3年で売上3倍成長の鍵は、2社のクリアな役割分担。海を越えたタッグで、顧客開拓×人材確保をスピード実現!

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3年で売上3倍成長の鍵は、2社のクリアな役割分担。海を越えたタッグで、顧客開拓×人材確保をスピード実現!

口コミ店舗検索サイト「エキテン」の運営を中心に、中小事業者を対象とするIT関連サービスを展開する株式会社デザインワン・ジャパン。積極的にM&Aに取り組む同社が2019年3月、最初に仲間に迎えたのがベトナム・ダナンに拠点を置く開発会社、Nitro Tech Asia Incです。

グループイン後、デザインワン・ジャパンが顧客開拓、Nitro Tech Asiaが人材獲得を担う明確な役割分担のもと、Nitro Tech Asiaの売上は3倍成長を実現。その舞台裏について、Nitro Tech Asia CEO 磯目 真也氏(写真左)、デザインワン・ジャパン DX事業本部長 泉川 学氏(写真右)、同 社長室長 松原 渉氏に語っていただきました。

プロフィール

磯目 真也 Nitro Tech Asia Inc CEO

静岡県沼津の高校を卒業後、地元漁港にて鮮魚の管理業務・経理業務に従事。2007年にエンジニアへのキャリアチェンジを図り、東京の開発会社にてモバイル向けウェブサイトの開発に従事、通信キャリア公式の電子書籍・動画サイトの開発と運用保守を経験。2012年にベトナム・ホーチミンに渡り、SEとしてオフショア開発に従事後、活動の拠点をダナンに移し、2013年に現在のNitro Tech Asiaを立ち上げる。

泉川 学 株式会社デザインワン・ジャパン DX事業本部長

大学卒業後、小売業界でブランド品のバイヤーなどを経験したのちIT業界に転身。株式会社ライブドアのインフラ事業の営業責任者を担当。ベンチャー企業の運営に関わった後、2016年にデザインワン・ジャパンへ入社。「エキテン」事業の営業・サポート部門責任者を務めたのち受託開発事業の立ち上げを担当し、現在はDX事業本部とその所管子会社3社を統括。

松原 渉 株式会社デザインワン・ジャパン 社長室長

商工会議所や地方自治体の調査研究事業・計画策定支援等を経験後、2013年にデザインワン・ジャパンへ入社。入社後は「エキテン」事業のマーケティングや商材企画を手掛け、現在は社長室でアライアンスや投資・M&Aを推進。

「エキテン」とは別の角度で中小企業を応援したい! 新事業開発のパートナーを求めて

Nitro Tech Asiaのオフィス
Nitro Tech Asiaのオフィス

――磯目さんは、当社の及川(CEO)と長いお付き合いだそうですね。

磯目 及川さんが前の会社を経営されていたころからですね。

及川 仕事でNitro Tech Asiaさんとご一緒しており、当時のオーナーだった方、CEOの磯目さん、どちらとも関係値がありました。そのご縁で、今回のM&Aに際してもご相談いただきました。

――Nitro Tech AsiaさんがM&Aをお考えになった背景を伺えますか?

磯目 当社はベトナム中部の港湾都市、ダナンに拠点を置き、日本企業から開発業務を受託しています。給与水準がかなり上がっているハノイやホーチミンに比べ、ダナンはまだコスト面で有利なうえ、当社はクオリティの面でも顧客の期待にしっかり応えてきました。私自身を含む日本人メンバーがお客様との窓口を務め、頂いたリクエストがスムーズに現場へ伝わる体制をつくってきたことが強みです。

ただ、顧客の企業戦略として、自社で直接海外開発拠点を持つ、あるいはもっと人件費の安い別の新興国へ委託先を移すといった可能性は常にあり得ますし、実際に周囲でそうした話を聞く機会も増えていました。そこで、顧客へのフォローアップや新規開拓を担っていただける日本の会社と組み、より安定的に案件獲得できる体制を整えたいと考えたんです。

――当社から最初にご紹介したデザインワン・ジャパンさんと、スムーズに成約まで至られたそうですね。顧客開拓に関しては、デザインワン・ジャパンさんは「エキテン」に掲載されている事業者さんとのネットワークを活用するお考えだったのでしょうか?

