【東京カンテイ×Digital Platformer】“利他”の精神でつながった2社が、ブロックチェーン技術を武器に不動産データベースをアップデートへ!

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【東京カンテイ×Digital Platformer】“利他”の精神でつながった2社が、ブロックチェーン技術を武器に不動産データベースをアップデートへ!

ブロックチェーン技術を採用したSaaSプラットフォームを提供するDigital Platformer株式会社は2022年4月8日、シリーズA資金調達ラウンドにおいて、不動産専門のデータ会社である株式会社東京カンテイなど4社から総額3億円の資金調達を実施。その後、東京カンテイとの資本業務提携を発表しました。

オフラインでのマッチングをサポートするM&Aクラウドのファイナンシャルアドバイザリーチーム、M&A Cloud Advisory Partners(以下、MACAP)の支援により出会った両社が、どのようにしてパートナーとなったのか。交渉の経緯や今後の展望について、株式会社東京カンテイ 総務経理部 兼 経営企画室 副部長の小澤 崇秀氏(写真左)、同 経営企画室 DX推進課 課長の井上 泰規氏(写真中央)、Digital Platformer株式会社 代表取締役CEOの山田 芳幸氏(写真右)にお話を聞きました。

プロフィール

株式会社東京カンテイ:小澤 崇秀(おざわ・たかひで)

1997年、慶応義塾大学商学部卒業、監査法人トーマツにて精密機械メーカー・小売業等の監査に従事。不動産鑑定士になるため、2005年に株式会社東京カンテイに入社。入社1年間は鑑定業務に従事。2年目以降は、創業者オーナーとともに新規事業に取組み、大手ハウスメーカーとの共同事業会社等、3つの新規事業会社の立上に参画。 現在は、2代目経営者とともに「不動産を笑顔に」するために必要なサービス・技術要素の 習得に向けて、外部企業との連携に取組む。

株式会社東京カンテイ:井上 泰規(いのうえ・やすのり)

ネット証券会社のバックオフィスからITスクールに通い、2009年に東京カンテイに入社。エンジニアとして数々の不動産情報サービスの開発に携わる。その後、事業会社立上げのスタートアップメンバーとして出向し、仲介業務や広告掲載システムのスクラッチ開発をリーダーとして牽引。帰任後は、金融機関向けサービス開発でプロジェクトマネージャーを歴任し、2020年より幅広い不動産関連システムの開発経験を生かして、経営企画室にてDX推進を担当。

Digital Platformer株式会社:山田 芳幸(やまだ・よしゆき)

神奈川大学法学部卒業後、株式会社日本ソフトバンク(現ソフトバンク株式会社)新卒二期生として入社。営業部門に配属され、IT関連プロダクトの販売責任者並びに新規事業(現SOFTBANK Technologies)等の立ち上げに携わる。 その後、スリーコム株式会社 (現三井情報株式会社)に入社し、チャネルセールスマネージャーに就任。神奈川県第三セクターの株式会社ケイネット常務取締役を経て、日本初のマネジメントサービスプロバイダーのインターネットマネージ(現アイティーエム株式会社)を設立し、代表取締役社長に就任。退職後は複数の企業の代表取締役として会社設立、並びに事業再生を成功させるなどの経験を持つ。 直近では2019年サービスロボットの会社QBIT Roboticsの共同創業者として設立。

さらなる事業拡大を図るため、シリーズAでは事業会社から資金調達を検討

Digital Platformer株式会社 代表取締役CEO 山田氏
Digital Platformer株式会社 代表取締役CEO 山田氏

――Digital Platformerさんの事業概要を教えてください。

山田:Digital Platformerは、デジタル通貨およびDID(Decentralized Identifier:世界標準規格の分散型ID)を発行するSaaSプラットフォーム『LITA(リタ)』の運営を行っています。

