【サイバーリンクス×LasTrust】ファーストプロダクトの事業譲渡を検討していたスタートアップと、新事業の「最後のピース」を求めていた老舗IT企業が見込んだシナジーとは

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【サイバーリンクス×LasTrust】ファーストプロダクトの事業譲渡を検討していたスタートアップと、新事業の「最後のピース」を求めていた老舗IT企業が見込んだシナジーとは

クラウド型の小売基幹系システム『@rms(アームズ)』シリーズで業界トップの導入実績を誇る株式会社サイバーリンクスは2022年1月、Web3領域に特化したサービスを展開するLasTrust株式会社から、ブロックチェーン技術を利用した証明書発行サービス『CloudCerts』を取得し、トラスト事業の一環として提供を開始したと発表しました。

『M&Aクラウド』を介してつながり、スピーディーに成約につながった経緯や、今後の事業展開に向けた想いについて、株式会社サイバーリンクス 執行役員CIO兼CTOの水間 乙允氏(写真左)とLasTrust株式会社 代表取締役の圷 健太氏(写真右)に語っていただきました。

プロフィール

水間 乙允(みずま・いつのぶ)

サンノゼ州立大学に留学。和歌山県初のインターネットプロバイダー立ち上げ。サイバーリンクス入社後、データセンター構築や主要サービスなどの開発部長、新規ビジネスの立ち上げを経て現在、執行役員CIO兼CTO。

圷 健太(あくつ・けんた)

多摩美術大学を卒業後、20代中盤で動画マーケティングの事業会社を海外(タイ)で起業。その後、2019年2月に経産省主催「ブロックチェーンハッカソン 2019」において、コンピュータ・ソフトウェア協会賞、副賞をW受賞する。2019年8月に LasTrust 株式会社を創業。

買い手候補は40社~50社。親和性の高い豊富な選択肢から譲渡先を検討

LasTrust株式会社 代表取締役 圷氏
LasTrust株式会社 代表取締役 圷氏

――LasTrustはどのような事業を展開しているのでしょうか。
 
圷 当社は2019年8月に創業したブロックチェーンスタートアップです。現在までに2つのプロダクトをローンチしています。

1つ目はブロックチェーン技術を利用した証明書発行サービス『CloudCerts』。2つ目はブロックチェーン技術を利用したサービス「DApp」を簡単に開発できるツール『Bunzz』です。

今回のディールでは、ファーストプロダクトである『CloudCerts』を事業譲渡させていただきました。

――『M&Aクラウド』を利用したきっかけを教えてください。

圷 当時、『CloudCerts』の事業譲渡について、いくつかのM&A仲介会社にお声がけしていました。ただ、ブロックチェーン証明書を発行するサービスが珍しかったことも影響したのか、買い手がつくかどうかが不透明な状況だったんです。

さまざまなエージェントと話を進めていくなかで、より“面”でアプローチできるサービスがないかと調べていたときに『M&Aクラウド』を見つけました。

――今回、『M&Aクラウド』のサービスを使った印象はいかがでしたか?

圷 まずサービスのUIが非常に使いやすいという印象でした。『M&Aクラウド』に登録した後も、カスタマーサクセスの方がすぐに電話してくれて。親和性の高そうな企業を40社〜50社ほどリストアップしていただきました。当社の事業をしっかりと理解したうえで、スピード感を持って対応してくれたのが非常に好印象でした。

1964年創業の老舗IT企業。新事業の一環で『CloudCerts』に注目

株式会社サイバーリンクス 執行役員CIO兼CTO 水間氏
株式会社サイバーリンクス 執行役員CIO兼CTO 水間氏

――サイバーリンクスの事業内容をご紹介ください。

水間 弊社は1964年に和歌山県で設立し、1982年からシステム開発事業をスタートさせました。現在は大きく分けて4つの事業を展開しています。

1つ目は流通クラウド事業です。流通食品小売業界向けのクラウドサービス『@rms(アームズ)』シリーズは、クラウド型の小売基幹系システムとして業界トップ導入実績を誇ります。

2つ目は官公庁クラウド事業です。大手ソリューションベンダーの代理店として、防災無線システムの施工・保守、行政情報システムの導入・保守・運用などを手がけており、和歌山県内の地域防災システムにおいてはトップシェアを獲得しています。

3つ目はモバイルネットワーク事業です。NTTドコモの二次代理店として和歌山県下でドコモショップ7店舗を運営しています。

4つ目はトラスト事業です。2021年に立ち上げたばかりの新事業で、電子契約などにおいてデータの改ざんや送信元のなりすましを防止する機能を提供する『トラストサービス』を展開しています。今回取得した『CloudCerts』は、トラスト事業の一環として提供を開始しています。

――『M&Aクラウド』の印象はいかがでしたでしょうか?

水間 私が実際に導入を決めたわけではないので、詳細にお話しすることはできませんが、本ディールも含めた印象としては大変便利なサービスだと感じています。

当社としてはスピード感のある事業拡大を目指しているので、クラウド上でのマッチングという観点でも、ニーズにマッチしたサービスだと思います。

新事業の「最後のピース」に必要だったブロックチェーン技術

――最初の面談で圷さんはどのような印象を持ちましたか?

