直接連絡でタイムロスを抑えたスピード成約!コロナ禍を乗り越える、スポーツ業界のM&Aとは?

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直接連絡でタイムロスを抑えたスピード成約!コロナ禍を乗り越える、スポーツ業界のM&Aとは?

バレーボール大会の企画・運営などを行う一般社団法人スポーツパークは2022年5月、M&Aクラウドを通じて、水泳の個人指導事業を展開するスイスイクラブを買収しました。

スイスイクラブ以外にも次々とスポーツ事業の買収を実施し、業容拡大を続けるスポーツパーク。同法人の事業内容やM&A戦略について、代表理事の杉山 隆仁氏、常務理事の金沢 史恵氏にお話を聞きました。

プロフィール

一般社団法人スポーツパーク:杉山 隆仁(すぎやま・たかひと)

1984年生まれ、徳島県鳴門市出身。京都大学卒業後、京都大学大学院に進学、在学中に公認会計士試験に合格し、監査法人に就職。採用コンサル会社、上場会社の監査部門責任者を経て、2015年に生涯スポーツの普及を目指した団体”スポーツパーク”を立ち上げる。2017年、同団体を一般社団法人として法人化。現在、代表理事を務める。

一般社団法人スポーツパーク:金沢 史恵(かなざわ・ふみえ)

1985年生まれ、京都府京都市出身。静岡大学生涯スポーツ課程を卒業後、体育の教員を経て、社会福祉施設の事務職に従事。元々はスポーツパーク主催イベントの参加者だったが、2017年より運営スタッフとして参画し、法人設立メンバー。現在、常務理事を務める。

スポーツパークが一般社団法人として事業に取り組む理由

一般社団法人スポーツパーク 代表理事:杉山 隆仁
一般社団法人スポーツパーク 代表理事:杉山 隆仁

――まずはスポーツパークの設立の経緯からご説明いただけますでしょうか。

杉山:私は監査法人や一般企業で勤めるかたわら、休日は友だちとフットサルを楽しんでいました。本当は毎週土日にスポーツをやりたいくらいだったのですが、友だちを毎回集めるのは難しい。そこでインターネットの掲示板で仲間を募ったのです。

体育館を借りて、バドミントンやバレーボールなど、いろいろなスポーツを楽しむようになりました。当初は体育館でちょっと遊ぶだけだったのが、口コミでどんどん参加者が増えて、数チームでの大会も開催できるようになりました。

そうこうしているうちにバレーボール大会を毎月開催できるようになり、地元の京都だけでなく、近県からも人が集まって規模が大きくなっていきました。その反面、運営の負担が増して運営スタッフが減っていき、ボランティア運営の限界を感じるようになってきたんです。

金沢:私はもともと参加者だったのですが、途中から運営の手伝いをするようになりました。睡眠時間を削って運営スケジュールを作るなど、しんどい時期がありましたね。

杉山:大変すぎて辞めようかとも思ったのですが、せっかくたくさんの人が集まってくいるし、「続けてほしい」という声もあったので、法人化してアルバイトを雇い、組織的に運営することにしました。2017年に一般社団法人スポーツパークを設立し、私は会社を辞めてスポーツパークの運営に専念することにしました。

当初は死ぬほど大変でした(笑)。収益も少なかったので、アルバイト代は払えるけれど、自分たちの給料は払えませんでした。でも右肩上がりで事業が大きくなり、現在は社員も抱えるようになり、役員の給料もきちんと払えるようになっています。

――現在の事業内容は?

杉山:バレーボール大会の企画・運営が中心です。関西だけでなく関東、中部、九州で、毎週土日や祝日に開催しています。大会といっても、ユニフォームを揃えなくても参加できるような、エンジョイ系のゆるい大会です。1カ所の大会に10チーム前後が集まり、その参加費が収益の柱となっています。

実は、純粋にスポーツを楽しむことを目的にした大会って多くないんです。私は、経験者だけで本気でスポーツに取り組む大会だけでなく、初心者も一緒にスポーツに触れられる大会があってもいいんじゃないかと思うんですよね。それが結果的に他の大会との差別化につながっています。

――会社組織ではなく一般社団法人にした理由は?

杉山:地域スポーツ界に貢献するためには、非営利組織が合っていると思ったからです。株式会社などの営利組織の場合、権限の強い社長に利益の大半を配当することもできますが、一般社団法人では利益の配当はできません。そのため、経営者が法人を私物化しにくいと考えました。

金沢:体育館を借りたい時に、民間企業では断られたり料金が高額になったりすることもありますが、一般社団法人のような非営利組織なら安く借りられます。大会の開催を考えると一般社団法人が最適という事情もありました。

コロナ禍で大会運営できず、売上ゼロに。事業の多角化を図り、3件のM&Aを実現

――M&Aに取り組んだきっかけは何だったのでしょうか?

