募集開始から運命の出会いまでわずか1週間!システム開発×オンライン型スポーツレッスンで描く地方創生のビジョンとは?
投資家:株式会社アビックシステム
出資先:株式会社だんきち
公開日:
システム開発を中心に、VR関連事業を展開する株式会社アビックシステムは2022年6月、M&Aクラウドを通じて、オンライン型スポーツレッスンを提供する株式会社だんきちへ出資しました。
システム開発とオンライン型スポーツレッスンという、一見離れた領域をフィールドとする両社。どのようなきっかけで巡り会い、成約にいたったのか。株式会社アビックシステム 代表取締役の佐々木 和洋氏、同xR事業部の伊藤 義樹氏、越智 壽博氏、株式会社だんきち 代表取締役の与島 大樹氏にお話を聞きました。
プロフィール
1978年生まれ、宮城県仙台市出身、学校卒業後、国内上場企業へ入社。経理部門としてグループ基幹システム構築プロジェクトに従事。その後、ITベンチャーに入社し、官公庁や流通系のシステム開発プロジェクトをリーダーとして牽引。2006年、アビックシステム立ち上げのスタートアップメンバーとして、数々の大規模システム開発においてプロジェクトマネージャーを歴任し、2021年、同社代表取締役に就任。現在は、次期経営層の育成や、新規事業としてVR事業やベンチャー企業との資本・業務提携を進めるなど、外部企業との連携に取組む。同時にバックオフィスコンサルティングを手掛ける株式会社ディ・エフ・アイの代表取締役、不動産登記ソリューションを手掛ける株式会社ホームズの常務取締役を兼務。
1974年生まれ、秋田県男鹿市出身。卒業後国内上場企業を経て、ITベンチャーへ入社。システム開発に携わる。2006年、アビックシステムの立ち上げメンバーとして参画。アビックシステム社としてそれまでになかったITインフラ業務部門を設立。その後、新規事業としてxR事業部を立ち上げる。現在は『VRゴルフレンジ』の責任者として企画立案から開発業務に従事。
1975年生まれ、大阪府大阪市出身。卒業後都内ソフトウェア会社へ入社。システム開発に携わる。2006年、アビックシステムの立ち上げメンバーとして参画。同社システム開発事業にて金融から官公庁まで幅広いシステム開発に従事。現在はxR事業部に参画し『VRゴルフレンジ』を主軸にその他VR研究開発業務に従事。
2007年、大学卒業後、バックオフィスを専門とするコンサル会社に入社。2008年、新卒2年目から新規事業の立ち上げ等を経験し、西日本エリアの責任者として中小企業の決算業務を担当。2013年、小学校からの同級生である古田と2名で株式会社だんきちを設立。
M&Aクラウドなら、未経験の中小企業でも取り組みやすい
――アビックシステム様は、システム開発をメインに事業を展開されています。今回、出資を検討されたのには、どのような経緯があったのでしょうか。
佐々木 私が2021年に代表取締役社長に就任し、”第二の創業期”を迎えたので、何か新しいことをやりたいと考えていました。情報収集もかねて経営者と交流している時に、M&Aクラウドの営業担当者と知り合ったのが、出資を考えるようになったきっかけです。
M&Aクラウドは、手頃な費用で自社のページを作成し、協業企業を募集できる。また、「M&A・出資に積極的に取り組む企業です」と対外的にアピールすることで、ブランディングや採用活動にもプラスの効果が期待できる。そう考えて募集ページに情報を掲載することにしました。
――そもそもM&A・出資の目的はどのようなものだったのでしょう。
佐々木 最も大きな目的は、当社の新製品『VRゴルフレンジ』を一緒に育ててくれる企業を探すこと。社員の発案により開発した、VR環境でゴルフトレーニングができるサービスなんですが、どう販売していくか悩んでいました。そこで、事業シナジーが発揮できる会社に出会えたらいいなと思っていたんです。
ーー一方のだんきち様は、スポーツなどのオンラインレッスンを提供するサービスと、オンラインレッスンのシステムを提供するサービスの2つをメインに展開されています。どのような経緯でM&Aクラウドに登録されたのでしょうか。
与島 元々、事業拡大のために資金調達の活動をしていて、既存株主からの紹介や独自のルートで知り合ったベンチャーキャピタル・個人投資家の方から出資してもらっていました。そんな折、知人からM&Aクラウドを紹介してもらったんです。プラットフォームで資金調達というのは初めてだったんですが、「物は試しだ」ということで登録しました。
ーーM&Aクラウドは、事業会社から資金調達ができるという大きなメリットがありますが、だんきち様のニーズとは合致していましたか。
与島 むしろビジネスモデル上、事業会社からの資金調達は相性が良さそうだと思っていました。当社は、コロナ禍よりもずっと前の2013年から「オンラインレッスンならではの良さ」を最大限に生かすノウハウを蓄積してきました。
また、BtoCとBtoB、双方の事業を展開しているため、スポーツと親和性があったり、教育関連の事業を展開されていたりする事業会社と連携できれば、クロスセル等でシナジーを生み出せるイメージがありましたね。
ーー実際、M&Aクラウドを使った印象はいかがでしたか?
