予定額を上回る4億円の資金調達を実現!中古車と不動産、異なるフィールドで活躍する両社が、業界を超えたDX推進を目指す
投資家:株式会社ファブリカホールディングス
出資先:株式会社iimon
公開日:
中古車販売店を支援するクラウドサービスや、多様な業種・業態向けのSMS配信サービスなどを開発・提供している株式会社ファブリカコミュニケーションズは、2022年7月28日、不動産仲介会社向けのSaaSを開発・提供している株式会社iimonと資本業務提携を行いました。
M&Aクラウドのマッチングプラットフォームを利用して出会った両社は、どのような経緯で提携に至り、これからどんなシナジー効果を発揮しようとしているのでしょうか。ファブリカコミュニケーションズ取締役経営企画室管掌の岩館 徹氏と、iimon共同創業者代表取締役CEOの島田 州平氏にお話を聞きました。
プロフィール
1980年生まれ。2002年4月、UFJ信託銀行株式会社(現三菱UFJ信託銀行株式会社)に入行。その後、2005年9月に比較.com株式会社(現手間いらず株式会社)、2008年4月にヤフー株式会社(現Zホールディングス株式会社)に入社、2015年6月に株式会社カービュー取締役CFOに就任。2017年1月に株式会社ファブリカコミュニケーションズの社外取締役となる。2018年8月に株式会社KENKEY代表取締役に就任(現任)、2021年6月に株式会社ファブリカコミュニケーションズの取締役経営企画室管掌に就任(現任)。
1984年埼玉県吉川市生まれ。新卒で株式会社FJネクストに入社。その後、株式会社ジョイント・ルームピア(現:株式会社アンビジョン・エージェンシー)を経て、2009年3月に株式会社アブレイズ・コーポレーションに創業メンバーとして参画。同社の経営/営業戦略、新規事業開発をはじめ、コーポレート部門(総務、人事、労務、法務、経理、IT等)の統括責任者を経て、常務取締役に就任。2019年11月より株式会社iimonを創業、代表取締役CEOに就任。同社では長年の不動産業界の課題を解決するべく、不動産DXのサービスを展開している。
「M&Aクラウドは資金調達の選択肢を事業会社へ広げる上では最適なツール」
――今回はどのような背景で資金調達をされたのですか?
島田 2021年1月にJ-KISSで資金調達をしたのですが、その新株予約権の行使期限である18カ月後を目安にシリーズAの調達を行うことを計画していました。
当社事業はいわゆるJカーブを描くようなビジネスではないので、現段階での資金調達は必須ではありませんが、イレギュラーな事態に備え、最速最強の経営にチャレンジする目的で資金調達を検討しました。
――資金調達の手段として、M&Aクラウドを利用したきっかけは?
島田 『ICCサミット FUKUOKA 2022』でM&AクラウドCTOの荒井さんと知り合ったことがきっかけです。また、経営に関してアドバイスをしていただいている方から、M&Aクラウドで資金調達をした他社の事例を聞いていたことも後押しとなりました。
VCさんとの商談もいくつか進めていたのですが、タイミング悪く急速に市況が悪化してきていたので、念のため事業会社さんにも選択肢を広げたほうがよいと思い、M&Aクラウドを使い始めた感じです。
――実際にM&Aクラウドを利用してみていかがでしたか?
島田 さまざまな領域の企業、特に事業会社さんにアプローチできるというのがメリットですね。ファブリカコミュニケーションズさんとは、M&Aクラウドがなければまず出会えなかったと思います。M&Aクラウドは資金調達の選択肢を事業会社さんへ広げる上では最適なツールだと思います。
当社は資金調達にあたり、100社以上にアプローチし、そのうち40社以上にピッチしました。ピッチを繰り返すことでわかったこと、改善できることが多くあると実感しています。厳しいフィードバックもありましたが、自社の事業に自信を持って諦めないこと、希望を捨てないことが大事だと思いますよ。
――資金調達を行う中で、意識的にアピールされていたポイントはありますか?
