【viviON×GENSEKI】若き社長が選択した事業を伸ばす“最適解”。同人コンテンツ業界の雄とパートナーを組み、クリエイターにさらなる価値を提供へ。

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【viviON×GENSEKI】若き社長が選択した事業を伸ばす“最適解”。同人コンテンツ業界の雄とパートナーを組み、クリエイターにさらなる価値を提供へ。

「ユーザーとクリエイターが楽しみながら、幸せに生きていける社会にする」をパーパスに掲げ、これまでユーザーとクリエイターの双方の視点に立ち、販売プラットフォームサービス事業やコンテンツ制作・販売事業などを展開している株式会社viviON。同社は2021年12月1日、株式会社GENSEKIが運営するクリエイター応援プラットフォームサービス「GENSEKI」を譲り受ける事業譲渡契約を締結しました。これまでクリエイター支援に力を入れてきた両社がどのような背景で手を組み、何を目指しているのか、株式会社viviON 代表取締役社長の明石 耕作氏(写真中央)、同 経営戦略部・ゼネラルマネージャーの生原 優介氏(写真左)、同 経営戦略部・GENSEKIチームリーダーの青木 峻一氏(写真右)に語っていただきました。

プロフィール

明石 耕作(あかし・こうさく)

大学を中退して美容師になり、その後IT業界へ転じた異色の経歴を持つ。美容院勤務中、インターネットに夢中になり、WEBサイトを運営。趣味が高じて、美容師からIT業界へ。株式会社ライブドアの前身企業で頭角を現し、分社化と同時に独立する。その後、運営会社は株式会社ゲオへ買収される。異動を経て、2014年4月に株式会社エイシス(現 株式会社viviON)の代表取締役に就任。

生原 優介(はいばら・ゆうすけ)

大学卒業後、ソフトバンクモバイル株式会社(現 ソフトバンク株式会社)に入社し、法人事業に従事。その後、ゲーム系ベンチャー企業にてグループ会社の代表取締役や新規事業の責任者を歴任。上場準備や事業立ち上げなどビジネス開発を中心に担当。2019年に株式会社エイシス(現 株式会社viviON)に入社。現在は、ゼネラルマネージャーとして新規事業や新規コンテンツ開発を管轄。

青木 峻一(あおき・しゅんいち)

大学在学時に数社でインターンを経験し内定を獲得。企業の中で職務をこなしていくやり方に納得できず、卒業後WEBデザイナーで独立。生活のためにアルバイトを掛け持ちしながら、着実に制作スキルを身につけ、2017年に株式会社Limentsを共同創業し、WEB制作事業の統括を牽引。その後、2019年4月に株式会社GENSEKIを設立。

事業を伸ばすうえでの“スキーム”にこだわりはなかった

株式会社viviON 経営戦略部・GENSEKIチームリーダー 青木氏
株式会社viviON 経営戦略部・GENSEKIチームリーダー 青木氏

――青木さんは若くしてクリエイター応援プラットフォームサービス「GENSEKI」のサービスを立ち上げられましたよね。

青木 当社は2019年4月にWEB制作会社からスタートして、1年目はクライアントの新規事業を丸ごと請け負うなど、マーケティングから開発まで一気通貫したサービスを提供していました。

2年目はちょうどコロナ禍に突入したタイミングで、得意先の予算などがかなり縮小された背景もあり、このタイミングで新規事業に挑戦してみよう、と。その一つがクリエイターと企業をつなぐプラットフォームである「GENSEKI」でした。

――「GENSEKI」ではどのようなサービスを提供されてるんですか?

「GENSEKI」はクリエイターが作品を登録・公開することで仕事の依頼を受けることができ、またクリエイターを探している人は直接仕事のオファーができるサービスです。

具体的にはクリエイターのなかでも、現在はイラストレーターに特化しています。仕事を依頼したい企業が登録しているクリエイターに、コンペという形で作品やアイデアを募集したりしています。それぞれ登録料や仲介手数料は一切かかりません。

――ありがとうございます。「M&Aクラウド」に登録いただいた背景を教えてください。

青木 イリテク株式会社の入江さんをツイッターでフォローしていたので、元々「M&Aクラウド」のことは知っていました。先ほども挙がりましたが、2年目のタイミングで「GENSEKI」を含めた新規事業を立ち上げていたこともあり、とにかく運転資金の確保が必要で「M&Aクラウド」だったら解決するのではないかと。