『LITA』はカンボジア中央銀行のデジタル通貨や、ブロックチェーンを利用した国内初デジタル地域通貨『白虎(びゃっこ)』などで採用実績のあるソラミツ社の『ハイパーレジャー・いろは』の上で稼動します。なお、ソラミツ社は当社の株主です。

2021年7月には福島県磐梯町の『磐梯町デジタルとくとく商品券』の発行に、当社の『LITA』が活用されるなど、着々と実績を積んでいます。当社は『LITA』を金融・カード・決済業社や行政などに提供し、DXの実現や地方創生に貢献することを目指しています。

――今回、資金調達を実施された背景を教えてください。

山田:プラットフォームの開発やサービス拡大のために、総額3億円のシリーズAの資金調達を計画していました。2022年3月末までに完了する予定で、数社から出資いただくことが決まっていたのですが、1月の時点で目標額にはあと何割か足りない状況でした。

――資金調達先を探すなかで何か条件はありましたか?

山田:2020年4月に設立したばかりのスタートアップベンチャーなので、これから事業を拡大していかなければなりません。お互いのビジネスにとって相乗効果が見込めるような相手として、事業会社からの資金調達を考えていました。

――M&Aクラウドのサービスを利用したきっかけは?

山田:弊社顧問弁護士に教えてもらいました。まずは軽くお話をして進めていただくことになったのですが、私たちの想像をはるかに超えるたくさんの会社からアプローチがもらえたので。そのうちの1社が東京カンテイさんでした。

長年の事業課題を解決するため、ブロックチェーン関連を中心に出資先を検討

株式会社東京カンテイ 総務経理部 兼 経営企画室 副部長 小澤氏
株式会社東京カンテイ 総務経理部 兼 経営企画室 副部長 小澤氏

――東京カンテイさんが出資を検討していた背景は?

小澤:当社は不動産専門のデータ会社として全国の居住用不動産のデータを収集し、不動産仲介会社様にご利用いただいております。また、不動産鑑定の専門家として、不動産担保評価に関する評価システムを金融機関様にご提供しております。

当社のビジネスの根幹である不動産データベースのセキュリティを高めたり、新たなサービスを開発したりするうえで、以前から注目していたのがブロックチェーン技術でした。

勉強会に参加したり、情報収集したりして、ビジネスへのブロックチェーン技術の活用方法を模索していたものの、なかなか具体的な取り組みには至らず…。

井上:私はDX推進課のリーダーとして全社のDXに取り組んでいたのですが、業務改善などの「内向きのDX」を実現できても、サービス開発などの「外向きのDX」は実現できていませんでした。「外向きのDX」の手段の一つとして、ブロックチェーンに可能性を見出してはいたのですが。

小澤:こういった課題を解決するためにブロックチェーン技術を持つ企業様と連携したいと考えており、その手段の一つとしてM&Aを検討していました。

――M&Aクラウドのサービスを利用したきっかけは?

小澤:2年ほど前、私の所属する公認会計士協会の勉強会で、M&Aクラウドさんが講演をした時にサービス内容を知りました。

それ以前にも、M&A仲介会社から案件の紹介はあったのですが、当社のようなM&Aの初級者にとっては、高級料亭のような入りにくい雰囲気がありました。

一方でM&Aクラウドさんのサービスは、自分たちのペースに合わせて柔軟に利用できるカジュアルさを感じました。そこで無料登録だけして、情報収集したり、たまに売り手企業に打診したりしていました。

そのような背景のなか、今年1月にMACAPのM&Aアドバイザーである井上さんから、ブロックチェーン関連の会社が出資を希望しているとの情報をいただき、すぐに「面談したいです!」と返事をしたことが始まりですね。

「強い縁を感じた」両社に共通していた“利他”の精神

株式会社東京カンテイ 経営企画室 DX推進課 課長 井上氏
株式会社東京カンテイ 経営企画室 DX推進課 課長 井上氏

――最初の面談はいつだったのでしょうか?

小澤:2022年2月15日に情報を提供してもらい、1週間後の2月22日にはオンライン面談をセッティングしていただきました。

――Digital Platformerさんに対する面談時の印象は?