島田 当社独自の強みですね。当社は、1,600店舗以上の不動産仲介会社にSaaSを提供しています。主力の『入力速いもん』は、1秒で会社間流通サイトからコンバートサイトへ物件入力ができる自動物件入力ツールなのですが、最大の強みはポジショニングなんです。
通常の入力支援システムはコンバーターと呼ばれるソフトウェアが中心で、各社がしのぎを削っています。当社のプロダクトはその一歩手前に配置し、コンバーターに機能を付与するものなので、コンバーターを開発する各社と競合せず、すべての不動産企業がターゲットになります。
また、オンボーディングのコストを削減することができたのも、大きな特長となっています。不動産業界では、新しいツールの導入をハードルに感じる方がとても多いんです。当社は、そのような業界事情をふまえ、従来の業務フローを変えるのではなく、今までの作業がさらにやりやすくなる「便利ボタン」を提供するイメージでプロダクトを作っているので、結果として導入企業が増えています。
登録してからあっという間に成約。「M&Aクラウドの集客力はすごい」
――ファブリカコミュニケーションズ様が出資を検討された経緯をお聞かせください。
岩館 当社は2021年4月に上場した会社で、中古車販売店向けのクラウドサービスや、様々な領域に汎用性のあるSMSソリューション等、事業者向けのSaaSを主力事業としています。これらの既存事業の強化や、事業者向けDX事業を中心とした新規事業の獲得の手段として、M&Aの活用を検討し始めました。
ーーM&Aクラウドをお使いになったご感想は?
岩館 M&Aを本格的に検討するようになってから、ツールの1つとしてM&Aクラウドに掲載したのですが、登録してからあっという間に成約まで実現することができ、とてもよかったと思います。以後もかなり多くの引き合いがあり、M&Aクラウドの集客力は想定以上だと感じています。
M&Aクラウドでの公開情報は、仲介会社から提供されるものに比べて量が多いため、コンタクト前に相手企業の内容を把握しやすいです。気になるポイントがあれば、選択肢を広く持って話を聞いてみると、意外なシナジーが見つかることもあるはずです。当社も引き続き利用して、M&Aを検討していきます。
想定外の4億円単独出資!決め手は業界を超えた共通性
――iimon様からファブリカコミュニケーションズ様へ打診されたところから、今回のディールがスタートしました。
島田 当社は不動産業界出身のメンバーが中心となって運営し、不動産業界内で現場のノウハウを蓄積していることが強みにつながっています。その強みを活かしつつシナジーを最大化するためには、むしろ異なる業界の企業と協業したいと考えていました。ファブリカコミュニケーションズ様に打診した背景も、そこにあります。
――最初のオンライン面談では、どのような話をされたのでしょうか?
島田 不動産業界の特異性について、詳しくお話ししました。ピッチ資料の説明は通常15-20分くらいだと思うのですが、私は30分くらい費やすんです(笑)。当社のプロダクトの強さを伝えるには、業界の特徴を知っていただく必要があると考えているからなんですけど。
ファブリカコミュニケーションズの谷口社長からも、中古車業界について積極的にお話しいただきました。双方の業界は離れているように見えて、実は共通点が多いんだなと感じましたね。
岩館 不動産テックと聞くと、業界カオスマップからしてレッドオーシャンなイメージがありましたが、島田さんから不動産仲介業界のお話をお伺いするうちに、iimonさんのプロダクトの独自性やポジショニングを理解し、今後の事業の広がりについて魅力を感じましたね。
――初回面談後の交渉経緯を教えてください。
岩館 約2週間後に島田さんが来社されたタイミングで、当社から出資の意向を伝えました。しかも、iimonさんが予定していた額を大幅に上回る約4億円を、単独で出資したいと申し出ました。
島田 当初は、複数社からの調達を計画していたんです。でも、早いタイミングで額を引き上げて全て引き受けるというご提案をいただいて。それまでの話し合いの中でも、出資いただく前提のお話が多く、確度は高いと感じていましたが、ここまでだとは予想していませんでした。
――ファブリカコミュニケーションズ様のみで出資を引き受ける提案をしたのはどんな背景があったんでしょう?