最初はVCからの資金調達を検討していたのですが、なかなか想定通りにいかず、私自身、M&Aという手段もあるなと思っていたので、事業を伸ばすうえでの最適解がここなら見つかるかなと思って登録しました。

※補足※
2020年10月、「M&Aクラウド」を通じて、オンラインサービス「Lancers」を展開するランサーズ株式会社がオンラインメンターサービス「MENTA」を運営するイリテク株式会社を子会社化しました。
成約インタビュー:https://macloud.jp/interviews/23

国内最大級のプラットフォームサービスを軸に事業拡大中

株式会社viviON 代表取締役社長 明石氏
株式会社viviON 代表取締役社長 明石氏

――viviONさんの事業内容をご紹介ください。

明石 当社はエンタメ領域で複数事業を展開する企業です。グループ企業である株式会社エイシスは1996年のサービス開始と同時に、業界初の同人コンテンツのダウンロード販売サイトを開設し、以後クリエイターとユーザーの双方にサービスを提供してきました。

近年、グループ会社や新規事業が増加していて、コンテンツ制作、出版、流通やそれに伴うマーケティング業務など、グループ会社間の連携強化が急務だったんです。それで2021年12月に株式会社viviONという新会社を設立し、エイシスの事業を吸収分割契約により継承しました。それに伴って、株式会社エイシス、株式会社forcs、株式会社zowieQ、株式会社トライシスを子会社化しています。

――貴社ならではの強みなどがありましたらお聞かせください。

明石 一番の大きな特徴はユーザー層だと思います。当社は同人系コンテンツをWEB上で提供する事業のパイオニアであり、いわゆる「オタク」と言われるコアなユーザーに支持してもらっているのは大きな強みですね。

同人作品、ゲーム、コミックを販売している国内最大級の二次元総合ダウンロード販売サイト「DLsite(ディーエルサイト)」の会員数は700万人を突破し、月間PV数は3.8億を誇ります。44万を超えるコンテンツをWEB上で販売しており、二次元総合ダウンロード販売サイトとしては国内最大級です。

――提供できるモノ、コトを含め、M&A検討時に大切にしていることは何ですか?

生原 そうですね。M&A自体、過去の例も含めてですけど、基本的に自社のアセットで伸ばせる、ないしはそのサービスで自社が伸びるような形を想定しています。

明石 結局事業を成功させるのは当事者の熱意だと思っています。今回の件でいうと、青木さん自身の熱意というか、この事業を伸ばしていく覚悟があった、そういった熱意を持ったままジョインしてもらっているので、そこはすごく大きかったと思っています。単純に「事業譲渡します、後はお願いします」だったら、きっと買わなかったと思います。

――人材の獲得にも近いですね。

生原 そうですね。そのポイントもすごく大きいと思います。

「まだ早くないか?」成約までに秘められた葛藤の日々

株式会社viviON 経営戦略部・ゼネラルマネージャー 生原氏
株式会社viviON 経営戦略部・ゼネラルマネージャー 生原氏

――青木さんからの打診を受け、面談を行ったのが2021年8月ですね。その時はWEBで面談を?

生原 そうですね。当社からは最初の面談から代表の明石と、私で対応させていただきました。

――viviONさんのお二人は、青木さんに対する印象はいかがでしたか?

明石 第一印象はとても誠実な方だなと思いましたね。サービスについても、すごく熱意を持ってお話しされていて感心しました。

生原 事前の準備をしっかりされていたようで、説明がとても分かりやすかったですね。

――クリエイターのマッチングプラットフォームというサービスに対する印象はいかがでしたか?

生原 そもそも自社で同じようなサービスを作ろうとしてたんですよ。クリエイター支援の一環でポートフォリオが登録でき、ビジネスマッチングにつながるようなサービスをワイヤーフレームくらいまで作成していました。その時に打診をいただいたので、「ぴったりだな」みたいな感じですよね。「これ、なんか作りたいやつだ」みたいな(笑)。

――そうなんですね。青木さんは面談時の印象はいかがでしたか?

