登録から半年以内に成約!地方創生から海外展開まで視野に入れる、eスポーツ×ECの最強タッグ誕生

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登録から半年以内に成約!地方創生から海外展開まで視野に入れる、eスポーツ×ECの最強タッグ誕生

モバイルアクセサリー等のコマース事業を展開するHamee(ハミィ)株式会社は、2022年6月、eスポーツ施設の設立・運営支援やeスポーツ大会の運営を手掛ける株式会社TechnoBlood eSportsへ出資しました。

M&Aクラウドを介して巡り会った両社の交渉の経緯や今後の展開は。Hameeのコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)で投資を担当する高木良氏と中島理恵氏、ゲーミングアクセサリー事業部の責任者・内田雅也氏、そしてTechnoBlood eSports社長の森島健文氏に話を伺いました。

プロフィール

Hamee株式会社 新事業創造部マネージャー:高木 良(たかぎ・りょう)

健康食品メーカーの海外事業開発を担当し、アジア圏数か国において法人設立を担当後、マレーシアにて現地法人支社長を経験。経営企画、貿易実務、営業、商品開発などの業務経験が強み。2019年Hameeに入社。スマートフォンアクセサリー事業の事業推進マネージャーとして、事業計画策定、新サービスの立上げや各種新規事業の推進に従事。2021年11月より新事業創造部マネージャーとして、事業推進、出資、オープンイノベーション創出等に関わる。

Hamee株式会社 新事業創造部:中島 理恵(なかしま・りえ)

ベアリングメーカーで技術営業や工作機械、半導体業界の市場調査を経験後、製造業のビジネスマッチングを手がけるベンチャーにて大手メーカーと中小企業の技術マッチングを支援し、グロースフェーズへの事業成長をけん引。企業の新規事業創出を支援しつつ、ベンチャー側としての事業立ち上げ経験も持つ。2021年Hameeへ入社。事業推進、オープンイノベーション創出を行う同部署に参画。

Hamee株式会社 ゲーミングアクセサリー事業部事業部長・マーケティングコミュニケーション部マネージャー:内田 雅也(うちだ・まさや)

2012年に新卒としてHamee(旧StrapyaNext)に入社。入社後約6年間ECサイト運営に従事し、楽天、Amazon、ヤフー等の大手モールを中心にスマホアクセサリーの事業を拡大。2018年より、EC部門のマネージャーとして部門全体を統括、同時期に社内マーケティング部門の立ち上げを推進。2022年よりゲーミングアクセサリー事業の事業部長に就任し、全社マーケティング管理とゲーミングアクセサリー事業の両部門の事業推進を行う。

株式会社TechnoBlood eSports 代表取締役社長:森島 健文(もりしま・たけふみ)

大学卒業後、イベント制作プロダクション、ゲームメーカー、インターネット系広告代理店などでコンテンツビジネスやメディアビジネスに従事し、新規プロジェクトや新規事業立上げを数多く行う。その後、起業を経て2014年にテクノブラッド入社。以降、コンテンツ事業に関わるサービス企画、スマートフォンゲームセキュリティソリューションの日本展開立上げ、eスポーツ事業立上げなどを行い2016年よりコンテンツ事業を統括。2019年4月、テクノブラッド取締役に就任。2021年4月、株式会社TechnoBlood eSportsを設立し、代表取締役に就任。

M&Aクラウドで、「まさにぴったり」の案件に出会えた

Hamee株式会社:高木 良
Hamee株式会社:高木 良

――Hamee様は、モバイルアクセサリーの企画開発・卸販売から、ECサイトの運営、EC自動化プラットフォームの開発・提供まで、幅広く手がけていらっしゃいます。今回、出資を検討したのにはどのような経緯があったのでしょうか。

高木 当社は2019年度より投資事業を開始し、複数のスタートアップ企業へ出資しつつ、新しい出資先も探しています。2022年2月にM&Aクラウドで募集記事を公開した後は、コンスタントに打診をいただき、様々な案件を検討してきました。

