創業100年超の老舗企業×レピュテーション管理スタートアップが、リアル店舗集客に変革を起こす

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創業100年超の老舗企業×レピュテーション管理スタートアップが、リアル店舗集客に変革を起こす

2024年11月、印刷を祖業にマーケティングやICT、BPO、DXへと事業領域を拡大する西川コミュニケーションズ株式会社は、リアル店舗集客に特化したWeb広告ビジネスを展開する子会社、株式会社diggin(ディギン)との事業連携を見据え、オンラインにおける企業のレピュテーション対策を支援する株式会社エフェクチュアルに出資しました。

「事業シナジーは初回面談から明らかだった」という今回のディール。その事業シナジーとは何なのか。また、成約後の協業に向けて現在どういった取り組みを進めているのか。西川コミュニケーションズ 管理本部 経営管理部 部長の野間巌氏と、diggin 代表取締役の川村起市氏、エフェクチュアルの諸橋正崇氏にお話を伺いました。

プロフィール

西川コミュニケーションズ株式会社 管理本部 経営管理部 部長 野間 巌(のま・いわお)

西川印刷時代に新卒で入社。ルート営業として小売流通、カード会社、インフラ系企業といったクライアントを担当。新規開発や経営企画といった部門も経験し、2024年より経営管理部にて投資およびM&A関連を担当。

株式会社diggin 代表取締役 川村 起市(かわむら・きいち)

前職では家電系ISPでポータルサイトの媒体開発・マネタイズ業務に従事。西川コミュニケーションズ入社後は、主に自動車業界の得意先を担当しながら、新規事業の立ち上げを推進。

株式会社エフェクチュアル 取締役CFO 諸橋 正崇(もろはし・まさたか)

人材紹介会社、セミナーコンサルティング会社を経て東証マザーズ上場のIT企業に入社。サービス提供部門のマネジャーとして検索エンジンのアルゴリズムの研究やサービス改善に従事。コンサルティング部長、ソリューションプランニング部長を経て2016年にサービス提供部門の責任者としてIPOを経験。その後、株式会社エフェクチュアルの取締役に就任し現在に至る。

単純な資金調達ではなく、事業連携を求めていた

株式会社エフェクチュアル 諸橋正崇氏
株式会社エフェクチュアル 諸橋正崇氏

——まず、エフェクチュアルの事業内容を教えてください。

諸橋:「商品やサービスの価値を体感できるインフラを創る」というミッションを掲げて、企業や店舗のレピュテーション(評判・評価)をマネジメントする事業を展開しています。

大きく事業は二つあり、一つ目が、デジタルメディア上の投稿を監視してリスクを検知したり、検索結果で企業のネガティブ情報が上位に表示されるのを防止したりする対策サービスを提供している、Webリスクマネジメント事業。

もう一つの柱であるロケーションマネジメント事業では、Googleマップなどの地図エンジンにおける口コミを一元管理するサービスや、地図上の検索結果で上位に表示させるためのMEOサービスで、店舗事業者の集客を支援しています。

——資金調達クラウドを利用したきっかけは。

諸橋:今回の資金調達では、さらに事業を加速させたいという意向があり、単純に資金を集めるのではなく、事業面で連携ができる事業会社やCVCを探したいと考えていました。その時ふと、数年前にVCから紹介してもらった「M&Aクラウド」を思い出したんです。事業会社と接点が取れる珍しいサービスという印象があったので久々に開いてみると、「資金調達クラウド」がリリースされていたんです。今回の目的に合ったサービスだと感じ、利用することにしました。

——次に、西川コミュニケーションズの事業内容を教えてください。

野間:当社は1906年に「西川印刷所」という社名で創業をしました。印刷という名が示す通り、電話帳などの一般商業印刷が祖業。しかしその後、印刷ニーズが大幅に縮小したため、創業100周年を迎えたタイミングで西川コミュニケーションズに社名を変更し、事業ドメインの拡大に着手しました。現在は「コミュニケーション」を軸に、マーケティングやICT、BPO、DXなどへと事業領域を広げ、VRや3DCG、AIなど先端技術を使ったソリューションも開発・提供しています。

