決め手は「一緒に長く事業をしていきたい」と思える経営者かどうか。デルタとCo-Growthの協業がスムーズに進んだ背景とは

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決め手は「一緒に長く事業をしていきたい」と思える経営者かどうか。デルタとCo-Growthの協業がスムーズに進んだ背景とは

Co-Growth株式会社は、営業力向上を目的とした、動画でフィードバックを行うクラウド・トレーニング・システム『リフレクトル』を展開しています。一方、株式会社デルタは、人材派遣、BPOサービス、人材採用支援などを展開しており、主に直接雇用の支援または直接的な人材リソースの提供を行っています。

Co-Growth株式会社への出資に至った経緯、今後のビジョンは何だったのか。株式会社デルタ代表取締役の平井健一様と、Co-Growth株式会社代表取締役/CEOの佐々木文平様にお聞きしました。

プロフィール

株式会社デルタ 代表取締役:平井 健一(ひらい・けんいち)※取材時の情報を記載しております

1997年4月、大学卒業後、人材系会社に入社。営業を皮切りに、営業企画、人事、編集部などを歴任。2007年4月、同社退社時に、かねてより親交のあった株式会社第一広栄社(現株式会社デルタ)の創業社長から会社を引き継ぎ、代表取締役に就任(現任)。その後、事業領域の拡大とともに、全国に拠点展開。2015年には海外進出を果たす。2022年現在、株式会社デルタ 代表取締役、株式会社デルタマーケティング 代表取締役、株式会社デルタソリューションズ 取締役を兼任。

Co-Growth株式会社 代表取締役/CEO:佐々木 文平(ささき・ぶんぺい)

筑波大学付属駒場高等学校卒。同校在学中に1年間米国に留学。2003年に東京大学経済学部を卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーにて勤務。ベスト・プラクティスの抽出と展開による組織パフォーマンス向上プロジェクト等に関わる。 2007年2月に現Co-Growth株式会社を設立。組織開発・人材育成の仕事に従事。同時に、企業・自治体の変革プロジェクトのアドバイザー等も務める。 その後、クラウド・システムを活用した人材育成に可能性を見出し、2016年にクラウドトレーニングシステム「リフレクトル」をリリース、リフレクトル事業に集中。 以来、数多くの企業の営業育成DXプロジェクトにサービス開発者およびコンサルタントとして関わる。

M&Aクラウドは意欲的な企業が多く、自らアプローチできるのが魅力

Co-Growth株式会社 代表取締役/CEO:佐々木氏
Co-Growth株式会社 代表取締役/CEO:佐々木氏

――Co-Growth様が資金調達を検討し始めた経緯は?
佐々木:Co-Growthの立ち上げ時から強くあるのは「世の中を変えたい」という想いです。これまでコンサルタントとして人材育成や組織開発に関わってきて、目の前で人が変わることにやりがいを感じてきました。

ですが、従来の研修は変化まで結びつかないことが多い。テクノロジーを活用した本質的かつ持続的な人材育成の仕組みを浸透させるために、サービス拡大に向けた資金調達を考えはじめました。

――Co-Growth様のサービスの強みを教えてください。

佐々木:私たちの強みは、営業(商談)、プレゼンテーション、スピーチ、面談で結果を出せるようになるまで組織内で人材を育成しきることが可能な仕組みを構築している点です。これが可能なのは、人が変わるために何が大切かを考え抜いてきたからだと自負しています。

「営業のあるべき姿」を可視化・言語化し、それを共有し、実践した後に、また質の高いフィードバックを受けて得たことを資産化していく。そうしたモデルを描いています。

リフレクトルというシステムはそのモデルを体現するナレッジの塊ですが、更にその活用をカスタマーサクセスが個々の顧客に伴走し、手厚いケアによって高い満足度を維持できています。そして、カスタマーサクセスからのフィードバックを反映し、システムを磨き上げています。これらが他社にない強みの源泉だと思います。

――ありがとうございます。M&Aクラウドに登録した経緯を教えてください。

佐々木:2022年初、その年の7月くらいから本格的な資金調達に動くことを考えていましたが、リフレクトルの性質上、VCから実績を問われ続けていました。そこで1~6月の間に実績づくりを進めていたところ、M&Aクラウド代表の及川さんからM&Aクラウドを利用してみないかとお声がけいただきました。