松原 いえ、必ずしもそうではないんです。当社は「中小事業者様にとって有益なサービスを提供することで、地域から日本、世界の活性化に貢献する」という想いで、代表の高畠が創業した会社です。メイン事業となっているのは口コミサイト「エキテン」の運営を通じた店舗のWeb集客・販促支援ですが、店舗向けのサービスに留まらず、より幅広い業種の事業者様に向け、DX化や人材不足などの課題解決を支援するようなサービスを展開していきたいという考えが以前からありました。

一方で、外部環境としてはIT人材不足が深刻化し、社内でもサービス開発のリソースが不足しており、人材確保が課題になっていました。そこで社外から良質な開発リソースを保有している会社を仲間に迎え、「エキテン」の開発もサポートしてもらいつつ、事業者様のDX化を支援する新規事業立ち上げの中核になっていただきたいと考えたんです。

なので「エキテン」のお客様へのクロスセルというより、企業ミッションに沿いながらグループシナジーも見込める、新しい事業領域へのチャレンジというイメージを持って進めていました。

――特にオフショアの開発会社に注目していたのでしょうか?

松原 実は当初はオフショアに絞って探索していたわけではありませんでした。及川さんからNitro Tech Asiaさんを紹介いただき、「この会社さんとなら、そういう選択肢もあるな」と検討を始めました。

――ご成約の決め手になった点を教えてください。

松原 磯目さんのお人柄です。当社にとって初めてのM&Aでもあり、かつ海外の現地法人で大きな権限をお任せすることになるので、しっかり長くお付き合いできそうな方かどうかを最も重視していました。海外で会社経営してこられた方というとアグレッシブで尖ったタイプの方も多いイメージですが、磯目さんは穏やかで和を大切にするタイプ。私たちとフィーリングが合いそうだと感じました。

磯目 私は以前勤めていた会社でM&Aを経験しており、やはり売却先との人間的な相性が重要になると実感していました。高畠さんと松原さんは、若い私に優しく丁寧に接してくださり、デザインワン・ジャパンさんなら、私自身にとっても、仕事において何より人間関係を大切にするベトナム人メンバーたちにとっても、馴染みやすそうだと思えました。

及川 経営に対する考え方においても、両社は一歩一歩着実に積み上げていこうとする姿勢が共通していると感じます。私の直感でお繋ぎした皆さんがこうしていい関係を築いてこられたこと、本当にうれしいです。

登記申請が受理されない⁉ 想定外の事態を共に乗り越え、強まった2社の絆

グループイン後に開設されたLP
グループイン後に開設されたLP

――2019年3月に成約された後、どのようにPMIを進めていかれたのでしょうか。コーポレート面とビジネス面、それぞれの流れを教えてください。

松原 コーポレート面では、実は想定より大幅に取得登記の手続きが遅れてしまって……。ベトナムは外資規制が厳格で、法令に沿って当局への申請を行ったのですが、手続事例が多いハノイやホーチミンと、Nitro Tech Asiaのあるダナンとでは実務ルールが異なるといったことがあり、書類がなかなか受理されず手間取ってしまいました。その間、現地にいる磯目さんにもいろいろ動いてもらいましたが、ここで密にやりとりしたことで当社メンバーとの関係が深まった面もあります。

――社内システムの統合なども同時に進められたのでしょうか。

磯目 経理ソフトをデザインワン・ジャパンさんで使っているものに入れ替えましたが、大きな変更はそのくらいでしょうか。特に混乱はありませんでした。

松原 Nitro Tech Asiaさんはベトナムの会社ではありますが、トップの磯目さんが日本企業での勤務経験もあり、日本国内の慣習をよくご存じなのでスムーズでしたね。

――ビジネス面の体制構築は、泉川さんを中心に進められたのですか?