青木 M&Aの面談は、viviONさんが初めてだったんですが、お二人の人柄が魅力的でした。生原さんが、すごい相槌を打ってくださるので話しやすかったですね。

また、1回目の面談の時、明石さんに「クリエイターを幸せにしたその先の世界は、どうなりますか?」みたいな、すごい抽象度の高い質問をさせていただいて。ユーザーやコンテンツに対しての愛情とか、そういったものをすごく感じた時間だった気がします。

――「クリエイターさんを幸せにした先の世界」の質問に対する答えはどういった内容だったんですか?

明石 記憶では、当社サービスのユーザーやクリエイターは熱量がすごく高いんだ、と。作品に対する愛がすごく強いので、それを掛け合わせて面白いことをしたいんだという話をした気がします。

――ありがとうございます。1回目の面談を終えたあとのタイミングで「これはぜひ」という気持ちでしたか?

生原 サービスについては実際にやろうとしていたことなので、もちろんポジティブでしたが、青木さんの「クリエイターの才能が埋もれない社会を目指す」というビジョンが、当社が掲げている「ユーザーとクリエイターが楽しみながら、幸せに生きていける社会にする」というパーパスに近かったことも大きかったです。私たちは長いことクリエイターと一緒に成長してきた会社なので、常日頃からそういった目線で物事を考えているので。

――それでは2回目の面談を経て、お話がまとまった形だったんですか?

明石 いえ、2回目の時に、青木さんがどうしようか悩まれていて。

青木 実は1回目の面談時に明石さんから「まだ早くないか?」という声をいただきました。

――現在のタイミングで事業譲渡を決めるのは早くないかという趣旨ですか?

明石 やっぱり株主が変わったり、オーナーが変わったりするのはいろいろな葛藤があると思うので。私は起業する人を応援したい思いが強く、いろいろなケースを見てきてるなかで、青木さんの場合、今が決断のタイミングなのかなという点は気になりましたね。運転資金的にはたぶん厳しい状況だったとは思うんですけど、ちょっとずつ会員も増えていって、サービスとしてグロースするかもみたいなタイミングだったと思うんです。

青木 僕自身も、この事業に対してすべてを賭けて歩んでいたので。その言葉がずっと僕のなかに刺さっていたというか、そのなかで葛藤がありました。

――そういった悩みや葛藤を経て、最終的にジョインすることになった決め手はなんだったんですか?

青木 一番は「GENSEKI」のユーザーに報いたいという思いです。そもそもユーザーの課題起点で始めたサービスですが、当時の体制ではユーザーが満足できる価値提供を実現できないと思いました。数年やり遂げて、やっと価値を返せるというか、サービス自体がユーザーに必要不可欠なものになれると信じていたので。

資金という現実的な問題で続けられなくなるのは悲しいですし、何よりもユーザーとしては「何のためのサービスだったんだ」という話になると思ったので、まずは事業への思いが大きかったですね。

2つ目は社員が3名いたんですけど、当時の体制のまま続けていくのはみんなの人生にとってどうなんだろうという思いもありました。メンバーも結婚して家庭があったので、私だけの意思で大きなリスクを背負わせるわけにはいかないなと。

――社員の方は、このお話を聞いた時にどういった反応を?

青木 元々、メンバー3名のうち2名が「DLsite」のユーザーだったんです。元々viviONさんを知っていましたし、「DLsite」のファンだったので、めちゃくちゃ喜んでくれましたね。

GENSEKI発の魅力的なクリエイターを輩出するサービスへ

――GENSEKIさんは今後、どういった形でジョインされる予定ですか?

生原 「GENSEKI」というサービス名は変えず、青木さんにはプロダクトのリーダーとして進めてもらいます。サービスをより成長させていくうえでの新たな人員もそうですし、マーケティング面でも最大限サポートをしていく予定です。

あとは当社でつながりのあるクリエイターがたくさんいるので、そういった方への紹介や「GENSEKI」への登録を促すアプローチもやっていきたいと思っています。

――2021年10月に契約締結されて、すでに青木さんを含むGENSEKIさんのメンバーはviviONさんのオフィスに通われているということですが直近の動きがあれば教えてください。