圷 当社としてはブロックチェーンに関するナレッジをどれくらい持っているのか、という部分を見させてもらっていました。その点、水間さんはブロックチェーンに関しても非常に詳しく、しっかり事業を運用していただけそうだなという印象でした。お話しを進めるなかで、いくつか鋭い質問をいただくなど、それが私にとっての安心感にもつながったと思います。

また、サイバーリンクス社は上場企業ということもあり、クラウドサービスの実績も豊富で組織体制がしっかりしている印象を抱きました。『CloudCerts』とのシナジーも十分に見込めそうだなと。

――水間さんは面談時の印象はいかがでしたか?

水間 初めてオンラインで面談した時の印象ですが、圷さんは理路整然とした話し方をされる方で非常に信頼できる方だなという印象を受けました。

短い時間のなか、すべての内容を網羅する話をしてくれたおかげで、LasTrustさんの事業に対する考え方が最初の段階で掴めたのが非常に好印象でした。

――成約の決め手となった部分はどこでしたか?

圷 成約の決め手となった点は主に2つあります。1つ目は技術力がある会社だということ。多くのサービスを手がけているサイバーリンクスさんは高い技術力があり、しっかりと『CloudCerts』を運用し、当社のお客様を引き継いでいただけると感じました。

2つ目はサイバーリンクス社にとってブロックチェーンが非常に重要な要素技術になると確認できたことです。そのうえで、『CloudCerts』が価値のあるものになると確信できました。

水間 会社として売上を伸ばしていくためには、どれだけシナジー効果のある商材を持てるかがポイントになります。

そういう意味で『CloudCerts』というプロダクトは、当社としてシナジー効果がとても期待できるサービスだったんです。特に、2021年から新規事業としてスタートしたトラスト事業にとって、いわば「我々が得なければならない最後のピース」だと感じたことが、成約の決め手になったのかもしれませんね。

売り手が大切に育ててきたサービスを、世の中に広めていくことが買い手の使命

――今回のディールを振り返っていかがでしたか?

圷 両社にとって良いディールになったのではないかと思っています。また、ディールが成立するまでに、多くのステークホルダーに助けていただいたことで、このような結果を得られました

また、『M&Aクラウド』が持っているデータベースの豊富さも決め手の一つになったと感じています。

――大変嬉しいお言葉、ありがとうございます。事業譲渡の契約締結後、今現在はどういったフェーズですか?

圷 現在のフェーズとしては、サイバーリンクスさんに対して『CloudCerts』の引き継ぎを行っているところです。

――水間さんはいかがですか?

水間 時代だと思うのですが、それなりの金額が動く取引がクラウド上だけで完結してしまうんだなという驚きが少しありましたね。圷さんとはオフラインで一度会っていますが、それ以外のミーティングはすべてオンラインだったので。

――改めまして、今後の展望について教えてください。

圷 2ndプロダクトである『Bunzz』に注力していきます。『Bunzz』はブロックチェーンを利用したアプリケーションの開発ツールで、昨今話題のNFT関連サービスやDeFiサービスなどの開発コストを大幅に削減できるサービスです。日本だけにとどまらず、グローバルに事業を展開していく予定です。

水間 今後の展望として、まずはしっかりと引き継ぎを完了させたうえで、LasTrustさんが大切に育ててきた『CloudCerts』をどんどん世の中に広げていこうと考えています。具体的には、我々の持っているリソースを活用して、シナジー効果を発揮させながら『CloudCerts』の技術を活かしていきます。

そして、将来的にLasTrustさんが「『CloudCerts』はうちが開発したんだよ」と誇りを持てるように頑張っていきます。

――M&Aを検討している企業に向けてアドバイスをお願いします。

圷 事業譲渡を検討した際、売れるかどうか全くわからない状態でスタートしました。なので、実際にやってみないとわからないというのが正直なところかなと思います。そういった点では、「恐れずに進む」ことが重要ではないかと。

スタートアップ界隈では事業のピボットが多くある一方で、事業譲渡という打ち手は一般的でない印象です。ディールが成功すれば次のプロダクト開発の資金調達にもなるので、もっと増えてもいいのではないかと思っています。

スタートアップにとってはスケールできないプロダクトだったとしても、今回のようにある会社にとってはキーになる技術であったり、最後のピースの部分になったりする可能性があります。ぜひ、一つの選択肢として検討してみてはいかがでしょうか。

水間 『M&Aクラウド』のようなサービスを積極的に活用することで、自分たちが探している技術や知見を持っている会社と出会えるチャンスがあります。

通常、大企業がM&Aをする場合にはある程度、フィルタリングされた状態で企業を紹介されるケースが多いです。しかし、大企業であっても今の時代に求められているのはスピードです。幅広い思考を持って、自分たちにないものはないと素直に認めることが重要だと感じています。

『M&Aクラウド』では余計なフィルターをかけずに色んな企業を見ることができますし、多くの企業と接点を持つことができます。あまり躊躇せずに、まずは積極的にチャレンジしてみてください。

――水間さん、圷さん、本日はありがとうございました。



■本ディールの経緯
2021年7月29日 LasTrustが『M&Aクラウド』に登録
2021年7月30日 サイバーリンクスが『M&Aクラウド』で募集開始
2021年8月23日 初回面談(WEB)
2021年10月7日 2回目面談(リアル/トップ面談)
2021年10月25日 3回目面談(WEB)
2021年11月19日 4回目面談(WEB)
2021年11月29日 契約締結




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本ページに掲載している情報には、M&Aが成立するに至る経緯に加え、インタビュー時点での将来展望に関する記述が含まれています。こうした記述は、リスクや不確実性を内包するものであり、環境の変化などにより実際の結果と異なる可能性があることにご留意ください。

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