2兆円規模の宗教法人マーケットのDX化へ挑む!事業共創パートナーとして共に描く未来とは
投資家:株式会社Relic
出資先:株式会社366
公開日:
新規事業開発やイノベーション創出を支援する事業を展開する株式会社Relicは、宗教法人や墓地・納骨堂などの経営コンサルティングを行う株式会社366へ出資を行いました。
資金調達クラウドで出合った2社がどのように成約に至り、現在どのような協業を行っているのか、Relic 代表取締役CEOの北嶋 貴朗氏と、株式会社366取締役(CFO)の八木 隆二氏に語っていただきました。
プロフィール
組織/人事系コンサルティングファーム、新規事業に特化した経営コンサルティングファームにて中小/ベンチャー企業から大手企業まで幅広く新規事業開発や組織変革を支援した後、DeNAに入社。新規事業/サービスの立ち上げや、事業戦略/事業企画、大手企業との共同事業の立ち上げなど数々の事業の創出~成長を担う責任者を歴任。2015年に株式会社Relicを創業。2021年、株式会社Relicホールディングスを設立し持株会社体制に移行後、ホールディングスの代表も務める。大阪大学大学院 招聘教員。
1969年生まれ、株式会社CAICA DIGITAL、eワラント証券株式会社、株式会社Zaifなどの代表取締役を歴任。2022年11月より366に参画し、2023年5月に取締役CFOへ就任。
リアルとバーチャルの統合支援で、宗教法人をサポート
——まずは、366の事業内容を教えてください。
八木:366は、主に宗教法人向けに経営課題の解決のサポートを行っているコンサルティングファームです。事業は樹木葬を中心とした「墓地・納骨堂事業」と「DX支援事業」を行っており、リアル・バーチャルの両方の側面から総合的に支援できるのが当社の強みとなります。
——今回、資金調達クラウドを利用したきっかけは。
八木:樹木葬事業で得られた収益をDX支援事業に投資するだけでは、やはりスピード感をもって事業をスケールさせることが難しいと感じていました。資金面だけでなくDX事業の推進にハンズオンで関わってもらえる事業者を探していたんです。
そんな中、代表の伊藤がリサーチをしていた中で、資金調達クラウド見つけて登録をしたのがきっかけでした。資金調達クラウドは、登録企業が多岐に及んでいて、いろんな投資家の視点が得られそうだと感じましたね。
——続いて、Relicの事業内容を教えてください。
北嶋:Relicは、インキュベーションテック事業や事業プロデュース/新規事業開発支援、オープンイノベーション事業などを展開しており、資金面はもちろん戦略立案から事業企画、プロダクト開発やデザイン、セールス、マーケティングなど総合的な支援を行っています。
——今回は366がRelicに打診を送ったことがはじまりでした。366の印象はどうでしたか。
北嶋:「面白いことをしている会社さんだな」というのが最初の印象です。宗教法人は市場規模がおよそ2兆円と巨大産業でありながらも、参入障壁が高くてかつDXが進んでいないという印象でした。そこに着目している点が興味深かったですね。
また、366さんは樹木葬事業など、葬儀業界で長年経験のあるCEO・伊藤さんに、CFO・八木さんと経験豊富なメンバーが在籍しており、いわゆる若いスタートアップで見受けられる荒削りさや不安定さは感じなかったです。スタートアップながら、この業界でチャレンジしていくにあたってしっかりとしたメンバーがそろっているという印象でした。
——初回面談の印象はいかがでしたか。
八木:初めて北嶋社長と話をさせてもらって、スタートアップのいち経営者として接してもらえたことが印象に残っています。Relicさんは私たちにとってスタートアップの先輩です。北嶋社長が普段どのような課題を抱えて、それをどういった手法で乗り越えてきたか。まさに我々と同じ目線でもって、資金面だけでなく事業推進やプロダクト開発におけるコミュニケーションを交わすことができました。
資金面のサポートだけでなく、共創パートナーとして事業推進を
——その後、どのような流れで契約締結まで話が進んだのでしょうか。
北嶋:初回面談では私が話を伺いました。その際に、DX事業について、自社プロダクトの開発に苦労されている話を聞きました。ビジネスとしてはしっかりしているものの、テクノロジーや開発面で追いついていない印象を受け、逆にそこを当社でご支援させていただいたら力になれるのではと感じました。そのため、2回目の面談ではCTOの大庭にも同席してもらい、具体的な開発プロセスの連携について話を進めましたね。
八木:初回面談では北嶋さんに方向性を判断していただいて、2回目以降は具体的にどう連携するかという話を私と大庭さんで進めましたね。
——最終的な決め手を教えてください。
