最先端の環境技術を持つ研究開発型企業が、陸上養殖のスタートアップに出資。最適なパートナーを得てIPOへと突き進む!

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最先端の環境技術を持つ研究開発型企業が、陸上養殖のスタートアップに出資。最適なパートナーを得てIPOへと突き進む!

脱炭素、カーボンニュートラル社会の構築に向けた環境・エネルギー分野の最先端技術や材料の研究開発を行っているGSアライアンス株式会社は、エビの陸上養殖を通して地球環境の改善を図るスタートアップ、株式会社Seaside Consultingへ出資を行いました。

資金調達クラウドで出会った両社が、どのようにして信頼関係を築き、成約に至ったのか、GSアライアンス代表取締役の森 良平氏と、Seaside Consulting代表取締役の平野 雄晟氏にその経緯を伺いました。

プロフィール

GSアライアンス株式会社 代表取締役 森 良平(もり・りょうへい)写真左

京都大学大学院の工学研究科にて工学博士過程を終了した後、日本写真印刷株式会社に入社。その後、祖父が創業した冨士色素株式会社に入社し、代表取締役に就任する。技術だけでなく、さらなるビジネス展開の拡大の側面も学ぶために、ハーバードビジネススクールのGMPを取得。代表を勤めながら、2010年に同社の関連会社としてエネルギーや環境分野の材料の研究開発を行うGSアライアンス株式会社を設立した。

株式会社Seaside Consulting 代表取締役 平野 雄晟(ひらの・ゆうせい)写真右

1992年、同志社大学経済学部を卒業。大手保険会社のセールスマンを勤めながら、2008年に通信制のビジネススクール、ビジネス・ブレークスルー大学院大学でMBAを取得。2015年、環境商材の販売を行う株式会社Global Green Marketingを設立した。その後、中国科学院海洋研究所(青島)において、バナメイエビの養殖実験、およびマイクロ/ナノバブル発生装置の実効性検証実験を実施。2017年、株式会社Seaside Consulting設立した。

設備投資大きい陸上養殖のスタートアップ 苦戦する資金調達に差した光明

株式会社Seaside Consulting 代表取締役・平野 雄晟氏(左)
株式会社Seaside Consulting 代表取締役・平野 雄晟氏(左)

――平野さんはどのような経緯でエビ養殖事業を始めたのでしょうか?

平野 私は前職の保険会社時代に、ビジネススクールのビジネス・ブレークスルー大学大学院で学び、MBAを取得しました。その後、環境商材の販売を目的とする会社を立ち上げ、妻とともに運営していました。ある時、陸上養殖のキーとなるファインバブル発生装置に出会い、学びを深めていたのですが、その過程で、従来のエビ養殖は環境負荷が非常に大きいことを知りました。そこで、陸上養殖技術を確立し、環境に配慮した持続可能なエビ養殖を実現しようと、2017年にSeaside
Consultingを設立しました。

――これまではどのような資金調達を行ってきましたか?

平野 事業の将来性や公益性からして、いずれはIPOまで持っていくべきだと考え、それを前提に資金調達を進めてきました。最初は、ビジネス・ブレークスルーのスタートアップ起業家支援プロジェクト(SPOF:背中をポンと押すファンド)からの出資が最初の資金調達でした。ある意味で箔付けのようなかたちで、少額を投資していただきました。

次に、5,000万円を目指して資金調達ラウンドをスタートしたのですが、それが3年ほど前から現在まで続いています。このラウンドでは、元インフォマートの長濵修さんがエンジェルとして投資して、背中を押してくださいました。その後は、今回のGSアライアンスさんと出会うまで、大きな資金調達はできていなかったのが実情です。

――資金調達クラウドのサービスを知ったのはどのような経緯からですか?