佐々木 募集ページ掲載に当たり、ランニングコストがかからないのが魅力的でした。ページ公開後も、自社で記事を編集でき、しかも成功報酬もリーズナブル。M&Aは大企業がやるものと思い込んでいましたが、M&Aクラウドなら中小企業でも手軽に検討できると思いました。営業担当者からは他の経営者を何人も紹介していただきましたし、コスト以上の効果があったと感じます。
与島 M&Aクラウドは、インターフェースが特にわかりやすかったですし、マッチングから面談までの流れがスムーズだと感じました。出資してくださる企業の情報が詳しく載っているおかげかもしれませんね。
募集開始から1週間足らずで、「ストライク」な出会い
――アビックシステム様は、2022年3月にM&Aクラウドで記事を掲載されたことをきっかけに、社内で研究会を立ち上げたそうですね。
佐々木 それまでは、M&Aや出資はしたこともないし、検討もしていませんでしたので、経営者として勉強する必要がありました。でも、M&Aや出資ってなかなかできない体験で、経営者だけが携わるのはもったいない。社内のみんなに関わってほしいと思い、入社2年目の社員が発起人となって研究会を設立しました。
この研究会では、企業分析の方法やM&Aや出資に関する用語など、基本から一緒に毎月勉強しています。現在のメンバーは約10名。今回の出資の意思決定にも関わりました。
ーーアビックシステム様の、会社全体で取り組んでいこうとする姿勢がとても伝わります。そして、アビックシステム様の記事が掲載されてから1週間経たずして、だんきち様がアビックシステム様に打診されますね。
与島 当社としては、オンラインレッスンの土台を固め、ゆくゆくはVRを活用したサービスにアプローチしたいと考えていたんですが、自社だけではハード面に手を出せなくて。同じ思いを持つ企業とご一緒したいなと考えていたときに、アビックシステムさんが『VRゴルフレンジ』の事業を立ち上げていらっしゃるのを知り、打診しました。
佐々木 当社にとってはこれが最初の打診だったんですが、いきなりストライクだぞと(笑)。オンラインスポーツレッスン事業ということで、驚きましたね。
――打診の翌日に、オンラインでの面談を設定されていることからも、その興奮度合いが伝わってきます。初回面談の印象はいかがでしたか。
佐々木 予想を超えていい要素が出てきたという印象です。当社のVRは、現時点ではゴルフ練習に特化していますが、だんきちさんの得意領域であるダンスや野球などにも当てはめられると考えました。
また、だんきちさんは事業拡大の中でプロ野球チームや球場運営会社とのパイプを培われていたので、お互いの営業チャネルを合わせることで相乗効果がありそうだなと期待しました。
さらに、地方創生ビジネスでの協業の可能性も見えてきたんです。当時、当社では、在宅勤務が増えて気分転換できずストレス過多の社員が増えるという課題を抱えていました。その課題を解決すべく、新潟県糸魚川市でのワーケーション制度の導入を決定。自然が豊富な環境で社員に働いてもらえば、健康を維持しつつ、しかも地元の企業とつながりができて、地方創生に役立つのではと考えたんです。
この地方創生ビジネスの方向性と、だんきちさんの「地域間の格差をなくす」というポリシーが非常にマッチすると考えました。例えば、だんきちさんのアプリを地方の学校や企業に提案するといった展開もできると思いましたね。
与島 私も、最初から「イメージが近しいな」と思いました。双方が作りたいレッスンの世界観が似ているというか。当社は「スポーツレッスンの新しい歴史を創る」というビジョンのもと、様々な制約をオンラインで解決することを目指しています。
特に私自身、生まれが鹿児島県の奄美大島なので、場所の制約を解消したいという強い思いがありました。アビックシステムさんとお話しする中で、地域格差をなくすことができた暁には、VRと連携させてレッスンの質をさらに上げるという次の段階も見えてくるのではと感じましたね。
10対1のオンライン面談で質問攻め。理想に向けた着実な努力が決定打に
――初回面談でシナジーのイメージが掴めたとのことですが、その後はどのようにやり取りを進められたのでしょうか?
