「M&Aクラウドが、資金調達・出資のハードルを下げてくれた」個性あふれる2社が出会い、脱クッキー時代の広告戦略をアップデート!

公開日:

「M&Aクラウドが、資金調達・出資のハードルを下げてくれた」個性あふれる2社が出会い、脱クッキー時代の広告戦略をアップデート!

総合広告会社の株式会社日宣は、2022年8月30日、気象連動型広告配信ツールを展開するデジタルエージェンシーの株式会社ルグランに出資しました。

M&Aクラウドのマッチングプラットフォームを利用して出会った両社は、どのような経緯で提携に至り、どんな協業を行おうとしているのでしょうか。日宣取締役CMOの飛川 亮氏、経営管理本部本部長の佐藤 純氏、ルグラン代表取締役 共同CEOの泉 浩人氏、山辺 仁美氏にお話を聞きました。

プロフィール

株式会社日宣 取締役CMO:飛川 亮(とびかわ・りょう)

1973年生まれ。1997年4月、株式会社読売広告社入社。2011年6月、株式会社日宣に入社。クリエイティブ部長を経て、2012年5月、取締役就任(現任)。

株式会社日宣 経営管理本部本部長:佐藤 純(さとう・じゅん)

東京都生まれ。バンドン工科大学経営管理大学院修士課程(MBA)修了。東京銀行(当時)、オリックス等を経て、2021年12月株式会社日宣に経営企画部長として入社。2022年11月より現職。

株式会社ルグラン 代表取締役 共同CEO:泉 浩人(いずみ・ひろと)

1964年東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。ジョージタウン大学経営大学院修士課程(MBA)修了。三井銀行(当時)、フォード自動車を経て、2000年に独ベルテルスマン社のオンライン通販事業(bol.com)を立上げる。2002年からはオーバーチュアの日本進出に参画。大手クライアントや広告代理店に対する検索連動型広告の活用提案・コンサルテーションや、審査ガイドラインの策定に携わる傍ら、2005年9月より『サーチマーケティングカレッジ』を立ち上げ、同カレッジ学長として中堅・中小広告主を対象に、検索連動型広告の基本的な使い方から広告効果の最適化まで、さまざまなノウハウを伝授するためのセミナーを主宰する。2006年3月からは、検索連動型広告ユーザーへのサポートやコンサルテーションを目的に設立した株式会社ルグランの代表取締役として、より中立的な立場から広告へのアドバイスや各種教材の企画・制作を行う。

株式会社ルグラン 代表取締役 共同CEO:山辺 仁美(やまべ・ひとみ)

⽶国セントメリーカレッジ経営学部卒。⾦融〜AT&T・Palm Computing を経てオーバーチュア(現ヤフー)シニアディレクターとしてマーケティング全体を統括。企業に対しデジタルマーケティングを起点としたマーケティング/PR活動に関するアドバイスを⾏う。オーバーチュアでは、上場前のアイレップ・オプト・アウンコンサルティングやセプテーニ・⽇広(現・GMO NIKKO)・サイバーエージェントなどのネット広告代理店を束ね、⽇本初となる検索連動型広告販売に特化した広告代理店組織を構築。中⼩広告主を対象とする直販ルートの開拓も統括し、4年間で述べ20万社以上の広告主を獲得、売上⾼400億円を実現。ルグラン設⽴後は、外資系クライアントの⽇本進出プロジェクトを多数⽀援するほか、英国やカナダの広告管理ツールベンダーとの事業提携を進め、⽇本における広告管理ツールの普及に努める。

事業提携や資金調達という枠組みで事業会社と出会えたのがよかった

株式会社ルグラン 代表取締役 共同CEO:泉氏
株式会社ルグラン 代表取締役 共同CEO:泉氏

――ルグラン様の資金調達の背景を教えてください。

泉 当社は2006年に創業して以降、顧客の広告課題を解決するコンサルティングに注力していたのですが、2017年に初の自社サービスとして、天気に合わせて最適なファッションを提案するテックサービス『TNQL(テンキュール)』を開発したんです。これを応用した気象連動型広告配信ツール『weathermarketing.net』を2021年7月にリリースしました。

これらの自社サービスの開発と営業体制を強化していくために、2021年末頃から資金調達を検討し始めました。

――M&Aクラウドにご登録いただいたきっかけは何だったのでしょう。

泉 ひとまず最初は、あらゆる手段を試してみようと思いまして。VCに相談したり、クラウドファンディングを行ったり、いろいろな方法を試しました。事業会社からの資金調達も選択肢の1つだったので、それができるM&Aクラウドに登録しました。