杉山:コロナ禍が大きなきっかけです。緊急事態宣言が発令された当時、公共施設が全部利用できなくなり、バレーボール大会の運営もできなくなりました。売上が一時期0円になったんです。非常に大きな危機感を覚えました。

そこでリスク分散のために、スポーツを軸にしつつ別事業も展開しようと考えました。当初は新規事業を立ち上げることも模索したのですが、うまくいかなかったり時間がかかったり。そんな時にM&Aという手段があると気づき、マッチングサイト等で探すようになったんです。

そして、2022年4月に愛知のスポーツ用品販売店を買収。これは正確には私が代表を務める株式会社ユナイテッドスポーツでの買収です。また、ほぼ時期を同じくして愛知県でかけっこ教室を7教室ほど運営する「フューチャーキッズ」を買収し、こちらはスポーツパークの子会社として運営しています。

――立て続けに2事業も買収したんですね。M&Aクラウドでスイスイクラブを知ったのはいつ頃ですか?

杉山:2021年秋頃にM&Aクラウドのことを知り、定期的に売り案件を検索するようにしていました。そこでスイスイクラブを見つけたのですが、売り手登録された時期が2年くらい前だったので、連絡するのを躊躇していました。他のマッチングサイトでも、同じように古い案件にオファーを出して、返事がないケースが続いていたからです。

でも、ダメもとだと思いながら2022年2月下旬にM&Aに登録し、打診をしました。するとすぐ返事があり、3月初めに代表の門垣さんと面談することになったんです。

売り手への直接連絡でタイムロスを抑え、約2ヶ月でスピード成約

一般社団法人スポーツパーク 常任理事:金沢 史恵
一般社団法人スポーツパーク 常任理事:金沢 史恵

――スイスイクラブはマンツーマンでの水泳レッスン事業を展開している団体ですね。

杉山:はい。区営や市営のプールを利用して、コーチがそこに出張して教えています。コーチの質の高いレッスンが評判で、幼稚園児から大人まで幅広い利用者を集めています。利用者からいただくレッスン料の中から、業務委託のコーチへ報酬を支払う仕組みなので、人件費によるマイナスが発生しないというビジネスモデルになっています。

――スイスイクラブの代表と最初に面談した時はどのような感触でしたか?

杉山:実はオファーした段階では、買収すると決めていた訳ではなかったんです。ちょうどその頃、先に挙げた2件の買収も決まっていたので、マンパワー的にもいっぱいいっぱいでしたし、私たちの拠点が京都なのに、東京のスイスイクラブを運営していけるのかという点も心配でした。

ただ、面談でお話を聞くうちに、スイスイクラブはすごく優れたビジネスモデルであることがわかりましたし、水泳が苦手な方でも楽しめるようになる事業ビジョンが「スポーツをもっと身近に」という当法人のミッションに合致しているように感じました。何よりも代表の門垣さんのお人柄が良かった。そのお人柄が事業にもにじみ出ていて……。初めて会ったのに意気投合して4時間も話していましたね。

――4時間はすごいですね。面談後、すぐに買収の決断をされたんですか?

杉山:いいえ、そこは少し悩みました。私一人で決められる規模の案件でもないので、金沢にも何度かプレゼンしました。

金沢:私自身は、すでに2件のM&Aが決まっていたのに、さすがにもう1件は無理かなと思っていました(笑)。ただ、ビジネスモデルを詳しく聞いたらすごく面白そうで。利用者への水泳指導は、信頼できるコーチ陣に任せられますし、私たちが裏方に徹して事業運営に注力できる点も魅力的だと感じ、買収に賛成することにしました。

――そこからはトントン拍子で進んだのでしょうか?

杉山:私は前のめりだったのですが、門垣さんは少し悩まれていたのではないでしょうか。私としては、スイスイクラブさんと一緒にやりたいという思いが固まってきていたので、希望条件を一つひとつ詳しく聞いて、その都度条件になるべく沿うような提案を心がけました。その積み重ねの結果、3月中に基本合意に達して、4月中に契約、5月1日に事業譲受となりました。

――3月初旬の面談から基本合意まで1ヶ月、買収まで2ヶ月というスピード成約だったのですね。

杉山:デューディリジェンスも契約書の作成も自分でやることができたというのが、成約のスピードを早められた1つの要因かもしれません。私自身、M&Aの実務経験はなかったのですが監査法人時代の仕事柄、知識はありました。3件立て続けのM&Aも、自分に会計士の経験がなければ難しかったように思います。

