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社会福祉法人のM&A|その方法と注意すべきポイントについて解説


公開日:2021年11月30日  最終更新日:2022年11月18日

公益性・非営利性が求められる社会福祉法人のM&Aでは、所轄庁の許認可が必要となる等の規制があり、民間企業のM&Aよりも注意が必要となります。

今後地域の社会福祉を維持、発展させるために、社会福祉法人のM&Aが増えてくると予想され、その概要を紹介します。

社会福祉法人M&Aとは

社会福祉法人とは、社会福祉事業を行うことを目的として設立された法人であり、株式を発行していません

そのため、社会福祉法人のM&Aは、合併(新設合併または吸収合併)、または事業譲渡等(事業譲渡と事業譲受)のどちらかによる方法となります。

なお、合併については、社会福祉法人間のみで認められています。

社会福祉法人M&Aの意義

今後、社会福祉制度を支える15歳から64歳未満の生産年齢人口はますます減少する一方、老人保健施設等の社会福祉サービスの利用者は増加し、社会福祉に対するニーズ等が複雑化、多様化することが予測されています。

個々の法人では資源等の不足により対処が難しい課題に対して、複数の法人がM&Aを通して連携、協力し合うことで、地域における福祉サービスを維持し、発展させることが期待されます。

出典:総務省統計局|人口推計(2019年(令和元年)10月1日現在)結果の要約

社会福祉法人がM&Aを実施するメリット

社会福祉法人がM&Aを実施するメリットとして、次のものが挙げられます。

1. サービスの質の向上、新しい事業への拡大

相手法人の人材、ノウハウ、設備等を活用することにより、既存の資源の補完や新たな視点の獲得等が生じ、サービスの質の向上、新しい事業への拡大が期待されます。

2. 事業の効率化

相手法人の事業や資源を活用することにより、自ら開発し拡大、拡充するよりも負担を軽減できる可能性があります。また、開発が重複することの回避、資材調達コストの削減等による事業の効率化が期待されます。

3. 経営基盤の強化、事業の継続

相手法人の本部機能や財務基盤と合わせることで経営基盤が強化されることが期待されます。また、資金・人材の不足、後継者不在などにより継続が困難な事業の場合は、継続できる可能性を広げることができます。

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社会福祉法人の具体的なM&Aスキーム

社会福祉法人のM&Aでは、合併、事業譲渡等のスキームごとに手続きが変わります。ただし、どちらのスキームにおいても、M&Aを実施する前に検討するべき事項は同じです。

まず、M&Aが自らの経営理念・経営戦略が沿うものか、事業の維持・発展に寄与するか等を通して、M&Aの目的を明確にします。

次に、相手法人の経営理念・経営戦略、組織、事業内容、需要と競合事業者の状況、計算書類等の調査を行います。そして、M&A後の数年先までの具体的な事業内容、見込の計算書類等を含む将来の事業計画を作成します。

合併手続きの全体像

合併の手続きの流れは、次の通りとなります。

1. 相手法人との調整

合併後の事業運営・展開、組織、役員等について、相手法人と協議・調整し、合意に達すれば合併契約を締結します。

2. 法令上の手続き

合併についてはそれぞれの法人において評議員会から承認を得て、所轄庁から認可を得なければなりません。その後、債権者への通知手続き、合併に関わる登記手続きを行います。他にも評議員等が閲覧できるよう合併に関する書面を備え置いたり会計・税務処理を行う必要があります。

3. 職員や利用者等への説明

合併後に存続する法人における職員の給与・勤務体系等の処遇を検討し、それらを説明するとともに、利用者やその家族に対して今後のサービス等について説明を行います。

4. 合併後の運営に必要となる手続き

合併後の事業運営に必要となるシステムの統合、制度・規程等の整備を行っていきます。

事業譲渡等の手続きの全体像

事業譲渡等の手続きの流れは、次の通りとなります。

1. 相手法人との調整

まずは、事業譲渡等の後に譲受法人が対象事業を継続可能かどうかを所轄庁に事前に確認することが重要です。同時に対象事業の財務内容や運営形態等を調査し、事業譲渡等の条件、事業譲渡後の運営方針・職員の処遇等を協議、調整し、基本事項について合意書を締結します。

2. 法令上の手続き

譲渡法人において基本財産処分、補助金にかかる財産処分等について所轄庁の承認を得なければなりません。次に、譲渡法人と譲受法人のそれぞれで基本財産の処分・追加等について定款の変更を行い、所轄庁へ申請します。また、会計・税務上の処理も行う必要があります。

3.資産・負債等の移管

譲渡等の対象となる資産・負債を特定し、事業譲渡契約を締結します。資産については、土地・建物等の有形財産だけでなく、利用者や職員との契約等の無形財産も含みます。

負債については、移転について債権者の承認を得る必要があります。土地・建物等の不動産については移転の登記等も行います。

4.職員や利用者等との調整

合併と同様に職員や利用者等に対して、事業譲渡等の目的、譲渡後の運営等について説明を行います。合併と異なり、利用者との契約が当然に引き継がれません。そのため、利用者から承諾を得るか、改めて契約を締結することになります。

5.事業譲渡等の後に必要となる手続き

合併と同様に必要なシステムの統合、制度・規程等の整備を行います。

社会福祉法人M&Aで注意すべきポイント

社会福祉法人は社会福祉事業を行うために設立された法人であり、地域における福祉サービスを安定的に提供するものとして、公益性・非営利性であることが求められます。

所轄庁による許認可が必要な事項がある等、株式会社等民間企業のM&Aよりも様々な規制があります。M&Aの際には、これらの規制に抵触しないように進めていかなければなりません。

事業譲渡の対価の設定

社会福祉法人は、条件を満たせば、社会福祉事業の剰余金を法人の本部会計または当該法人が行う公益事業に充てることができます。しかし、当該法人ではない先に対価性のない支出をすることはできません。

事業譲渡等においては、譲渡する事業の見積価格を超える金額を事業譲渡の対価としなければなりません。そのため、財産等の対価を決定する際には、財務調査・分析を通して、事業を適切に評価することが求められます。

なお、社会福祉法人には、持分の概念がなく、合併において吸収される法人に対価が支払われることはありません。

許認可や財産処分等に関連する行政機関との調整

合併では合併自体について、事業譲渡等では財産の処分・追加、それに伴う定款変更について、所轄庁の許認可が必要となります。許認可が得られなければ、それらの効力は認められません。

相手法人と合併・事業譲渡等について合意したとき、または合意に至る前から所轄庁に相談することが円滑に手続きを進めていく上で重要になります。

株式会社が買い手となる場合等事業体が異なる場合

株式会社等が社会福祉事業の買い手となる場合は、社会福祉法人と勘定科目体系が異なることになります。事業を評価する時や事業を譲り受ける時の勘定科目について注意する必要があります。

まとめ

社会福祉法人が展開するサービスは、高齢者や児童向けが多く、日本の社会福祉を支える基盤です。

公益性・非営利性が求められる社会福祉法人のM&Aにおいては、株式会社などの民間企業のM&Aよりも様々な規制があり、十分に注意して進めていくことが必要になります。

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