――実際に利用されていかがでしたか。

泉 事業会社と出会えるプラットフォームとして高い価値があると感じました。また、買収・売却だけでなく、事業提携や資金調達という枠組みで利用できるサービスはなかなかないため、使ってよかったなと思っています。

山辺 それぞれの立場の人が幸せになる、エコシステムだなと感じました。私たちのような小さな事業会社は、資金調達をしたくても時間やコストがなかなか割けないという課題があります。M&Aクラウドは、それを解決してくれるサービスだと思いました。

M&Aクラウドは、出資への敷居を下げてくれるプラットフォーム

株式会社日宣 取締役CMO:飛川氏
株式会社日宣 取締役CMO:飛川氏

――日宣様が出資を検討された経緯をお聞かせください。

飛川 当社は創業75年の歴史を持つ総合広告会社です。住まい・暮らし業界や医療・健康業界に特化し、独自のノウハウを蓄積してきました。例えば、ケーブルテレビの番組情報誌の編集・発行を通じて、全国150の放送局とのネットワークを持ち、これを地域企業向けのサービスに生かしています。

差別化と独自性にこだわり、安定経営を続けてきましたが、それだけで非連続的な成長を実現することは難しい。特に、ここ10年ほど力を入れてきたデジタル領域のサービスにおいて、自分たちならではの強みを確立していくためには打開策が必要でした。そこで、デジタルマーケティングに強い企業と協業したいと考えていたんです。

――M&Aクラウドへの掲載から4年以上が経ちました。長くお使いいただいていて感じたことを教えてください。

佐藤 事業会社にとっても、出資への敷居を下げてくれるプラットフォームだと思います。当社のような事業会社は、優良な出資案件の情報をキャッチするのが難しいんです。ピッチイベントもありますが、VCでもない限り参加するのは簡単ではないですし。

オファーの数が多い点も、M&Aクラウドの魅力ですね。当社は登録から既に時間が経っていますが、コンスタントに多くの打診をいただいており、ありがたいなと思っています。

「気象連動型広告配信ツールは、他に類を見ないユニークなサービス」。期待を込めて出資を決意

株式会社日宣 経営管理本部本部長:佐藤氏
株式会社日宣 経営管理本部本部長:佐藤氏

――今回のディールは、ルグラン様が日宣様へメッセージを送られたところから始まりました。

泉 デジタルマーケティングに取り組んでいる企業にコンタクトしようと考えていました。その中の1社が日宣さんだったんです。

当社ツールの有用性を理解していただける企業は多くありません。そもそもサービスの前提となっている、脱クッキーの潮流に対する課題感自体を共有できないこともあります。

デジタルマーケティング分野では、ユーザーの個人情報や閲覧・行動履歴の情報取得を制限する流れが世界的に進んでいます。気象連動型広告配信ツールは、天気による人々の気持ちや行動の変化に着目し、広告体験を提供するソリューションで、脱クッキー時代の解決策の1つとなるはずなのですが、実際にその領域で事業を展開している企業でなければ、なかなか理解してもらえないんです。

佐藤 当社にはデジタルマーケティングを担当するデジタルCX部があります。その部署の担当者がルグランさんからのオファーを確認し、当社のニーズと合致すると判断できたのがよかったのだと思います。即座にWeb面談を設定しました。

初回面談で双方の企業紹介をしたのですが、事業戦略面でも財務戦略面でも当社にぴったりだと感じました。

泉 デジタルマーケティングに長く携わっている方が参加してくださり、広告テクノロジーにおける課題感や当社ツールの強みなどをすぐに理解していただけました。この面談で既に「どういうふうに協業を進められるか考えましょう」と前向きなお言葉をいただけたのが嬉しかったです。

――その報告を飛川さんが受け、出資の決断に至ったということですね。

飛川 何よりも魅力的だったのは、サービスに独自性があったこと。当社はデジタルマーケティング領域に力を入れていこうとしていますが、独自の切り口が必要と考えていました。ルグランさんの気象連動型広告配信ツールは、脱クッキーの流れに沿っているだけでなく、他に類を見ないユニークなサービスでした。

当社のクライアントの多くは、住宅展示場やホームセンター、飲食店など、消費者とのリアルな接点を持つ企業です。それらの企業のマーケティングを支援するうえで、気象連動型の広告や施策は活用できるはずだと感じました。また、ルグランさんの持つデジタルマーケティングへの深い知見も合わせれば、当社ビジネスにも広がりが生まれるはす。期待値も含めて、出資する方向で話を進めることにしました。

成約の決め手は、「お客様の課題を一緒に解決していく」という価値観の一致

株式会社ルグラン 代表取締役 共同CEO:山辺氏
株式会社ルグラン 代表取締役 共同CEO:山辺氏

――交渉の中で、難所などはありませんでしたか?