——なぜ、スタートアップへの出資を検討するようになったのでしょうか。

野間:スタートアップ出資を通して、先進的な技術を他社に先んじて取り入れることができれば、事業ドメインをよりスピーディーに拡大できると考えたんです。これまでに複数社へ出資してきましたが、今回「資金調達クラウド」を通して出会ったのがエフェクチュアルさんでした。

事業に「一目惚れ」。初回面談から想像できたシナジー

西川コミュニケーションズ株式会社 野間 巌氏
西川コミュニケーションズ株式会社 野間 巌氏

——初回面談に至った経緯と、相手に対する印象を教えてください。

野間:M&Aにせよ出資にせよ、マッチングした企業とはひとまず面談するというのが当社のスタンスです。特にエフェクチュアルさんは、子会社のdigginで行っている事業と親和性が高そうだったため、diggin代表の川村も初回面談に同席してもらいました。

——digginでは、どのような事業を手がけているのですか。

川村:リアル店舗集客に特化したWeb広告サービスを提供しています。

もともと私が携わっていたのは、大手自動車メーカー・ディーラーの業務支援システムやキャンペーンサイトの構築。その後、時代の流れに応じて当社もデジタル販促に移行することになったのですが、デジタル広告領域は大手企業が既に大きなシェアを獲得していたので、後発として参入するには「エッジ」が立ったサービスを作る必要があると考えました。

そこで目をつけたのが、「Google来店計測」だったのです。リアル店舗の集客では「来店者数」が重要な指標なのに、WebページやSNS上の反響でしかデジタル広告の成果を測れていない。ならば、Google来店計測を活用して、どれだけ来店につながったかを検証しつつ、Web広告を運用していけばよいと考えました。

また、こうした来店計測Web広告運用と表裏一体のサービスとして、Googleビジネスプロフィール運用管理も手がけています。いくらデジタル広告を打っても、Googleマップ上の情報が不適切であれば集客の効果は得られないため、そのメンテナンスも当社で行っているのです。新サービスの評判は上々で、ディーラーだけでなく、ドラッグストアやホームセンター、クリニック、飲食店など、リアル店舗型の事業者に広く利用されるようになりました。

——そんな中、なぜエフェクチュアルとの面談に同席することになったのでしょう。

川村:実は、Googleビジネスプロフィールの運用管理を行うツールに、大きな課題を感じていたんです。内部リソースで自前の運用管理ツールを開発していたのですが、クオリティ面でどうにも物足りないと感じていました。他にも市場に出ているサービスはいろいろ試したんですが、どれもしっくりきませんでした。

そんな時に、西川コミュニケーションズからエフェクチュアルさんを紹介されたんです。最初の面談で話を聞いた途端、「これだ」と思いましたね。

来店施策においては、いくら広告で集客をかけても、店舗に寄せられるオンラインレビュー、いわゆる口コミや評価が悪いと来店には繋がりにくい側面があります。エフェクチュアルさんのツールなら、口コミも含めてGoogleビジネスプロフィールを健全に保つことができる。ずっと悩ましかったところがこれで解決すると確信し、「早く組んでくれ」と西川コミュニケーションズ側にお願いしました(笑)。

野間:まさに、川村の一目惚れでしたね。

——一方、エフェクチュアル側では、どのような印象を持ちましたか。

諸橋:最初に話をもらった時は、「印刷会社」のイメージが強く、正直なところ「事業シナジーを出すのは難しそうだな」と思っていました。ところが、事業内容をより詳しく調べたり、初回面談で話を聞いたりするうちに、「むしろ事業連携しやすいのではないか」と思えてきたんですよね。