北嶋:2つあって、1つがシンプルに「366さんの事業をグロースしたら面白そうだな」と感じたことですね。我々はVCではないため、ファイナンシャル・リターンではなく、事業共創パートナーとして歩んでいけるかという観点を大切にしています。
もう1つが、当社の事業である新規事業開発支援において、葬儀業界や宗教法人という市場における事例を作りたかったこと。近年は、葬儀業界や宗教法人の領域で新しい事業を展開したいというご依頼も増えています。私たちもこの領域で知見やノウハウを得たいという狙いがありました。
366さんとの共創がかたちになれば、そこで得たナレッジを活かして他のクライアントの新規事業開発の支援を行うことが可能となります。
八木:Relicさんのインキュベーターとしてのスタンスが非常に信用に足るものだったことが決め手となりました。それに加えて、現在、開発周りで支援いただいているRelic太田さんの存在も大きいです。太田さんは、もともと葬儀ITスタートアップである株式会社よりそう(旧:株式会社みんれび)にいた方で、葬儀業界や宗教法人の分野に精通していると伺っていたからです。
——すでに成約から数カ月が経っていますが、両社が取り組んでいることを教えてもらえますか。
八木:宗教法人向けのCRM開発を進めています。先ほども話にあがった太田さんに指揮を取っていただき、開発を進めている状況です。太田さんは葬儀IT業界で開発をしていたこともあって、開発の上流工程の視点はさることながら、宗教会ないし寺院における仏事や慣習、事務など現場レベルまで熟知しているんですね。その上でどうDXを適用すれば良いのかという視点で物事を捉えてくれるため、非常にスムーズにプロジェクトを進めることができて、感謝しております。
北嶋:太田は366さんの事業ドメインにも明るく、かつ数多くの企業で新規事業開発に携わってきた人材で、まさに今回のプロジェクトにはぴったりの存在でした。出資後は、CTOの大庭や太田を始めとする現場のチームメンバーに一任しています。現状としては、太田がプロダクト設計や戦略の立て直し、エンジニアリングの支援をさせていただいてる状況です。
両社が共に進める、宗教法人のDX化支援・キャッシュレス化に向けた第一歩
——今後の展望について教えてください。
北嶋:事業共創パートナーとして、366さんのグロースや成功をどう実現していくかが大事な部分だと思っています。まずは、目下取り組んでいるプロダクト開発の支援に注力したいですね。リリース後は、プロダクト改修・アップデートだけでなく、事業企画、セールス、マーケティングなど、幅広い形で関わっていけたら良いなと考えています。
八木:先ほど北嶋さんが話していたように、宗教法人の市場規模はおよそ2兆円あるといわれています。しかしながら、お賽銭や葬儀・法要時のお布施などをイメージしてもらえばわかるように、その大半は現金手渡しです。
これらを一気にキャッシュレス化するには、お賽銭という文化的背景やキャッシュレスで寄付行為をする際の法的制約、寺院や僧侶のITリテラシーの問題など、366だけでは解決できない多くの課題が存在します。
まず366としては、宗教法人向けのCRM開発をしつつも、常にマーケットの動向をチェックしながら、少しずつキャッシュレス化の普及・推進をしていければと思っていますね。
——他社サービスと比べて資金調達クラウドの良かった点はありますか。
北嶋:何度か「資金調達クラウド」や「M&Aクラウド」を利用させてもらっていますが、やはり面白い企業が多いところが魅力ですね。また、データベースの質とマッチングの精度は非常に高いのではないかと思っています。
八木:「資金調達クラウド」はシステム上でマッチングするのが特徴の1つですが、属人的にマッチングしていただけるサービスもあって、そういう意味ではバランスが取れていて非常に満足しています。
また「資金調達クラウド」に登録されている方々は、ストイックに投資リターンを追求するスタンスの企業だけではなく、さまざまなスタンスの企業とマッチングすることができるので、非常に多くの気づきや学びを得られます。
——これから資金調達や出資を考えている企業に向けてアドバイスをお願いします。
北嶋:短期的なファイナンシャル・リターンだけでなく、今後ストラテジック・リターンを重視した出資が増えていけば、お金が出しにくい領域のスタートアップにも新しいチャンスが生まれて、資金調達や出資の裾野が広がるのではないかと思っています。
八木:よく「お金に色はない」といいますが、私は「お金に色がある」と思っています。つまり、「どのくらい調達するのか」よりも「誰から調達するのか」が大切です。ぜひ、資金調達をする際には、より良い色の出る事業パートナーとのつながりを大事にしてみてください。