会社が買収されたらその後はどうなるのか?買収された企業の変化5つ
公開日:2021年7月2日 最終更新日:2022年11月18日
会社が買収されたら、買収された会社にとっては経営面はもとより、待遇面、人事面などにおいて大きな変化が起こります。また、その変化は買収した企業の方針に大きく依存することになります。どのような変化が起きうるのかを事前に想定したうえで、買収交渉に臨む必要があります。
目次
「会社が買収されたらどうなるのか」は買収した企業の考え方しだい
会社が買収されたら、会社で働いている社員(従業員)や役員にとって大きなインパクトが発生し、自身の待遇や仕事内容にどのような変化が起きるのか不安に思うことあるでしょう。それでは、会社が買収されたらどのような変化が起きるのかを見てみましょう。
会社の買収とは
ある企業が他の企業を支配する目的で議決権の概ね過半数以上を確保できるだけの株式を買い取ったり、事業部門を買い取ったりすること会社の買収といいます。
会社の買収の効果
議決権の過半数を得られる株式を取得することで、買収した企業の株主総会において取締役の選任・解任などの普通決議を成立させることができ、議決権の3分の2超を得ると、定款変更や新株発行などの特別決議を成立させることができます。
買収する企業にとっては、新しく自社で事業を立ち上げたり、強化したりするのに比べると、既にその分野で事業を進めている企業を買い取ることは時間短縮にも繋がります。
通例では買収された企業はこうなる
買収された後も、通例であれば買われた企業は存続することが多いといえます。また、資産や負債、商品やサービス、顧客と結んだ契約や知的財産権なども引き継がれることが多いでしょう。
とはいえ、買収する企業の事業展開や経営判断により、会社をたたむこともありえます。
買収される会社は、従業員にはどこまで情報を開示すればよいのか
買収される企業がその事実を従業員に説明するのは、買収が決定的になってからにするとよいでしょう。
会社が買収されることをあまりに早く公表すると、不用意に従業員の不安を煽ったり、取引先などに混乱を招きかねません。
従業員に対しては、今後の待遇面などは慎重かつ丁寧に話すことが重要です。
また、従業員は買収する企業の情報も詳細を知りたいと考えます。説明責任のある役職者等はしっかりと答えられるようにしましょう。
会社が買収されると企業に起こる5つの変化
会社が買収されると、基本的には買収した会社の考え方によって社内制度や従業員の待遇は大きく変わる可能性があります。
各種の条件は買収される企業・買収する企業、双方で事前に協議し、合意のもと決められるものの、その内容は双方の力関係や対外的企業価値、経営陣同士の関係性などによって左右されてしまいます。
会社が買収されるとどうなるのかを、企業に起こる5つの変化に着目して紹介します。
1:社風の変化
文化の異なる企業に会社が買収されれば、一般的には社風が変化する可能性が大きくなります。これまでの社風と全く違う場合でもギャップを受け入れなければなりません。
2:社員(従業員)の待遇の変化
会社が買収された場合、一般的に、社員(従業員)は買収後も労働条件については変更がないことがほとんどです。
とはいえ、評価基準に変更があった場合などは、よりよい労働条件を提示される可能性や、逆に能力が十分でないと判断され買収前よりも待遇が悪化してしまうこともあります。
また、買収がどのような手法で行われたかも、社員(従業員)の待遇を変化させる要素の一つです。
買収方法が事業譲渡による場合
事業譲渡による買収手法の場合、買収後は買収した企業へ権利・義務が譲渡されます。個々の契約は個別に承継されるため、社員(従業員)との労務契約も一つひとつ個別に承継されることになります。
個別に契約を承継するのか、承継したら条件はどのようになるのかは、買収する企業がハンドリングします。場合によっては、従来とは異なった雇用契約を別途結ぶことになるため、労働条件が変わることもあります。
参考記事:事業譲渡のメリットとデメリット15選|契約完了までの流れも徹底解説!|M&A to Z
買収方法が株式譲渡による場合
株式譲渡による買収では社員(従業員)の雇用契約もそのまま引き継がれるため、従業員はひとまず従来どおりの労働条件で働けると考えてよいと言えます。
ただ買収後に、給与規定や退職金の規定が変更される可能性はあるため、待遇が良くなることもあれば、悪くなることもあります。
参考記事:株式譲渡を行うメリット5つ|主な手続きや注意点もあわせて解説|M&A to Z
3:役員の待遇の変化
買収される前に役員であった場合、役員については、常勤なのか非常勤なのかで処遇が異なるケースが一般的です。
非常勤役員であった場合は、その多くがM&A成立後に退任します。これは、非常勤役員が親族であったり、実態の伴わない役員であったりする場合も多いためです。
一方で、常勤役員の場合は、買収する企業の状況と、役員本人の力量しだいで待遇が変わります。買収される企業の企業風土等を理解している既存の役員は、買収した企業から続投を要請されるケースも多くあります。
しかし、買収する側の企業が買収される企業の状況を充分把握している場合や、既存役員の力量が劣る場合は退任となるケースもあります。
なお、役員の報酬や退職慰労金は株主が株主総会で決定できる権利を持っています。つまり、役員として残れたとしても報酬や退職慰労機の支給が維持される保証はなく、株主総会の決議により減額される場合もあります。
報酬や退職慰労金を維持するためには買収した企業の株主やオーナーに役員としての力量を認められる必要があるということです。
4:人事制度の変化
買収後は、買収された企業と買収した企業の人事制度を統合する作業が必要になります。買収した企業が買収をきっかけに社員(従業員)にとって不利な人事制度へと変更してしまうと、「労働者の不利益変更」という法的リスクが発生します。
人事制度の変更にあたっては、社員(従業員)との個別合意が必要になります。人事制度のすり合わせに1~2年ほどの期間を設定し、徐々に買収した企業の制度に移行していくのが一般的です。
人事制度の統合をせず、双方の会社の人事制度を残すというケースもあります。しかし、異動の際にどちらの人事制度が適用されるのかなど、複雑化してしまうため、一般的ではありません。
なお、人事制度の統合によって、これまでの人事異動の枠も広がります。買収した企業にとっては、広く人材の発掘が可能になることは買収のメリットのひとつと言えるでしょう。
5:福利厚生の変化
福利厚生は、買収する企業によって決められます。そのため、買収された企業の従業員の福利厚生が変更されることもあります。一般的には、買収した企業側の福利厚生に合わせるケースが多いといえます。
会社が買収されたことで経営が良好になるメリットもある
買収される企業にとって、他社からの買収、特に自社よりも大きい企業からの買収の場合は、自社をより大きく成長させる可能性があります。
例えば、買収する企業が全国に支店を持つ場合であれば、その販売力を生かして事業拡大できるチャンスになります。
また、買収されることにより、後継者のいない会社であっても存続することができます(事業承継)。それにより、取引先に迷惑をかけずに済むほか、従業員の雇用も守ることができます。
つまり、会社が買収されるメリットとして、経営が良好になる可能性を挙げることができます。
買収された企業に起こる変化は、買収した企業の方針によるところが大きい
会社が買収されたら会社がどうなるか、社員(従業員)がどうなるのかは、買収元の経営陣の判断に委ねられるところが大きいと言えます。
役員や社員(従業員)にとっては、待遇が良くなることもあれば、悪くなることもありますが、いずれにしろ大きなインパクトが出るのは間違いありません。
買収されることを検討する企業は、会社が買収されたらどのような変化が起きるのかをしっかりと想定して、交渉の場に臨むことが求められます。
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