「すべてのゲーム開発者が活躍できる環境を」アドバーチャとメテオライズが描く、ゲーム内広告の新しい世界

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「すべてのゲーム開発者が活躍できる環境を」アドバーチャとメテオライズが描く、ゲーム内広告の新しい世界

2025年5月30日、ゲームをはじめとしたデジタルコンテンツ開発を事業の中心とする株式会社メテオライズは、ゲーム内広告の配信システムを提供するアドバーチャ株式会社と、資本業務提携契約の締結を発表しました。

資金調達クラウドで出合った2社がどのように成約に至り、現在どのような協業を行っているのか。株式会社メテオライズ 代表取締役 渡邉 幸二氏と、アドバーチャ株式会社 代表取締役CEO 水野 征太朗氏にお話を伺いました。

プロフィール

株式会社メテオライズ 代表取締役 渡邉 幸二(わたなべ・こうじ)

大学卒業後、タムソフトに入社。エンジニア・ゲームディレクターを経験した後、更なるエンジニアリング技術向上を目指し、株式会社トライエースの研究開発部門に転職し、インハウスゲームエンジンの開発エンジニアとして従事。その後、2010年にスマートフォンゲームの可能性を見据えて起業、2012年株式会社メテオライズの代表に就任。2021年には、アルファ・システムとの資本業務提携をし、グループ各社の代表を務め現在に至る。

アドバーチャ株式会社 代表取締役CEO 水野 征太朗(みずの・せいたろう)

学生時代からインディーズゲーム開発者として、複数のゲームを開発・リリース。名古屋大学経済学部を卒業後、アビームコンサルティング株式会社にて、メタバース/XR/センサーなどの先端技術を用いたソリューション提案・開発に従事。その後、アマゾンジャパン合同会社にてデータ分析・ツール開発・プロセス改善等を経験。2022年にアドバーチャ株式会社を創業。

「ゲーム体験を損なわない」新しいかたちのゲーム内広告配信

アドバーチャ株式会社 代表取締役CEO 水野 征太朗氏
アドバーチャ株式会社 代表取締役CEO 水野 征太朗氏

——まず、アドバーチャの事業内容を教えてください。

水野:当社は、ゲーム開発を行っている企業や個人に向けて、ゲーム内に広告を配信するシステム『アドバーチャ』を提供することを主軸としています。ノーコード導入も可能なため、各種システムアップデートに対応する作業工程を一気に削減できるのが一つの強み。また、専門知識がなくても容易に導入できるため、インディーズ開発者の方にとっても活用しやすいのが特徴です。

また、画面切り替えの際に全画面広告が出るインタースティシャル広告と異なり、ゲーム内の風景、たとえば建物の看板やビジョンなどに自然なかたちで広告を表示できることから、広告主にとってはプレーヤーに無意識下の刷り込みができるなどのメリットもあります。このようなタイプの広告を提供している日本企業は少なく、当社はその普及を牽引していこうとしています。

——ゲーム内の広告配信に着目された創業に至った経緯は。

水野:幼いころからインディーズゲームの開発者としても活動をしているのですが、VRゲームを開発しようとしたときに、ユーザーからの課金に頼ったマネタイズ手段に課題を感じたことがあったんです。モバイルゲームのように、無料、もしくは安い価格で配布して、広告で回収をするかたちの方が、もっと多くの方に楽しんでいただけるなと感じ、広告配信システムからプロトタイプとして作り始めたんです。それを作ってるうちに、ゲーム自体を広めるよりも、この広告配信システムを広げた方が面白いかなと思い、2022年にアドバーチャを創業しました。

現在は、国内のみならず、韓国、中国、インドといったアジア圏に浸透させていき、アジアのゲーム内広告の代名詞となる企業を目指しています。すでに韓国や中国籍のメンバーも関与しており、多言語対応も進めています。その後はアメリカを含めた世界でへ展開していきたいと考えています。

——今回、資金調達クラウドを利用したきっかけは。

水野:当初は、VCなども含めてさまざまな手段を検討していましたが、同じ方向を向いてビジネスを大きくし、ともに利益をあげていける事業会社からの資金調達の方が、私たちにとっては前向きな事業成長につながると考え、資金調達クラウドを利用することにしました。

