シナジー効果とは?3つの分類と効果を得る方法、注意点を解説!
公開日:2021年8月31日 最終更新日:2022年11月18日
企業は安定して売り上げを伸ばしていくことがステークホルダーから求められている以上、成長のための施策が欠かせません。本記事では、その1つの手段であるシナジー効果の説明と、具体的な方法を解説します。
目次
シナジー効果とは
シナジー効果とは、M&Aの企業買収や企業合併において、効果を単純に足し合わせるよりも、大きなベネフィット(利益)が生まれる効果をいいます。
別の言葉で相乗効果と表現されることもありますが、かけ算のように効果が増大するという意味を持っています。
シナジー効果の例としては、取引先を掛け合わせることによる販路拡大と売上増強、それぞれの拠点を有効活用することで生まれるコスト削減効果などがあります。
反対語のアナジー効果
シナジー効果の反対語として、アナジー効果と呼ばれる専門用語があります。アナジー効果とは、単純に相互に足し合わせるよりも小さな効果が生じてしまうことです
。
例えば、M&Aの実施後、取引先が被ってしまった場合、相手先はリスクヘッジのために仕入れ量を減らしてしまうことが挙げられます。他にも、システム統合がうまくいかず、相互の業務に支障をきたす事例もあります。
こうしたアナジー効果を排除するためには、組織・業務面の改革が必要です。
なぜシナジー効果が重要なのか
先にも触れましたが、シナジー効果とは、M&Aにおいて、得る効果を単純に足し合わせるよりも、大きなベネフィット(利益)が生まれる効果をいいます。
シナジー効果あるM&Aや事業提携が実現できれば、自社の競争力を強化やマーケット内での優位なポジション獲得などを期待できます。
経営学者・ピーター・ドラッカーの「企業は継続(ゴーイング・コンサーン)するために利益を得る」という言葉の通り、企業はゴーイング・コンサーンが前提になります。
企業の継続性を担保するための積極的な経営施策の一つが、M&Aのシナジー効果により、自社の競争力を強化し、持続的な成長にもつなげることだと言えます。
経営における3つのシナジー効果
企業価値評価におけるシナジー効果は、主に『売上シナジー』『コストシナジー』『研究開発シナジー』『財務シナジー』があり、それぞれM&Aを検討する際に欠かせないものとされています。
本章では各領域をまとめる形で3種類に定義し、説明していきます。
1:組織シナジー
組織シナジーとは、生産性の向上効果をいいます。。従業員1人1人が共同し、組織として活動すると生産性の向上が見込まれるものです。
1人ではできない業務であっても、2人、3人と集まれば分業により業務効率は向上します。また、意識の高い社員が集まることによって、社員全体のモチベーションが向上し、社員の全体的なレベルアップにも繋がる事例もあります。
2:事業シナジー
事業シナジーとは、さまざまな事業者が協同することで生まれるシナジー効果をいいます。
事業シナジーからは3つの効果を生み出します。それは、人材の獲得、コストの削減、スケールメリットです。
・人材の獲得
まず、事業シナジーとして人材の獲得が挙げられます。
M&Aでは、企業を買収することで優秀な人材を得ることができます。会社を運営する上で、優秀な従業員は欠かせないため、M&Aで従業員を獲得できるのは大きなメリットといえるでしょう。
ただし、M&Aにより従業員を獲得した後は、給与体系の統一や社員のモチベーション維持に注意が必要です。
また、会社を買収しなくても、提携先と社員の交換派遣を行うことで、それぞれの会社で技術を培うことができ、企業全体の人材の能力が向上する効果があります。
M&Aか事業提携か、自社にあった選択をする必要があります。
・コストの削減
複数の事業者で共同し、無駄を省くのがコストの削減です。
協働先の企業と重複する拠点の統廃合を進めたり、同様の研究や実験を進めている場合は1つにしたりすることで、コスト削減を見込めます。
例えば物流業界においては、共通した物流拠点の統廃合を進めることで、業務効率を変えずにコストの削減が実現している企業もあります。
・スケールメリット
スケールメリットとは、生産の規模を大きくすることで見込まれるメリットです。
1つの製品には固定費と変動費がかかっているため、スケールが大きくなればなるほど1商品に対する固定費の割合は小さくなります。このため、規模が大きくなれば必然的に製品の生産にかかる費用は小さくなるということです。
他にも、スケールメリットには、経営効率化や他社との差別化、優位性の確立ができることから、さまざまな場面でスケールメリットは利用できます。
3:財務シナジー
財務シナジーとは、企業のお金や税金に関するシナジー効果のことです。
財務シナジー効果により、節税、余剰資金の活用、資本調達コストの削減、調達余力の増加などの効果が見込まれます。
節税効果として挙げられるのは、繰越欠損金です。株式譲渡の場合、買い手は対象会社の法人格をそのまま引き継げるため、今後対象会社で利益が出たとしても過去の繰越欠損金を使って利益を相殺することができます。
他にも、現預金が余っている場合には、有望なベンチャー企業に投資することにより、手元で眠らせておくよりも有効的に現預金を利用できます。
M&Aを検討する際は、シナジー効果も検討した上で買収するとよいでしょう。
シナジー効果を得る方法
シナジー効果を実際に得るためにはどうすればよいのでしょうか。
ここからは、シナジー効果が見込まれるM&A、業務提携、グループ一体経営、多角化戦略を説明します。
1:企業買収・合併(M&A)