平野 知り合いの経営コンサルティング会社の方から教えていただき登録しました。そして30社ほどにアプローチをして、すぐに数社から返事をいただきました。1社はとても興味を持ってくださったのですが、創業140年の老舗企業で、意思決定に時間がかかるということで、なかなか話が進まず。もう1社も同様でした。

その後、当社は社外CFOと契約し、そのCFOが資金調達クラウド上で多数の事業会社にアプローチをしてくれました。そこで出会えたのがGSアライアンスさんでした。

オンライン面談の直後に「明日そちらに行こうと思う」

GSアライアンス株式会社代表取締役・森 良平氏
GSアライアンス株式会社代表取締役・森 良平氏

――GSアライアンスが、今回、Seaside Consultingに興味を持った理由を教えてください。

森 当社は環境やエネルギーの分野で最先端の研究開発を行っている会社です。当社とシナジーのある領域での買収先・出資先をM&Aクラウド・資金調達クラウド上で探していました。これまで20件くらいは検討したと思います。

環境技術のなかでも養殖や農業には興味があり、どこかのタイミングでビジネスに関わりたいと思い、案件があれば欠かさずチェックしていました。ですから今回、Seaside Consultingさんから打診が来た時は「ぜひすぐに面談したい」とお答えしました。

――これまで他の会社に出資した経験は?

森 京都大学発のスタートアップ企業で、ペロブスカイト太陽電池の開発に取り組んでいる株式会社エネコートテクノロジーズや、水素と二酸化炭素の化学反応から合成液体燃料を精製する技術を持つイーセップ株式会社に出資しました。ブレークスルーする可能性のある技術を持つ企業を対象に、早い段階から出資したいと考えています。

いずれもネット検索などで情報収集し、興味のある技術を見つけて、自力で直接アプローチして出資につなげました。自分で一から出資先を探しますから、候補先を探すのも骨が折れるんです。その点、M&Aクラウド・資金調達クラウドは非常に便利ですね。売却・資金調達したい企業が集まっていて、自社の技術やビジネスを端的にアピールしていますから、案件を探しやすいです。

――GSアライアンスは兵庫県、Seaside Consultingは千葉県の会社ですから、初回はオンライン面談でしたね。第一印象は?

平野 いつも投資家の方と最初に面談するときは緊張してかしこまっているのですが、森さんは初めてお話ししたにもかかわらずとてもフランクで、話しやすく好感を持ったのを覚えています。森さんとだったら、率直に「面白い取り組みがいろいろとできそうだな」と感じました。森さん自身のこともお話しいただき、経営者としての確かな心構えや、環境問題に対する熱い思いをお持ちであることがわかりました。

面談を終え、「今回は今までで一番手応えがあった」と思っていたら、すぐに森さんから電話がかかってきて、「明日そちらに行こうと思うのですが」と(笑)。フットワークの軽さにビックリしましたよ。翌日に当社を訪問いただいて、さらにじっくりとお話ができました。

森 近日中に海外に行く予定があり、次の面談まで間延びしてしまったら絶好の機会を逃すかなと思って、無理を押して行くことにしました(笑)。でも、すぐにお会いして正解でした。

――森さんが会いに行きたくなるような面談だったのですね。

森 面談を通じて、まず技術的なベースがあるし、平野さんの考え方がしっかりしていると感じました。またエビの陸上養殖ビジネスについても、食糧問題が今後ますます深刻化する事から考えても、大きな可能性があると感じました。

それと同時に、スタートアップの大変さも伝わってきました。GSアライアンスもスタートアップ企業のようなものですから、ビジネス立ち上げのつらさはよくわかります。でも当社の場合は冨士色素という親会社がいるので、生きるか死ぬかというほどの深刻さはありません。それに比べるとSeaside Consultingさんは、後ろ盾がないなかで戦っている。これは応援してあげなければと思いました。

大切なのは将来性 社内の反対を押し切って出資を決めた

――契約に向けた交渉を進めるなかで大変だったことは何ですか。

平野 デューデリジェンス(DD)の大変さが想定外でした。当社はCFOを入れて1年ほどなので、会計回りはまだ整備しきれていないところがあります。そのためDDでは、GSアライアンスさん側の会計士の方からかなり細かいところまで突っ込まれて、対応するのに一苦労でした。