その中で、もともとはゲーム系企業、広告系企業との協業は視野に入れていました。ただ、ゲーム業界出身ではない私には、業界とのパイプがあまりありません。それをカバーし、かつシナジー効果を得られそうな企業を探していました。その結果、自然とゲーム系企業に視線が向き、資金調達クラウドを通じてメテオライズさんとのご縁に繋がったのです。

多岐にわたるプラットフォームとジャンルを網羅

株式会社メテオライズ 代表取締役 渡邉 幸二氏
株式会社メテオライズ 代表取締役 渡邉 幸二氏

——次に、メテオライズの事業内容を教えてください。

渡邉:簡単に言えば、私たちはゲーム開発の会社です。特定ジャンルのゲームに特化しているというより、RPGやアクション、スポーツなど、あらゆるプラットフォーム、ジャンルのゲームを開発しています。コンシューマーとソーシャルゲーム、全てのプラットフォームにおいて開発実績があるのが、当社の開発会社としての強みです。

私自身も前職からさまざまなゲームプラットフォームやジャンルを手がけてきたので、どこか特定の分野に特化するのではなく、あらゆるプラットフォーム、あらゆるジャンルに挑戦していきたいと考えています。

また、最近では、M&Aでグループ化した非ゲーム系の会社との連携も試みています。ゲームで培ったナレッジやテクノロジーで、非ゲーム領域のコンテンツをエンタメ色を強めたクリエイティブに変換し、よりリッチで継続性の高いサービスにするという挑戦を始めています。

——M&Aクラウドのサービスにはいつ登録されたのでしょうか。

渡邉:M&Aクラウドには、2022年頃に登録しましたね 。M&Aのマッチングサイトとしては、コロナ禍でM&Aが活発になり始めた頃に、大手仲介の下請け的な位置付けではない、いわゆるマッチングサイトとして目立っていたので、新鮮だなと思って登録したのを覚えています 。

また、これまで私自身M&Aを長年経験してきているのですが、M&Aクラウドのようなプラットフォームサービスだけでなく、他社のエージェントサービス含めて幅広く登録をしています。さまざまな案件に触れることで、その業界ごとのトレンドや縮図などをリアルに感じることができるので、ある意味ビジネスとしてのトレーニングにもなるんですよね。そのため、届いた打診や案件については一つひとつ目を通し、「なんだかワクワクするな」と感じた案件には常に注目するようにしています。

互いの熱意を強く感じたからこそ、2回の面談で成約へ

——初回面談に至った経緯と、相手の印象を教えてください。

渡邉:今回は、アドバーチャさんから打診をいただきましたが、アドバーチャさんはゲーム内動画広告配信システムの提供企業として国内知名度が高く、対応ゲーム数も多い。事業内容やビジョンにワクワクしましたし、この企業とであれば今よりもっと面白いことができると感じたことから、お会いしてみることにしたんです。

——面談はどのように進んだのでしょうか。

渡邉:オンラインで1回、対面が1回の合計2回です。最初のオンラインでは、水野さんから丁寧な事業紹介をしていただきました。事業内容には元々興味があったのですが、画面越しでは感じ取りにくい人間性を直接会って確認したいと思い、2回目は会食をしながら面談を行わせていただきました。

——実際にお会いしてみて印象はいかがでしたか。

水野:渡邉さんと直接対面して、改めて「非常に話しやすい人だな」と感じました。面談には渡邉さん含め3名の方が参加されましたが、全員に対して同じ印象を受けました。出資いただくということは、今後長期的なお付き合いが発生することと同義です。この方々なら長い期間一緒に仕事をしていくのにストレスのない、良好なパートナーとして関係を築けるだろうと考えました。

渡邉:実際にお会いして感じたのは、水野さんの熱意でしたね。実は昔、ゲーム内の動画広告をやろうとする会社はあったのですが、インターネットのインフラが未熟でビジネスにならなかった経緯を知っていました 。しかし、水野さんとお会いし、その情熱と「ゲーム内動画広告で世界を挑もう」という熱意に触れ、この人となら、面白いビジネスができるかもしれないと感じました 。

深く話を聞いていくほど、一緒にビジネスを展開すれば高いシナジー効果が得られるとの予感が強まりましたね。他の会社との協業なら単純にゲームの背景に広告を映り込ませるだけかもしれませんが、我々なら広告自体をゲーム性にするようなチャレンジングなタイトルも作れる。そこに当社と技術提携する意義があると思いました 。アドバーチャに当社の技術をプラスして、さらにクオリティの高いゲームを開発したいと考えたのです。