井上:まずは信頼感のある会社だと思いました。東京カンテイは創業から40数年、不動産データを集めるというビジネスを地道にコツコツとやってきた会社なので、社員も真面目なタイプが多いんです。また、金融機関とのお付き合いも多いので信頼性を何よりも重視しています。

その点、実績や経験のある経営陣がDigital Platformerさんにはそろっており、信頼できそうで、当社のカルチャーとも合いそうだと感じました。もし若手経営者が中心のスタートアップでしたら、ブロックチェーンという先端技術を取り扱っているだけに、どこか不安を感じていたかもしれません。

小澤:事業経験が豊富なだけに、それだけご苦労もされていますよね。そこをまず頼もしく感じました。そして、60歳を過ぎてなお、社会を良くするためにもうひと仕事やろうと会社を立ち上げた。そのエネルギーと使命感が非常に素敵だなと思いました。

――山田さんはいかがでしたか?

山田:ありがとうございます。私たちはスタートアップベンチャーですが、役員全員が60歳を超えています。ただ、フィンテックやブロックチェーン業界では実績も、知名度もあるプロフェッショナルなメンバーばかりです。

私が東京カンテイさんに抱いた印象は、真摯な会社だということです。面談前にブロックチェーンに関する書籍を何冊も買って読むなど、熱心に勉強されていて、新しい事業にかける意気込みも素晴らしいと感じました。

――面談時に話したことで印象に残っていることは?

井上:サービス内容を詳しくお聞きし、当社がこれからやろうとしていることとマッチしていると強く感じました。

当社のDX推進のネックとなっていたのは、私たち自身の技術力です。例えば技術力の高いパートナーとDXを進めていくにしても、当社の技術力不足が足を引っ張る懸念がありました。特にブロックチェーンについては技術的に難易度が高い、と。

しかし、Digital Platformerさんに話を聞くなかで、『LITA』というプラットフォームのうえで、当社が実現したいサービスを構築すれば、技術的な敷居も乗り越えられると感じました。

小澤:『LITA』は、そのコンセプトも素晴らしいですよね。サービス名は日本語の「利他」からきていると伺いましたが、当社のサービスも利他の精神が根底にあります。当社の不動産データベースは、会員である不動産会社からデータをご提供いただき、成り立っているものだからです。そういう意味ではDigital Platformerさんと強いご縁を感じました。

山田:『LITA』は、No.1や一人勝ちといった状況を目指しているものではありません。みんなと力を合わせて、いろいろなものをシェアしながら社会変革を実現しようとしています。その部分を評価していただいたことは大変嬉しいですね。

小澤:しかも、Digital Platformerさんの取り組みは、日本の技術で社会を良くすることであり、将来的に日本の大きな財産になると思いました。

そんな素晴らしいサービスがこれから広がっていく過程を、パートナーとしてご一緒できるなんて滅多にないチャンス。自分のなかでは即座に出資したいと思いました。

「今回のラウンドは無理かなと…」初回面談から約1カ月半でスピード出資を実現!

――最初の面談で出資に前向きだったんですね。その後はどのように交渉を進めていたのでしょうか?

小澤:私のなかでは即決でしたが、最終的な決裁権者は当社の社長です。そこで社長に報告するため、面談を終えたらすぐに、Digital Platformerさんへの出資についてまとめたレポートを井上に作成してもらいました。

井上:すぐに作って、といわれました(笑)。

小澤:私、せっかちなんです(笑)。それにDigital Platformerさんが他社とも面談をしているのも伺っていましたし、資金調達の期限も決めていらしたので、すぐにリアクションをとった方がいいと思ったんです。

――面談当日に資料を作成し、社長の判断を仰いだわけですね。社長の返答は?