協業したい領域はいくつかあったのですが、特に必要としていたのは、当社が代理販売しているゲーミングモニターブランド『Pixio(ピクシオ)』とシナジーのある企業でした。

内田 『Pixio』は、「ゲーマーの、ゲーマーによる、ゲーマーのための」モニターブランドです。2016年に米国カリフォルニア州で生まれました。最高品質のパネル・部品を使用した低コストのモニターであることが特徴です。

代理店である当社は、モニターの提供に限らず、最高のゲーム体験をすべての人に提供していくことを目指していまして、今後数年間で、eスポーツ大会の運営、eスポーツ施設の運営、eスポーツチームの運営など、周辺領域へ展開していこうという計画を立てているところでした。

――一方のTechnoBlood eSports様は、まさにeスポーツ大会の企画・運営、eスポーツ施設の立ち上げから運営支援など、eスポーツに関わるビジネス全般を行っていらっしゃいます。今回、資金調達を検討された理由は何だったのでしょうか。

森島 今回の資金調達は、当社が開発中のeスポーツオンラインプラットフォーム『PlayPot』の開発体制を強化することが目的でした。もともとはリリース後の調達を考えていたのですが、韓国の子会社での開発が思うように進まなかったため、開発リソースの拡充のため資金調達を計画することにしました。

ーーTechnoBlood eSports様がM&Aクラウドにご登録いただいたのは、2022年3月28日でした。使ってみていかがでしたか。

森島 プラットフォーム上で事業会社から資金調達ができること自体がよかったですね。例えば、スタートアップに出資しているベンチャーキャピタルは、ネットで検索すれば特定できます。

一方で、事業会社の場合は、出資しているかどうかは調べてもわからない。M&Aクラウドは、事業会社がどのような目的で、どのような領域に出資しようとしているかを公開しているので、とてもありがたかったです。

ーーHamee様は、2022年の2月からM&Aクラウドのプラットフォームに募集記事を掲載いただいていますが、使い心地はいかがでしたか。

中島 UI/UXがわかりやすかったです。文字通り、「直感的に操作できる」仕様だと思いました。ストレスなく企業とやり取りできたのは、とてもよかったです。

内田 そして何より、記事掲載後ほどなくして、まさにぴったりの案件に巡り会えたことが一番の魅力的な部分ですね。

打診後、ほぼ即決で初回面談へ

株式会社TechnoBlood eSports:森島 健文
株式会社TechnoBlood eSports:森島 健文

――TechnoBlood eSports様からHamee様に打診されたのは2022年4月1日でした。どのような理由でHamee様に打診されたのでしょうか。

森島 アカウント登録から数日後、M&Aクラウドで「eスポーツ」のタグで検索して、Hameeさんを見つけました。買い手ページでも「eスポーツ」という言葉を明確に出して募集していたので、事業シナジーが見込めるのではと考え、打診しました。

高木 オファー内容を見た瞬間、「これは良さそうだ」と思いました。今までもeスポーツ関連の企業から打診はあったのですが、eスポーツチームのスポンサーを探しているという話がほとんどで、検討対象になりませんでした。

TechnoBlood eSportsさんからの打診は、最高のゲーム体験を提供したいという当社の思いと合致していて、「一緒にビジネスしたら楽しそう」とイメージが膨らみました。

中島 当社にはコンスタントに打診が寄せられますが、一つひとつをしっかりと吟味し、新事業創造部の週次ミーティングで厳選したうえで、初回面談にあげています。今回は打診をいただいた段階で、ゲーミングアクセサリー事業との親和性が高いと考えられたため、週次ミーティングを待たずに部内で面談の意思決定を行いました。

――本来は面談に進むこと自体が高いハードルのはずなのに、今回は違ったのですね。最初の面談ではどういうお話をされたんでしょうか?