私たちのサービスとシナジーが生まれるような企業様とのご縁ができればと思い、登録することに。リストは500社くらい掲載されていて、すべて目を通しました。

――500社すべてはすごいですね。M&Aクラウドを利用してみていかがでしたか。

佐々木:営業に強い会社、住宅不動産の会社を中心に見ていましたが、500社から自社とシナジーが期待できそうな会社をピックアップできたのはよかったです。出資に意欲的な企業が多く、そこに自らアプローチできるのはとてもありがたかったですね。

M&Aクラウドは、多様な経営者・企業と出会えることが究極の価値

株式会社デルタ 代表取締役:平井氏
株式会社デルタ 代表取締役:平井氏

――デルタ様はどのような経緯で出資を検討しはじめたのですか。

平井:もともと協業によって新規事業のハードルを下げたいと考えていました。特にHRテックは、自社単独よりも、差別化できるサービスをもつ企業様を仲間にした方がスピーディーに事業展開できるので。

――M&Aクラウドを使用してみてどうでしたか。

平井:M&Aクラウドでは実際に複数件出資の成約もしていますから、利用してよかったと思っています。また、多様な経営者に数多く実際に会えるのがよいですね。

企業とのおつきあいにおいて、出資よりも手前にいろいろな選択肢があります。成約に至らなくても、情報交換できる関係性になることもあります。人と出会えることがM&Aクラウドの究極の価値だと思います。

「この人とずっと一緒に事業をやっていきたい」。自社導入で実感した『リフレクトル』の効果

――出資に向けた交渉を開始されてから、お互いの印象はいかがでしたか。

平井:佐々木さんから面談の打診をいただいたとき、まず『リフレクトル』が面白いサービスだと思いました。私自身のファーストキャリアも営業でしたが、営業は職種柄、どうしても担当者の個性やスキルといった属人的なものが成功のファクターになりがちです。

ですが、成功する営業のスキルやノウハウを可視化して、チーム内の目線がそろっていくと、再現性が高まり、成果を出し続ける仕組みができるのです。

実際、当社の営業チームで「リフレクトル」を導入して、現場でよい反響がありました。互いの営業力を磨く場を設けているのですが、そこでもチーム内のコミュニケーションがしやすくなり、パフォーマンスを上げやすくなったのです。ユーザがよいなと思うサービスは間違いないので、自社での反響は出資のさらなる後押しになりました。

佐々木:資金調達の募集をして12社ほどご縁をいただきました。リストの段階でデルタ株式会社には営業力が強い会社として興味を抱いておりましたが、実際に平井さんにお会いして、とても信頼できる方だなと感じました。

他社との面談の際には、値踏みされているような感覚を抱くことも正直ありました。ですが平井さんは、私たちの事業をしっかり理解しようとしているのが伝わりました。中長期的に一緒にやっていけるかという観点で、私の人となりと事業をじっくり見てくださっていたのです。

――交渉を通じて、おふたりはどのような想いを抱いたのでしょうか。

平井:出資の決断は後戻りができないこと。だから大事な判断基準にしているのは、事業が伸びそうかよりも、「一緒に長く事業をしていきたい」と思える経営者かどうかです。出資後にうまくいくかどうかは結果だけの話なので、それでも一緒に乗り越えてやっていきたいと思える人選が大事だと考えています。

「自社の事業を心底広げたい」という想いは初回の面談ですぐ伝わるものです。また、佐々木さんはピボットの経験者で、経営者として安定感がありました。

佐々木:実はお会いして初期の頃、お食事をご一緒したときに、平井さんから事業成長に対する疑問を提示されたことがあります。その後に「自分も事業家として、同じような指摘を投資家からされたことがあるし、今でも悩んでいることでもある。だからその問いに向き合って考えておくことは大切だと思う」とおっしゃった。「自分も向かい合ってきた」とともに解決に向けた道筋を考え、私たちを応援してくださっている。そんな姿を垣間見たことが今でも心に残っています。

さらに、平井さんが「自社の営業へのアセスメントシートを見せてくださり、リフレクトルもここにブレイクスルーのポイントがあるのでは」と提案してくださったこともありがたいことでした。今後、営業力の検定や検診のような仕組みが私たちの事業の一つの軸になると思っています。このように事業の成長につながるアイデアを一緒に考えてくださるのは心強いことです。