というのも、西川コミュニケーションズさんは、印刷以外にも事業ドメインを拡大し続けていらっしゃいますし、digginさんは当然ながら、Googleマップに関わるビジネスの業界事情を深く理解していらっしゃったので、当社が伝えたいことがすんなりと伝わったんです。おかげで2回目の面談では、だいぶ具体的な事業シナジーの計画をお見せできました。

——その後、成約に至るまでの経緯と決め手を教えてください。

野間:当社ももともと、「新規事業を開拓して成長させていかなければならない」という意識が強かったですし、エフェクチュアルさんとdigginの相性がよいことは初回面談からわかっていたので、出資の意思は比較的すぐに決まりましたね。その後の交渉も順調に進み、結果的に当社の中でも異例のスピードで成約に至りました。

川村:「早くしてくれ」と急かした側が言うのもなんですが、本当に早かったですね。エフェクチュアルさんのツールでビジネスプロフィールをしっかり健全な状態に保ち、当社が広告で送り込む。その結果、全体の成果が向上する。そういった具体的なイメージも見えていました。

諸橋:今回のディールで印象に残っているのは、川村さんが西川コミュニケーションズの西川社長と一緒に当社にいらっしゃった際、熱心に事業シナジーを語ってくださっていた姿です。アライアンスというと、経営陣同士では盛り上がっていても、現場に移った瞬間にモチベーションも下がり、結局「なあなあ」になってしまうことが少なからずありますが、川村さんは本当に真剣な目をしていて。

それを見ていると、「せっかく事業連携するなら、その成果を形にしたい。そして今までにないような価値を顧客に届けたい」という思いがわいてきましたね。だからこそ私は、ディールが完了してCFOとしての役割に区切りがついた今も、西川コミュニケーションズさんとのミーティングに出席しています。

セールスとプロダクトの連携で、協業を形に

株式会社diggin 代表取締役 川村 起市氏
株式会社diggin 代表取締役 川村 起市氏

——現在の連携状況と、今後の取り組みについて聞かせてください。

川村:2つの部会を定期的に開き、徐々に事業連携を進めています。

1つ目は西川コミュニケーションズ主導のセールス部会で、互いに顧客を紹介できるような仕組みづくりを行っています。両社のサービスはGoogleビジネスプロフィールに関わるという共通項があるので、やはり話が早いですね。細かい営業条件についても合意できたので、今後は目標値の設定などをしながら、成果を出していきたいと思います。

諸橋:もう1つの商品開発部会は、当社が主催しています。両社のサービスは口コミ・ビジネスプロフィールといったオーガニックと、広告・マーケティングという異なる領域に跨っているので、どうしても継ぎ目ができてしまう。人手を使わずに、2つのサービスがシームレスに連携するようなプロダクトを作ることが、当面の目標です。

——最後に、資金調達クラウドを利用した感想を教えてください。

諸橋:資金調達クラウドは、事業会社やCVCなど、自力でなかなか接点を持ちづらい企業にアプローチできるのも魅力ですが、何より資金調達の時間を短縮できるのがありがたいですね。

資金調達のためには、ネットワーキングで人脈を増やしたり、誰かに紹介してもらったり、自分でDMを送ったりといった地道な行動が必要ですが、スタートアップの通常業務を回しながらそれに取り組むのは結構ハードなんです。だからこそ、空いた時間にプラットフォーム上で出資企業にアプローチできたり、資金調達クラウドの担当者が候補企業のリストアップや初期接点づくりをサポートしてくれたりといった点に、とても助けられました。

野間:当社にとっては、相手企業と直接やり取りできるのがよかったですね。エフェクチュアルさんは特にファーストインプレッションがよかったので、人を介さずに深く話し合えてありがたかったです。

川村:あとは、必要な事業領域ベースではなく、今回の私たちのケースのように現状の課題ベースで相手企業が探せるとなおよいですね。課題をプリセットしておくことで、その解決策を持っている企業とマッチングできれば、もっとたくさんのよい出合いが生まれるような気がします。

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