エンタメ施設の集客力アップに、キャラクター制作で貢献!2社のリソースをフルに活かす資本業務提携の形とは
投資家:株式会社アイフリークモバイル
出資先:株式会社ORIGRESS PARKS
公開日:
1万人以上が登録する独自のクリエイター支援サービス「CREPOS(クリポス)」を強みに、デジタルコンテンツやキャラクターなどの制作を行う株式会社アイフリークモバイルは、エンターテインメント施設のサブスクサービス「レジャパス」を主軸に、エンターテインメント関連ソリューションを提供する株式会社ORIGRESS PARKS(オリグレスパークス)へ出資しました。
2024年1月に資本業務提携を発表した両社は、エンターテインメント施設向けのキャラクター活用サービス「アイフレス」(共同事業名:アイフリーク+オリグレス)を立ち上げ、協業を進めています。
「資金調達クラウド」で出会った両社は、どのような経緯で成約に至ったのか。また、今後にかける思いについて、アイフリークモバイル代表取締役会長の上原 彩美氏、取締役の五十嵐 雅人氏と、ORIGRESS PARKS代表取締役社長の吉武 優氏に伺いました。
プロフィール
東京都出身。大学在学中にソフトウェア開発事業を展開するリアルタイムメディア株式会社を創業。その後、グループ会社4社、関連会社13社を擁する企業グループに成長させる。2016年6月 株式会社アイフリークモバイル代表取締役社長に就任。2023年7月より現職。2016年 EY Winning Woman ファイナリスト。
1996年、ディスクロージャー・IR資料作成の実務支援の専門会社の亜細亜証券印刷株式会社(現・株式会社プロネクサス)入社。その後、ベンチャー向け証券市場のナスダック・ジャパン株式会社のほか、IPO専門証券会社、投資ファンド、M&Aコンサル会社、新興上場企業CFOを経て、2020年、株式会社アイフリークモバイルに入社。
宮崎県出身。上智大学を卒業後、電通に入社。同社ではベンチャーのグロース支援を広く手掛けると同時に、テーマパークの開業プロジェクトでマーケティングを統括。その後、都内エンタメ施設の開業プロジェクトにおいて代表取締役として経営を担う。その後2021年4月に株式会社ORIGRESS PARKSを創業した。
クリエイター×エンタメ施設で、多方面に“笑顔”を広げる
――はじめに、ORIGRESS PARKSの事業内容を教えていただけますでしょうか?
吉武:当社は、2021年に創業したスタートアップになります。全国のレジャー施設で遊び放題となるサブスクリプションサービス「レジャパス」を中心に、エンタメを軸とした事業を展開しています。
ーー今回「資金調達クラウド」を活用くださった背景を教えてください。
吉武:当社は、上場を目指すスタートアップとして、資金調達は随時検討していますが、創業時と比べて会社としてのフェーズが上がり、事業を増やしていく段階にきた今、せっかく株を持っていただくのなら、互いのアセットを活用しながら一緒に成長を目指せる事業会社と組めれば一番いいなと思っていました。
そんな中で、ネット検索で「資金調達クラウド」を見つけたのですが、出資先を募集する各社の情報が分かりやすくまとまっていたので、「ここならすぐに打診先が見つかりそう」と直感しましたね。
当社のミッションは、「レジャー施設の体験価値の最大化」。「レジャパス」事業で創業したものの、これはビジョン実現のための入り口に過ぎません。「レジャパス」で得られた知見と施設ネットワークをベースに、ここからは新たなコンテンツ開発を本格化させていきます。そうした当社の思いを理解し、協力してくださるパートナーを探していました。
――2023年7月末に「資金調達クラウド」に登録され、8月下旬にはアイフリークモバイルとの初回面談に進まれました。その後も順調に面談を重ねられたようですね。
吉武:調達活動をしていると、お互いに「合いそうにない」という場合は一瞬で分かることが多いんです(笑)。その点、アイフリークモバイルさんとは、初回面談で五十嵐さんとお話ししたときから「感覚が近いな」という印象でした。
2社の事業に「子ども向け」「エンタメ」といった共通項があることが大きいのでしょうね。サクサクと協業をイメージした企画書が書け、2回目の面談時にお持ちしました。
――その企画書は今回立ち上げられた「アイフレス」に近い内容だったのでしょうか?