岩館 事業者向けのSaaSでニッチな事業を展開しており、共通項が多かったのが一番の決め手ですね、当社のグループ戦略の観点からも、不動産領域へはぜひ進出したいという思いがありました。しっかりと手を組んで不動産領域に踏み込むためには、当社としても出来るだけ多くの出資比率をもって、コミットした上で進めるのが良いだろうと判断したんです。
島田 強い関心を持っていただいているのをひしひしと感じ、とても嬉しかったです。当社としても貢献したいという意欲が高まり、覚悟を決めてご提案をお受けしました。
――その後、両社の経営陣の皆様で会食をされたそうですね。
島田 まずは私たちを信用してもらうことが前提になりますから、経営陣の人柄や、仕事に取り組む姿勢などをアピールしました。特に、事業をやっている中で、困難に直面しても「折れない思い」を熱く語りましたね。
岩館 様々な課題に向き合い、真剣に取り組んでこられたことが良くわかりました。事業は「伸びるものではなく、伸ばすもの」だと思っているので、その姿勢はとても魅力的でした。
島田 私は密かに、ファブリカコミュニケーションズの皆様の関係性を注視していました(笑)。それまでビジネス関連の話題しかなかったので、経営陣の関係性は図りかねているところがあったんですが、対等な立ち位置で率直な意見を言い合える深い仲なのだということが、この会食でわかりました。当社も経営陣の仲がとても良いので、新たな共通点だなと思いましたね。
SMS配信をはじめ、不動産DXの推進を加速
――4月のオファーから約4カ月後、7月29日にクロージングとなりました。今後の展開は?
岩館 不動産DXを推進する新サービスを共同開発します。例えば、iimonさんのサービス自体、SMSサービスとの親和性が高いはずなので、iimonさんの顧客に当社のSMSサービスを導入してもらうことがとっかかりになると思います。今は両社にとってWin-Winになるような座組みを検討しているところです。
島田 不動産仲介会社は、自社にとって必要なシステムのことまで考える余裕がないのが現状です。当社は、どんな機能とどれくらいの価格なら不動産業界で売れるかをイメージできるので、SMS関連サービスを不動産業界に浸透させていくための要件を検討したいですね。
岩館 その他、当社は業歴が長くありますので、マーケティングや事業戦略に関わる部分でも、これまでに蓄えた知見を生かしてiimonさんをサポートしていきます。
島田 当社では、スピード感を持ってより良いものを一緒に開発できることを楽しみにしています。ファブリカコミュニケーションズさんのSMSサービスは、UI/UXの面でも当社のシステムと共通項が多くあります。今まで当社には、プロダクトの仕様変更で開発効率が落ち、開発の遅延が成長をストップさせてしまうようなリスクがありましたが、これからはお手本と言えるものがあるのが心強いですね。
――フィールドを超えたご活躍、期待しております!本日はありがとうございました。
■本ディールの経緯
2022/03/29 iimonが『M&Aクラウド』に登録
2022/03/30 ファブリカコミュニケーションズが『M&Aクラウド』に掲載
2022/04/05 iimonがファブリカコミュニケーションズに打診
2022/04/18 初回面談(WEB:双方の業界・事業内容・開発環境・セールス手法の共有)
2022/04/27 2回目面談(対面:単独での出資意向表明)
2022/05/19 3回目面談(対面<会食>:双方の経営陣の事業にかける思いの共有)
2022/05 プロダクト説明会
2022/06 本格的なDD開始
2022/07/29 クロージング