森島 eスポーツ市場の現状、当社事業の内容、資金調達の目的などを説明しました。

内田 eスポーツ施設・大会の運営方法やeスポーツ市場の動向など、私たちに全く知識がない分野なので基本的なことからいろいろと質問させていただきました。

中島 例えば、eスポーツ先進国である韓国の例を挙げて、日本市場の将来的な展望をご説明くださったのが、とても参考になりました。

――今後市場がどうなりそうかという点まで言及があれば、検討しやすくなりますね。面談の感触はご両社ともよかったのではないでしょうか。

森島 Hameeさんは素晴らしい会社だとは思いましたが、出資していただけるかどうかは全く確信を持てませんでした。そもそも私は、実際に出資契約をするまでは期待を持たないようにしているんです。これまでも、多くの会社に資金調達の相談をしてきましたが、面談で感触が良くても、実際には契約に至らないことが多かったので(苦笑)。

中島 実は当社もその点は注意しています。担当者視点で出資したいと思っていても、経営層視点では判断が異なる場合もあるので、面談の時には出資可否に関する感触はあまりお伝えしないようにしています。TechnoBlood eSportsさんとの面談の時も、いい案件だなと思ってたんですけど、顔には出さないようにしていました(笑)。

出資前の段階で偶然にもシナジーが発生。具体的な協業施策の提案が成約を後押し

Hamee株式会社:内田 雅也
Hamee株式会社:内田 雅也

――この初回面談の直後に、ご両社で取り引きする機会が発生したそうですね。

森島 当社はある会社からの依頼でeスポーツスタジオの建設を請け負っており、配信エリアの設計段階で仕様に見合うモニターを検討していました。そんな中、Hameeさんの取扱うモニターが仕様と合致したんです。出荷条件含め検討した結果、『Pixio』のモニターの導入を決めました。初めての取引でしたが、スムーズに納品まで至り、とても助かりましたね。本当に偶然でしたが、出資前に協業することになりました。

高木 当社としてもサプライズな出来事でしたが、経営層に上申する前に取引が発生したことで、出資判断のプラス要因の一つになりました。「事業シナジーはすでに出ています」と説明できますからね。

内田 『Pixio』は家電量販店などでの販売を行っていないので、実際の製品を見る機会をユーザーに提供できないことが課題だったんです。eスポーツの関連施設にモニターを納入すれば、製品がユーザーの目に触れて、認知度向上につながる。そんな可能性を見出せるいい機会になりました。

――想定外のタイミングにシナジーが生まれたんですね!その後の交渉はどのように進んだのでしょうか?

森島 私から協業施策を提案する資料を送付しました。「eスポーツ大会の共同開催」「Pixioブランドのeスポーツ施設(フラッグシップ店舗)の立ち上げ」「eスポーツ施設へのPixioモニターの導入促進」などといった内容です。

内田 当社が漠然と感じていたことをかなり具体的に資料として提案していただいたので、一層理解が深まりましたね。

中島 当社内のフローとして、まずは新事業創造部内で検討し、最終的に取締役会で決定するという段階があります。今回はゲーミングアクセサリー事業部の中長期戦略との関連も深かったため、経営層と認識合わせを行いながら出資検討を進めました。

各段階で必要な情報がいろいろと発生し、その都度、森島社長に連絡して提供をお願いしたのですが、レスポンスが非常に早くてとても助かりました。チャットでメッセージを送るとすぐに返信があるし、必要な資料も翌日には送ってもらえたので。スムーズに社内での検討が進みましたし、ますます信頼度が高まりました。

――検討段階は決して少なくなかったものの、スピーディーなレスポンスでスムーズに進んだということですね。そして6月半ば、最初の打診から約2ヵ月半での出資契約となりました。

森島 ほっとしました(笑)。余談ですが、契約時に初めてHameeさんのこの小田原オフィスを訪れて、こんな素敵なオフィスだったんだとびっくりしました。羨ましいなあと思いましたね。

高木 今取材を受けているこのスペースで、社員向けの講演もしてもらいましたよね。社員たちも、未知のeスポーツに関するお話に興味津々でした。

イベント共同開催から海外進出まで、シナジー創出を狙う

Hamee株式会社:中島 理恵
Hamee株式会社:中島 理恵

――今後はどのようなかたちで協業に取り組む予定なのでしょうか?