吉武:そうですね。詳細はまだ検討中ですが、軸はアイフリークモバイルさんがお持ちのクリエイターネットワーク「CREPOS(クリポス)」のリソースを活用したキャラクターづくりです。
多くのレジャー施設にとって、最大の課題は「集客」です。ただ僕から見ると、マーケティング・ブランド訴求にもっと力を入れればもっと伸びる施設が多いんですね。そこで「施設のキャラクターを作りましょう」というのは、ブランディングのとっかかりとして分かりやすく、受け入れられやすい提案でもあります。
当社では「LINE FRIENDS」のキャラクターの活用などはすでに提案していましたが、オリジナルのキャラクター制作はリソースの問題でできていませんでした。そこで、1万人以上のクリエイターを抱え、なおかつ多くの企業のキャラクター制作実績もある「CREPOS(クリポス)」と組むことでちょうどハマるんじゃないかと。
施設側にとっては、オリジナルのキャラクターを作ろうとすれば、そこに込めたい思いを固めるステップも必要になります。クリエイターさんの力を借りながら、思いを形にしていく過程そのものも、施設のブランディングに大きく貢献すると考えています。
上原:これまで「CREPOS(クリポス)」は、自社サービスを中心に活用していたのですが、更にクリエイターが活躍する場を広げていきたいと考えていた時期にちょうどORIGRESS PARKSさんからお声がけをいただいて。タイミングがぴったりだったんです。吉武さんの企画書を拝見して、本当にワクワクしました。
キャラクターを作りたいクリエイターは大勢いますが、作品が多くの人に届くチャンスを得られる人は一握りです。今回「レジャパス」を通じて全国400施設以上とつながりを持つORIGRESS PARKSさんと協業することで、クリエイターにとっての活躍の機会が一気に拡大し、クリエイティブの力を世の中にどんどん広げていけると感じました。
「レジャパス」の説明を受けたときも感じたことですが、ORIGRESS PARKSさんは多方面に笑顔を増やしていけるすてきなサービスを展開されていますよね。客層の拡大が期待できる提携先施設にとっても、その施設に低額で遊びに行けるお客様にとっても、ハッピーな仕組みです。
今回の協業ではさらに、キャラクターをデザインするクリエイターたちにも笑顔が広がります。たとえば、キャラクターを活用したイベントを開催して施設が盛り上がるような展開になれば、そのサイクルがどんどん回り、笑顔の連鎖が起きていくと期待しています。
五十嵐:クリエイターネットワークを持つ当社に対して、ORIGRESS PARKSさんにはレジャー・エンタメ施設さんとの豊富なネットワークをお持ちです。当社がターゲットとしている未開拓の領域をすでに開拓されているので、まさに補完関係が成り立つんですよね。
私はもともとメディア等を通じてORIGRESS PARKSさんのことは知っており、注目もしていたので、打診をいただいたときは「これは協業のアイデア次第では面白いことになりそうだな」と。吉武さんの企画書を拝見したときは、私も「これだ」と確信しました。
“血のつながった”関係を求め、資本業務提携にこだわった
――今回のご成約までに何回面談されましたか。
五十嵐:合計4回です。3回目までは役員メンバーとオンラインで行い、最後は協業の担当者を交えて。加えて電話でのやり取りなども、特に最後の方は随時行っていました。
一番の焦点になったのは、やはり事業の成功確度です。そもそもニーズがあるのか、どんな障壁が想定されるのか。一緒にやっていく以上は、お互いハッピーになれる座組みにしなくてはいけないですから。
――成功確度の見極めというのは、多くの調達希望会社が苦労するステップでもありますよね。
吉武:前提として、リスクテイクしてなんぼのスタートアップと、一定の社会的責任を負っている上場企業では商習慣が全然違います。それだけに相手方の商習慣を理解して調整していかなければ、一緒に何かをするのは難しい。僕たちも、今回は自分たちだけの事業であればそこまではしないというようなところまで、データ収集や分析に手をかけました。
ただ、「アイフレス」は全くの新規事業なので、データには落とし込みきれない部分も多々あります。そこは、そもそも2社のビジョンや事業内容に重なる部分が大きかったことで、カバーできたのだと思います。アイフリークモバイルさんだから、toCビジネスかつエンタメの感覚を共有できましたが、これがたとえば不動産の会社さんとだったら難しかったかもしれません。
五十嵐:私は協業を成功させるために大切なのは、当初計画と実際の結果との差異をしっかり把握し、原因分析して、軌道修正していく力だと思っています。そこはいつも出資検討の際、各社の既存事業の話を聞きながら、見極めさせてもらっています。
あとは経営者のパッション、人間性も大事ですね。
