じて、持分法適用会社の純資産および損益を連結財務諸表に反映させることになります。
持分法の適用範囲
持分法の適用範囲は、日本基準とIFRSとでは異なります。
IFRSとは、International Financial Reporting Standardsの略で、国際財務報告基準であり、グローバルで広く採用されている基準になります。
日本基準において、持分法の適用範囲は、投資元会社が投資先会社である非連結子会社または関連会社の経営に重要な影響を与えることができるかという基準に基づいて判定され、この考え方は影響力基準とも呼ばれます。
影響力を有する例としては、関連会社の議決権の20%以上を所有する場合や、議決権は15%以上20%未満であるものの、投資元会社から役員等の派遣や重要な融資等を行っている場合等が挙げられます。
一方、IFRSにおいては、投資者が投資先企業を共同で支配しておらず、重要な影響力を有している会社に対して持分法が適用されます。
持分法の判定に重要な支配力基準
持分法適用の際、支配力は重要な判定基準です。特にIFRSでは、パワー、リターン、そしてパワーとリターンの関連にも着目して投資先を「支配」しているかどうかの判定が行われます。
中でもパワーの基準は、投資先のリターンに対して重要な影響を及ぼす活動に対する能力を有しているかによって判断されます。
また、会社を買収する場合、自身の投資の目的によって、持分法/連結を選択するため、初期スキーム検討時に会計処理も併せて検討することが必要です。日本の会計基準では、出資や人事、資金、取引等の関係を通じて、会社の財務や営業の方針決定に対して重要な影響を与えるかが基準になります。
たとえば、投資会社が被投資会社に対して、代表取締役の派遣をしていたり、資材の仕入れをしている関係、重要な融資をしている関係等がそれに当たります。
持分法を採用することのメリット
ここまで持分法適用会社や持分法の適用について解説してきました。持分法を採用するメリットは、会計処理が容易であるという点です。
持分法を用いた場合、投資元会社が議決権を有する持分を、投資先会社のP/L、B/Sから投資元会社の連結決算に取り込みます。例えば、議決権を20%有する会社であれば、投資先会社の20%が投資元会社の連結財務諸表に反映されるということです。連結会計の場合は、子会社の財務諸表を純合算してから連結修正をしていく必要があります。
しかし、持分法を用いた場合、連結会社で行う複雑な処理をすることなく、「投資有価証券」と「持分法による投資損益」の2つの勘定科目のみで関連会社の損益を親会社に取り込むことができます。。
持分法の会計処理
持分法の会計処理では、持分法が適用された段階では特に処理は必要ありませんが、持分法適用会社に損益が発生した場合には、一定の処理が必要です。
連結財務諸表規則上では、第十条で、「非連結子会社と関連会社に対しての投資について、持分法による計算をした価額を持って、連結貸借対照表に計上しなければいけない」と定められています。
例えば、発行済み株式の20%を保有している関連会社に利益が発生した場合、親会社は当該関連会社の利益の20%を取り込む必要があります。すなわち、投資元会社の側は関連会社の利益の20%分を損益に計上するということです。
具体的には、借方の項目に投資勘定、貸方の項目に持分法による投資損益の額という形で記載します。関連会社に利益が1,000万円が発生したとしたら、持分20%の200万円を損益として計上します。
借方の項目に「投資勘定」、貸方の項目に「持分法による投資損益」という形で記載します。
損益は営業外収益・営業外費用に表示します。持分法による投資利益と損失が発生している場合、相殺して表示することも可能です。
まとめ
事業の譲渡や投資等の過程で、持分法適用会社や連結子会社などの扱いについて悩むこともあるでしょう。しかし、持分法適用会社は会計処理が簡便というメリットもあります。利用について迷った点があれば、専門家に相談してみるのも一つの手です。
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