青木 現在動いているのはコンペ企画ですね。

生原 当社はプラットフォームの運営のほか、自社でコンテンツも作っています。そこで、たとえば音声作品のジャケットを募集します、とか。自社で作るコンテンツに対して、クリエイティブのコンペを実施するなどして、シナジーを出していこうと思っています。

――今後の連携に向けて、具体的な目標などがあればお話しください。

青木 現状は1,300~1,500ユーザーに登録いただいているのですが、来期1年間で10万ユーザーを目指しています。それで月間PV数も100万PVにいくような、クリエイターから愛される場所にしていきたいですね。

生原 「GENSEKI」の性質的に登録者数=クリエイター数なので、ある程度増えてくれば、この先の展望も見えてくるはずです。「『GENSEKI』に登録したら、すぐに仕事のオファーが来た」みたいな、そういう世界観を作っていきたいなと思います。

青木 そういう意味では、数多くの登録者を抱えているプラットフォームサービスを25年間提供されているviviONさんの知見は、僕らにとってすごく強みになります。また、業界大手だからこその予算を使わせていただき、新たな戦い方として有名なクリエイターをアンバサダーに迎えたりする構想も描いています。

あとは専業のクリエイターが本来受けたい仕事というのは、面白そうな大手企業案件だったり、有名クリエイターのグッズ制作だったりします。そういった仕事を手がけられる機会が現状少ないので、継続的に大きな仕事をつなげられる環境を作りたいです。最終的には「GENSEKI」からクリエイターの名前が売れていく、みたいな。それこそが、GENSEKI創業以来の目標であり、viviONさんの掲げるパーパスにもつながるものだと信じています。

生原 「GENSEKI発の」みたいなね、そういうクリエイターを出したいですよね。

明石 現在はクリエイターが仕事をもらう、企業側が発注する時に課題がたくさんあります。たとえば発注側から見ると、良いクリエイターがいたとしても、どうやってその人に仕事をお願いすれば良いのか分からないことが多いんです。「pixiv(ピクシブ)」などで良さそうなクリエイターさんを探して、そこから「Twitter」に飛んでDMを送っても返事がこなかったりコミュニケーションがうまくいかなかったりします。そういったところに改善の余地があると考えています。

逆にクリエイター側から見ても、実力はあるけどあまりコミュニケーションが得意じゃないとか、自分の売り込み方が分からないパターンも数多くあります。

適正な価格で、適正なクリエイティブを求めている人たちはたくさんいるのに、そのニーズをうまくクリエイターにつなげる仕組みがないのが現状です。発注者側もクリエイター側も、最終的に全員がハッピーになれるサービスを提供していきたいです。

――そういった仕事を発注する側と、仕事を請け負う側の課題感は同じようなクリエイティブ系の職種にも当てはまりそうですね。

生原 今はユーザー数の拡大に向けて、当社が強みを持つイラストレーターにフォーカスしていますが、今後はさまざまなクリエイターにも登録してもらって、ジャンルを増やしていくこともやっていきたいですね。「DLsite」を見ると、声優さんやシナリオライターさんなど、同じような問題を抱えているクリエイティブ系の職種が多く、イラストレーション以外のところでも確実に同じような課題感があると思っています。

そういったところを是正できると、好きなことでクリエイターが生活できるようになりますし、私たちとしても理想の世界が創れるのではないかと思っています。

――それでは最後に青木さんの意気込みをお聞かせください。

青木 まだまだジョインして日も浅いので、細かい戦略を組み立てているさなかですが、viviONさんとともに世の中に影響を与えられるサービスを提供していきます。

――明石さん、生原さん、青木さん、本日はありがとうございました。


■本ディールの経緯
2018年12月3日  viviON(前身:エイシス)が「M&Aクラウド」で募集開始
2021年7月29日  GENSEKIが「M&Aクラウド」に登録
2021年8月11日  GENSEKIからviviONに打診
2020年8月16日  初回面談(WEB)
2021年9月2日  2回目面談(リアル)
2021年9月17日  3回目面談(リアル)
2021年10月15日 契約締結


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本ページに掲載している情報には、M&Aが成立するに至る経緯に加え、インタビュー時点での将来展望に関する記述が含まれています。こうした記述は、リスクや不確実性を内包するものであり、環境の変化などにより実際の結果と異なる可能性があることにご留意ください。

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