上原:吉武さんと初めてお会いしたとき、「すごくパワーのある方だな」と感じました。もう一つ、印象的だったのは誠実さです。私たちの求めている情報をしっかり把握して、報告してくださる。
事業をやっていれば、当然計画からずれることもあります。人としての信頼関係ができていれば、そんなときも一緒にリカバリーしていけると考えているので、誠実さは重要なポイントです。
ちなみに、協業の窓口を務める社員の方も、本当に事業が好きな気持ちがあふれていて、手掛けているアニメイベントの話が出たときなど、そのアニメ愛をいくらでも語ってくれそうな雰囲気です。そういった点でも魅力的な会社だなと思いました。
――両社のカルチャーの近さを感じるエピソードですね。
吉武:当社にとってアイフリークモバイルさんは、近い領域で事業展開されている先輩であり、一緒に事業に取り組むことで、時間的に先のステップに進める点や学びになる点がたくさんあります。「CREPOS(クリポス)」にしても、僕らがこれから1万人のネットワークを構築しようと思ったらどれだけ時間がかかるか分かりません。
今回、僕としては単なる業務提携ではなく、資本業務提携にこだわりました。資本が入るということは、「血がつながる」ということです。一発やって「成功すれば次、だめなら終わり」ではなく、ある意味“身内”として、サステナブルにお付き合いができる関係。そういうパートナーになってほしいと、終始思いを伝えさせていただきました。
だから、協業の事業名も、2社のサービスではなく社名をもとに「アイフレス」(共同事業名・アイフリーク+オリグレス)と私が勝手に(笑)命名し、提案したんです。
上原:船に例えると、アイフリーク号とオリグレス号ではなく、アイフレス号に乗ることで行き先が一つになり、乗組員全員が一丸となって進んでいける。実際、そんな関係ができてきています。
吉武:「アイフレス」の議論をしていると、アイデアがどんどん湧いてきます。「それで行くと、さらにこんなこともできそうですよね」と、話しながら実現したい事業像がアップグレードされていくんです。そのフレキシブルなスタンスはこれからも大切にしていきたいですし、アイフリークモバイルさんからも建設的な意見をいただいています。
気が付いたら当初プランとは全然違うものに進化を遂げているかもしれませんが、新規事業ってそういうものですよね。仮説検証と選択を繰り返しつつ、両社で実現しうる最善の形を追求していきたいです。
資金調達活動を通じ、自社の新たな武器を発見
――「資金調達クラウド」の使い勝手について、ご感想をお聞かせください。
吉武:もっと広まってほしいサービスだと感じました。事業会社やCVCから出資してもらおうとすると、まずスタートアップへの出資に積極的な会社、かつ自社を検討対象にしてくれそうな会社を洗い出すステップに手がかかります。公開されているIR資料から得られる情報は限られていますし、「一時は出資先を募集していたが、今はしていない」といったケースだってあります。
「資金調達クラウド」を使えば、出資に積極的な会社が載っていて、募集対象の事業領域やステージも記載されています。Web上で打診先の一次スクリーニングができるのは大きなメリットだと思いました。
五十嵐:調達希望会社と直接やりとりできるので、メッセージ交換の段階で先方の考えていることがある程度つかめる点がいいですね。面談の場でお互いに「これは合わない…」となる確率が低いなと。
上原:各社からいただくメッセージを読んでいると、先方がちゃんと当社を選んで打診してきてくれている印象もあります。私は実は掲載前は、マッチングサービスではあまりいい相手は見つからないかもしれないと危惧していました。それがここまで、ワクワクする事業、面白い経営者の方など、思いもかけなかった出会いがあり、率直に驚いています。
吉武:僕も今回、半年ほどの調達活動でいろいろな事業会社と話をするうちに、自分たちの事業を見直すヒントをたくさんいただき、視座が上がったと感じます。たとえば、「レジャパス」加盟施設ネットワーク以外に、オリジナルの基幹システムも横展開するといったクロスセルも考えられますし、何が自社の武器になり得るか、他社とのコミュニケーションで新たに見えてくる部分も多いと思います。
――最後に、ORIGRESS PARKSの今後のビジョンをお話しいただけますか。
吉武:今はAR、VRが進化し、外出しなくてもバーチャルにいろいろな体験ができる時代です。でも、やはりリアルな触れ合いを伴う体験でしか得られない感動があり、その価値は100年前も今も変わらないと僕は信じています。人として生まれてきたからには、そんな記憶に残る体験を一生のうちにどれだけ得られるかが大切だと思うんです。
これまで「レジャパス」をはじめとするサービスを通じて数千の施設と関わってきて、多くの施設に共通する運営課題が見えてきました。そうした課題の改善につながる事業を、「アイフレス」も含めてどんどん生み出したいですし、将来的には自社での大型テーマパークの開発・運営も手がけたいという長期の目標を持っています。