M&A後、売上20%増を達成!少数精鋭のエンジニア集団を活用する“緩やかPMI”とは?

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M&A後、売上20%増を達成!少数精鋭のエンジニア集団を活用する“緩やかPMI”とは?

基幹システムを中心としたシステムインテグレーション・サービスを主軸に事業展開する株式会社ランドコンピュータと、基幹システムパッケージSAPの導入コンサルティングおよびアドオン開発を手掛ける株式会社インフリー。2社がM&Aクラウドを介して出会い、インフリーがランドコンピュータグループに加わるまでの経緯は、2021年6月公開のインタビュー(https://macloud.jp/interviews/30)でご紹介した通りです。

親会社となったランドコンピュータが成長戦略の柱として位置づける「パッケージベースSI事業」。その一翼を担うべくグループインしたインフリーとのシナジーは、M&Aから1年で早速その効果が表れ、さらに中期経営計画の目標を上回る売上数字も見えてきました。2社はどのように統合を進め、これからどこを目指していくのか。ランドコンピュータ 代表取締役社長の福島 嘉章氏(写真右)とインフリー 取締役の脇 和幸氏(写真中央)に、M&AクラウドのCEO 及川 厚博が聞きました。

プロフィール

福島 嘉章 株式会社ランドコンピュータ 代表取締役社長

1969年生まれ。三井東圧化学株式会社(現・三井化学株式会社)を経て、2014年にランドコンピュータへ入社し、執行役員営業本部長就任。同年6月に取締役営業本部長。2018年6月に代表取締役社長に就任。

脇 和幸 株式会社インフリー 取締役

1968年生まれ。短大卒業後フリーターを経てソフトウェア開発会社に就職。プログラマ、システムエンジニアとして経験を積み、1997年にフリーランスエンジニアとして独立。2001年にSAP事業を中心としたインフリーを創業、代表取締役に就任。2021年4月、同社がランドコンピュータの子会社となったのに伴って代表を退き、現在は取締役として引き続きインフリーの運営に携わる。

メンバーが「自律自走」できる環境を守る。ソフトランディングが業績好調の秘訣

ランドコンピュータ 福島社長
ランドコンピュータ 福島社長

及川 M&A後、徹底したPMIに取り組む会社もあれば、比較的緩やかな連携を図る会社もあります。ランドコンピュータさんは今回、どのように進められたのでしょうか。

福島 まさに後者の緩やかなタイプですね。というのも、われわれの業界は人がすべて。人に投資して、人が自律自走して、仕事を広げていくことで成り立っています。今回グループ会社になったインフリーさんも、脇さんというリーダーがいて、その脇さんに付いてやってきた方々がいる。ランドコンピュータとしては、インフリーの皆さんがそのまま自律自走し続けられる環境を用意することが、まずは大切だと考えてきました。

及川 2022年3月期の有価証券報告書を拝見すると、「子会社インフリーが展開するSAP案件について、当社の相乗効果による開発案件の受注が増加」とあります。5月の決算説明会でも、「成長戦略の柱であるパッケージベースSIサービスにおける子会社を取得したことによる効果で売上が大きく伸長した」とおっしゃっていましたね。

福島 少し先回りして言えば、現在の中期経営計画《VISION 2023》では、売上高100億円を目指す「Attack100」という目標を掲げているのですが、今期(2023年3月期)の連結売上高として107億円という予想が立っています。これもインフリーのグループインによる効果が大きいと考えています。

インフリーのグループイン前後で、当社のSAP部門の売上も倍増しました。インフリー単体でも20%ほど売上が伸びています。大型プロジェクトを受注できたことが大きいのですが、そこにはランドコンピュータの社員もアサインされており、リソース面でのシナジーを発揮できています。

脇 大型プロジェクトの発注元は、誰でも名前を知っているような超大手のお客様です。プロジェクトへの参画にあたっては、上場企業が親会社であることも、先方の安心感につながったようです。

及川 体制の上では、脇さんはグループイン後にインフリーの代表を退かれました。社員の皆さんからすれば内心不安もあったかと思いますが、そこをうまくクリアできた秘訣はありますか?