泉 あえて不安だった点を挙げるとすれば、当社の業績ですね。気象連動型広告はこれからの事業ですし、主力事業のコンサルティングはコロナ禍の影響を大きく受けているので、その点がどう評価されるかは少し心配でした。

飛川 当社としてはそこはあまり問題視していなかったです。むしろそれは前提の上で交渉に臨んでいました。

泉さんや山辺さんとお話をするなかで、顧客ときちんと向き合って仕事をする姿勢をお持ちだと感じたんです。言葉を選ばずに言わせていただくと、地味な業務も地道にやっているというか(笑)。私たち日宣も、個々のクライアントの経営課題やマーケティング課題に対して深く向き合ってきた会社ですから、その姿勢には大いに共感しましたね。

山辺 ありがとうございます。私たちは、きらびやかというよりも、職人型のデジタルエージェンシーなんです(笑)。私たちも日宣さんも、根本的には「お客様の課題を一緒に解決していく」というコンサルティングスタイルの会社で、その価値観を共有できたのがよかったなと思います。

――顧客の課題解決に注力するという価値観が一致したんですね。

山辺 そうです、そしてなんとなく気が合う(笑)。これは意外と重要なポイントで、例えば日宣さんのオフィス。最初にお邪魔した時に、日宣さんの雰囲気が出ている、なんとも素敵な空間だなと思いました。目に入る色合いや、スベースの柔軟な拡張性など、来社される方に「ウェルカム」とお伝えするために作られたんだなということがよくわかります。

そういう価値観に触れるにつれ、「こういう企業とお付き合いしたい」という思いが深まっていきました。

佐藤 実は当社も、ルグランさんのリアルな雰囲気を知りたいと思い、オフィスを訪問したんです。調査団みたいになってしまって申し訳なかったですが(笑)。北青山のオフィスは、とてもクリエイティブな印象を受けました。仕組みをかっちり固めて、ゴリゴリ仕事を進めていくというよりは、いわゆるブティックファームのような自由な雰囲気の会社であることがわかり、素敵だなと思いました。

「広告は人の役に立つものだ」と再び思ってもらえるような仕事がしたい

――今後は、提携をどう発展させていきたいとお考えですか?

泉 お天気って、人々の行動に大きな影響を与えますよね。デジタル世界の脱クッキーの流れとは関係なく、そもそも利用価値が高い情報であるはず。しかしまだまだ気象データを広告に利用する事例は少ないです。その先行事例を、特にリアル店舗との関わりを持っている日宣さんと一緒に作っていきたいですね。

気象連動型広告は、広告業界でもまだ認知度が低いサービスですし、導入いただく段階ではクライアントに工数を割いてもらうことにもなりますから、「はじめまして」でいきなり利用してもらうことは難しいんです。

日宣さんの顧客基盤を活用させていただければ、そういったハードルもクリアできます。ゆくゆくは、両社でプロダクトを共同開発していきたいですね。

山辺 最近は、せっかく想いを込めた広告も「目障りだ」と嫌がられるような時代になっています。日宣さんと一緒に、「広告は人の役に立つものだ」と再び思ってもらえるような仕事ができればと思っています。

飛川 当社は、結果的にみれば、今の時代のマーケティングに接続できるポテンシャルのある仕事をしてきた会社だと思っています。クッキーをベースにせずに、当社が貢献できる広告モデルとは何かということをリアルの現場から考え、取り組み続けてきました。

広告に対する目線はそれぞれですが、今回のパートナーシップが、ルグランさんの成功事例の起点になり、当社の事業拡大のブレイクスルーになればと思います。

――「広告っていいな」と思えるような世界が実現することを期待しています!本日はありがとうございました!




■本ディールの経緯
2018/07/17 日宣が『M&Aクラウド』に掲載
2021/12/09 ルグランが『M&Aクラウド』に登録
2022/05/05 ルグランが日宣に打診
2022/05/13 初回面談(WEB:双方の事業内容紹介等)
2022/06/02 2回目面談(WEB:ルグラン社ビジネスについて)
2022/06/24 3回目面談(WEB:両社のシナジーの可能性について)
2022/07/04 4回目面談(対面)
2022/08/12 日宣の取締役会で出資決定
2022/08/30 クロージング

類似の成約事例