サイバーセキュリティ教育でIT人材の付加価値を向上!互いの強みを活かしさらなる販路拡大につなげる
投資家:東海ビジネスサービス株式会社
出資先:サイバーコマンド株式会社
公開日:
SES(システムエンジニアリングサービス)事業をメインに行う東海ビジネスサービス株式会社は、サイバーセキュリティ人材の支援や教育プログラムを提供するサイバーコマンド株式会社と2022年10月に資本業務提携を結びました。
契約締結から約1年半、サイバーコマンドの教育プログラムを東海ビジネスサービスのIT人材に提供し、エンジニアの付加価値向上をはかることで、両社は提案内容の強化・販路拡大を図ってきました。M&Aクラウドで出合った両社には、現在どのようなシナジーが生まれているのでしょうか。東海ビジネスサービス代表取締役の田中亮宇氏とサイバーコマンド代表取締役兼CEOの浦中究氏に、これまでの経緯や今後の展開について話を伺いました。
プロフィール
1979年生まれ。東京都出身。慶應義塾大学法学部卒業後、公認会計士の資格を取得し、EY新日本有限責任監査法人、株式会社AGSコンサルティングへ就職。中小企業の経営コンサルを中心に活動していた当時の東海ビジネスサービス代表、加藤輝美現名誉会長から、定期的に経営相談を受ける間柄になり、2019年10月に請われて同社に入社。新たにITコンサルティング事業を立ち上げ、その後代表取締役へ就任。ITコンサルティング事業と設立当初から経営基盤を支えてきたSES事業の両軸で、経営革新を行っている。
富士通グループ、日本オラクル株式会社等にて、プロジェクトマネージャ、サービスマネージャとしての実績と、サーバーインフラ、ネットワーク、データベース、クラウド、サイバーセキュリティのエンジニアとして経験を積み、ベンチャー企業にてCISOを務めた後、サイバーコマンド株式会社 代表取締役に就任。
お互いが求めた”ドンピシャ”の出会い
――まず、両社の事業内容について教えてください。
浦中:サイバーコマンドは、サイバーセキュリティに関するトレーニングの提供や、サイバーセキュリティの専門人材提供など、サイバーセキュリティが脆弱な日本の状況を変えていく事業を展開しています。
トレーニングに関しては、当社独自のカリキュラムで構成された「CySchools(サイスクール)」という学習サービスを提供しています。これは、eラーニングと対面式の講座を通して、最先端のサイバーセキュリティの知識やノウハウ、資格対策について実践的に学ぶことができるサービスになっています。
田中:東海ビジネスサービスはSES事業をメインに行っています。システムオペレーター、運用管理者、ネットワークエンジニア、サーバーエンジニアといった豊富なIT人材を派遣し、クライアントのIT課題を解決しています。現在は提供できるサービスも広げており、ITコンサルティング事業にも注力しています。
――2022年8月にサイバーコマンドよりM&Aクラウド上で打診が送られ、そこから2カ月という期間で資本業務提携締結まで至っています。最初の段階から、双方において好感触だったかと思われますが、浦中さんが東海ビジネスサービスに打診した理由はなんだったのでしょうか。
浦中:当時、資金調達を検討した際に、お互いのシナジーを大事にしたかったので、VCではなく事業会社に狙いを定め、資金調達クラウドに登録させていただきました。
その中でも、東海ビジネスサービスさんに打診した理由は、私たちの教育トレーニングを受講してもらえれば「在籍するIT人材の付加価値を高められる」と感じたからです。その上で、レベルアップした東海ビジネスサービスのIT人材を活用した営業活動や、顧客数増加、新たな業種への顧客層拡大も可能なのではという期待もありました。
――田中さんはサイバーコマンドから打診が来た時、第一印象はどうでしたか。
田中:まさにドンピシャで求めていた会社だ、と感じました(笑)。それまでIT人材の単価をどのように上げればいいかという課題が当社にあったんです。そのためには「何かプラスでスキルをつけることが必要かもしれない」と漠然と考えていた時に、サイバーコマンドさんから打診がきたんです。
情報セキュリティを経営課題に抱える企業も多い中、サイバーコマンドさんの実践的な教育プログラムを受講すれば、当社が抱えるIT人材にサイバーセキュリティに関する知見という付加価値が高まり、顧客からのニーズも拡大。それによって単価の上昇も見込めると感じました。まさにやりたかったことが実現できそうだとして、社内では即決に近かったですね。
最初は教育を受けるだけでいいかとも考えましたが、当社のIT人材がサイバーセキュリティの知見を得られるだけでなく、販路の拡大などにもつながると考えたため、より深い提携を結びたいと思い資本業務提携という形に決めました。
提案内容の深化や販路拡大、さまざまな成果が生まれている
――現在、締結から約1年半が経過しました。現在の状況はいかがでしょうか?