シナジー効果を受ける際に多い例が企業買収・合併(M&A)です。M&Aを実施することで、まずは事業自体の成長が見込まれます。
他社の技術を利用することで、自社のみでは叶わなかった開発もできる可能性があります。また、活用できるリソースが増えることで、新規事業にも挑戦できるようになるでしょう。
また、取引先やノウハウを得ることで、今後の売上拡大に繋がる可能性が高いのがM&Aを利用するメリットです。
M&Aクラウドを利用すれば、買い手の責任者と平均1週間で面談することができます。経験豊富なプロのアドバイザーに無料相談することもできるので、まずは無料の会員登録をお試しください。
2:他社との業務提携
他社との業務提携によって、経営課題を解消できるのもシナジー効果の1つです。
業務提携により、他社と共同開発を進めることや、双方の商品を営業で紹介し合うことができます。
例えば、どれほど素晴らしい商品を作っていても、それがうまく営業できなければ商品は売れません。この際、営業がうまい販売代理店と業務提携することで、商品が売れないという経営課題を解決することができます。
また、営業する会社もマージンを取ることで、お互いに利益のある関係を築けるのもメリットといえます。
3:グループ一体経営
グループ一体経営は、ホールディングスのような形を作り、横の関係を強化することをいいます。これもシナジー効果を生み出します。同業種の関連会社をグループ化することで、顧客に対する総合提案が可能になります。
例えば、金融業界では銀行を中心に、リース会社やカード会社を横並びに展開することで、1つの顧客課題に対してグループ全体で対応することが可能となりました。
グループ化により、CRM(Customer Relationship Management・顧客関係管理)の方法を共通化することで、情報共有が早くなるのは大きなメリットといえます。
4:多角化戦略
多角化戦略とは、既存事業以外の範囲にも新規事業を広げることにより、企業の売上の平準化を図る戦略のことをいいます。
今までになかった顧客を獲得することもできるため、大きなメリットにつながることがあります。
多角化戦略には4種類の区分がありますので、それぞれ説明しましょう。
・集中型多角化戦略
集中型多角化戦略とは、既存事業や既存顧客に関連ある新規事業に進出することをいいます。
例えば、車を販売している会社が、車を買うためのローンなどの金融事業を始めるのは同顧客に対する集中型多角化戦略といえます。
集中型多角化戦略を利用することで、同じ顧客に対して幅のある提案をすることができますので、1顧客あたりの単価が上がる可能性があるでしょう。
・垂直型多角化戦略
垂直型多角化戦略とは、下流工程を担当していた会社が、上流工程まで全てを請負えるようにする戦略のことをいいます。
例えば、商社などでは、ただ商品を輸入して販売するスタイルから、海外の現地工場などの上流投資を進め、垂直型多角化戦略を進めてきた経緯があります。
垂直型多角化戦略は、バリューチェーンと呼ばれる価値の相乗効果を生み出します。こうしたメリットを生み出すため、垂直型多角化戦略は食品業界などでのメーカーで取られるケースがあります。
・集成型多角化戦略
集成型多角化戦略は、既存事業とは全く関係のない事業を始めることをいいます。
例えば、衣服のメーカーが人工衛星の事業などに取り組むのは集成型多角化戦略です。
集成型多角化戦略は、相乗効果を見込みにくいというデメリットがありますが、事業がうまくいけばその後の戦略の幅が大きく広がります。
・水平型多角化戦略
水平型多角化戦略は、既存事業と同様な事業で別の商品を生み出す戦略のことをいいます。
培ってきたメソッドやノウハウを別商品に活かすことが大前提になる戦略で、例えば、電話機器を製造するメーカーがFAXの製造をするのが水平型多角化戦略です。
水平型多角化戦略は技術を蓄積する製造業でよくみられる手法で、他業種よりも成功しやすいのが特徴です。
シナジー効果を活用する際に必要なこと
シナジー効果を活用するために大切なのは、何をすれば自社の成功につながるのかを把握することです。シナジー効果は本当に見込めるのか、そこにリスクがないのかを検証しないと想定していた効果が見込めない可能性があります。
シナジー効果を見込んだつもりが、シナジー効果にならないということを避けるためにも、これから紹介する2点に気をつけましょう。
自社について把握する
まずは自社についての把握が不可欠です。
そもそも自社にどの程度の価値があるのか、ノウハウや自社だけのメソッドはどの程度あるのか、経営リソースはどの程度あるのかを把握しましょう。
相手に対して提供できるメリットが明確に理解できていないと、他社との業務提携やM&Aをするシナジー効果が不透明になってしまいます。
リスクをチェックする
シナジー効果を見込む際は、そのリスクも検討しましょう。
例えば、人材を引き受ける際には、本当にその人材を引き受けて自社にメリットがあるのかを検討しなければなりません。どれほど知識を持った人材であっても、自社とシナジーを持たない人材を受け入れてしまえば、企業にも人材にも悪い結末が訪れます。
他にも、パートナー企業の債務や社風を検証し、リスクはないか確認する必要があります。
企業経営を進める上で、シナジー効果は欠かせません
シナジー効果を求めるM&Aは活発になっており、今後はより一層M&Aや資本提携を利用した協業が増えることが予想されます。うまくM&Aを活用してシナジー効果を得て継続的な企業経営を実現しましょう。
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