中島 すでに協業が始まっているものもあります。例えば先日は、TechnoBlood eSportsさんが展示会に出展する際にモニターを提供しました。このような取り組みで『Pixio』の認知度の拡大を図っていければと思います。

高木 また、eスポーツイベント・大会の共同開催も検討しています。TechnoBlood eSportsさんと当社のお互いの強みを活かす形で連携できるのではと考えています。

――当初見込んでいた大会開催の検討も進んでいるのですね。より長期スパンでの事業シナジーの構想はありますでしょうか?

森島 HameeさんのBtoCビジネスのノウハウを、当社でも活かしていきたいと思っています。当社は今までeスポーツ大会の運営を行ってきましたが、単発の大会だと収益源はスポンサーからのイベント制作費だけなので、ビジネス的な広がりが弱いと感じていました。現状のままでは、BtoBのイベント制作会社にとどまることになりかねません。

今後さらに成長を目指すなら、BtoC領域に展開することがポイントだと感じています。つまり、大会来場者であるeスポーツファンと長期的な関係を構築しつつ、彼らに対して何らかの価値を提供し、収益につなげるということです。当社がプラットフォーム『PlayPot』の開発に取り組むのも、ユーザー情報を蓄積するためです。

eスポーツファンに何を提供するのかを考える時には、Hameeさんの持つBtoCビジネスのノウハウでお力をお貸しいただきたいと考えています。

中島 eスポーツに限らず、スポーツ大会ではファンが会場に応援に行き、グッズを買いますよね。そういったオリジナル商品の開発や提供は当社が得意とする部分です。

内田 当社はECでスマホアクセサリー等の販売をしていますが、売って終わりではなく、アプリなどを通してお客様と継続的にコミュニケーションを取ることに力を入れています。そんなノウハウも生かせると思いますよ。

森島 もう一つ、さらに先の構想として、海外展開を考えています。実は当社とHameeさんの共通点は、韓国に拠点を持っていること。eスポーツ市場は日本より韓国の方が圧倒的に大きいので、お互いに力を合わせて韓国市場、アジア市場を攻略できればと思います。

内田 海外展開には私たちも大きな可能性を感じています。まずは日本での協業を成功させて、次の段階として海外へ展開していければと思います。

高木 当初は、TechnoBlood eSportsさんのリソースをメインにしたシナジーが想定される中で、Hameeとしては何が提供できるのだろうと悩んだ時期もありました。ただ、今森島さんの発言にあったように、長期的な視点も含めると当社からTechnoBlood eSportsさんへ提供できるノウハウもたくさんあるはずなので、お互いの力を出し合いながら、成長していければと考えています。

――本日は貴重なお話をありがとうございました!




■本ディールの経緯
2022年2月8日 Hameeが『M&Aクラウド』に掲載
2022年3月28日 TechnoBlood eSportsが『M&Aクラウド』に登録
2022年4月1日 TechnoBlood eSportsがHameeに打診
2022年4月11日 初回面談(WEB 双方の事業概要や市場概況の共有)
2022年5月26日 2回目面談(WEB)
2022年6月6日 3回目面談(WEB)
2022年6月20日 4回目面談(対面)
2022年6月24日 DA締結
2022年7月31日 クロージング



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本ページに掲載している情報には、M&Aが成立するに至る経緯に加え、インタビュー時点での将来展望に関する記述が含まれています。こうした記述は、リスクや不確実性を内包するものであり、環境の変化などにより実際の結果と異なる可能性があることにご留意ください。

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