平井:フィリピンでオフショア開発をしているのですが、効果的なオフショア開発について模索していきたい、ということで一緒にフィリピンに行こう、というお話にもなりました。普段過ごしている場所だとつい目の前の事業の話になるので、未来を描いて語り合うには、いつもと違う場所に行くのもいいなと思っているんですよね。

――協業を決意されたときのことを教えてください。

佐々木:嬉しかったエピソードがあります。2022年7月から本格的にVCにあたっていましたが、そもそもリードをとろうというVCは限られています。7、8割は他のVC次第という様子。「リードが見つかったら声をかけてください」という対応もあり、辛い状況だったときもありました。

そんななか、9月くらいに平井さんが、「1社でも決まったら励みになるし、他の出資の呼び水になるだろうし」と、出資を決めてくださった。1社決まったことが勇気になり、その後の原動力になりましたね。

出資に至るまでの平井さんとの対話の期間は約6か月でしたが、『リフレクトル』を自社で活用された時期もあり、じっくり私たちのことを見てくださった印象です。だから追加の提出資料もなく、自然と前に進んでいきました。

――あらためて出資の決め手は何だったのでしょうか。

平井:出資の判断ではやはり、その人が事業をどれだけ好きでいるかが大事です。私はマニアックな人が好きなんです。経営者の事業へのこだわりは色々なところで現れますから。佐々木さんがリストの500社にすべて目を通したエピソードとか(笑)。

色々な出資の依頼がくるのですが、事業計画書がどこかフォーマット化されているように見えることも多くて。「1兆円規模のマーケット」ってどこかで見たなと(笑)。私たちはキャピタルゲインを求めているわけではないので、「なぜ自分がこの事業をやるのか」という強い意志があることが出資の決め手になりました。

「営業を育てる仕組み」のモデル化と、営業職のイメージ向上へ

――今後のビジョンについてお聞かせください。

佐々木:まずはシステムとカスタマーサクセスの強化によって、価値を多くのお客様に届けることと利益を両立できる仕組みづくりに注力することです。システムの開発、カスタマーサクセス、セールスマーケティングの人材採用を進めていきます。

デルタさんとの協業で特にやっていきたいことは、デルタさんの営業力強化で『リフレクトル』をさらに活用いただき、「営業を育てる仕組み」のモデルをつくることです。すでに強い営業力をもつデルタさんの育成の仕組みを、営業力の強化が求められる組織でも横展開できるようにしていきたいと考えています。

平井:佐々木さんに期待しているのは、営業職のイメージアップです。営業は自社とお客さんをつなぐ大事な役割です。ところが「売って成果を出さなくてはいけない職種」というイメージから、不人気職種になっているのが現状です。

『リフレクトル』によって営業職の人たちが成果を出す仕組みを学んで、改善ができれば、結果も出しやすくなる。小さくても成功体験を早く積むことができれば、「キャリアのなかで一度は営業を経験しておきたい」というふうに、イメージが変わると思います。

また今後も、起業して「こんなことを実現したい」という想いのある方にはお会いしていきたいですね。そこにお役に立てるなら出資を積極的に検討したいと考えています。 

佐々木:営業の重要性は起業して痛感しました。営業の本質は「対話」です。相手が本当は何を欲しているかを理解して、それを届けること。そう考えると営業の仕事が楽しくなる。事業を通じて営業職のイメージ向上にも寄与していきたいです。

――本日はどうもありがとうございました。両社の今後の発展を期待しています!



■本ディールの経緯
2020/01/21 デルタが『M&Aクラウド』に掲載
2022/02/25 Co-Growthが『M&Aクラウド』に登録
2022/02/25 Co-Growthがデルタに打診
2022/03/14 初回面談(WEB:事業内容紹介等)
2022/03/23 2回面談(対面 : 事業の発展可能性に関する議論)
2022/04/28 リフレクトル導入前最後の面談
2022/05/19 対面<会食>
2022/09/01  面談、投資意向の伝達 (進行中の他の投資家との関連で時期を調整)
2022/12/06 クロージング




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本ページに掲載している情報には、M&Aが成立するに至る経緯に加え、インタビュー時点での将来展望に関する記述が含まれています。こうした記述は、リスクや不確実性を内包するものであり、環境の変化などにより実際の結果と異なる可能性があることにご留意ください。

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