【マラトンキャピタルパートナーズ×OCEAN GATE】事業会社よりもファンドが最適だった。――PEファンドと手を組み、競合ひしめく採用コンサル業界で見据える先とは

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【マラトンキャピタルパートナーズ×OCEAN GATE】事業会社よりもファンドが最適だった。――PEファンドと手を組み、競合ひしめく採用コンサル業界で見据える先とは

2022年4月5日、マラトンキャピタルパートナーズ株式会社様が、運営するマラトン1号投資事業有限責任組合(以下「マラトン1号ファンド」)が出資する特別目的会社を通じて、人材採用コンサルティング事業を行う株式会社OCEAN GATE様と資本業務提携したことを発表されました。

オフラインでのマッチングをサポートするM&Aクラウドのファイナンシャルアドバイザリーチーム、M&A Cloud Advisory Partners(以下、MACAP)の支援により出会った2社がどのように成約に至り、どのようなシナジーを創出していこうとしているのか。マラトンキャピタルパートナーズ株式会社 代表取締役の小野 俊法氏(写真中央)、同 取締役の和田 耕太郎氏(写真左から2人目)、同 アソシエイトの佐藤 宏樹氏(写真左)、株式会社OCEAN GATE 代表取締役CEOの安達 成弘氏(写真右から2人目)、同代表取締役COOの竹井 祥平氏(写真右)に語っていただきました。

プロフィール

小野 俊法(おの・としのり)

国内最大の不動産ファンド(一兆数千億円運用)のダヴィンチアドバイザーズにて4百億円の不動産ファンド運用を任され、ファンド運用のイロハを学んだ後、海外にて不動産アセットマネジメント会社を立ち上げ、多くの投資を行う。家族の事情で帰国し、EYTASにてM&Aアドバイザリー業務に従事し、2010年ACA株式会社入社、2019年1月より日本グロース・キャピタル株式会社(GCJ)の投資メンバーのフロントトップに就任。ファンドによる投資と一部個人の小規模投資経験を合わせて過去のバイアウト投資経験11年、投資経験件数は41件と国内No.1。GCJの中でも断トツの案件経験数を誇り、とりわけ高いリターンを上げている。

和田 耕太郎(わだ・こうたろう)

野村證券にて資産運用業務や事業承継支援、米国ゼネラル・エレクトリック(GE)の金融部門であるGE Capitalにて国内中堅企業向けの資金調達業務に従事した後に、国内独立系ファンドである日本創生投資に参画。投資フロント主要メンバーとして、主に事業承継・再生に関するバイアウト投資に従事。その後、製造業のM&Aを推進するセイワホールディングスにてM&A部門の責任者に就任し、役員としてチームの立ち上げと事業承継に関するバイアウト投資を推進した。ファンドによる投資と事業会社による投資を合わせて、合計15件(スモール・マイクロキャップ中心)のバイアウト投資を経験。M&Aアドバイザーとのネットワークも深い。中小企業診断士。

佐藤 宏樹(さとう・ひろき)

有限責任監査法人トーマツにて、ノンバンクをはじめとする金融機関や投資事業有限責任事業組合、暗号資産交換業者への法定監査業務に従事した。また同社にて、ベンチャー企業に対するショートレビューや内部統制構築支援等の上場支援業務に従事した経験も有する。

安達 成弘(あだち・まさひろ)

大学在学中に疲れ切って家路につくサラリーマンを見て、人生の中で大きなウエイトを占める仕事の時間を楽しいと思える環境を自分が提供できる側の人間になりたいと思い、将来の起業を決意。2013年大手人材会社に入社し広告代理事業で約3年間営業として従事。その後ITベンチャー企業の立ち上げに携わり、2017年3月に株式会社OCEAN GATEを創業。

竹井 祥平(たけい・しょうへい)

新卒から現在までHR/IT領域に従事。採用コンサルでは約2000社ほど支援実績あり。数千名の人材ベンチャー企業でトップセールス後、250名のWEB会社にて採用コンサル事業をメインとした子会社の立ち上げを行う。その後OCEANGATEの共同代表として参画。時代に合わせた採用手法の確立を行う。