伊藤 与島さんに当社オフィスにお越しいただいて、社員を紹介したり、VRゴルフレンジを体験してもらったりしました。それから飲みに行き、創業の思いなどを聞きましたね。
3回目の面談は4月の終わり。オンラインで、当社の研究会のメンバー10人ほどで与島さんを質問攻めにしました。1時間半くらいの長時間にわたったのですが、与島さんはすべての質問に明確に答えてくださいました。
越智 私はそのオンライン面談の最後に、「なぜこの事業を始めたのか。どこにモチベーションあるのか?」と質問したんです。その時の回答に、与島さんの熱量と知識が見え、心を奪われました。大好きなスポーツで社会貢献したいという思いを抱いている人は多い。ただ、それをきちんとビジネスにも結びつけるのは難しいんです。
与島さんはその理想の実現のために、一歩一歩着実に努力されていることがわかり、一緒にビジネスを進めることは当社にとってもプラスになると思いましたね。
佐々木 面談後は、研究会でのディスカッションです。「時期尚早ではないか」という意見もありましたが、最終的には与島さんの思いが心に響き、全員が合意しました。
その後、5月に私たちが大阪にあるだんきちさんのオフィスを訪問しました。社員の皆さんとお話しして、働いている人の雰囲気や、会社の理念や経営者の思いがどれくらい浸透しているかを調べたのですが、思っていた通りのいい会社だとわかりました。
与島 現場メンバーとミーティングしてもらえたのは、当社としてもありがたかったですね。イメージのすり合わせが綿密にできたと思います。
スポーツテックと地方創生で、さらなるビジネス拡大を目指す
――今後はどのように協業されるのでしょうか。
佐々木 当社はいい製品を作ることに専念して、だんきちさんのマーケット展開を後押ししていきます。将来的にだんきちさんの事業が伸び、当社のVRもうまく絡めれば、スポーツテックとしてビジネスの広がりが期待できます。
また、当社の持つ自治体とのパイプを生かして、部活動教育の地域格差をオンラインレッスンのサービスで埋めていくなど、いろいろな施策に挑戦していきます。
与島 私としても、スポーツにおける地域格差を解決する第一歩だと思うので、がんばりたいと思います。
ーースポーツテックと地方創生の両輪で、協業されるのですね。最後に、今後の展望や他の企業へのメッセージをお聞かせください。
佐々木 まずは、だんきちさんとの協業に全力を尽くす予定ですが、M&Aクラウドでの募集も社内の研究会も続けたいと思います。特に、業務提携パートナーは大歓迎です。
与島 私も同様に、まずはアビックシステム様との連携体制を確立していきたいと思います。同時に、週に1回最低1時間はM&Aクラウドを開いて、資金調達を続けていきます。特に、注目してもらえるような工夫は常にしていきたいですね。出資企業の担当者に選んでもらうためには、やはりファーストインプレッションが重要なので。今後の出会いにも期待しています。
――本日は貴重なお話をありがとうございました。
■本ディールの経緯
2021年11月29日 だんきちが『M&Aクラウド』に登録
2022年3月22日 アビックシステムが『M&Aクラウド』に登録
2022年3月29日 だんきちがアビックシステムに打診
2022年3月30日 初回面談(WEB アビックシステム:佐々木様・伊藤様 だんきち:与島様 双方の事業概要の説明)
2022年4月12日 2回目面談(対面 与島様がアビックシステムオフィスを訪問し、社員と交流・VR体験)
2022年4月26日 3回目面談(WEB アビックシステム:研究会メンバー だんきち:与島様 意見交換会)
2022年5月16日 4回目面談(対面 佐々木様・伊藤様・越智様がだんきちオフィスを訪問し、社員と交流)
2022年6月13日 最終契約
=======
本ページに掲載している情報には、M&Aが成立するに至る経緯に加え、インタビュー時点での将来展望に関する記述が含まれています。こうした記述は、リスクや不確実性を内包するものであり、環境の変化などにより実際の結果と異なる可能性があることにご留意ください。