脇 当社は今、ランドコンピュータの執行役員でもあるSAP部門のトップを取締役に新たに迎えており、定期ミーティングなどで連携しています。一方で、現場は大きく変わっていません。これからも急な変化はないよ、と社員には折々に伝えています。

特に給与の面で安心感を持ってもらうことは重要ですね。居心地の良さ、仕事のしやすさも感じ続けてもらえるよう、コミュニケーションを大切にしています。SAPのスキルを持つエンジニアは、人材市場でも引く手あまたですから。

及川 ランドコンピュータさんにとっても、インフリーさんの社員が定着することは重要ですよね。

福島 その通りです。インフリーのメンバーは、当社とは育ってきた環境も、仕事の中身も、給与体系も違います。グループ会社としてどういった形にすれば最も効果が出せるのか、どんな環境があれば社員が一番成長できるのか、今後脇さんともじっくり議論したうえで、目指す姿に向かって、段階的に移行していくことが望ましいと考えています。一緒になったときの原点に立ち返りつつ、戦略を作り上げていきたいですね。

「会社がSAPに本気を出した」。ランドコンピュータ社員のモチベーションも大幅アップ

インフリー 脇取締役
インフリー 脇取締役

及川 現状で、社員同士の交流などはどの程度あるのでしょうか。

脇 今年4月にインフリーに入った新卒3人は、ランドコンピュータの新人と一緒にビジネスマナー研修を受けさせてもらいました。それ以降は、インフリーではすぐにSAPの教育を始め、ランドコンピュータではJavaなどの教育が始まるので別々になりますが、ビジネスマナー研修中に新人同士の交流なども生まれているようです。

福島 インフリーの皆さんにも、ランドコンピュータがどんな会社であるか、どういうメンバーがいるかといったことは当然知っておいていただきたい。人的なつながりは仕事上でも大事ですからね。今後、全社会議とか周年パーティーなど、全社的に人が集まれる機会を設けていく予定です。

バックオフィスの面でも、徐々にシナジーが生まれています。小さな例を挙げると、昨年、新型コロナのワクチン接種がなかなか進んでいなかった時期に、当社の系列の学校法人からアナウンスして、インフリーの皆さんにも合同で受けてもらいました。ランドコンピュータで巻き取れる部分はまだまだあると思うので、これからですね。

脇 あとは、採用面。求人の際には「ランドコンピュータのグループ会社」と積極的にうたっていますので、これから良い効果が出てくることを期待しています。

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及川 業務面の交流についてはいかがですか?

脇 今ちょうど、当社のプロジェクトにランドコンピュータの若手の方に参加してもらっています。8月からは新人の方も1名加わり、当社のプロジェクトでOJTを進めています。SAPに関しては当社には長年の経験やノウハウがありますから、ランドコンピュータのSAP部隊の方を迎え入れることで、グループ全体としてのスキルアップにつながるでしょう。こうした人材交流は今後も拡大していく想定です。

逆に、当社の社員で、SAPではなくJavaなどをやっているメンバーについては、ランドコンピュータの案件にアサインしてもらっています。当社内だけで仕事をしていたときよりも業務の幅が広がって、これもよいシナジーになっています。

福島 当社のSAP部隊は、これまでは決まったお客様からの定型の業務をメインにしていましたが、インフリーのグループインにより、コンサルやアドオンを含め幅広く対応できる体制が整いました。SAP部隊のメンバーも「会社が自分たちのやっているSAP分野に本気を出してくれた」と感じてくれている。これからどうやって業務を広げていきたいか、自主的に提案してくれるなど、いい形で成長してくれています。

あとは、SAPの資格試験についても、当社のメンバーはこれまでやや苦戦していたんです。それが今、インフリーが蓄積してきたSAP教育アセットや学習ノウハウを活用することで、資格取得者がかなり増えてきました。

脇 インフリー側でも昨年のグループイン後、「SAP PartnerEdge Service パートナー」の認定を受け、グループとしてSAP業務に取り組む体制が強化されています。

及川 それも大きいですね。脇さん個人としては、グループインによるメリットを感じた部分は何かありますか?