DDは2、3カ月続きました。その間も森さんはいつも心配してくださって、海外からでも電話をくださいました。おそらくDDを経ても不十分だったところは多々あると思います。しかし最終的には、森さんの気概で出資を決めていただきました。

森 社内からは今回の出資に対して反対意見もあったんです。決算書の内容があまり良くないからと。でもスタートアップですから、財務がピカピカなわけがないですよね。それよりも持っている技術や、ビジネスの将来性を見るべきだと説得し、出資を決めました。

平野 出資していただけると知ったときは、本当に嬉しかったです。事業会社からの資金調達に成功したのは今回が初めてなのですが、株主に報告したら、「個人のエンジェル投資家からの投資と事業会社からの投資ではまるで格が違う。すごい!」と評価していただきました。そして、この流れを逃さずに次の資金調達も進めるように言われています。資金調達クラウドでも引き続き出資企業を探していきます。

資金調達がつないだパートナー 技術の組み合わせでIPO目指す

――今後両社ではどのようなかたちでの協業をお考えでしょうか?

平野 事業会社同士ですから、シナジーを発揮しなければと思っています。そこでまずは、GSアライアンスさんの持つさまざまな商材・技術について、当社としてもっと知見を深めたい。その上で、それらの技術を陸上養殖に役立てる方法を検証していきます。

最も注目しているのは、2023年のノーベル化学賞を受賞した「量子ドット」の関連技術である、「量子ドットフィルム」。GSアライアンスさんの量子ドットフィルムと、当社の技術を組み合わせることで、陸上養殖の効率が大きく上がる可能性があるとにらんでいます。

森 いろいろな環境技術を持つ当社と、陸上養殖の第一人者であるSeaside Consultingさんのコラボレーションでなければできない技術やビジネスを確立したいですよね。以下に、平野様からコメント頂いているように、平野さんとも、生涯にわたりパートナーシップを続けさせて頂ければと思っています。実際の具体的な今後のアイデアも、既に平野さんとも相談し始めています。

平野 私は45歳で起業し、環境技術で地球環境を改善することに人生を捧げると決めました。エビの陸上養殖はその一つの手段に過ぎません。ですから陸上養殖でIPOを果たしたら、次の環境技術にも取り組みます。その際も、森さんにご協力いただきたいと思います。生涯にわたりパートナーシップを続けていきたいと思います。

――最後に、これから資金調達に取り組もうとしている会社にアドバイスをお願いします。

平野 現在の日本では、投資家とスタートアップの間で心地よい関係ができていないと懸念しています。たとえば、スタートアップの起業家が、多額の資金調達に成功したり、IPOを実現したりした後に、牙をもがれたように守りに入ってしまうことはよくあります。その結果、本当の意味で社会を変えるほど事業を大きくグロースさせられていない。一方、投資家側も、リターンだけを重視するあまり、金融機関の監査のように石橋を叩いてしまう。

しかし、本来のスタートアップは、社会を変えるために、どこまでも茨の道を突き進んでいくものだと思う。そして時価総額1兆円を超えるような企業を目指すべき。投資家側も、そのようなチャレンジする起業家を応援することが大切だと思います。お互いがそのように認識し合えば、日本からもメガベンチャーが生まれるのではないでしょうか。ぜひともM&Aクラウドには、そんな気概のある起業家・投資家を上手くマッチングさせてほしいですね。

森 ビジネスが成功するかしないかは、最終的には起業家の強い意志だと思うんです。どんなにつらくても、数十年かかっても、絶対に成し遂げるという意志です。そのような強い意志を持った平野さんに出会い、投資をさせてもらったことは非常に貴重な機会ですし、強烈なパワーをいただきました。今後も力を合わせてさまざまな取り組みをしていきたいですね。

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