スピーディーなスケールアップには“他社と手を組む”ことが最善の手段

OCEAN GATE 代表取締役CEOの安達氏、同代表取締役COOの竹井氏
OCEAN GATE 代表取締役CEOの安達氏、同代表取締役COOの竹井氏

――OCEAN GATEさんの事業紹介からお願いします。

安達:当社は2017年に設立した会社です。600社以上の支援実績と業界随一のリピート率を誇る採用コンサルティング事業を主に展開しています。また、自社プロダクトとして新卒向けのWebアプリ『Leasy(リジー)』を提供しています。

――事業、サービスともに実績を残されているなかでなぜ会社売却を?

安達:営業色の強いコンサルティング事業と、テック系のWebアプリという2つのサービスを展開するなかで、毎年高い売上目標を設定してそれをクリアし続けてきました。売上高は右肩上がりに推移してきたのですが、その分、投資もどんどん増えていくことになり、思うような資金繰りができていないことに悩んでいました。

COOの竹井とも相談するなかで、採用コンサルとWebアプリを同時に追うのではなく、それぞれ別々に伸ばしていく方向がいいのではないか、と。そして、Webアプリの担当社員とも話をしたうえで、各事業を別々に推進する方針を決定したんです。

各事業がスピーディーなスケールアップを図るには、それぞれ他社と手を組むことが最善の手段と考え、2021年の秋ごろからM&Aという選択肢を探り出しました。

――当初から売却を前提に考えていたのでしょうか?

竹井:そうですね。採用コンサルは競合が多いレッドオーシャンの市場で、当社は営業力を武器に勝ち続けてきました。ただ、現状の課題をすべて自社で解決しようとすると、おそらく3、4年はかかってしまう。そんなゆっくりしたスピード感だと、手法の移り変わりが激しいこの市場では競争していけません。成長を加速させるためには、他社と組むべきで、「イコール売却」だと考えました。

売却の方法についても、仲介会社などさまざまな形式で検討を進めていましたが、最終的に以前からつながりのあったM&Aクラウドを利用することにしました。そして、何社目かにマラトンキャピタルパートナーズさんを紹介してもらい、11月に最初の面談を行ったという流れです。

――マラトンキャピタルパートナーズさんは、どのような投資先を探していたのでしょうか?

和田:当社は「スモールキャップ(営業利益5億円以下の企業)」や「マイクロキャップ(営業利益1億円以下の企業)」という、他のファンドがあまり手を付けないサイズの中小企業への投資を得意としています。事業承継案件や成長企業支援案件を常に探しています。

M&Aクラウドさんから、OCEAN GATEさんをご紹介してもらい、事業が成長し続けていることが資料から分かったのでひとまず面談をすることにしました。今日のメンバーと同じ、当社側から3人、OCEAN GATE側から2人の計5人でのミーティングとなりました。

最初の面談で「勝ち筋が見えた」。両社が感じた成長へのスピードとシナジー

マラトンキャピタル  アソシエイトの佐藤氏、同 取締役の和田氏、同 代表取締役の小野氏
マラトンキャピタル アソシエイトの佐藤氏、同 取締役の和田氏、同 代表取締役の小野氏

――最初の面談ではどのような印象を持ちましたか?

和田:面談で経営方針や事業の紹介をしてもらいましたが、結果、私たち3人ともに「あのお二人なら大丈夫だよね」という感想を持ちました。採用コンサル事業は右肩上がりで伸びていましたし、営業力が非常に強いですから、誰かが発射台を用意することでさらに売上を伸ばしてくれるだろうと思いました。

小野:OCEAN GATEさんは優れた事業だけではなく、安達さんと竹井さんのバリューでも成り立っている会社です。そういう意味では、引き続き経営に残って事業拡大を目指したいという意向だったので安心感がありましたね。また、自分が採用コンサルの提案をされる側だと想定した時に、「この2人ならやってくれそうだ」と頼もしさを感じました。

和田:当社はPEファンドですから、支援する方法をたくさん持っています。例えば当社に持ち込まれるM&A案件のなかから、人材派遣会社やWeb制作会社をロールアップして事業を拡大するといったことも考えられます。また、当社のネットワークを活かして上場企業クラスの顧客をOCEAN GATEさんに紹介することもできます。そういった取り組みで飛躍的に事業を伸ばすことが可能だと考えました。

――OCEAN GATEさんはどのような印象を?