泉川 はい。3月の契約締結時に私もベトナムに同行し、磯目さんとも初めてお会いして、プロジェクトをスタートさせました。

私はその2カ月くらい前に高畠に呼ばれて、いきなり「ベトナムに興味ある?」と聞かれたんです。当時は「エキテン」の営業やサポートの部門を統括しており、前職や前々職で法人営業畑を歩んできた経験もあったので、グループ会社の経営全体を見つつ、営業の前線にも立つポジションに適任だと思われたようです。実際、ベトナムに特別興味があったというわけではないのですが、新規事業の立ち上げを手がけられるというのは魅力的でした。

プロジェクトの最初のミッションは、Nitro Tech Asiaの既存顧客の仕事を継続しつつ、「エキテン」の開発にも参画してもらい、デザインワン・ジャパンの開発メンバーとの連携体制を構築していくこと。契約時にNitro Tech Asiaを訪ねた際は、メンバーたちが開いてくれた飲み会に参加したり、エンジニアのまとめ役を務めるキーパーソンと話をしたりしましたが、帰国後は私が直接現場に出ていくことはせず、すべて磯目さんを通してやり取りしてきました。磯目さんとは当時から今まで、ずっと週1でオンラインミーティングをしています。

――新規の顧客開拓については、開発現場の体制が整ってから取り組んでいかれたのでしょうか?

泉川 その想定だったのですが、ちょうど大口の顧客が自社の開発拠点を設けたりして解約が発生し、新規営業も急ピッチで進めることになりました。集客用のLPを作ったり、テレアポをしたり、開発会社のマッチングサイトに登録したりしながら、継続的な関係を築ける顧客を開拓してきました。

出向した若手が橋渡し役に。東京ーダナン間の距離が一気に縮まった

Nitro Tech Asiaの急成長を支えるメンバーの皆さん
Nitro Tech Asiaの急成長を支えるメンバーの皆さん

――ご成約から約3年、Nitro Tech Asiaさんは順調に業績を拡大されています。2社の連携を軌道に乗せ、結果につなげられた秘訣を教えてください。

磯目 成約前からお互いの強みと弱みを率直に共有し、補完し合う関係を築いてこられたことが大きかったと思います。営業面はデザインワン・ジャパンさんがトータルに対応くださっているからこそ、私は優秀な人材を集め、良いプロダクトをつくって納品し、社内を盛り上げていくことに集中できますし、そのための裁量も与えていただいています。

いわゆるオフショアあるあるで、国や文化の違いから来る行き違いなどもありましたが、トライアンドエラーを通じ、コミュニケーションの取り方を互いに進化させてきました。たとえば、「未成年」といっても日本とベトナムでは定義が異なるので、具体的な年齢で伝えた方がいいとか、小さな学びの積み重ねですね。

泉川 連携を深めるうえで特に効果的だったのが、当社の若手エンジニアを1年間、Nitro Tech Asiaに出向させたことです。双方のメンバーと親しくなった彼が橋渡し役を果たしてくれたことで、東京ーダナン間のコミュニケーションが格段にスムーズになりました。

磯目 彼は「たった1年でここまで成長できるのか」と思うほど、たくましくなりましたね。帰国後もムードメーカーになってくれています。

――Nitro Tech Asia社内の皆さんは、親会社ができたことや新規の顧客が増えたことで戸惑いなどはありませんでしたか?

磯目 グループインする際に、今後はより安定的に案件獲得できる体制ができると説明し、メンバーもポジティブに受け止めてくれました。私やエンジニア陣を統括しているベトナム人マネージャーの立ち位置は変わらないと分かり、特段不安を感じることもなかったようです。

新規顧客については、Webサイト開発やアプリ開発など、当社が得意とする案件を泉川さんたちが選んでくれており、顧客満足度も従業員満足度も高い状態です。ラボ型開発(一定期間、一定数の開発リソースを確保し、顧客専用の開発チームを構成)などでは、徐々に価格を上げてきている分、エンジニアの給与水準も上がっています。

泉川 Nitro Tech Asiaの強みを活かしやすい案件に絞ることで、極端な価格競争に陥ることなく、サービスの価値を感じていただけることが見えてきました。日本国内ではエンジニアリングのリソースが絶対的に不足している中、クオリティの安定したサービスを提供し続けることで、持続的な成長が見込める領域だと感じています。

――磯目さんご自身は、グループイン後、どんな変化を感じていらっしゃいますか?