あとは…私、とてもせっかちなんです(笑)。「こうだ!」と思ったことがあれば、スピーディーに進めていきたいタイプ。その点M&Aクラウドは、直接売り手と話せるから、成約に至るまでの諸段階で、タイムロスがあまりなかったように思いますね。

第三者を介したやり取りだと、それだけでどうしても時間がかかってしまう部分があると思います。実際、ここまでスピーディーに成約できなかった案件もあります。M&Aクラウドでは、売り手に直接連絡できたので、1つひとつの手続きを着実に実施しながら、スピーディーに成約まで漕ぎつけられたのではないかと考えています。

でも、一番の要因は門垣さんの対応の速さです。全てのやり取りにとても誠実に、しかもほぼ全てを即日対応してくださいました。門垣さんの凄さをヒシヒシと感じるにつれて、スイスイクラブもどんどん魅力的に感じるようになっていき、私自身も不安を感じることがあまりなかったということも要因かと思います。


ーーご自身の経歴とプラットフォームの利点を生かした成約だった訳ですね。特にM&Aクラウドを利用する中で、印象に残ったことはありますか?

杉山:すごく便利ですし、UI(ユーザーインターフェイス)もわかりやすかったです。「スポーツ」というタグで検索できる点も助かります。実は今も複数のM&Aマッチングサイトを毎日のようにチェックしているのですが、M&Aクラウドは他のサイトに載っていない独自の案件が載っていることが多く、その点も面白いです。

また、会社のプロフィールだけでなく、経営者のプロフィールが載っているのもすごくいいですよね。私は経営者の人柄が重要だと思っているので、プロフィールは詳しく見るようにしています。売却を考えている企業は、経営者プロフィールを丁寧に記載すると、買収や出資を検討している企業にイメージを持ってもらいやすいのではないかと思います。

目標は、スポーツで生活できる人を増やしていくこと

――ありがとうございます。ではスポーツパークやスイスイクラブの今後の展開について教えてください。

金沢:事業が一気に増えたので、それぞれがしっかりと自立的に運営できるように、まずは事業基盤を整えていきます。いずれは事業間のシナジー効果を発揮できるような仕組みも考えていきたいと思います。

杉山:ほぼ同時期に3件のM&Aをした訳ですが、やはりおのおのすべて順風満帆ということはなく、トラブルももちろんありました。ただ、それを乗り越えてこそ、当法人のミッションである「スポーツをもっと身近に」を実現できると考えています。

スイスイクラブの事業はこれまで関東圏が中心でしたが、全国展開を進めていきます。早速、愛知、大阪、福岡でコーチを採用したところなので、今後はWebを使って集客を図っていきます。

そして、私たちの事業を推進していく中で、スポーツで生計を立てられる人を世の中にもっと増やしていきたいですね。今の日本では、運営スタッフをボランティアに頼っているスポーツ大会などが多いのが現状です。「好きなことだからお金をもらわない」のではなくて、「好きなことだからこそ、それで生活できるようになる」ような環境を作っていきたいと考えています。スポーツで生計を立てられる人が増えれば増えるほどスポーツ環境はより良くなっていくと確信しております。

そのためにも、さらなる事業拡大が必要なので、既存事業を伸ばしつつ、新規事業にも取り組んでいきます。その手段としてこれからも積極的にM&Aを検討していきたいと思います。

――本日は貴重なお話をありがとうございました。



■本ディールの経緯
2020年12月2日 スイスイクラブが『M&Aクラウド』に登録
2022年2月19日 スポーツパークが『M&Aクラウド』に登録
2022年2月21日 スポーツパークがスイスイクラブをスカウト
2022年3月4日 初回面談(対面 スポーツパーク:杉山様、スイスイクラブ:門垣様 事業内容の説明、お互いの希望条件について)
2022年3月中 LINEや電話にて質疑応答や大まかな条件面の擦り合わせ
2022年3月30日(大安の日) 2回目面談(対面 スポーツパーク:杉山様・金沢様、スイスイクラブ:門垣様 基本合意の締結)
2022年3月中 詳細な条件面の擦り合わせ
2022年4月21日(大安の日) 3回目面談(対面 スポーツパーク:事務所全メンバー様、スイスイクラブ:門垣様 最終契約の調印式)
2022年5月1日 事業譲渡日



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本ページに掲載している情報には、M&Aが成立するに至る経緯に加え、インタビュー時点での将来展望に関する記述が含まれています。こうした記述は、リスクや不確実性を内包するものであり、環境の変化などにより実際の結果と異なる可能性があることにご留意ください。

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