竹井:私たちとしても、面談時にそういった具体的な協業のお話をいただきまして、勝ち筋が見えた気がしました。採用コンサル事業の新規開拓はアウトバウンドが基本なのですが、マラトンさんと組むことでインバウンドでも獲得できるようになります。当社だけなら何年もかかってしまうような有利な状況を、すぐに作り出せることに魅力を感じました。

実は事業会社やファンドなど、いくつかの会社から打診がありましたが、成長へのスピードやシナジーを含めて考えた時にマラトンさんが一番のパートナーだろうと、最初の面談で直感しました。

――決め手となった要因はどこだったのでしょうか?

竹井:例えば事業会社と話をした時には、先方のカルチャーと当社のカルチャーがフィットするのか、自分たちのスピード感に歩調を合わせてもらえるのかなど、いくつか疑問が浮かんできました。

マラトンさんと話をした時には、「OCEAN GATEが主役になって事業を進めるのがいい」という意見をいただきました。確かに、自分たちが目指すビジネスを実現するには、自分たちが当事者意識を持って進められて、必要な時にはサポートを受けられる、そんなM&Aが理想です。そう考えると、マラトンさんがピッタリでした。

最初からファンドに売却しようと思っていたわけではないのですが、結果的には事業会社よりもファンドが最適だったということになります。

和田:事業会社に売るケースと、ファンドに売るケースで大きな違いは、買い手と売り手のどちらが主役になるかという点です。事業会社に売るケースでは、事業会社が主役となり、売り手企業は事業会社の経営戦略実現のためのピースとなることが多いといえます。

ファンドに売るケースでは、引き続き売り手側が主役となって事業を進めていくことになります。ファンドはそれを支援する役割です。

OCEAN GATEさんの場合、ファンドに売却して、自分たちが主役となってさらなる事業拡大を目指すことが、理想に叶ったやり方だったと思います。

――最初の面談で、両社の意向が合致したかたちだったのですね。では、その後の展開は早かったのでしょうか。

安達:初回面談の直後にLOI(意向表明書)をいただきました。他社からもお話はありましたが、今後のシナジーを考えると、マラトンさんしかないだろうとすぐに決断しました。

和田:LOIで条件を提示して承諾していただいたので、あとは粛々とDD(デューデリジェンス)を進めていきました。いろいろな情報を精査する過程で、よほど悪い情報が出てこない限り、問題なく契約締結まで進むと思っていましたし、実際にその通りになりました。

――初回の面談から契約締結に至るまでの過程で、印象に残ったことは?

安達:私たちは仕事をするうえでスピード感を非常に大事にしています。マラトンさんといろいろなやり取りするなかで、私たちと同じようにスピード感を大事にしている会社だと分かり、改めて良いパートナーに巡り会えたと思いました。

小野:実は今回、かなり珍しいことなんですが、契約締結前にお客様をOCEAN GATEさんに紹介しました。OCEAN GATEさんには早速動いてもらい、先方の社長からOCEAN GATEさんの話を聞いたところ、とても良い感触のようです。採用活動は水物で、時期を逃さない提案が重要ですから、迅速に動いてくれて、とても頼もしく感じています。やはり今回のM&Aは想定通りのシナジーを得られそうだと感じました。

社会にインパクトを与えられる唯一無二の存在に、そしてIPOを実現へ

――今回はMACAPをご利用いただきましたが、M&Aアドバイザーのサポートはいかがでしたか?