脇 大きな声では言いたくないんですが、安心して眠れるようになりました(笑)。20人程度の小さな会社ですから、例えばメンバーが辞めたり、何か事故が発生したりすると影響が大きい。場合によっては会社の存続に関わってきます。

今はグループとして親会社に支えてもらっているので、精神的にはとても安定しました。以前より、社員のフォローや今後のチャレンジに気持ちを向ける余裕も生まれています。

すでに2件目のM&Aも実行。インフリーとの成功体験を基に、業容拡大を加速していく

及川 いろいろなM&Aのケースを見ていると、例えば、売り手側はすぐにもシナジーを出したいのに、買い手側はのんびり構えているなど、お互いの認識がずれている例もあると感じます。その点、お二人はそろって長期的な視点を大切にされていますね。

福島 この1、2年での達成目標として、内部的な数値などはもちろん置いているものの、過度に近視眼的なことにとらわれたくはありません。中長期的に見てシナジーをマックスに持って行く、共にバリューを生み出していく、そして社員が幸せになる、そこに焦点を合わせたいと思っています。

これから高みを目指していくには、インフリーも今まで体験していない領域に進出していかなければなりません。課題も多く出てくるでしょうが、今後も対話を大切に、方針をすり合わせていきたいです。

及川 「インフリーも体験していない領域」と言いますと?

脇 一例を挙げると、現在、SAP自体が変わっていこうとしており、その変化にキャッチアップしていくには、Javaなどオープン系言語の知識が求められます。今当社にいるメンバーの多くは、オープン系には強くないので、以前なら外部に研修に出すなど多大な時間と費用がかかっていたでしょう。ここでランドコンピュータのリソースを活用させていただけるのは、本当に大きな意味があります。

及川 SAPを含む「パッケージベースSI事業」は、ランドコンピュータさんの中期経営計画の中でも今後の大きな成長分野に位置づけていらっしゃいます。その重要性について、改めてお聞かせください。

福島 パッケージというのは、いわば既製服です。それを、お客様が着やすいようにカスタマイズする。最小限のシステムを、抑えたコストでスピード感をもって提供していくというのが「パッケージベースSI」の考え方です。

われわれの業界では、今や自社だけで新しい領域を開拓することは難しい。市場が求めるものをスピード感をもって提供するチャンスを逃さないためには、M&Aが大きな武器になります。人材と技術をお金で買うことによって、一挙に高いステージに上がることができる。新しい文化や考え方・技術を持ったメンバーが一緒になることで、大きなシナジーが生まれる可能性に期待しています。

及川 すでにこの4月にも新たなM&Aを実施されましたね。

福島 会計パッケージに強みを持つ株式会社NESCO SUPER SOLUTIONを子会社化しました。同社との契約に至る過程では、インフリーのM&Aの経験が役立っています。どういう条件をチェックしていけばよいか。お互いの成長のために、事前にどういうすり合わせが必要か。グループイン後のステップについても、早め早めに考えることができました。

パッケージベースSI事業の強化に向けて、当社は今後もM&Aには積極的に取り組んでいきます。その意味でも、インフリーさんと一緒に最初の成功例を作れたことは大きかったと考えています。

及川 最後にお二人から、今後の抱負を一言ずつお願いいたします。

脇 当社はこれまで、技術的な部分以外の人の教育、特にマネジメント教育には手が回っていない面がありました。そのための環境や条件が、社員教育制度の充実したランドコンピュータグループに加わることによって整ってきたので、今後はミドルマネージャーの育成にも注力していきます。

また、ランドコンピュータさんとの人材交流により、従来の当社の規模では難しかった大手のお客様や大きな仕事にも、向かっていけるようになりました。今後は新しい分野も含めて、積極的にチャレンジしていきたいですね。

福島 オープン系に強い当社のメンバーとSAPのコンサルやアドオン開発で豊富な経験を持つインフリーのメンバーが組むことで、お客様に対して「面」で立ち向かうことができる。そんな効果にも期待しています。

M&Aというのは、いわば結婚です。お互いの合意の上で一緒になった以上は、最後まで添い遂げたい。インフリーの社員に「一緒になって良かった」と感じてもらえるようなランドコンピュータであり続けなければ、と思っています。

及川 お二人なら、これからも末永く息の合った関係を続けて成長していかれることと思います。本日はとても良いお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。

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