磯目 デザインワン・ジャパングループ全体に対して、当社がどれだけ貢献できるかという視点で考えるようになり、経営者として視野が広がったと思います。今、グループ内で担当している「エキテン」の開発以外にも、将来的に当社が関わることで価値を発揮できそうな領域はいろいろあります。そうした可能性を念頭に置きながら、次のステップを考えていけることにやりがいを感じています。

相談相手ができたことも大きいですね。グループイン当時のNitro Tech Asiaは30名規模でしたが、現在は70名規模に拡大しており、組織づくりもハイスピードで進めてきました。経営者として悩む場面も多々ありましたが、泉川さんにお話しすると、いつもいいアドバイスを頂けるんです。

――泉川さんがメンター役を果たされているのですね。

泉川 メンターというほどではありませんが……。私もさまざまな会社で中間管理職を経験してきましたので、参考にしてもらえそうな事例などがあれば積極的にシェアしています。

夢はベトナム市場向け自社サービスの展開。今のNitro Tech Asiaだからできる挑戦を

デザインワン・ジャパン 社長室長 松原 渉氏
デザインワン・ジャパン 社長室長 松原 渉氏

――デザインワン・ジャパンさん側は、Nitro Tech Asiaさんを迎えられたことでどんな変化がありましたか。

松原 当社としてマイノリティ出資はそれまでにも国内海外両方で経験していましたが、M&Aを行うのはNitro Tech Asiaさんが初めてでした。初回でいきなりクロスボーダー案件を経験し、いろいろと予想を超える事態に直面して、いい意味でだいぶ耐性が付いたと感じます。

海外で登記する際にどんなことが起こり得るか、連結決算はどのように進めるのか、人を出向させるときにはどんな準備が必要か――会社の経験値になると同時に、関わったメンバーのスキルの幅も広がりました。従業員にとっては、先程の若手エンジニアの話のようにグループ会社への出向が可能になったことも、キャリア形成上のメリットだと思います。

会社としては、M&Aを活用して新規事業を立ち上げ、軌道に乗せるまでのプロセスを実際に経験ができたことが最大の収穫です。当社は将来、100社を擁するグループになることを目標に掲げています。100社はまだ遠いものの、10社くらいまでの道のりはイメージできるようになってきました。

――Nitro Tech Asiaさんの後、すでに3社がグループインされていますね。

松原 それぞれの自主性をできるだけ尊重する形で、グループ経営のあり方を模索しています。まだまだグループとしての経営課題は多いですが、これまでに仲間に加わった4社ともトップが続投していますので、今後も課題を一緒に乗り越えていけるような、比較的いい関係を築けているのではないかと自負しています。

及川 経営陣で辞めた方が一人もいないというのはなかなかないことです。磯目さんもおっしゃったように、グループ会社に任せるところは任せきるフラットな関係性ができていることが、各社経営陣のモチベーションにもつながっているのでしょうね。

――最後に、Nitro Tech Asiaさんの今後のビジョンを教えてください。

泉川 今の受託開発の事業を伸ばし続けると同時に、将来的にはベトナム市場向けに、自社のWebサービスを展開できたらいいなと……。これは磯目さんの長年の夢でもあるんですよね。

及川 ベトナム版「エキテン」ですか?

磯目 「エキテン」のようなポータルサイトであればデザインワン・ジャパンさんの経験値を活かせるでしょうし、あるいは全く新規の領域として、ベトナムで盛り上がっているブロックチェーンなどの領域も面白いなと。具体的な形はまだ見えていませんが、今のNitro Tech Asiaだからこそできることを追求していきたいと思います。

――今後の展開も楽しみですね。磯目さん、泉川さん、松原さん、本日はありがとうございました。


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本ページに掲載している情報には、M&Aが成立するに至る経緯に加え、インタビュー時点での将来展望に関する記述が含まれています。こうした記述は、リスクや不確実性を内包するものであり、環境の変化などにより実際の結果と異なる可能性があることにご留意ください。

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