竹井:M&Aアドバイザーの岸さんとは私が基本的にやり取りしていたのですが、いつメッセンジャーで連絡しても必ず即レスなんです。いつ寝てるのかなと(笑)。本当にスピーディーに対応いただき、良かったと思います。

安達:岸さんも竹井もお互いにレスが早いので、メッセージのやり取りからしばらく目を離していると、いつの間にかものすごく話が進んでいる(笑)。後から追いかけるのが大変なほどでした。

和田:我々も同じ感想です。やはりスピード感ある対応の方が安心感がありますし、早く意思決定できるのでとても助かりました。このディール自体、スピード感がありながら進行できたのも岸さんに担当していただいたおかげです。

竹井:私たちは会社売却の経験がなく、知識が不足しているところもたくさんあったんです。それでも人生をかけて運営してきた会社ですから、選択を間違えたくはありません。

岸さんには要望や疑問をいろいろぶつけて、その都度、私たちの意図を的確に汲み取ったアドバイスをいただき、正しい選択に導いてもらいました。

安達:私たちと同じ熱量で売却プロセスを進めていただいたという印象です。良いパートナーとして二人三脚で歩み、最高の結果になったと思っています。

――大変嬉しいお言葉、ありがとうございます!2021年11月に交渉を開始し、3月に契約締結となりました。今後はどのような取り組みをしていこうとお考えですか?

安達:マラトンさんから大きな期待をいただいているので、その期待に応えられるようなパフォーマンスを出していきたいですね。今まで私たちは個の力で伸びてきた会社であり、組織化はまだまだ足りていません。マラトンさんと組むことで組織化を実現していきたい。それに伴って売上を上げて、最終的にIPOを実現できればと思います。

竹井:マラトンさんのネットワークを通じてお客様を紹介いただき、採用コンサル事業の売上を一気に上げて事業拡大を図っていきます。その点は確実に見込めるシナジーとして追求していきたいです。

私は人材業界に8年ほど関わっていますが、人材系の営業会社で特筆するような会社ってあまりないというのが実感です。せっかく自分が立ち上げた会社ですから、社会にインパクトを与える唯一無二の存在にまで発展させたいです。

小野:マラトンは2021年に設立したばかりの会社です。たくさんの企業を支援しながら、2人の思いと同じように社会に大きなインパクトを与える存在になっていきたいと思っています。そして、夢を叶えられるように微力ながらサポートをしていきます。

和田:当社からは、まずは顧客紹介やロールアップの投資を通じてトップラインを上げていく支援をします。同時に社内体制の整備を行っていきます。法務デューデリジェンスで中小企業に多くある課題がいくつか見つかったので、PMIの100日プランで改善を支援していきます。

佐藤:従業員の方々にも、我々と一緒になってよかったと思っていただきたいです。そのために黒子となって最大限サポートしていきます。

――今後売却や資金調達を検討している企業に対して、何かアドバイスがあればお聞かせください。

安達:M&Aに備えて資料をきちんと準備した方がいいということですかね。今回、マラトンさんと出会ってすぐに意思決定をして動き出したので、デューデリに必要な資料をそろえるのが大変だったという思いがあります。

例えば当社は2つの事業を展開していたのにPLを分けて作っていませんでした。今回売却することになって、初めて分けて作成してみると、事業毎の費用の内容や収益性を正確に掴むことができ、新たな発見もあったんです。

本来だったらもっと計画的に、例えば1年前から準備をして売却活動に臨めば、マラトンさんにもお手間をかけずにスムーズにできたのではないかという気がします。

和田:当社としては、ぜひ偏見を持たずに、事業会社だけでなくファンドとの協業も選択肢の一つとして考えていただきたいです。日本ではどうしてもまだファンドに対する印象が悪く、ハゲタカだと思われることがありますが、現在活動しているファンドは皆、友好的な投資活動を行っておりますし、事業会社とのM&Aには無いメリットも多くありますので、ぜひ一度MACAPさんにご相談いただければと思います。

――今後の両社の発展を願っております。小野さん、和田さん、佐藤さん、安達さん、竹井さん、本日はありがとうございました。




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本ページに掲載している情報には、M&Aが成立するに至る経緯に加え、インタビュー時点での将来展望に関する記述が含まれています。こうした記述は、リスクや不確実性を内包するものであり、環境の変化などにより実際の結果と異なる可能性があることにご留意ください。

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