浦中:東海ビジネスサービスさん専用の教育プログラムを作り、2024年1月から10名のエンジニアに受講してもらっています。システムオペレーターや運用管理者の方でも、今後サイバーセキュリティに関わる出来事が起こった際に対応できるかできないかでは大きな差となって表れます。そのため、そうした付加価値をつけることができればエンジニアとしての需要が大いに高まると考えています。
また、受講後は「教えたら終わり」ではなく、共にビジネスを開拓していきます。具体的には、私たちの営業先に東海ビジネスサービスさんのエンジニアを含めたチーム体制で人材を提供していくイメージです。
ただし、当社の教育プログラムを受講してサイバーセキュリティの知見は有したが、まだ不安だという東海ビジネスサービスさんの従業員もいると思います。そうした際は、その従業員の派遣先のプロジェクトに私たちからもプロ人材をメンバーとしてアサインし、軌道に乗るまで伴走支援するといった連携も考えています。
――昨今、サイバー攻撃が激化の一途を辿っています。そのため、サイバーセキュリティ人材のニーズは今後さらに高まっていきそうですね。
浦中:本当にそう思います。ただ、セキュリティ業界はコンサルを行う企業が非常に多い。そこでコンサルに頼りきってしまうと、いざ攻撃に遭った際に自社で対応できる人材がゼロで、対応ができないという事態も招きかねません。私たちのソリューションは、人材の派遣・支援はもちろん、人材の育成も可能ですので、そこに勝機を見出しています。
――なるほど。田中さんはシナジー効果がどのように生まれていると感じていますか。
田中:当社が抱えるIT人材がサイバーセキュリティの知見を得ることはもちろん、販路拡大にもつながっていると考えています。
例えば、当社では大学などの学校法人の顧客が多くいます。大学も企業と同様、サイバーセキュリティによる情報漏洩などの脅威に晒されています。そこで、既存のIT支援だけでなく、セキュリティついての人材支援、緊急の相談窓口、人材育成までをパッケージとして提案することにしました。こうした提案もサイバーコマンドさんと協業したことで可能になりました。
浦中:ありがとうございます。私たちの教育プログラムは医療機関向け、地方銀行向けなど業界に合わせてカスタマイズしたものを提供しています。そのため、東海ビジネスサービスさんの販路を活用しつつ、大学などの研究機関はもちろん、それ以外のさまざまな業界でも提案していきたいですね。
今後はセキュリティを含めたITリテラシーの教育・啓発活動も行っていきたい
――今後、両社ではさらに連携を深めていくことが予想されますが、どのような展望がありますか。
浦中:東海ビジネスサービスさんを含め、連携できるパートナー企業を増やしています。それらが一体となることで、それぞれの強みや弱みを相互補完することができます。大きなネットワークを築きあげることで、例えばインフラ設計などで困っている企業がいれば、東海ビジネスサービスさんを紹介するなど、協力できる部分はさらに増えていくと予想されます。
また、メタバース空間でのサイバーセキュリティ人材の教育や、中小企業向けにいつでも相談できるセキュリティに特化した生成AIチャットボットの開発も行っていく予定です。
――今、中小企業というキーワードが出ましたが、中小企業向けに多くのビジネスを展開している東海ビジネスサービス側ではどのような展望がありますでしょうか。
田中:中小企業の業務効率化やDX支援などは、さらに注力していこうと考えています。その中でもサイバー攻撃による情報漏洩は大企業だけでなく、その下請けを担う中小企業も他人ごとではありません。そのため、中小企業の経営者にITリテラシーをきちんと身に着けてもらいたいという思いがあります。サイバーコマンドさんのお力を借りながら、そうした啓発活動・教育支援なども今後注力していきたいです。
また、今や子どもたちが当たり前のようにスマホを持つ中、最終的には、大人になって困らないように、小学校や中学・高校といった子どもたちに対してもサイバーセキュリティに関する教育を実施したいと思っています。
浦中:確かに。交通安全教室のように「横断歩道を歩くときは手を挙げなさいといったルールを教えるぐらいの世界観で、サイバーセキュリティについて学べる世の中にしたいですね。