——どのタイミングで一緒に協業されることを決めたのでしょうか。

渡邉:初回面談の時点で事業やビジネスについては高い関心を持っていましたが、最終的には水野さんと実際にお会いした時に感じた情熱と熱意で決めました。また、水野さんはすでにアジア圏を足がかりに、世界展開を考えていた。そこにも共感もしたし、このタッグが新しいゲームジャンルを生み出すロールモデルになれば、インディーズの裾野も広がっていくと期待しました。

水野:私も対面の面談を通じて、話しやすさを感じましたし、渡邉さん含めてメテオライズさんとなら長く良い関係でビジネスを進められると感じましたね。

ゲーム業界の潮流を「創る」存在へ

——成約から現在までの協業状況を教えてください。

渡邉:私が持つゲーム業界のコネクションを、水野さんにどんどん紹介していくと同時に、ゲーム内動画広告をより有効的に使えるゲームタイトルを模索中です。また、ゲーム内動画広告自体がゲームの装飾のような存在ではなく、有機的に実装されていても面白い、そんなアイデアも持っています。それらの「一歩」を踏み出すため、水野さんには積極的に周知活動を行ってほしいと期待しているところです。

水野:もちろん私たちとしても、その点には力を入れたいと思っています。定期的に実施されるインディーズゲーム博覧会があるのですが、そこへの参加も決めました。自社のブース内は他のスタッフに任せ、私は各社ブースを回って交流や情報発信をしていく予定です。

——中長期で描いているビジョンについて教えてください。

渡邉:当社グループには、非ゲーム系企業も参画しています。ですから、今後はゲームで培ったナレッジ、テクノロジーを活用し、エンタメ色の強いクリエイティブな非ゲーム領域のコンテンツ開発も目指していくことになる。もちろんゲーム開発も継続して力を注ぎますが、『アドバーチャ』を利用したコンテンツだけでなく、ゲームの裾野を広げるプロジェクトも立ち上げていきます。

水野:ゲームを使ったプロモーションは、ゲーム内に広告を出す以外に複数考えられます。若者は毎日2時間程度をゲームに費やすと耳にしたこともありますし、その時間に対して効果的なプロモーションを展開していく必要があるでしょう。また、それを広告等出稿側にも知ってもらうのは重要事項になるので、『アドバーチャ』を活用してもらうことに加え、その種の情報提供は継続して行っていきます。

——今後、ゲーム業界はどのように変わっていくとお考えですか?

渡邉: 今、ゲーム業界は「大不況」なんです 。目立ったプロジェクトもありませんし、コロナ特需のような盛り上がりはありましたが、今は冷え込んでいる時期です 。しかし、逆に言えばタイトルが少ないので、埋もれない状況です。だからこそ、今できることを我々がやりたい。その一つが、ゲーム動画広告を活かしたゲーム作りだと考えています 。

水野: 新しいゲームを作っても売れにくい時代です 。『Minecraft(マインクラフト)』のように長く遊ばれるゲームが多い中で、どうやって突破口を広げるか。当社としては、ノーコードで簡単に導入できる強みで、息の長いゲームに取り込んでもらう。また、売上に困っているゲーム会社さんにマネタイズ手段を多様な形で提供することで、長期的に業界を支えていきたいと考えています 。潮流が変わった時に、日本のゲーム業界が再び伸びていくよう、影から支えられれば良いなと思っています 。

——最後に、今回資金調達クラウドを利用してみての感想はいかがですか。

水野:当社は事業会社から資金調達することを決めた頃から、資金調達クラウドさんをアクティブに活用し始めました。プラットフォームですが、担当の方も密にコミュニケーションをとっていただいた印象がありますし、そういった意味では使いやすいサービスだと感じています。

渡邉:私は比較的長く複数のM&Aエージェントさんとつながっていますが、M&Aクラウドさんは、日本でM&Aが活発化した初期から、プラットフォーマーとして業界内で目立っていたように思います。今回資金調達クラウドを通じてのご縁をいただいたのは、マッチングに大切なタイミングがぴったり合ったからですが、他社と比べても「なかなか良いプラットフォーム」だと感じました。

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