小澤:現場のメンバーが当社に必要な会社さんというのなら、前向きに行きましょう。そういった反応でしたね。社長の決断を受けてすぐにDigital Platformerさんに出資の意向を表明しました。

ただ、正式な決定は取締役会にかける必要がありました。2022年2月末の取締役会には間に合わなかったため、2022年3月末の取締役会の議案にかけることになりました。そして、3月末までの1カ月ちょっとの間に、Digital Platformerさんと細かいやり取りをして、資本業務提携に向けた協議やDDを進めていったという段取りです。

――そして2022年4月8日、資本業務提携の基本合意についてリリースされました。面談から約1カ月半という、すごいスピード感でしたね。

山田:資金調達に動き始めてから、最低でも2カ月くらいかかると想定しており、今回のラウンドは無理かなと諦めていました。それに間に合いましたので、本当に驚きましたね。東京カンテイさんやM&Aクラウドさんにスピーディーに対応していただいたおかげです。

――今後はどのようにシナジーを発揮していこうとお考えでしょうか。

山田:不動産業界においては業務のデジタル化の遅れが指摘されていますが、ブロックチェーンを用いてその課題を解決していければと思います。例えば、ブロックチェーンの良さの一つである「耐改ざん性」を活用して、東京カンテイさんがお持ちのデータベースのセキュリティを高める仕組みを作れればと思います。

「NFT(非代替性トークン)」という言葉を最近よく聞きますが、当社はこのNFTと同様の発想で、高度なセキュリティが求められるデジタル情報を管理する技術を「NFD(Non Fungible Document:唯一無二の改ざん不可能なドキュメント)」と名づけました。このNFDを不動産・金融業務に活用していきます。

小澤:不動産データは社会資本ですから「守る」ことは大切です。と同時に「活用する」ことにも積極的に取り組んでいきます。

当社のお客様は全国の金融機関や不動産会社様です。最近、よくご相談を受けるのが「他社との差別化につながるオーダーメイドサービスがほしい」と。この要望に応えるには、今までの延長線上では正解を見つけられません。Digital Platformerさんと一緒に、不動産データベースの新たな活用方法の創出、ユニークなサービスの開発に取り組みたいですね。

山田:将来的な話になりますが、リートよりも規模の小さい、マイクロリートのような投資商品の開発もできると思いますよ。

一つのマンションを複数のオーナーが所有するというファンドをつくる際に、「スマートコントラクト」というブロックチェーンの技術が有効だと考えます。東京カンテイさんとDigital Platformerが協力するからこそできる、新しいビジネスモデルを開発したいですね。

井上:今回の資本業務提携が発表されてから、社内で話題が盛り上がったんです。当社の不動産データの管理方法やデータ連携の仕方が、ブロックチェーンによって大きく変わるんじゃないかと、そんな期待感が生まれています。社内を活性化させるような資本業務提携ができたと思っています。

山田:無事に資金調達ができてほっとしたと同時に、期待に応えなければいけないという責任を感じています。出資していただいたからには何かしら恩返ししなければと思っています。

――東京カンテイさんは、出資を入り口にした出資業務提携のメリットについてどうお感じになりましたか?

井上:Digital Platformerさんとの資本業務提携の1年前に、人工知能開発の会社との資本業務提携を行いました。

こういった取り組みを通じて思うのは、当社の社員と外部の方々との人的交流が生まれ、社内が活性化するということです。ビジネス面でのシナジー創出が期待できることはもちろん、人材を育てる手段の一つとして、資本業務提携は有効だと思いますね。

小澤:不動産データは社会資本であり、これを「守る」「活用する」ことで常に社会にブラッシュアップしていかなければと思っています。今後もその観点で積極的にM&Aを検討していきたいですね。

――小澤さん、井上さん、山田さん、本日はありがとうございました。



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本ページに掲載している情報には、M&Aが成立するに至る経緯に加え、インタビュー時点での将来展望に関する記述が含まれています。こうした記述は、リスクや不確実性を内包するものであり、環境の変化などにより実際の結果と異なる可能性があることにご留意ください。

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